ユレルココロ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《潜入報告書VOL.12》
そういうと彼はぽつぽつと話し始めた。
「ソプラの家系は、研究者の家系だ。主に研究していたのが遺伝子や人に関わるものだったと聞いている」
「……!!?」
「少し長くなるな…」
彼はそう言うと、私にも側においてある椅子へ座るように勧めた。
私は、言葉に甘えて椅子に腰かける。
彼はそれを見届けると、アルトが居るすぐそばに置いてあった椅子に腰をかけた。
「とりあえず昔の話からだ。おれはアンタと同じようにCPの任務でここに来ていた」
彼はアルトの頭をやさしくなでると、言葉を続ける。
「おれもアンタと同じ任務で“古代兵器”について調べていた。
といっても、あるかどうかもわからないまったく未知な状態だったからな、
その時のおれはCPを左遷されたと思っていたから少しヤケになっていた……」
彼は、私と同じように“古代兵器”の手掛かりをさぐるため、
研究者の見習いという形でこの国へ潜入していたらしい。
さらに話の内容から察すると、私が与えられた任務前の調査をしていたようだ。
私はあると言われた上での調査だったが、彼はその前身、
“あるかもわからない”ものを探していた。それが苦難だったのは火を見るより明らかだろう。
それに彼のいう左遷されたという気持ちもわかる。一部の噂ではあるが、
そういう先遣隊に当てられるのは、任務失敗者などが多く、左遷先だとも言われている事実もあったからだ。
「おれが潜入した頃は、研究都市セレンへ移籍する研究者も多くて、
この国で研究を進めているものは少なくなっていた。
腐りかけつつも、おれは状況の打開を狙って調査をしていた。そんなおれに、ある日声をかけてきた奴がいた」
―――――――ねェ、キミは僕と同じ歳くらいだよね?
「それが、本物のソプラ?」
彼は頷く。
「フィールドワークと言いつつ、その土地を調べていたおれに、そいつはおれを見つけてそう声をかけてきたんだ。
その時のおれは、15歳。ソプラよりふたつ上だった。
もちろん、研究者は決して少なくはなかったが、おれらくらいの歳で“研究者”として活動している奴ほとんどいなかったからな……珍しかったんだろう」
本物のソプラは色が白く、髪も真っ白。
その上瞳もグレーで、白衣まで来ていたから本当に真っ白な人だったそうだ。
そしてそのソプラは警戒心をも持たないで、気さくに彼に話しかけてきたそうだ。
――――――――よかったら、僕の研究室に来ないかい? 同じくらいの歳の人がいた方が楽しそうだから
「変な奴だと思ったが、現地民が側にいれば何かと動きやすいとも思った。
警戒心もなかったこともちょうどいいと思ったしな。だから、おれはそいつの研究室に入ったんだ」
「……」
「そしたら驚いたよ。ソプラは凄まじい程に“天才”だった。
あいつは“音”の研究をしていたが、それ以外にも通じている奴でもあった。
あいつの意見を求める奴はたくさん居た」
でも……と彼は言葉を切った。
「ソプラは、身体が弱かった。心臓に持病を抱えていたんだ。
あいつは遺伝なのだと言っていた」
「……」
「おれは、ソプラの研究を手伝い、一方でソプラ自身を看病しながら過ごした。不思議な感じだったよ。
利用しようとしていただけなのに、いつの間にかおれは、あいつを友のように感じはじめていた」
「!」
「そうして半年が過ぎたときに、ソプラは立てない程に衰弱してしまった。
おれはソプラの看病と、ソプラの代わりに他の奴らへの文を送りなおしたりもした。
あの時ほど論文や資料を読み込んだことはなかった。あいつはそんなおれをみて、
僕はいなくても大丈夫そうだねってとか言ったんだ。その時は、馬鹿野郎って怒鳴ったが……。
この頃からすでにおれはあいつの身代わりに成りかけていたんだな」
「……」
「そんな生活を送っていたある日、ソプラの姉という女が来た。
ソプラと同じ白い髪にグレーの瞳をもった女だった。彼女は人体に関連する研究をしていた」
その女性の名はエアと言うそうだ。そしてソプラと同様に身体は弱い人だったらしい。
「最初におれが出迎えたとき、かなり驚いていた。
軽い発作を起こしかけたみたいだったから慌てて家に入れたのを覚えている。
その日はソプラの体調も比較的よかったから、ソプラの部屋でソプラを座らせて、姉のエアと話をさせていた。」
エアはソプラを相当心配していたらしい。ソプラが彼の存在を姉に語り、安心させようとしていたそうだ。
その後、定期的ではあるが、エアが家に顔を出すようになっていた。
ソプラとエアが2人で部屋にこもって話をすることもあれば、3人でごはんを囲むこともあった。
「でも、それも長くは続かなかった」
「?」
「ソプラが意識を失うことが増えてきたんだ」
「!」
「弱っていた。医者を呼ぶことをソプラは嫌がったことで最後まで呼べなかったから、毎日冷や冷やした。
そしてあいつは亡くなる前日に、急に目を覚まして、おれに言ったんだ」
――――――――僕が死んだら、姉さんのところに行ってくれないか? 姉さんにはキミの力がいるんだ
「おれは、ソプラを安心させるために承諾するしかなかった。
そして次の日、ソプラは亡くなった。エアはおれの知らせを聞いて、急いで現れた。
そして泣いた。たくさん泣いていた。
そんなエアを支えてようとしても、ダメだった。発作を起こしながらも悲しみが止まなかった。
このままでは彼女が衰弱してしまう。おれはどうしていいかわからなかった。
だから、おれの能力を使うことにした」
「さっき教えてれた“レイヴンの能力”を……そのエアという人に使ったの?」
「そうだ。彼女を救う方法がおれにはそれしかわからなかった。
だからおれは、“能力”でエアの記憶を隠し、彼女におれをソプラだと思わせた」
―――――あれ、ソプラ?
――――――姉さん、泣かないで。僕はここにいるよ
―――――じゃあ、この人は……
――――――僕の友達だよ。泣いてくれてありがとう
「キミは……」
「そう、おれはこの世界では死んだことになってる。生きているのはソプラだ」
「そんな……」
「別によかった。おれなんて生きていても意味なんてなかったからな」
彼は気にしてないというかのように言葉を紡ぐ、さらに話を続けた。
「その後は彼女の家で暮らすことをおれは提案し、
ソプラの資料を持ち込んで一緒に暮らし始めた。それがこの家だった」
「じゃあ、ここはそのエアさんの家」
「そう、そしてここでアルトと出会ったんだ」
.
そういうと彼はぽつぽつと話し始めた。
「ソプラの家系は、研究者の家系だ。主に研究していたのが遺伝子や人に関わるものだったと聞いている」
「……!!?」
「少し長くなるな…」
彼はそう言うと、私にも側においてある椅子へ座るように勧めた。
私は、言葉に甘えて椅子に腰かける。
彼はそれを見届けると、アルトが居るすぐそばに置いてあった椅子に腰をかけた。
「とりあえず昔の話からだ。おれはアンタと同じようにCPの任務でここに来ていた」
彼はアルトの頭をやさしくなでると、言葉を続ける。
「おれもアンタと同じ任務で“古代兵器”について調べていた。
といっても、あるかどうかもわからないまったく未知な状態だったからな、
その時のおれはCPを左遷されたと思っていたから少しヤケになっていた……」
彼は、私と同じように“古代兵器”の手掛かりをさぐるため、
研究者の見習いという形でこの国へ潜入していたらしい。
さらに話の内容から察すると、私が与えられた任務前の調査をしていたようだ。
私はあると言われた上での調査だったが、彼はその前身、
“あるかもわからない”ものを探していた。それが苦難だったのは火を見るより明らかだろう。
それに彼のいう左遷されたという気持ちもわかる。一部の噂ではあるが、
そういう先遣隊に当てられるのは、任務失敗者などが多く、左遷先だとも言われている事実もあったからだ。
「おれが潜入した頃は、研究都市セレンへ移籍する研究者も多くて、
この国で研究を進めているものは少なくなっていた。
腐りかけつつも、おれは状況の打開を狙って調査をしていた。そんなおれに、ある日声をかけてきた奴がいた」
―――――――ねェ、キミは僕と同じ歳くらいだよね?
「それが、本物のソプラ?」
彼は頷く。
「フィールドワークと言いつつ、その土地を調べていたおれに、そいつはおれを見つけてそう声をかけてきたんだ。
その時のおれは、15歳。ソプラよりふたつ上だった。
もちろん、研究者は決して少なくはなかったが、おれらくらいの歳で“研究者”として活動している奴ほとんどいなかったからな……珍しかったんだろう」
本物のソプラは色が白く、髪も真っ白。
その上瞳もグレーで、白衣まで来ていたから本当に真っ白な人だったそうだ。
そしてそのソプラは警戒心をも持たないで、気さくに彼に話しかけてきたそうだ。
――――――――よかったら、僕の研究室に来ないかい? 同じくらいの歳の人がいた方が楽しそうだから
「変な奴だと思ったが、現地民が側にいれば何かと動きやすいとも思った。
警戒心もなかったこともちょうどいいと思ったしな。だから、おれはそいつの研究室に入ったんだ」
「……」
「そしたら驚いたよ。ソプラは凄まじい程に“天才”だった。
あいつは“音”の研究をしていたが、それ以外にも通じている奴でもあった。
あいつの意見を求める奴はたくさん居た」
でも……と彼は言葉を切った。
「ソプラは、身体が弱かった。心臓に持病を抱えていたんだ。
あいつは遺伝なのだと言っていた」
「……」
「おれは、ソプラの研究を手伝い、一方でソプラ自身を看病しながら過ごした。不思議な感じだったよ。
利用しようとしていただけなのに、いつの間にかおれは、あいつを友のように感じはじめていた」
「!」
「そうして半年が過ぎたときに、ソプラは立てない程に衰弱してしまった。
おれはソプラの看病と、ソプラの代わりに他の奴らへの文を送りなおしたりもした。
あの時ほど論文や資料を読み込んだことはなかった。あいつはそんなおれをみて、
僕はいなくても大丈夫そうだねってとか言ったんだ。その時は、馬鹿野郎って怒鳴ったが……。
この頃からすでにおれはあいつの身代わりに成りかけていたんだな」
「……」
「そんな生活を送っていたある日、ソプラの姉という女が来た。
ソプラと同じ白い髪にグレーの瞳をもった女だった。彼女は人体に関連する研究をしていた」
その女性の名はエアと言うそうだ。そしてソプラと同様に身体は弱い人だったらしい。
「最初におれが出迎えたとき、かなり驚いていた。
軽い発作を起こしかけたみたいだったから慌てて家に入れたのを覚えている。
その日はソプラの体調も比較的よかったから、ソプラの部屋でソプラを座らせて、姉のエアと話をさせていた。」
エアはソプラを相当心配していたらしい。ソプラが彼の存在を姉に語り、安心させようとしていたそうだ。
その後、定期的ではあるが、エアが家に顔を出すようになっていた。
ソプラとエアが2人で部屋にこもって話をすることもあれば、3人でごはんを囲むこともあった。
「でも、それも長くは続かなかった」
「?」
「ソプラが意識を失うことが増えてきたんだ」
「!」
「弱っていた。医者を呼ぶことをソプラは嫌がったことで最後まで呼べなかったから、毎日冷や冷やした。
そしてあいつは亡くなる前日に、急に目を覚まして、おれに言ったんだ」
――――――――僕が死んだら、姉さんのところに行ってくれないか? 姉さんにはキミの力がいるんだ
「おれは、ソプラを安心させるために承諾するしかなかった。
そして次の日、ソプラは亡くなった。エアはおれの知らせを聞いて、急いで現れた。
そして泣いた。たくさん泣いていた。
そんなエアを支えてようとしても、ダメだった。発作を起こしながらも悲しみが止まなかった。
このままでは彼女が衰弱してしまう。おれはどうしていいかわからなかった。
だから、おれの能力を使うことにした」
「さっき教えてれた“レイヴンの能力”を……そのエアという人に使ったの?」
「そうだ。彼女を救う方法がおれにはそれしかわからなかった。
だからおれは、“能力”でエアの記憶を隠し、彼女におれをソプラだと思わせた」
―――――あれ、ソプラ?
――――――姉さん、泣かないで。僕はここにいるよ
―――――じゃあ、この人は……
――――――僕の友達だよ。泣いてくれてありがとう
「キミは……」
「そう、おれはこの世界では死んだことになってる。生きているのはソプラだ」
「そんな……」
「別によかった。おれなんて生きていても意味なんてなかったからな」
彼は気にしてないというかのように言葉を紡ぐ、さらに話を続けた。
「その後は彼女の家で暮らすことをおれは提案し、
ソプラの資料を持ち込んで一緒に暮らし始めた。それがこの家だった」
「じゃあ、ここはそのエアさんの家」
「そう、そしてここでアルトと出会ったんだ」
.