ユレルココロ
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――――――
ふと、アルトは、10年振りに海軍本部に戻って来たときのことを思い出した。
―――――海軍本部 ペガパンク診察室
「で10年くらい経ったか? ノティ、お前は理解できたか?」
『え?』
検査のために脱いでいたシャツから顔を出したところで声を掛けられたアルトは、質問を再度尋ねるために声を出した。
ここはペガパンクの研究所の一角。この日はCPから戻って来て数日も立っていない日、
アルトは五老星の命により、ペガパンクの下で健康診断という名の“身体検査”を受けていた。
「言ったろう、お前という“存在”をだ」
ペガパンクは言う。しかしアルトは首を傾げた。
『……。ペガパンククン、言葉の意味がわからないんだけど。
確かに僕がここに来たときもそんなこと言ってたような…
というかさ、“記憶がない”ってそのときにもクザンクンから聞いてなかったけ?』
最初とはアルトが青キジに拾われて、海軍にやって来たときのことを指す。
青キジの計らいで記憶障害の件を調べるため、ペガパンクの診断を受けたのだ。
「記憶のあるなしの話じゃねェ、今日(コンニチ)まで自分自身に何かを感じたことはないかと聞いている」
ベガパンクは探るような目つきでアルトを見る。
その視線に居心地悪く感じたアルトは頭をかいた。
『さあ、思い当たらないけど……』
「フン。自覚はねェ、か」
『?』
ペガパンクは鼻を鳴らすと、自分の椅子にドカッと勢い良く座った。
「…もう一度言うが、お前の記憶は外部から探ることは“不可能”だ。今日の検査でも記憶の一端すら見えん」
『……?』
「やはりお前の脳に何らかの処理が施されたための現象と考えられる」
『つまり…?』
「“以前の記憶が隠された”か又は“消された”可能性があるってことだ」
『……へ?』
「おれは前者とみているが、それだと…」
『ちょっと待ってくれ』
「?」
『僕はキミほど頭が良くない。もう少しわかりやすく説明してくれないかな』
「……フン…記憶に関することはこれ以上簡単に言えん」
『記憶については…? じゃあ、何についてなら言えるんだい?』
「そうだな、お前は、変わっている」
『……へっ?』
アルトはペガパンクの言葉に、首を傾げた。
『それは、みんなによく言われることだけど…」
「お前の性格のことじゃねェ。“人間”だが、そうではないところがあるということだ」
『?』
「人間の遺伝子に細工をしているのか、器が用意されていて、
お前の精神だけを移したのかはわからんが、普通の人間とは言えんだろうな」
『……』
「お前、身体能力もそうだが、特に耳がいいだろ?
聴覚検査でこんなバカみたいな数字を出す奴は初めてだ」
ペガパンクは検査結果をアルトに差し出した。その数値は隣に書かれた標準の桁をゆうに超えている。
「お前は一般の人間じゃあ、拾えない範囲の音も聞き取ることができるし、発することもできるだろう。
それはそもそも“見聞色の覇気”にあたる、“心を読む力”が異常なまでに発達しているせいだ」
『…すでに人扱いじゃないのか。でも異常ってひどすぎないかい?』
「おれのいう異常は、“異質”だ。広範囲の人間一人一人の感情を読み取れる奴なんて人間じゃねェ」
『……そんなことしないよ』
「いや、やっておけ。使わない力は次第に“衰える”からな。
それにお前がなぜそうなっているのか、調査せんとな」
『……調査ねェ。ちなみになんだけど、キミがくまクンにしていることが僕にもされているということ、という理解でいいのかな?』
診察台に腰かけ尋ねるアルト。
「まぁ、それと同じとはいわねェな。お前のはしいて言えば強化だろうからな。
だが、それにしてもお前の場合……完成度がいささか高すぎる」
ペガパンクは、眉間にしわを寄せながら言った。
『……?』
「人間の中身に手を加えるなんざ、簡単なことじゃねェ。
