ユレルココロ
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―――――海軍本部 ペガパンク診察室
「ノティ、お前理解をしているのか?」
『え?』
検査のために脱いでいたシャツから顔を出したところで声を掛けられた アルトは、
質問を再度尋ねるために声を出した。
ここはペガパンクの研究所の一角。この日はCPから戻って来て数日も立っていない日で、
アルトは五老星の命により、ペガパンクの下で健康診断という名の身体検査を受けていた。
「だから、お前という“存在”をだ」
ベガパンクは同じ言葉を繰り返す。しかしアルトは首を傾げた。
『……。ペガパンククン、初めて会った時もそんなことを言っていたよね?』
「チビのときはともかく、今のお前なら、自分自身に何かを感じることもあるだろう?
で、どうなんだ??」
ベガパンクは探るような目つきでアルトを見た。
その視線に居心地を悪く感じたアルト頭をかく。
『意味がわからないよ、さすがに……』
「フン。自覚はねェ、か」
『?』
ペガパンクは鼻を鳴らすと、自分の椅子にドカッと勢い良く座った。
「……面倒だから結論から言うぞ。お前の記憶は外部から探ることは“不可能”だ。
記憶の一端すら見えん」
そう、今日はアルトの記憶を戻せる可能性をさぐることを念頭においた検査だった。
五老星は世界的科学者に依頼するほどアルトの記憶を戻したいらしい。
『……それが?』
「つまりだ。お前の脳に何らかの処理が施されたために、
“以前の記憶が隠された”か又は、“消された”可能性があるってことだ」
『……へ?』
唐突な話に、アルトは、目を丸くする。
「おれは前者とみているが、それだと…」
『ちょっと待ってくれ』
「?」
『僕はキミほど頭が良くない。もう少しわかりやすく説明してくれないかな』
「……フン…記憶に関することはこれ以上簡単に言えん」
『記憶については…? じゃあ、何についてなら言えるんだい?』
「そうだな。お前、身体能力についてなら改めて言えるが?」
『身体能力……?』
「青キジに話したから、お前は聞いてないかもしれないが、
お前は相変わらず耳がバカにいい」
『バカって……』
「バカはバカだ。聴覚検査でこんな数字を出す奴はお前くらいだ」
ペガバンクは検査結果をアルトに差し出した。
その数値は、隣に書かれた標準の桁をゆうに超えている。
「チビのときよりさらに向上しているぞ。CPに行ったおかげか?」
『まぁ……そうだろうね』
「この数値なら、一般の人間じゃあ拾えない範囲の音も聞き取ることができるし、
発することもできると推測できる。異常なまでの発達だ」
『……“見聞色の覇気”は“覇王色の覇気”とは違い、
適性があれば伸びるものだと聞いている。
それがたまたま僕に当てはまっただけじゃないのかい?』
「おれのいう異常は、“異質”だ。
“見聞色の覇気”だけで広範囲の人間一人一人の感情を
読み取れる奴なんて人間じゃねェ」
アルトは、首を横に振る。
『……そんなことしないよ』
「いや、やっておけ。使わない力は次第に“衰える”からな」
『……』
アルトは静かにため息をついた。
「まぁ、お前の場合……完成度がいささか高すぎるが……」
ペガバンクがボソッっと呟く。その声をアルトは聞き取れなかった。
『……えっ? 何?』
「何でもねェよ。」
『……そうか。ならいいよ。キミの時間を無駄にするなと言われているし』
「ふむ」
コーヒーに口をつけたペガパンクは腰かけた椅子の上で、足を組む。
アルトは、身なりを整えると立ち上がった。
『じゃあ、僕はこれで……』
「おい、ノティ。定期的におれの実験に付き合え」
『え?』
きびを返そうとしていた矢先に、ペガバンクから妙な提案を持ち掛けられたアルトは足を止める。
「お前の“記憶”を戻すことは現時点ではできないが、おれとしてはいくつか試したいことがあってな」
『……僕にその実験体になれ……と?』
「ああ。ついでに“治療”もしてやるよ」
『治療?』
思わぬ単語に首をひねる。
