渡り鳥
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「寒いですね」
「……ああ、寒いな」
しんしんと降り注ぐ、雪を見ながら二人はギュッと手を繋いでいた。
【ひとのあたたかさ】
時を少しさかのぼる。
ハートの海賊団は冬島に差し掛かっていた。冬島の春であっても海上では大雪だ。
食料面でも特に問題はなかったためローはそのまま海中を進むとクルーに言った。
しかし雪が見たいとゴネるキャスとベポ達に根負けしたローは仕方なく浮上命令を出したのだった。
「船長!ジン!!」
「一緒に遊ぼー!!」
キャスとベポが笑顔で両手を振って 呼びかけてくる。
『誘われていますよ、ロー』
「知らん」
いつもの格好にマフラーとコートをプラスして防寒対策ばっちり施したロー。マフラーに顔の半分をうずめていたため表情は伺えないが、ブスッとした態度で不機嫌なのは丸わかりだった。
「キャプテン!ほら、おれの雪だるまだよー!」
ベポは自分と同じ顔をした雪だるまを自慢気にみせる。ローはため息をつくと、2人に言った。
「勝手に遊んでろ!おれは絶対に行かねェ。今さら雪なんかで騒げるか」
「えー…じゃあ、ジンは?」
『僕は……』
「ジンはおれの話し相手だ。お前らにはやらん…!!」
『!』
ジンの言葉にかぶせるようにローは怒鳴った。ただ寒さでローの鼻が少し赤いのでイマイチ迫力に欠ける。ジンはクスッと微笑む。
「「えー!!」」
「ジン、行くなよ。船長命令だ」
『……フフ。困った船長さんですね』
「うるせェ」
ジンはシルクハットに積もる雪を払い、かぶりなおすと2人に声をかける。
『ベポさん、キャスさん、すいません。今、そちらには行けなくなりました』
「はぁ…仕方ねェな。キャプテンわがままだもんな」
「だもんね」
ボソボソと耳打ちで会話するキャスとベポ。
「聞こえてるぞ」
「「!!」」
ローの言葉に図星と言わんばかりに動きが止まる2人。ハハハ……と乾いた笑いを浮かべると、そそくさと船尾にも雪だるまだ!と駆けて行った。
『元気ですね~』
「ふん。それだけが取り得みたいなもんだ」
不機嫌そうにいうロー。ジンは肩を竦めた。
『お隣に座っても構いませんか?』
「そうしろ」
『はい、ではそうしましょう』
ジンは失礼しますとローの隣の雪を払い、腰掛ける。お尻の辺りが少しヒンヤリした。
『しかし、たまに浮上するのも悪くはありませんね』
「…おれはやっぱり海の中がいいがな」
『海賊たる由縁ですか?』
「さぁな」
『フフッ…しかし不思議ですね。海に嫌われた僕らが海の中を旅することが出来るなんて』
「おれはそれがしたくて、この船を選んだんだ」
『?』
「おれは水面に浮かぶ程度で海に触れたと満足はしねェ。同じ冷たさなら空の雪より海の冷たさの方がいい」
『……フフッ』
「笑うな!」
『失礼しました。ローに詩人の素質があるとは思わなかったもので』
「うるせェ……この海はいつかおれのもんになるというだけの話だ」
『ああ、そういう話ですか』
「信じてねェな」
『信じてなければついては来ませんよ』
「!!……手が冷えた」
ローは話題を逸らすように、フーッと自分の息を手のひらに吹きつけた。しかし暖かさは一時的なものでしかなく、すぐにまた冷たくなる。ローはその方法を早々にあきらめると、空を見上げた。
そんな投げ出されたローの手にすっとジンの手がローの手を覆うように重なる。ローは驚いてジンへ顔を向けた。
「おい…」
『息を吹きかけ続けるよりは楽に暖まると思います』
「……お前が寒いだろ」
『僕は紙ですから。紙には断熱効果があるんですよ』
「ヘェ……」
ローはジンから目をそらすとマフラーに顔をうずめる。無愛想な態度でも、マフラーの隙間から見える赤い耳がローが照れていることを教えてくれた。
ジンはそのことに触れず、静かに海を見る。しばらく静かに白い雪と濃紺の海を眺めた。
「……」
ローは自分の手のひらをそっと返し、手を繋ぐようにジンの手をギュッと手握る。ジンをそれに優しく握り返すことで応えた。
『寒いですね』
「……ああ、寒いな」
2人は繋がった手に互いのぬくもりを感じながら、そんな会話を繰り返すのだった。
fin