それになお前は確かに触られているはずなのに、“人間”そのものだ。しかも、お前“自身”が実感できない程に。
技術だけ見たら超一級品だ。おれの理論にかからない部分もいくつかある。
巨大化を求めず、究極の兵士を作り出そうとすれば、最終的にお前みたいな存在が望まれるだろう」
『……500年先の技術を持つキミがわからない技術?? そんなものがあるのかい』
「600年先の技術はねェ」
『……なるほど。でも僕は“今”ここにいる。600年後というのはないんじゃない?』
「出所に少し心当たりはあるが……話してもわかるまい」
『…そうか。ならいいよ。キミの時間を無駄にするなと言われているし。
ところで、今までのこと上に報告するの?』
「それが義務だ。だが……」
『ん?』
「お前はそれが嫌なんだろう?」
アルトは、肩を落とす。 ペガパンクの察しの良さに感服しながら、首を縦に振る。
『……そうだね。その報告はいい方向に向くとは思えない』
「フン。正直だな。そんなに五老星は嫌いか?」
『キライだね。近づくのもイヤだ』
「フン、よく少将になれたもんだ。では、こうしよう」
『?』
コーヒーに口をつけたペガパンクは腰かけた椅子の上で、足を組む。
「定期的におれの実験に付き合え。そうすれば今回の結果に関しては伏せてやる」
『! それ、いいのかい?』
「まぁ、五老星には、耳のことくらいで構わなねェだろう。
どうせ“記憶”を戻すことはできなかったんだ。あいつらにとっては収穫はねェ。
だが、おれとしてはいくつか試したいことがあってな」
『……僕にその実験体になれ…と?』
「ああ。ついでに“治療”もしてやるよ」
『治療?』
思わぬ単語に首をひねる。
『僕、どこも悪くはないよ』
「今はな…このままだと近いうちにお前は死ぬ」
『へ…?』
ペガパンクの言葉にアルトは唖然とする。
ペガパンクは予想の範疇だった反応には気にも止めず、自分の頭を人さし指の腹で軽くコンコン叩く。
「近い将来、お前は脳の働きが大きく落ちる可能性がある」
『……!!』
「お前は“その異常なまでに心を読む力”で得た言葉を、短期間で処理することができるようになっている。
もちろんそれは人間なら誰しもやっていることだが、お前のは異常だ。
それを補うために以前のお前は何かしらの治療を受けていたと思うが、
今は“見聞色の覇気を抑えること”と、“過剰なまでの糖分摂取”で補っている状態だ。
もちろん、普通の人間にとってはバランスはいいとは言えんがな」
『ヘェ…僕がおかし食べてるのはそのせいってこと?
脳の動きが落ちると何が起こるんだい?』
「今までのような超人的な動きはできなくなる。
いや歩くことも困難になるかもしれん。そして、脳の機能が止まり、死を迎える」
『……。それは…いつ?』
「兆候はまだない。おれが調べたからわかったことだ。
だが、それは確実に来るといえる。それがお前の“寿命”だ」
『“寿命”か……。ねェ、ペガパンククン。キミは僕の“存在の理由”はなんだと考える?』
「そうだな。お前が“何か”をするために用意されたと存在であることは仮定できる。
だからその“何か”が終わるまでもつように改造がされているだろう。
もちろん、その“何か”が終われば、後はどうなってもいい前提でな」
『……』
「で、乗るのか? 俺ならお前の“寿命”を先延ばしにしてやれるぞ」
『……クザンクンにも伏せていてくれるなら』
「クザンに? なんでだ??」
『下手な心配をかけたくないからね』
―――――
――――――――
「「……」」
『という話をされたことがある』
アルトは静かに言った。アルトのこの落ち着きがなければ、この場はもっと混乱していたかもしれない。
しかし、ドレークは怒鳴った。
「なぜ、そんな大事なことを青キジ含め、誰にも言わなかったんだ!!」
『…僕自身が実感がなさすぎたんだ。彼のいうことを信じていなかった訳ではないけど、素直に信じていい話かも判断できなかった。
しかもこんな話されたら、さすがにみんな困るだろう?