『僕、どこも悪くはないよ。それとも今の身体検査で何か出たの?』
「今は何も……だ。だが、このままだと近いうちにお前は死ぬ」
『へ……?』
ペガパンクの言葉にアルトは唖然とする。
ペガパンクは予想の範疇だった反応には気にも止めず、自分の頭を人さし指の腹で軽くコンコン叩く。
「近い将来、お前は脳の働きが大きく落ちる可能性がある」
『……!!』
「お前はその“耳の良さ”を活かして膨大な情報を取り入れ、
その得た言葉や状況を、短期間で処理することができるようになっている。
その行為は人間ももちろん行っているが、お前のは人間の限界ってやつをゆうに超えている。
それを補うために以前のお前は何かしらの治療を受けていたと思うが、
今は“耳”……“見聞色の覇気を抑えること”、そして“過剰なまでの糖分摂取”で補っている状態だ。
もちろん、普通の人間にとってはバランスはいいとは言えんが、お前の場合それでバランスが保てている」
『なるほど。僕はキミのお墨付きでお菓子を食べているのか……知らなかったよ。
で、脳の動きが落ちると何が起こるんだい?』
「今までのような超人的な動きはできなくなる。
いや歩くことも困難になるかもしれん。そして、脳の機能が止まり、死を迎えるだろう」
『……。 ちなみにそれはいつ頃?』
アルトは表情には出ないものの、微かに動揺がみえる声で尋ねた。
「兆候はまだない。おれが調べたからわかったことだ。
だが、それは確実に来るといえるだろうよ。そしてそれがお前の“寿命”だ」
『“寿命”か……。なんか不思議な気分だな』
「で、乗るのか? 俺ならお前の“寿命”を先延ばしにしてやれるぞ」
『……クザンクンにも伏せていてくれるかい?』
「クザンに? なんでだ??」
『僕はもう大人だし、彼に下手な心配をかけたくないからね』
「フン、いいだろう。連絡は戦桃丸から寄越すからな」
『了解』
アルトはそういうとドアに向かう。
それ以来何度かペガパンクの下へ訪れた。
このことは誰も。
誰も知らないアルトの事実の一つである。
・
「ノティ、お前理解をしているのか?」
『え?』
検査のために脱いでいたシャツから顔を出したところで声を掛けられた アルトは、
質問を再度尋ねるために声を出した。
ここはペガパンクの研究所の一角。この日はCPから戻って来て数日も立っていない日で、
アルトは五老星の命により、ペガパンクの下で健康診断という名の身体検査を受けていた。
「だから、お前という“存在”をだ」
ベガパンクは同じ言葉を繰り返す。しかしアルトは首を傾げた。
『……。ペガパンククン、初めて会った時もそんなことを言っていたよね?』
「チビのときはともかく、今のお前なら、自分自身に何かを感じることもあるだろう?
で、どうなんだ??」
ベガパンクは探るような目つきでアルトを見た。
その視線に居心地を悪く感じたアルト頭をかく。
『意味がわからないよ、さすがに……』
「フン。自覚はねェ、か」
『?』
ペガパンクは鼻を鳴らすと、自分の椅子にドカッと勢い良く座った。
「……面倒だから結論から言うぞ。お前の記憶は外部から探ることは“不可能”だ。
記憶の一端すら見えん」
そう、今日はアルトの記憶を戻せる可能性をさぐることを念頭においた検査だった。
五老星は世界的科学者に依頼するほどアルトの記憶を戻したいらしい。
『……それが?』
「つまりだ。お前の脳に何らかの処理が施されたために、
“以前の記憶が隠された”か又は、“消された”可能性があるってことだ」
『……へ?』
唐突な話に、アルトは、目を丸くする。
「おれは前者とみているが、それだと…」
『ちょっと待ってくれ』
「?」
『僕はキミほど頭が良くない。もう少しわかりやすく説明してくれないかな』
「……フン…記憶に関することはこれ以上簡単に言えん」
『記憶については…? じゃあ、何についてなら言えるんだい?』
「そうだな。お前、身体能力についてなら改めて言えるが?」
『身体能力……?』
「青キジに話したから、お前は聞いてないかもしれないが、