**********
「寒いね」「ああ、寒いね」と返すひとのあたたさ…的な詩が昔あったなぁ~なんて思って作りました。
「……ああ、寒いな」
しんしんと降り注ぐ、雪を見ながら二人はギュッと手を繋いでいた。
【ひとのあたたかさ】
時を少しさかのぼる。
ハートの海賊団は冬島に差し掛かっていた。冬島の春であっても海上では大雪だ。
食料面でも特に問題はなかったためローはそのまま海中を進むとクルーに言った。
しかし雪が見たいとゴネるキャスとベポ達に根負けしたローは仕方なく浮上命令を出したのだった。
「船長!ジン!!」
「一緒に遊ぼー!!」
キャスとベポが笑顔で両手を振って 呼びかけてくる。
『誘われていますよ、ロー』
「知らん」
いつもの格好にマフラーとコートをプラスして防寒対策ばっちり施したロー。マフラーに顔の半分をうずめていたため表情は伺えないが、ブスッとした態度で不機嫌なのは丸わかりだった。
「キャプテン!ほら、おれの雪だるまだよー!」
ベポは自分と同じ顔をした雪だるまを自慢気にみせる。ローはため息をつくと、2人に言った。
「勝手に遊んでろ!おれは絶対に行かねェ。今さら雪なんかで騒げるか」
「えー…じゃあ、ジンは?」
『僕は……』
「ジンはおれの話し相手だ。お前らにはやらん…!!」
『!』
ジンの言葉にかぶせるようにローは怒鳴った。ただ寒さでローの鼻が少し赤いのでイマイチ迫力に欠ける。ジンはクスッと微笑む。
「「えー!!」」
「ジン、行くなよ。船長命令だ」
『……フフ。困った船長さんですね』
「うるせェ」
ジンはシルクハットに積もる雪を払い、かぶりなおすと2人に声をかける。
『ベポさん、キャスさん、すいません。今、そちらには行けなくなりました』
「はぁ…仕方ねェな。キャプテンわがままだもんな」
「だもんね」
ボソボソと耳打ちで会話するキャスとベポ。
「聞こえてるぞ」
「「!!」」
ローの言葉に図星と言わんばかりに動きが止まる2人。ハハハ……と乾いた笑いを浮かべると、そそくさと船尾にも雪だるまだ!と駆けて行った。
『元気ですね~』
「ふん。それだけが取り得みたいなもんだ」
不機嫌そうにいうロー。ジンは肩を竦めた。
『お隣に座っても構いませんか?』
「そうしろ」
『はい、ではそうしましょう』
ジンは失礼しますとローの隣の雪を払い、腰掛ける。お尻の辺りが少しヒンヤリした。
『しかし、たまに浮上するのも悪くはありませんね』
「…おれはやっぱり海の中がいいがな」
『海賊たる由縁ですか?』
「さぁな」
『フフッ…しかし不思議ですね。海に嫌われた僕らが海の中を旅することが出来るなんて』
「おれはそれがしたくて、この船を選んだんだ」
『?』
「おれは水面に浮かぶ程度で海に触れたと満足はしねェ。同じ冷たさなら空の雪より海の冷たさの方がいい」
『……フフッ』
「笑うな!」
『失礼しました。ローに詩人の素質があるとは思わなかったもので』
「うるせェ……この海はいつかおれのもんになるというだけの話だ」
『ああ、そういう話ですか』
「信じてねェな」
『信じてなければついては来ませんよ』
「!!……手が冷えた」
ローは話題を逸らすように、フーッと自分の息を手のひらに吹きつけた。しかし暖かさは一時的なものでしかなく、すぐにまた冷たくなる。ローはその方法を早々にあきらめると、空を見上げた。
そんな投げ出されたローの手にすっとジンの手がローの手を覆うように重なる。ローは驚いてジンへ顔を向けた。
「おい…」
『息を吹きかけ続けるよりは楽に暖まると思います』
「……お前が寒いだろ」
『僕は紙ですから。紙には断熱効果があるんですよ』
「ヘェ……」
ローはジンから目をそらすとマフラーに顔をうずめる。無愛想な態度でも、マフラーの隙間から見える赤い耳がローが照れていることを教えてくれた。
ジンはそのことに触れず、静かに海を見る。しばらく静かに白い雪と濃紺の海を眺めた。
「……」
ローは自分の手のひらをそっと返し、手を繋ぐようにジンの手をギュッと手握る。ジンをそれに優しく握り返すことで応えた。
『寒いですね』
「……ああ、寒いな」
2人は繋がった手に互いのぬくもりを感じながら、そんな会話を繰り返すのだった。
fin
**********
「寒いね」「ああ、寒いね」と返すひとのあたたさ…的な詩が昔あったなぁ~なんて思って作りました。