それくらいはわかっているつもりだ』
アルトは目を逸らした。
ロールはそんなアルトを見て歯をくいしばる。
「(それでずっと胸に秘めていたと……?)」
確かに、にわかに信じられる話ではなかった。アルトはどこからどう見ても人間であり、命の危機が迫っていることすら信じられない。
『ペガパンククンの処方は、ほぼお菓子に含まれてたしね。みんなに気づかれる心配はなかった』
そう言うとアルトはお菓子を入れたバックがないことに気づくと、あきらめの大きなため息をついた。
「……」
『でも、だからかな。僕は記憶を思い出さないように自制してしまっていたんだ。
だけど今、思い出した記憶とも合うんだ。ペガパンククンの仮説は正しかった…と理解できる』
「じゃあ……お前は何なんだ?」
ドレークは、溢れてくる感情を抑えながら、アルトに尋ねる。
『さっき言った通り、古代の人間だよ。キミ達よりずっと昔に生まれていた。
でも目を覚ましていたのは、今の年齢分だけ…。だろう。
どうやって僕に"心読む能力"を持たせるたのかは僕もわからないな…』
紡がれる言葉から、目の前の青年の異常な経歴が明らかになり、2人は戦慄せざる負えない
「……古代の人間というのは…?」
『"空白の100年"の時代の人間ってことかな』
「!? 何ですって!!?」
『たぶん、そうだと思う。と言っても、ほとんど覚えていないけど』
「……」
「……お前は、思い出した今、手を加えられた意図を理解したのか?」
ドレークは、アルトの目をまっすぐ見て尋ねる。
アルトも正面にいるドレークに目を向け、言った。
『…ああ。理解している』
「それは何だ??」
『人の“ココロ”を癒すこと』
「…?」
「人の心を癒す、ですか?」
ロールが尋ねた。アルトは視線をロールに移す。
『そう。変な話だと思うだろうけど、僕にその力を与えた人は、本当に僕にそう願ったんだ』
「何のために…?」
『最も大切な人のココロを癒すためだ』
「大切な人とは…?」
『……“ポセイドン”。そう呼ばれた“人魚”だよ』
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ふと、アルトは、10年振りに海軍本部に戻って来たときのことを思い出した。
―――――海軍本部 ペガパンク診察室
「で10年くらい経ったか? ノティ、お前は理解できたか?」
『え?』
検査のために脱いでいたシャツから顔を出したところで声を掛けられたアルトは、質問を再度尋ねるために声を出した。
ここはペガパンクの研究所の一角。この日はCPから戻って来て数日も立っていない日、
アルトは五老星の命により、ペガパンクの下で健康診断という名の“身体検査”を受けていた。
「言ったろう、お前という“存在”をだ」
ペガパンクは言う。しかしアルトは首を傾げた。
『……。ペガパンククン、言葉の意味がわからないんだけど。
確かに僕がここに来たときもそんなこと言ってたような…
というかさ、“記憶がない”ってそのときにもクザンクンから聞いてなかったけ?』
最初とはアルトが青キジに拾われて、海軍にやって来たときのことを指す。
青キジの計らいで記憶障害の件を調べるため、ペガパンクの診断を受けたのだ。
「記憶のあるなしの話じゃねェ、今日(コンニチ)まで自分自身に何かを感じたことはないかと聞いている」
ベガパンクは探るような目つきでアルトを見る。
その視線に居心地悪く感じたアルトは頭をかいた。
『さあ、思い当たらないけど……』
「フン。自覚はねェ、か」
『?』
ペガパンクは鼻を鳴らすと、自分の椅子にドカッと勢い良く座った。
「…もう一度言うが、お前の記憶は外部から探ることは“不可能”だ。今日の検査でも記憶の一端すら見えん」
『……?』
「やはりお前の脳に何らかの処理が施されたための現象と考えられる」
『つまり…?』
「“以前の記憶が隠された”か又は“消された”可能性があるってことだ」
『……へ?』
「おれは前者とみているが、それだと…」
『ちょっと待ってくれ』
「?」
『僕はキミほど頭が良くない。もう少しわかりやすく説明してくれないかな』
「……フン…記憶に関することはこれ以上簡単に言えん」
『記憶については…? じゃあ、何についてなら言えるんだい?』
「そうだな、お前は、変わっている」
『……へっ?』
アルトはペガパンクの言葉に、首を傾げた。
『それは、みんなによく言われることだけど…」
「お前の性格のことじゃねェ。“人間”だが、そうではないところがあるということだ」
『?』
「人間の遺伝子に細工をしているのか、器が用意されていて、
お前の精神だけを移したのかはわからんが、普通の人間とは言えんだろうな」
『……』
「お前、身体能力もそうだが、特に耳がいいだろ?