お前は相変わらず耳がバカにいい」
『バカって……』
「バカはバカだ。聴覚検査でこんな数字を出す奴はお前くらいだ」
ペガバンクは検査結果をアルトに差し出した。
その数値は、隣に書かれた標準の桁をゆうに超えている。
「チビのときよりさらに向上しているぞ。CPに行ったおかげか?」
『まぁ……そうだろうね』
「この数値なら、一般の人間じゃあ拾えない範囲の音も聞き取ることができるし、
発することもできると推測できる。異常なまでの発達だ」
『……“見聞色の覇気”は“覇王色の覇気”とは違い、
適性があれば伸びるものだと聞いている。
それがたまたま僕に当てはまっただけじゃないのかい?』
「おれのいう異常は、“異質”だ。
“見聞色の覇気”だけで広範囲の人間一人一人の感情を
読み取れる奴なんて人間じゃねェ」
アルトは、首を横に振る。
『……そんなことしないよ』
「いや、やっておけ。使わない力は次第に“衰える”からな」
『……』
アルトは静かにため息をついた。
「まぁ、お前の場合……完成度がいささか高すぎるが……」
ペガバンクがボソッっと呟く。その声をアルトは聞き取れなかった。
『……えっ? 何?』
「何でもねェよ。」
『……そうか。ならいいよ。キミの時間を無駄にするなと言われているし』
「ふむ」
コーヒーに口をつけたペガパンクは腰かけた椅子の上で、足を組む。
アルトは、身なりを整えると立ち上がった。
『じゃあ、僕はこれで……』
「おい、ノティ。定期的におれの実験に付き合え」
『え?』
きびを返そうとしていた矢先に、ペガバンクから妙な提案を持ち掛けられたアルトは足を止める。
「お前の“記憶”を戻すことは現時点ではできないが、おれとしてはいくつか試したいことがあってな」
『……僕にその実験体になれ……と?』
「ああ。ついでに“治療”もしてやるよ」
『治療?』
思わぬ単語に首をひねる。
『僕、どこも悪くはないよ。それとも今の身体検査で何か出たの?』
「今は何も……だ。だが、このままだと近いうちにお前は死ぬ」
『へ……?』
ペガパンクの言葉にアルトは唖然とする。
ペガパンクは予想の範疇だった反応には気にも止めず、自分の頭を人さし指の腹で軽くコンコン叩く。
「近い将来、お前は脳の働きが大きく落ちる可能性がある」
『……!!』
「お前はその“耳の良さ”を活かして膨大な情報を取り入れ、
その得た言葉や状況を、短期間で処理することができるようになっている。
その行為は人間ももちろん行っているが、お前のは人間の限界ってやつをゆうに超えている。
それを補うために以前のお前は何かしらの治療を受けていたと思うが、
今は“耳”……“見聞色の覇気を抑えること”、そして“過剰なまでの糖分摂取”で補っている状態だ。
もちろん、普通の人間にとってはバランスはいいとは言えんが、お前の場合それでバランスが保てている」
『なるほど。僕はキミのお墨付きでお菓子を食べているのか……知らなかったよ。
で、脳の動きが落ちると何が起こるんだい?』
「今までのような超人的な動きはできなくなる。
いや歩くことも困難になるかもしれん。そして、脳の機能が止まり、死を迎えるだろう」
『……。 ちなみにそれはいつ頃?』
アルトは表情には出ないものの、微かに動揺がみえる声で尋ねた。
「兆候はまだない。おれが調べたからわかったことだ。
だが、それは確実に来るといえるだろうよ。そしてそれがお前の“寿命”だ」
『“寿命”か……。なんか不思議な気分だな』
「で、乗るのか? 俺ならお前の“寿命”を先延ばしにしてやれるぞ」
『……クザンクンにも伏せていてくれるかい?』
「クザンに? なんでだ??」
『僕はもう大人だし、彼に下手な心配をかけたくないからね』
「フン、いいだろう。連絡は戦桃丸から寄越すからな」
『了解』
アルトはそういうとドアに向かう。
それ以来何度かペガパンクの下へ訪れた。
このことは誰も。
誰も知らないアルトの事実の一つである。
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