ゼロ
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「ちょっと聞いただけだけじゃないの~」
ピカー…ン…
「おい!あれ!!」
「中将!!」
『みんな、下がって』
一筋の光がヤルキマンマングローブを貫くのを軍艦から見ていたアルトは声を上げた。そして手を前に出す。
『"聖域(ジ・ハード)"……!!』
―――ドカーン……!!
爆風が"盾"の外側を撫でる。周りの船が揺れる中、アルトの乗った軍艦は無傷で済んだ。
「おおー!!」
「さすがノティ中将!」
「“盾”の能力ってすごいな!!」
海兵達から歓声が上がる。アルトは肩を落とした。
『ハァ……相変わらず無茶苦茶だなァ、黄猿サンは。艦が壊れるところだ』
アルトはため息混じりに“盾”で道を作る。
『まぁいいや。みんなはセンゴクサンの指示通りに。僕は今から黄猿サンを追いかける』
「「「はっ!!」」」
アルトは後ろのポーチから板チョコを取り出し、カプッとかじった。
『さて……仕事の時間だ』
【超新星VSゼロと黄猿】
『黄猿サン!』
「お~アルトくん」
トンッとアルトは黄猿の側に降り立つ。黄猿はニコニコと笑顔でアルトを迎えた。
「ヤルキマンマングローブ倒しちゃたよォ~」
『ああ、見てた。とりあえず艦は守っといたよ』
「ああ~ありがとうねェ。でもこりャ始末書もんだよねェ~。
困ったなァ~何て書こうかなァ~」
腕を組み、んん~っと唸る黄猿。アルトは頭をポリポリとかいた。
『……“海賊の捕獲時に退路を断つために倒した”でいいんじゃないかな。それなら黄猿サンが悪い訳ではないし、現に海賊は山ほどいるから、問題はないと思うよ』
「おお~すごいねェ~。すぐ出てくるんだねェ」
『……まぁ、こういう言い訳ならクザンクンの書類でイヤという程書いてきたからね。
ところで、黄猿サン。戦桃丸クンに連絡は取れたの?』
「いや~それがさっぱりでねェ」
黄猿はおかしいねェ~と首を傾げる。
『確かに、おかしいな。戦桃丸クンが黄猿サンへの連絡を切らすとは思えないけど…。とりあえず、どうするんだい?』
「んん?そうだねェ~……まぁ、戦桃丸くん探しながら手当たり次第にやっちゃおう」
そう言うと黄猿は楽しそうに歩き出す。その背中を見て、アルトは肩を諫めた。
『……。さすが黄猿サン』
同島、24番GR。
『ねェ、黄猿サン。それ本気かい?』
「本気だよォ~。知ってるかもしれないでしょ?」
『まぁ……万が一はあるけど…』
「でしょでしょ~どうせ暇だし聞いてみよう」
黄猿は視線の先にいる海賊に戦桃丸のことを尋ねること決めたらしい。
アルトは黄猿の奇想天外な発想にしばしば驚き、言葉にしていた。
だが、アルトは制止の言葉を押し通すことはしなかった。
結論から言えば、黄猿が自分の制止で止まるとは思っていないからである。
また、たとえ何か…つまり"戦闘"が起こったとしても十分対応出来ると理解しているのも制止をしない要因となっていた。
『僕はどうすればいいの?』
「ん~?事が始まったら参加していいよ~。見てても暇だろうしねェ~」
『了解』
黄猿はそう言うと目当ての海賊の下へ歩き出す。アルトは少し間をあけて、黄猿について行った。
「あれは、黄猿!!?」
「大将だ!!」
慌て出す黒ずくめの海賊達。その喧噪の中で一人の男は腰を据え、カードを組んでいた。
「ホーキンス船長!!黄猿です!!逃げましょう」
「……慌てるな、今日おれは死なない」
「船長!!」
「お、おい!!来るぞ!!」
「ヒィー!!」
自身のクルーが悲鳴を上げ、逃げる。
それを片隅に捉えながらカードをめくっているのは超新星(ルーキー)の一人、バジル・ホーキンスだ。
「頼むから逃げてくれ!!!」
「ホーキンス船長―――――!!!」
黄猿は近づいてくる。クルーは叫ぶが、当のホーキンスは目の前に迫る黄猿に目もくれない。
『すごいな。黄猿サンに目も向けないなんて』
アルトはそんなホーキンスに感心していた。
「“戦闘”…敗北率……100%。“逃走”成功率…8%」
「「「船長~~!!!」」」
「“防御”回避率……72%」
「ちょっとォいいかねェ……“戦桃丸”と言う男を探してるんだけども」
『……』
黄猿がホーキンスに話しかける。ホーキンスは未だに黄猿を見ない。
「“生存”死亡率……!!……0%」
そして最後のカードを引き終え、ホーキンスはカードを手の中に戻した。
そして初めて、黄猿に目を向ける。
「そんな男は知らない。他を当たってくれ…」
「いやあそれが…見つからないとなるとォ、オー…ヒマだからねー…。
――そんな時にまさか“こんな首”を放っとくわけにもいかんでしょう。バジル・ホーキンス………!!」
「「「!!」」」
「速度は…“重さ”。“光”の速度で蹴られた事はあるかい」
そう黄猿が言った時には、ホーキンスの顔の横に黄猿の足があった。
「!」
ホーキンスは真横に足が来て初めて気付く。しかし気付くのが遅すぎた。
ドゴォン!!
「!!!」
『まぁ、初見であれは避けれないよねェ』
腕を組みアルトはポツリと呟く。そしてホーキンスが吹き飛んだ建物に目を向けた。
「「「船長―っ!!!」」」
黄猿の“光速”の蹴りを受けたホーキンスは建物にめり込んだようだ。
ホーキンスが突っ込んだ建物の向かいに位置する建物の屋上からアプーが黄猿の様子を窺っていた。
「……コリャ強ェ…!!ん?オイ、まだやる気か」
黄猿がホーキンスが突っ込んだ建物に人差し指を向けるのを見て声を出す。
アプーの予想通り、黄猿の人差し指からは光が輝いた。黄猿はピュン!とその光を放つ。
ズムッ!!!
「!!!」
ホーキンスに追い討ちをかけた黄猿のビームに隠れて見守るアプーやクルー達はヒヤヒヤしていた。
「………」
『「!」』
ガラ…っと瓦礫が落ちる音がして黄猿は目を向ける。
「船長……」
ホーキンスのクルーが息をのむ中、ホーキンスは立ち上がる。
立ち上がったホーキンスは服が汚れているだけで、無傷だった。
「さすがだ…想像の遥か上を行く…」
無傷のホーキンスを見て、黄猿は目を細める。
「おっかしいねェ~~~………」
「――“大将”相手に“たった10体じゃ”心許ないな……」
そう言いつつホーキンスの右腕から焼け焦げた者と顔が半分吹き飛んだ者、2体の藁人形がバリバリと音を立てながら這い出てくる。
そしてドサ…と地面に落ち、動かなくなった。
『ヘェ……能力者か』
「うわァアっ!!!どうっ…!!!」
「!?」
ドサッとホーキンスの横を滑り込む様にウルージが倒れてきた。
「あれは!……“怪僧”ウルージと………バーソロミュー・くま!!!!」
突然の2人の乱入にホーキンスのクルーがどよめく。ウルージは倒れたまま言った。
「ハァ…ハァ……!!まいった…何て強さ…!!―――!?」
ウルージは倒れた頭の上にいる人物を見て驚愕する。
「まさか…あれは…“黄猿”!!!…何と言う悲運…!!前方に“海軍大将”…後方に“七武海”ゼェ………。ここまでか…!?」
ウルージの嘆きの言葉にホーキンスが平然と答える。
「…そうでもないぞ。お前にはまだ死相が見えない」
「!?」
ウルージは体を起こす。
「“ノースブルー”のホーキンスか…ふふふ。敵ながら冗談でもありがたい……!!」
ウルージは笑う。そして何かの気配を感じた。
「!」
「………」
ドゴォン!!!
「!!?」
ウルージの目の前でまたまたパシファスタが吹っ飛ぶ。ドレークが再び乱入して来たのだ。
「何だァ!!?また誰か乱入してきたぞ!!あれは…」
「X(ディエス)・ドレーク!!!……なぜ!?」
『……!!』
新たな乱入者にまた周りは騒然とする。アルトは目を見張った。
「ドレーク少将…」
ドレークはパシファスタが起き上がってくるのを武器を構え牽制する。
そして後ろにいる人物を見て眉をしかめた。
「しまった…“黄猿”と出遭うつもりはなかった」
「あァ~~……」
「!」
ホーキンスの隣にいた、ウルージがモコモコと巨大化する。
「ずいぶんやられたが……。さて本当に希望はあるのかどうか…ボチボチ反撃してみよう……!!!」
「……!!」
「うはァ!!見ろ、スゲー状況になって来たぞ!コリャ面白ェ!!」
「ヤベーっすよ!!あいつらみんな死にますよ!!コレ逃げるチャンスでしょ!!」
屋上から下を見るアプーとそのクルーがそんな会話をする中、ウルージが反撃を開始した。
「ずいぶん痛めつけてくれなさったな…さっきまでの私とは思いなさんな!!」
そう言うとさっきよりも数倍筋力が上がったであろう拳をパシファスタに向ける。
「"因果晒し"!!!」
「!!!」
ドゴォン!!っとパシファスタのボディに強烈なパンチを浴びせたウルージは攻撃の手を緩めない。
次に顔を殴る。そして体勢が崩れた所でさらにボディに1発入れ、パシファスタは建物へ吹っ飛んだ。
「今の今までくたばり損ないだった男が…巨大化した上にこの力(パワー)……。
――どういうわけだ…?」
ホーキンスはウルージを観察しながら言う。
土煙が舞う中、ウルージはパシファスタを見下ろしていた。
すると、土煙からキラッと何かが光る。
ピュン…ズバッ!!
「!!?」
パシファスタが倒れた所から飛んできた光が、ウルージの左肩を射ぬいた。
ウルージは痛みと熱さに悲鳴をあげ、倒れる。
「ぐわァっ!!!熱つ」
「!!?」
建物から立ち上がったパシファスタの左手からは煙が一筋立っていた。
「あれは黄猿の"レーザー"……!!」
ドレークはパシファスタの左手を見ながら呟いた。
「(バーソロミュー・くまの肉体に加え…黄猿の攻撃力を再現したのか、ベガパンク…!!
“パシファスタ”がここまで形になっていたとは……!!)」
「尋常じゃねェ…!この事態!!」
「たとえ億越えが3人いても“七武海”と“海軍大将”を相手に生きてられる訳ねェ…!!」
「ドレーク少将…ああ…“元”少将」
黄猿がドレークに話しかける。
「それの偵察じゃねェかァ?」
「……」
黄猿はくまを指さし、ドレークに言った。ドレークは視線は一瞬くまに向けると黄猿を睨んだ。
「戦ってみるといいよォ~内情を知ってる分絶望もデカイと思うがねェ……」
『黄猿サン』
「なっ!!?」
黄猿の前にアルト現れる。ドレークは驚き、目を見張った。
『パシフィスタクンは引かせてくれ。X(デュエス)・ドレークは僕の獲物だ』
「アルト…!!?」
「「「!!」」」
「ああ~アルトくん。そうだねェ~じゃあ、彼はキミに任すよ~」
『感謝する』
「船長!!あれ!」
「うひょー!アリャ“ゼロ”のアルトじゃねェか!!」
上から見ていたアプーとアプーのクルー達はアルトの登場に湧き立つ。
「出逢ったら最後!海賊に今一番恐れられている中将……!!」
「“0距離”のスナイパー…!!」
「こりゃ、楽し……!!!」
ズシャー―ン……!!
「!!」
アプー達の真横を斬撃が走る。建物が半壊した。
「なっ、なんだ!!?」
「おれ達バレたんじゃ!!?」
「アルトくん、どうしたんだい?」
黄猿はアルトが急に建物に“嵐脚(ランキャク)”をしたことに首を傾げる。
『いや……“雑音”がしたから。念のため』
「アルト……」
『どうしたの、X・ドレーク。覚悟は出来てるだろう?』
「まさかここで再会するとは」
『思ってなかった?』
「いや……」
ドレークは微かにほほ笑んだ。
キィンキィンキィン……!!
ドレークとアルトは刃と銃を交えていた。互角の戦いだ。
ガキィン……!!
拮抗する二人。二人はタンッと互いに間合いを取る。
『本気で来なよ』
「ああ、そうさせてもらう……!!」
パチン……ギャアアアア…!!
「うっは!!コリャまた面白ェモン見ちまった……!!!」
「世にも珍しい"動物系・古代種"……!!!初めて見た…!!」
アプーは半壊した建物に身を潜めながらアルトとドレークの戦いに目を向けた。
ギャアアアア……!!
『"軽率(レビティ)"……!!』
カン……!!
「!!」
アルトは自身に振り下ろされる恐竜の手に"盾"を組み上げる。アルトは目を丸くした。
『だから、本気出さないと死ぬって言ってるだろ?』
そのドレークの首に銃が突き付けられる。
ガチャ…バンバンバン……!!
ギャアアアア…!!
恐竜のドレークが身体を大きくのけぞらせる。そしてグンッと間合いを取った。
「……ぐうっ!!!」
半獣化まで後退したドレークは首元を抑える。血がにじんでいた。ドレークは驚きの目でアルトを見る。
『あれ?硬いな……普通なら終わりなのに』
「それは……何だ?」
ドレークはアルトの周りに漂う"盾"に目をやりながら、尋ねる。
『別に。ただの能力さ』
「……」
「これは珍しいものを見た…」
「……あれが、"ゼロ"のアルト……。"無血"の将校とは嘘ではないようだな」
ウルージとホーキンスはアルトとドレークの戦いに目をやりながら、感心していた。
「わっしもいると言ったはずだよォ~」
アプー攻撃
『……!』
「おおーびっくりしたねェ」
「アルトくん。"終わり"にするよォ~""」
「うわ!なんかまぶし……え!!」
アプーの目の前に黄猿が現れる。
「「!!」」
呆然とするドレークにガチャとアルトはドレークに銃を突きつけた。
『余所見なんて、余裕だね』
「!」
バンバン……!!
「ぐは……!!」
ドサッとドレークは地面に倒れる。アルトは眉を一瞬ひそめた。
ヒュン……ドカーン……!!
アルトの隣で黄猿の光がホーキンスを貫く。ホーキンスは地面に崩れ落ちた。黄猿はそのホーキンスに指を向ける。
―――ブルブルブル
『はい』
[アルト、今シャボンティか?]
『!戦桃丸クンか。ああ、今はシャボンティにいる。ずっとキミを探してるんだけど、苦戦してるのかい?』
[はあ!?何言ってんだ!探してんのはおれの方だぜ!]
『……?でも、黄猿サンはキミに連絡が取れないって』
[!オジキも一緒か、代わってくれ]
『ん、ああ。―――黄猿サン、戦桃丸クンから連絡が入ったよ』
「おお~よかったねェ」
「……」
ホーキンスに向けられたらビームを放つのをやめ、黄猿は差し出された子電伝虫を受け取る。
黄猿と戦桃丸の会話
『……ああ、だからつながらなかったのか』
戦桃丸の言葉に納得するアルト。電話を終えた黄猿は子電伝虫をアルトに返した。
『ドレーク達はどうするの?』
「んん~まぁ、後から来る海兵達に任せよう。任務優先だからねェ~」
『了解。13番だね』
「うん。じゃあ、行こうか~」
黄猿はスタスタと再び歩き出した。
アルトはその背中を一目見てから、
後ろで倒れているドレークに目をやった。
「……」
『……さよなら』
ピカー…ン…
「おい!あれ!!」
「中将!!」
『みんな、下がって』
一筋の光がヤルキマンマングローブを貫くのを軍艦から見ていたアルトは声を上げた。そして手を前に出す。
『"聖域(ジ・ハード)"……!!』
―――ドカーン……!!
