ゼロ
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コツッ
『―――以上がセンゴクサン及び、おつるサンからの伝令だ』
「……そうか。ご苦労だったな」
コツッ
返事と共に紫煙を吹かしたクロコダイルは黒塗りされた木の駒を一歩前に進めた。ふむ…と息をついたアルトはクロコダイルとは違う場所の白い駒を一歩進める。
コツッ
「……」
二人は今、机を挟んでモノクロの板状で繰り広げられる王を取り合うゲームに興じていた。
コツッ
「……だが、わざわざ"ゼロ"のアルトがこの砂漠の国に来る内容には思わねェが……」
「ああ。封書でもよかったんだけど、ガープサンに一度七武海に会っておけと言われてね」
コツッ
「あの"老兵"が?なにを企んでるんだ、海軍は」
『さあ。僕は伝令以外の指令を特に受けてないよ』
互いに机上に目を向けたまま。クロコダイルは僧侶の名を持つ黒い駒で白い騎士を押しのけた。
コツッ
「ほう」
アルトは予想してたのか、倒された騎士気に目もくれず、次の一手をさす。クロコダイルは微動だにしないアルトの表情と打つ手の早さに、感心した。
「痛くねェようだな」
『そうでもない。今のは結構困った。けど、手がない訳じゃないしね』
「クハハハ…その手並み、見せてもらおう」
コツッ
『……ふむ』
クロコダイルの一手をアルトは後ろのポーチから取り出したアメを食べながらふむふむと何度か頷く。
そして駒に手を伸ばした。
コツッ
アルトはポーンと呼ばれる白い駒をクロコダイルのクイーンの前に置いた。
「!」
クロコダイルはその一手に板状が一変したこと気付く。アルトは、カリッとアメを噛み砕いた。
数分後。
『チェクメイトだ』
アルトはクロコダイルの黒のキングに引導を渡した。クロコダイルはニヤッと口角を釣り上げる。そして紫煙をくゆらせならが、パチパチと手を叩いた。
「クハハハ……素晴らしい、逆転劇だったぜ。ノティ中将」
『どうも。キミが手を抜いてくれたおかげだ』
「ポーンが勝負の要になるとはなぁ。捨て駒も有用に使えるということか」
クロコダイルは紅茶に口をつけるアルトを値踏みするように、上から下まで眺める。
『……なんだい?』
「ノティ中将。海軍をやめておれの下で働かねェか?キミは良き軍師になる。見合ったポストを約束しよう」
アルトはティーカップをカタンとテーブルに置く。そして視線をクロコダイルに向けた。
『……興味ないな』
アルトはそう言うと早々に席を立ち上がる。
「結論を出すのが早ェな。ノティ中将、いや"ゼロ"のアルト。おれはキミを買ってるんだ」
『……』
「それに海軍がキミのことをどう言ってるか知っているか?」
『?さあ…興味な…』
「使える"捨て駒(ポーン)"だ」
『……』
アルトの言葉を切り、クロコダイルは言う。その目は目の前の海兵を憐れむようだ。
アルトは相変わらず変わらぬ表情でクロコダイルを見る。
『どこから聞いたの?』
「"五老星"のじじい共からだ」
『……』
クロコダイルは勝者の笑みを浮かべる。アルトの表情から感情は読めないが、動揺していることは確かだ。クロコダイルはそう確信し、ワインを一口飲む。
「そんな上層部に従わなければならない君には同情する。だからこその提案だ。おれの下に来るってんならナンバー2として迎えよう」
『……ハァ』
アルトは大きく肩を竦ませた。その態度からは怒りや動揺よりも呆れが感じられる。クロコダイルは眉をひそめた。
『"五老星"が……僕を利用してることは知っている』
「…んあ?」
『あの人達はそれを見えるように隠す。だから僕は"五老星"がキライだ』
「クハハ…!!でかく出たじゃねェか。政府の最高機関が嫌いとは、海兵らしからぬ言動だ。それを知ったら心証を悪くするぞ」
『キライなものはキライなんだ。それに僕は隠していないから、あの人達はそれを知っている。キミの交渉のひとつにはならないよ』
「ますますわからねェな…。嫌ってるのに従うのか?」
『そうだよ。いや……違うな。僕はセンゴクサンやクザンクンに従っているんだ。"五老星"じゃない』
「センゴク達の命令は元を正せば"五老星"の意向だ」
『それでも、センゴクサンやクザンクンなら聞ける』
「……クハハハ。とんだ忠誠心だな。だが、嫌いじゃねェ」
『……僕は自分が決めた人にしか忠誠を誓わない。それがセンゴクサンでありクザンクンだ。―――つまり僕が、キミの言うことは聞くことはない…!』
清々と、クロコダイルの目を見てアルトは言った。クロコダイルは葉巻を吹かす。
「……えらく嫌われたものだな」
『"裏"が見え見えの人ってキライなんだ。悪いね』
「!」
クロコダイルの目つきが一瞬鋭くなった。
『まぁ、キミが大人しく七武海をしてる内は問題ないさ』
「……大人しくねェ。しなかったらどうなるんだ?」
『ん?こうするだけさ』
アルトは銀色の銃を黒のキングに突きつける。そして引き金を握った。
バンッ……!!
銃の衝撃で黒いキングは、粉々に崩れ落ちる。アルトは銃を掲げた。
『わかりやすいだろ』
「クッ、ハハハ…!!ハハハハハハハ!!」
頭を抱えて大笑いするクロコダイル。アルトは銃をしまいながら、それを見る。クロコダイルは今にも笑い転げるのではないかというくらい大きな声で笑っていた。
『……』
「失敬。若さ故の言動に笑いを堪えられなかった。せっかくだキミにひとつ教えておこう」
『?』
クロコダイルはさっきキングが壊されたチェス盤に手を置く。一歩下がってそれに目をやるアルト。
クロコダイルは口角をニヤッとあげ、ほほ笑む。瞬間、チェス盤は机ごと砂と化した。
「キミが学ぶべきは敵わない相手がいることだ」
『チェス盤を砂に出来るだけで敵わないとは……――!』
ガンッとアルトは壁に背中を打ちつける。その首元には金色のフックが鈍く光っていた。
『……ッ!!』
ギリギリとアルトの喉元にフックをねじ込むクロコダイルは手に力を込める。
「図に乗るなよ、小僧…!!所詮てめェは海軍の犬。おれとは立っている場所が違うんだ」
『……フンッ。そんな場所、こっちから、願い……下げ、だッ』
「!」
クロコダイルはカッとなってフックを振り上げた。そのままアルトの頭をぶんなