ユレルココロ
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《潜入報告書VOL.11》
「……どういうこと……?」
「おれは、“ソプラ”じゃない。ということだ」
目の前の黒髪に緑の瞳をもつ青年は、平然と私に目を向けそう言った。
「そんなはずないわ。だってあなたの顔は、授賞式の新聞で見たもの」
「あれはおれだ。“ソプラ”はあの時には、もういなかったから」
「いない……って」
「“死んでいたんだ”。クソみたいな名誉を得る、1年前に」
「!!」
「ソプラは、天才だった。だが、身体が弱いやつだった」
「それが本当かなんて私にはわからないわ」
「……そうか、だが、初めて会ったお前は、俺を見抜いていたぞ」
「えっ?」
急に話をそらされた私は、首をひねった。
彼はそう言うと、私に近づいている。警戒はしているのだが、なんだか違和感を感じる。
その違和感の正体に気づいたのは、
彼が腕を伸ばせば私に触れられるくらいの距離で止まった時だった。
「足音を消している……!? その技術は……」
CPの……ものだった。紛れもなく。
幼い頃に辛い訓練で身につけた技だ。そして同時に、忘れていた記憶が甦ってきた。
「あの時も、そうやって私に近づいて来ていた……?」
あの時……私と彼が初めて出会った日。
時計塔の上でアルトの詩を聞いていた私に何気もなく近づいて来た彼。
――――なぜCPの私に気付けなかったのか、不思議に思っていたあの瞬間を。
呟いた私が顔を上げると、彼は表情を無くしたような顔をしていた。その顔も見たことがあった。
私はどんどんもやがかかっている記憶がクリアになっているのを感じる。
そう、初めて会ったあの時、
アルトの隣にいた私は、彼がその技術を使って近づいてきたことを思い出した。
「そうだ。そして、アンタはこう言ったんだ。“キミは何者なの?”と。“なぜその歩き方ができるのか”、と」
私はその状況を思い出す。
私は彼の存在に気づき、立ち上がって、最大の警戒を彼に向けたのだ。
そんな私に、彼は手を伸ばしてきた。私はとっさに、その腕を取り彼をねじ伏せようとした。
しかし逆に腕をねじられ、私の方が伏せられそうになったのだ。
「そして、キミは……私の頭に手を置いた………」
私ははっきりと思い出した。しかし、“同じ状況で違う記憶”がある。
彼は私の混乱をみて、こう言った。
「“見つけた”か…」
「どういうこと……私はこのことを“今の今まで忘れていた”というの?
あの、もうひとつの出会いの記憶は何?」
「あれは、アンタの“記憶”をおれが“隠した”後のもの。
アンタにとってはあれも初めての出会いになる」
「キミが“隠した”……? そんなの人間技じゃ……」
「それが、“おれのもうひとつの能力だった”」
「能力って……まさか、“レイヴン”の?」
彼は頷いた。
「“レイヴン”には、飛行能力の他に相手の頭に触れることで、
一部の記憶を“隠すことができる”能力がある。レイヴンの固有の能力だ」
「!!」
「まぁ、この能力に関しては、生きてる奴は誰も知らないが、な」
私はその言葉に、自然と警戒態勢に入っていた……が、すぐに解いた。
「? なぜ警戒を解いた。アンタ、死ぬぞ」
「まだ聞いていないから」
彼は無表情が歪み、少し不思議そうな顔になった。
「何を、だ?」
「なぜ私を生かしたのか。同業者である私はキミにとって邪魔なはず。
なのにキミは私を生かし、今能力の秘密も明かしてくれた。
それは、たぶん私の何かが、キミの何かの事情に必要なんだ、そう私は思うの」
「……」
彼は私を見下すような目で見ていたけど、私は冷静だった。
何かを悟ったかのような気分だった。
「……俺だけじゃ、どうすることもできなくなったんだ」
「?」
「……託されたのに」
「!? 泣いて、いるの……?」
彼の緑の瞳から静かに流れる涙があった。
彼は、自分が泣いているなんて思ってもみなかったのか、驚いた顔をしていた。
もう彼は無表情ではなかった。
.
