「！」

ﾌﾜｯと空気が揺れるのをベックマンは感じ顔を上げる。その気配は知っているものだ。


「帰ったのか、ジン」

『……バレてしまいましたか。ベン・ベックマンさんには敵いません』

細かな紙が人の姿に変わる。シルクハットをかぶった笑顔が綺麗な青年、ジンが現れた。


「偵察ご苦労だった。茶でも飲むか？」

『ええ、戴きます』

ジンはﾆｺｯと笑った。ベンは新聞を畳むと立ち上がり、置いているポットからお茶を注ぐ。


『それにしても今まで"無数の聖書(ﾐﾘｱﾄﾞ･ﾊﾞｲﾌﾞﾙ)"発動中に見つかることはなかったのですが……。なぜベン・ベックマンさんにはわかるのですか？』

首を傾げるジンに入れ立てのお茶をテーブルに置いたベンはジンの正面に立った。
立っているベンはジンより背が高い、そのためジンは自然と見上げることになる。
ベンは自身を見上げるジンの肩にﾎﾟﾝｯと優しく手をおいた。


「それはな、ジン。……お前がいる空気は"優しい"からだ」

『！』

「空気を感じればそこにお前がいるとすぐわかる。それだけだ」

ベンはそう言うとシルクハットごとジンの頭を撫でる。ジンはポカンとベンの顔を見た。








【天然タラシ】









「どうした？ジン、顔が赤いぞ。熱でもあるのか」

ズレたシルクハットをとってジンの顔を見下ろしたベン。ジンはさっきの言葉ですっかり顔が真っ赤になっていた。


『ベン・ベックマンさん……さっきのは計算ですか？』

「？お前との会話に何を計算する必要があるんだ？」

『……！！も、もういいです。お茶入れますね！』

「？茶は今入れたぞ。やっぱり風邪でも引いたんじゃ……」

『ち、違います！！だ、大丈夫です！？』

「見せてみろ。ほら」

『……！！』

ベンはジンの額に自身の額を当てる。ジンはさらに顔を真っ赤になった。







fin







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ベン・ベックマンは天然タラシだといいなぁ～という話。