聴覚検査でこんなバカみたいな数字を出す奴は初めてだ」
ペガパンクは検査結果をアルトに差し出した。その数値は隣に書かれた標準の桁をゆうに超えている。
「お前は一般の人間じゃあ、拾えない範囲の音も聞き取ることができるし、発することもできるだろう。
それはそもそも“見聞色の覇気”にあたる、“心を読む力”が異常なまでに発達しているせいだ」
『…すでに人扱いじゃないのか。でも異常ってひどすぎないかい?』
「おれのいう異常は、“異質”だ。広範囲の人間一人一人の感情を読み取れる奴なんて人間じゃねェ」
『……そんなことしないよ』
「いや、やっておけ。使わない力は次第に“衰える”からな。
それにお前がなぜそうなっているのか、調査せんとな」
『……調査ねェ。ちなみになんだけど、キミがくまクンにしていることが僕にもされているということ、という理解でいいのかな?』
診察台に腰かけ尋ねるアルト。
「まぁ、それと同じとはいわねェな。お前のはしいて言えば強化だろうからな。
だが、それにしてもお前の場合……完成度がいささか高すぎる」
ペガパンクは、眉間にしわを寄せながら言った。
『……?』
「人間の中身に手を加えるなんざ、簡単なことじゃねェ。
それになお前は確かに触られているはずなのに、“人間”そのものだ。しかも、お前“自身”が実感できない程に。
技術だけ見たら超一級品だ。おれの理論にかからない部分もいくつかある。
巨大化を求めず、究極の兵士を作り出そうとすれば、最終的にお前みたいな存在が望まれるだろう」
『……500年先の技術を持つキミがわからない技術?? そんなものがあるのかい』
「600年先の技術はねェ」
『……なるほど。でも僕は“今”ここにいる。600年後というのはないんじゃない?』
「出所に少し心当たりはあるが……話してもわかるまい」
『…そうか。ならいいよ。キミの時間を無駄にするなと言われているし。
ところで、今までのこと上に報告するの?』
「それが義務だ。だが……」
『ん?』
「お前はそれが嫌なんだろう?」
アルトは、肩を落とす。 ペガパンクの察しの良さに感服しながら、首を縦に振る。
『……そうだね。その報告はいい方向に向くとは思えない』
「フン。正直だな。そんなに五老星は嫌いか?」
『キライだね。近づくのもイヤだ』
「フン、よく少将になれたもんだ。では、こうしよう」
『?』
コーヒーに口をつけたペガパンクは腰かけた椅子の上で、足を組む。
「定期的におれの実験に付き合え。そうすれば今回の結果に関しては伏せてやる」
『! それ、いいのかい?』
「まぁ、五老星には、耳のことくらいで構わなねェだろう。
どうせ“記憶”を戻すことはできなかったんだ。あいつらにとっては収穫はねェ。
だが、おれとしてはいくつか試したいことがあってな」
『……僕にその実験体になれ…と?』
「ああ。ついでに“治療”もしてやるよ」
『治療?』
思わぬ単語に首をひねる。
『僕、どこも悪くはないよ』
「今はな…このままだと近いうちにお前は死ぬ」
『へ…?』
ペガパンクの言葉にアルトは唖然とする。
ペガパンクは予想の範疇だった反応には気にも止めず、自分の頭を人さし指の腹で軽くコンコン叩く。
「近い将来、お前は脳の働きが大きく落ちる可能性がある」
『……!!』
「お前は“その異常なまでに心を読む力”で得た言葉を、短期間で処理することができるようになっている。
もちろんそれは人間なら誰しもやっていることだが、お前のは異常だ。
それを補うために以前のお前は何かしらの治療を受けていたと思うが、
今は“見聞色の覇気を抑えること”と、“過剰なまでの糖分摂取”で補っている状態だ。
もちろん、普通の人間にとってはバランスはいいとは言えんがな」
『ヘェ…僕がおかし食べてるのはそのせいってこと?