「……どういうこと……?」
「おれは、“ソプラ”じゃない。ということだ」
目の前の黒髪に緑の瞳をもつ青年は、平然と私に目を向けそう言った。
「そんなはずないわ。だってあなたの顔は、授賞式の新聞で見たもの」
「あれはおれだ。“ソプラ”はあの時には、もういなかったから」
「いない……って」
「“死んでいたんだ”。クソみたいな名誉を得る、1年前に」
「!!」
「ソプラは、天才だった。だが、身体が弱いやつだった」
「それが本当かなんて私にはわからないわ」
「……そうか、だが、初めて会ったお前は、俺を見抜いていたぞ」
「えっ?」
急に話をそらされた私は、首をひねった。
彼はそう言うと、私に近づいている。警戒はしているのだが、なんだか違和感を感じる。
その違和感の正体に気づいたのは、
彼が腕を伸ばせば私に触れられるくらいの距離で止まった時だった。
「足音を消している……!? その技術は……」
CPの……ものだった。紛れもなく。
幼い頃に辛い訓練で身につけた技だ。そして同時に、忘れていた記憶が甦ってきた。
「あの時も、そうやって私に近づいて来ていた……?」
あの時……私と彼が初めて出会った日。
時計塔の上でアルトの詩を聞いていた私に何気もなく近づいて来た彼。
――――なぜCPの私に気付けなかったのか、不思議に思っていたあの瞬間を。
呟いた私が顔を上げると、彼は表情を無くしたような顔をしていた。その顔も見たことがあった。
私はどんどんもやがかかっている記憶がクリアになっているのを感じる。
そう、初めて会ったあの時、
アルトの隣にいた私は、彼がその技術を使って近づいてきたことを思い出した。
「そうだ。そして、アンタはこう言ったんだ。“キミは何者なの?”と。“なぜその歩き方ができるのか”、と」
私はその状況を思い出す。
私は彼の存在に気づき、立ち上がって、最大の警戒を彼に向けたのだ。
そんな私に、彼は手を伸ばしてきた。私はとっさに、その腕を取り彼をねじ伏せようとした。
しかし逆に腕をねじられ、私の方が伏せられそうになったのだ。
「そして、キミは……私の頭に手を置いた………」
私ははっきりと思い出した。しかし、“同じ状況で違う記憶”がある。
彼は私の混乱をみて、こう言った。
「“見つけた”か…」
「どういうこと……私はこのことを“今の今まで忘れていた”というの?
あの、もうひとつの出会いの記憶は何?」
「あれは、アンタの“記憶”をおれが“隠した”後のもの。
アンタにとってはあれも初めての出会いになる」
「キミが“隠した”……? そんなの人間技じゃ……」
「それが、“おれのもうひとつの能力だった”」
「能力って……まさか、“レイヴン”の?」
彼は頷いた。
「“レイヴン”には、飛行能力の他に相手の頭に触れることで、
一部の記憶を“隠すことができる”能力がある。レイヴンの固有の能力だ」
「!!」
「まぁ、この能力に関しては、生きてる奴は誰も知らないが、な」
私はその言葉に、自然と警戒態勢に入っていた……が、すぐに解いた。
「? なぜ警戒を解いた。アンタ、死ぬぞ」
「まだ聞いていないから」
彼は無表情が歪み、少し不思議そうな顔になった。
「何を、だ?」
「なぜ私を生かしたのか。同業者である私はキミにとって邪魔なはず。
なのにキミは私を生かし、今能力の秘密も明かしてくれた。
それは、たぶん私の何かが、キミの何かの事情に必要なんだ、そう私は思うの」
「……」
彼は私を見下すような目で見ていたけど、私は冷静だった。
何かを悟ったかのような気分だった。
「……俺だけじゃ、どうすることもできなくなったんだ」
「?」
「……託されたのに」
「!? 泣いて、いるの……?」
彼の緑の瞳から静かに流れる涙があった。
彼は、自分が泣いているなんて思ってもみなかったのか、驚いた顔をしていた。
もう彼は無表情ではなかった。
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