爆風が"盾"の外側を撫でる。周りの船が揺れる中、アルトの乗った軍艦は無傷で済んだ。
「おおー!!」
「さすがノティ中将!」
「“盾”の能力ってすごいな!!」
海兵達から歓声が上がる。アルトは肩を落とした。
『ハァ……相変わらず無茶苦茶だなァ、黄猿サンは。艦が壊れるところだ』
アルトはため息混じりに“盾”で道を作る。
『まぁいいや。みんなはセンゴクサンの指示通りに。僕は今から黄猿サンを追いかける』
「「「はっ!!」」」
アルトは後ろのポーチから板チョコを取り出し、カプッとかじった。
『さて……仕事の時間だ』
【超新星VSゼロと黄猿】
『黄猿サン!』
「お~アルトくん」
トンッとアルトは黄猿の側に降り立つ。黄猿はニコニコと笑顔でアルトを迎えた。
「ヤルキマンマングローブ倒しちゃたよォ~」
『ああ、見てた。とりあえず艦は守っといたよ』
「ああ~ありがとうねェ。でもこりャ始末書もんだよねェ~。
困ったなァ~何て書こうかなァ~」
腕を組み、んん~っと唸る黄猿。アルトは頭をポリポリとかいた。
『……“海賊の捕獲時に退路を断つために倒した”でいいんじゃないかな。それなら黄猿サンが悪い訳ではないし、現に海賊は山ほどいるから、問題はないと思うよ』
「おお~すごいねェ~。すぐ出てくるんだねェ」
『……まぁ、こういう言い訳ならクザンクンの書類でイヤという程書いてきたからね。
ところで、黄猿サン。戦桃丸クンに連絡は取れたの?』
「いや~それがさっぱりでねェ」
黄猿はおかしいねェ~と首を傾げる。
『確かに、おかしいな。戦桃丸クンが黄猿サンへの連絡を切らすとは思えないけど…。とりあえず、どうするんだい?』
「んん?そうだねェ~……まぁ、戦桃丸くん探しながら手当たり次第にやっちゃおう」
そう言うと黄猿は楽しそうに歩き出す。その背中を見て、アルトは肩を諫めた。
『……。さすが黄猿サン』
同島、24番GR。
『ねェ、黄猿サン。それ本気かい?』
「本気だよォ~。知ってるかもしれないでしょ?」
『まぁ……万が一はあるけど…』
「でしょでしょ~どうせ暇だし聞いてみよう」
黄猿は視線の先にいる海賊に戦桃丸のことを尋ねること決めたらしい。
アルトは黄猿の奇想天外な発想にしばしば驚き、言葉にしていた。
だが、アルトは制止の言葉を押し通すことはしなかった。
結論から言えば、黄猿が自分の制止で止まるとは思っていないからである。
また、たとえ何か…つまり"戦闘"が起こったとしても十分対応出来ると理解しているのも制止をしない要因となっていた。
『僕はどうすればいいの?』
「ん~?事が始まったら参加していいよ~。見てても暇だろうしねェ~」
『了解』
黄猿はそう言うと目当ての海賊の下へ歩き出す。アルトは少し間をあけて、黄猿について行った。
「あれは、黄猿!!?」
「大将だ!!」
慌て出す黒ずくめの海賊達。その喧噪の中で一人の男は腰を据え、カードを組んでいた。
「ホーキンス船長!!黄猿です!!逃げましょう」
「……慌てるな、今日おれは死なない」
「船長!!」
「お、おい!!来るぞ!!」
「ヒィー!!」
自身のクルーが悲鳴を上げ、逃げる。
それを片隅に捉えながらカードをめくっているのは超新星(ルーキー)の一人、バジル・ホーキンスだ。
「頼むから逃げてくれ!!!」
「ホーキンス船長―――――!!!」
黄猿は近づいてくる。クルーは叫ぶが、当のホーキンスは目の前に迫る黄猿に目もくれない。
『すごいな。黄猿サンに目も向けないなんて』
アルトはそんなホーキンスに感心していた。
「“戦闘”…敗北率……100%。“逃走”成功率…8%」
「「「船長~~!!!」」」
「“防御”回避率……72%」
「ちょっとォいいかねェ……“戦桃丸”と言う男を探してるんだけども」
『……』
黄猿がホーキンスに話しかける。ホーキンスは未だに黄猿を見ない。
「“生存”死亡率……!!……0%」
そして最後のカードを引き終え、ホーキンスはカードを手の中に戻した。
そして初めて、黄猿に目を向ける。
「そんな男は知らない。他を当たってくれ…」
「いやあそれが…見つからないとなるとォ、オー…ヒマだからねー…。
――そんな時にまさか“こんな首”を放っとくわけにもいかんでしょう。バジル・ホーキンス………!!」
「「「!!」」」
「速度は…“重さ”。“光”の速度で蹴られた事はあるかい」
そう黄猿が言った時には、ホーキンスの顔の横に黄猿の足があった。
「!」
ホーキンスは真横に足が来て初めて気付く。しかし気付くのが遅すぎた。
ドゴォン!!
「!!!」
『まぁ、初見であれは避けれないよねェ』
腕を組みアルトはポツリと呟く。そしてホーキンスが吹き飛んだ建物に目を向けた。
「「「船長―っ!!!」」」
黄猿の“光速”の蹴りを受けたホーキンスは建物にめり込んだようだ。
ホーキンスが突っ込んだ建物の向かいに位置する建物の屋上からアプーが黄猿の様子を窺っていた。
「……コリャ強ェ…!!ん?オイ、まだやる気か」
黄猿がホーキンスが突っ込んだ建物に人差し指を向けるのを見て声を出す。
アプーの予想通り、黄猿の人差し指からは光が輝いた。黄猿はピュン!とその光を放つ。
ズムッ!!!
「!!!」
ホーキンスに追い討ちをかけた黄猿のビームに隠れて見守るアプーやクルー達はヒヤヒヤしていた。
「………」
『「!」』
ガラ…っと瓦礫が落ちる音がして黄猿は目を向ける。
「船長……」
ホーキンスのクルーが息をのむ中、ホーキンスは立ち上がる。
立ち上がったホーキンスは服が汚れているだけで、無傷だった。
「さすがだ…想像の遥か上を行く…」
無傷のホーキンスを見て、黄猿は目を細める。
「おっかしいねェ~~~………」
「――“大将”相手に“たった10体じゃ”心許ないな……」
そう言いつつホーキンスの右腕から焼け焦げた者と顔が半分吹き飛んだ者、2体の藁人形がバリバリと音を立てながら這い出てくる。
そしてドサ…と地面に落ち、動かなくなった。
『ヘェ……能力者か』
「うわァアっ!!!どうっ…!!!」
「!?」
ドサッとホーキンスの横を滑り込む様にウルージが倒れてきた。
「あれは!……“怪僧”ウルージと………バーソロミュー・くま!!!!」
突然の2人の乱入にホーキンスのクルーがどよめく。ウルージは倒れたまま言った。
「ハァ…ハァ……!!まいった…何て強さ…!!―――!?」
ウルージは倒れた頭の上にいる人物を見て驚愕する。
「まさか…あれは…“黄猿”!!!…何と言う悲運…!!前方に“海軍大将”…後方に“七武海”ゼェ………。ここまでか…!?」
ウルージの嘆きの言葉にホーキンスが平然と答える。
「…そうでもないぞ。お前にはまだ死相が見えない」
「!?」
ウルージは体を起こす。
「“ノースブルー”のホーキンスか…ふふふ。敵ながら冗談でもありがたい……!!」
ウルージは笑う。そして何かの気配を感じた。
「!」
「………」
ドゴォン!!!
