「ﾌｯﾌｯﾌｯﾌｯ…！！！たまらねェ、ﾌｯﾌｯﾌｯ！！！」

「何がおかしい！ドフラミンゴ！！！」

オーズJr.からの攻撃で湾内に降り立ったドフラミンゴは相変わらず笑っていた。


「ﾌｯﾌｯﾌｯﾌｯ！！何がおかしいかって！？
この！！時代の真ん中にいる感じさ……ﾌｯﾌｯﾌｯ！！」

「！！？」

「今、この場所こそ“中立”だ！！13番隊隊長、水牛アトモス！！」

「……！！」

ドフラミンゴが指を動かす。アトモスはハッとした。


「しまった……！！お前らおれから離れろ！！！―――うわァ！！！」

「「「！？」」」

そう言ったアトモスは突然…ズバッ！！っと仲間に剣を振るった。


「ぐわァァ！！！」

「ぎゃあ」

「やめろ、ドフラミンゴォ！！！」

ドフラミンゴに怒鳴りながらも、アトモスは次々に仲間を斬る。


「アトモス隊長！！？」

「おれに近づくな！！お前ら！！」

「ﾌｯﾌｯﾌｯﾌｯ…」

その光景を見ながらドフラミンゴはまた心底嬉しそうに笑うと、手を大きく広げた。


「海賊が悪！！？海軍が正義！！？
そんなものはいくらでも塗り替えられて来た……！！！

“平和”を知らねェ子供(ｶﾞｷ)共と“戦争”を知らねェ子供(ｶﾞｷ)共との価値観は違う！！！

頂点に立つ者が善悪を塗り替える！！！今、この場所こそが中立だ！！！！


正義が勝つって！？そりゃそうだろ…！




“勝者だけが正義だ”！！！！」








「ﾊｧ…ﾊｧ……」

戦場にいるコビーはｶﾞﾀﾞｶﾞﾀﾞと全身を震わせていた。


「……！！」

「待て、コビー！！」

突然走りだしたコビーにヘルメッポは驚きの声を上げる。コビーの耳にヘルメッポの声は届いていない。


「(ムリ！！ムリムリ！！ムリだ！！恐くて僕には何も出来ない！！あんな強い人達が、次々に倒れて行く！！僕にはムリだ！)」

戦場から逃げる二人、マリンフォードの街から脱出しようと路地を走る。まもなく裏の港への道へ出ようとしていた。


「戦場へ戻れ！！！」

「う！！！」

自分に言われた様な怒号にコビーは路地を出る一歩手前で足を止めた。
急に足を止めたせいで後ろから走って来たヘルメッポとぶつかる。後頭部の痛みをこらえながら、コビーは路地から声の方へ眼を向けた。


「ﾊｧ…ﾊｧ…み…見逃してください…死ぬ事が恐くなった……家族を思うと…足が竦むんです…！！」

どうやらコビー達と同じように戦場から逃れようと街へ来た海兵のようだ。懇願する声の先にはその海兵を厳しい目で見下ろす赤犬がいた。


「「(た……大将赤犬！！？なぜここに？？)」」

「どうか……お願いします」

「わしら海兵はのォ…背中に世界の正義を背負って海賊と戦こうとるんじゃ。その背中を敵に見せて逃げ出すような奴は海兵とは呼べんじゃろ。
―――そいつはただの屑じゃ」

「え…！？」

海兵を見下ろすその瞳に優しさはない。右手からﾎﾞｺﾎﾞｺとマグマを生み出すと、赤犬は海兵にその手を向けた。


「本当に家族を想うちょるんなら“生き恥”さらすな……！！！」

「ぎゃぁああああああああ！！！！」

「「……！！！！」」

マグマが海兵を包む。その悲鳴と惨さにコビーとヘルメッポは目を背けた。

「そっ、そんな……！！いくらなんでも仲間に手をかけるなんて」



「サカズキ大将、作戦の準備が整いました」

「そうか、いよいよじゃのォ」

赤犬は何事もなかったかのように、歩き出す。


ﾌﾟﾙﾌﾟﾙﾌﾟﾙﾌﾟﾙ………ｶﾞﾁｬ


[―――赤犬サン、聞こえる？]

赤犬が取りだした子電伝虫からアルトの声が聞こえた。


「アルトか、何じゃ」

[ターゲットを見つけたよ]

「ほう。ええタイミングじゃのォ。場所はどこじゃ」

[今、ＯＯＴＹ(ｵｰｵｰﾃｨｰﾜｲ)へ誘導している]

「わかった。今から向かうけェの、着いたら足止めしちょれ」

[了解]











「オーズの開いた道を閉ざすな！！！湾内へ進め！！！」


ドッゴォォン！！！


「「「！！！」」」

「砕氷船！！？」

湾頭に乗り込んで来た砕氷船。城壁ごと氷塊を突き破った。


「“氷の魔女”ホワイティベイだ！！！」

海賊達から歓声が上がる。


「お手のもんだよ。こんな氷塊！」

ホワイティベイは意気揚々と言った。


「湾頭2ヵ所突破されました！！」

「大きく攻め込まれます！センゴク元帥」

「問題ない」

センゴクは報告に来た海兵にそう言うと電伝虫を手に取る。


[おつるさん、作戦に移るぞ]

「頃合いだね」

センゴクの通信に周囲の敵を“洗って干した”つるが答えた。


「―――全艦全兵に通達を」




モビーデック号甲板

「………」

白ひげは戦場で、電伝虫を手にする将校を多く目に捉える。そしてセンゴクに目をやり、口角を上げた。


「グラララ。何か企みやがったな………！？智将…“仏のセンゴク”………！！！」







ﾌﾟﾙﾌﾟﾙﾌﾟﾙﾌﾟﾙ……


[全艦、全兵に連絡！]

作戦行動中のアルトの子電伝虫から声が発せられる。アルトはターゲットに目をやりながら子電伝虫を取りだした。


[目標はＴＴＯＺ(ﾃｨｰﾃｨｰｵｰｾﾞｯﾄ)、陣形を変え通常作戦3番へ移行。準備ぬかりなく進めよ]

『……3番か。これが終わったらすぐ移動だな』

作戦を頭に浮かべていたアルトの耳に子電伝虫から作戦指示の最後に言葉が付け加えられた。
――瞬間、アルトは無意識に子電伝虫を握りしめた。





[整い次第予定を早め、―――“エースの処刑を執行する”！！！！]





⇒√B(P.12へ)