脳の動きが落ちると何が起こるんだい?』
「今までのような超人的な動きはできなくなる。
いや歩くことも困難になるかもしれん。そして、脳の機能が止まり、死を迎える」
『……。それは…いつ?』
「兆候はまだない。おれが調べたからわかったことだ。
だが、それは確実に来るといえる。それがお前の“寿命”だ」
『“寿命”か……。ねェ、ペガパンククン。キミは僕の“存在の理由”はなんだと考える?』
「そうだな。お前が“何か”をするために用意されたと存在であることは仮定できる。
だからその“何か”が終わるまでもつように改造がされているだろう。
もちろん、その“何か”が終われば、後はどうなってもいい前提でな」
『……』
「で、乗るのか? 俺ならお前の“寿命”を先延ばしにしてやれるぞ」
『……クザンクンにも伏せていてくれるなら』
「クザンに? なんでだ??」
『下手な心配をかけたくないからね』
―――――
――――――――
「「……」」
『という話をされたことがある』
アルトは静かに言った。アルトのこの落ち着きがなければ、この場はもっと混乱していたかもしれない。
しかし、ドレークは怒鳴った。
「なぜ、そんな大事なことを青キジ含め、誰にも言わなかったんだ!!」
『…僕自身が実感がなさすぎたんだ。彼のいうことを信じていなかった訳ではないけど、素直に信じていい話かも判断できなかった。
しかもこんな話されたら、さすがにみんな困るだろう?
それくらいはわかっているつもりだ』
アルトは目を逸らした。
ロールはそんなアルトを見て歯をくいしばる。
「(それでずっと胸に秘めていたと……?)」
確かに、にわかに信じられる話ではなかった。アルトはどこからどう見ても人間であり、命の危機が迫っていることすら信じられない。
『ペガパンククンの処方は、ほぼお菓子に含まれてたしね。みんなに気づかれる心配はなかった』
そう言うとアルトはお菓子を入れたバックがないことに気づくと、あきらめの大きなため息をついた。
「……」
『でも、だからかな。僕は記憶を思い出さないように自制してしまっていたんだ。
だけど今、思い出した記憶とも合うんだ。ペガパンククンの仮説は正しかった…と理解できる』
「じゃあ……お前は何なんだ?」
ドレークは、溢れてくる感情を抑えながら、アルトに尋ねる。
『さっき言った通り、古代の人間だよ。キミ達よりずっと昔に生まれていた。
でも目を覚ましていたのは、今の年齢分だけ…。だろう。
どうやって僕に"心読む能力"を持たせるたのかは僕もわからないな…』
紡がれる言葉から、目の前の青年の異常な経歴が明らかになり、2人は戦慄せざる負えない
「……古代の人間というのは…?」
『"空白の100年"の時代の人間ってことかな』
「!? 何ですって!!?」
『たぶん、そうだと思う。と言っても、ほとんど覚えていないけど』
「……」
「……お前は、思い出した今、手を加えられた意図を理解したのか?」
ドレークは、アルトの目をまっすぐ見て尋ねる。
アルトも正面にいるドレークに目を向け、言った。
『…ああ。理解している』
「それは何だ??」
『人の“ココロ”を癒すこと』
「…?」
「人の心を癒す、ですか?」
ロールが尋ねた。アルトは視線をロールに移す。
『そう。変な話だと思うだろうけど、僕にその力を与えた人は、本当に僕にそう願ったんだ』
「何のために…?」
『最も大切な人のココロを癒すためだ』
「大切な人とは…?」
『……“ポセイドン”。そう呼ばれた“人魚”だよ』
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