「!!?」
ウルージの目の前でまたまたパシファスタが吹っ飛ぶ。ドレークが再び乱入して来たのだ。
「何だァ!!?また誰か乱入してきたぞ!!あれは…」
「X(ディエス)・ドレーク!!!……なぜ!?」
『……!!』
新たな乱入者にまた周りは騒然とする。アルトは目を見張った。
「ドレーク少将…」
ドレークはパシファスタが起き上がってくるのを武器を構え牽制する。
そして後ろにいる人物を見て眉をしかめた。
「しまった…“黄猿”と出遭うつもりはなかった」
「あァ~~……」
「!」
ホーキンスの隣にいた、ウルージがモコモコと巨大化する。
「ずいぶんやられたが……。さて本当に希望はあるのかどうか…ボチボチ反撃してみよう……!!!」
「……!!」
「うはァ!!見ろ、スゲー状況になって来たぞ!コリャ面白ェ!!」
「ヤベーっすよ!!あいつらみんな死にますよ!!コレ逃げるチャンスでしょ!!」
屋上から下を見るアプーとそのクルーがそんな会話をする中、ウルージが反撃を開始した。
「ずいぶん痛めつけてくれなさったな…さっきまでの私とは思いなさんな!!」
そう言うとさっきよりも数倍筋力が上がったであろう拳をパシファスタに向ける。
「"因果晒し"!!!」
「!!!」
ドゴォン!!っとパシファスタのボディに強烈なパンチを浴びせたウルージは攻撃の手を緩めない。
次に顔を殴る。そして体勢が崩れた所でさらにボディに1発入れ、パシファスタは建物へ吹っ飛んだ。
「今の今までくたばり損ないだった男が…巨大化した上にこの力(パワー)……。
――どういうわけだ…?」
ホーキンスはウルージを観察しながら言う。
土煙が舞う中、ウルージはパシファスタを見下ろしていた。
すると、土煙からキラッと何かが光る。
ピュン…ズバッ!!
「!!?」
パシファスタが倒れた所から飛んできた光が、ウルージの左肩を射ぬいた。
ウルージは痛みと熱さに悲鳴をあげ、倒れる。
「ぐわァっ!!!熱つ」
「!!?」
建物から立ち上がったパシファスタの左手からは煙が一筋立っていた。
「あれは黄猿の"レーザー"……!!」
ドレークはパシファスタの左手を見ながら呟いた。
「(バーソロミュー・くまの肉体に加え…黄猿の攻撃力を再現したのか、ベガパンク…!!
“パシファスタ”がここまで形になっていたとは……!!)」
「尋常じゃねェ…!この事態!!」
「たとえ億越えが3人いても“七武海”と“海軍大将”を相手に生きてられる訳ねェ…!!」
「ドレーク少将…ああ…“元”少将」
黄猿がドレークに話しかける。
「それの偵察じゃねェかァ?」
「……」
黄猿はくまを指さし、ドレークに言った。ドレークは視線は一瞬くまに向けると黄猿を睨んだ。
「戦ってみるといいよォ~内情を知ってる分絶望もデカイと思うがねェ……」
『黄猿サン』
「なっ!!?」
黄猿の前にアルト現れる。ドレークは驚き、目を見張った。
『パシフィスタクンは引かせてくれ。X(デュエス)・ドレークは僕の獲物だ』
「アルト…!!?」
「「「!!」」」
「ああ~アルトくん。そうだねェ~じゃあ、彼はキミに任すよ~」
『感謝する』
「船長!!あれ!」
「うひょー!アリャ“ゼロ”のアルトじゃねェか!!」
上から見ていたアプーとアプーのクルー達はアルトの登場に湧き立つ。
「出逢ったら最後!海賊に今一番恐れられている中将……!!」
「“0距離”のスナイパー…!!」
「こりゃ、楽し……!!!」
ズシャー―ン……!!
「!!」
アプー達の真横を斬撃が走る。建物が半壊した。
「なっ、なんだ!!?」
「おれ達バレたんじゃ!!?」
「アルトくん、どうしたんだい?」
黄猿はアルトが急に建物に“嵐脚(ランキャク)”をしたことに首を傾げる。
『いや……“雑音”がしたから。念のため』
「アルト……」
『どうしたの、X・ドレーク。覚悟は出来てるだろう?』
「まさかここで再会するとは」
『思ってなかった?』
「いや……」
ドレークは微かにほほ笑んだ。
キィンキィンキィン……!!
ドレークとアルトは刃と銃を交えていた。互角の戦いだ。
ガキィン……!!
拮抗する二人。二人はタンッと互いに間合いを取る。
『本気で来なよ』
「ああ、そうさせてもらう……!!」
パチン……ギャアアアア…!!
「うっは!!コリャまた面白ェモン見ちまった……!!!」
「世にも珍しい"動物系・古代種"……!!!初めて見た…!!」
アプーは半壊した建物に身を潜めながらアルトとドレークの戦いに目を向けた。
ギャアアアア……!!
『"軽率(レビティ)"……!!』
カン……!!
「!!」
アルトは自身に振り下ろされる恐竜の手に"盾"を組み上げる。アルトは目を丸くした。
『だから、本気出さないと死ぬって言ってるだろ?』
そのドレークの首に銃が突き付けられる。
ガチャ…バンバンバン……!!
ギャアアアア…!!
恐竜のドレークが身体を大きくのけぞらせる。そしてグンッと間合いを取った。
「……ぐうっ!!!」
半獣化まで後退したドレークは首元を抑える。血がにじんでいた。ドレークは驚きの目でアルトを見る。
『あれ?硬いな……普通なら終わりなのに』
「それは……何だ?」
ドレークはアルトの周りに漂う"盾"に目をやりながら、尋ねる。
『別に。ただの能力さ』
「……」
「これは珍しいものを見た…」
「……あれが、"ゼロ"のアルト……。"無血"の将校とは嘘ではないようだな」
ウルージとホーキンスはアルトとドレークの戦いに目をやりながら、感心していた。
「わっしもいると言ったはずだよォ~」
アプー攻撃
『……!』
「おおーびっくりしたねェ」
「アルトくん。"終わり"にするよォ~""」
「うわ!なんかまぶし……え!!」
アプーの目の前に黄猿が現れる。
「「!!」」
呆然とするドレークにガチャとアルトはドレークに銃を突きつけた。
『余所見なんて、余裕だね』
「!」
バンバン……!!
「ぐは……!!」
ドサッとドレークは地面に倒れる。アルトは眉を一瞬ひそめた。
ヒュン……ドカーン……!!
アルトの隣で黄猿の光がホーキンスを貫く。ホーキンスは地面に崩れ落ちた。黄猿はそのホーキンスに指を向ける。
―――ブルブルブル
『はい』
[アルト、今シャボンティか?]
『!戦桃丸クンか。ああ、今はシャボンティにいる。ずっとキミを探してるんだけど、苦戦してるのかい?』
[はあ!?何言ってんだ!探してんのはおれの方だぜ!]
『……?でも、黄猿サンはキミに連絡が取れないって』
[!オジキも一緒か、代わってくれ]
『ん、ああ。―――黄猿サン、戦桃丸クンから連絡が入ったよ』
「おお~よかったねェ」
「……」
ホーキンスに向けられたらビームを放つのをやめ、黄猿は差し出された子電伝虫を受け取る。
黄猿と戦桃丸の会話
『……ああ、だからつながらなかったのか』
戦桃丸の言葉に納得するアルト。電話を終えた黄猿は子電伝虫をアルトに返した。
『ドレーク達はどうするの?』
「んん~まぁ、後から来る海兵達に任せよう。任務優先だからねェ~」
『了解。13番だね』
「うん。じゃあ、行こうか~」
黄猿はスタスタと再び歩き出した。
アルトはその背中を一目見てから、
後ろで倒れているドレークに目をやった。
「……」
『……さよなら』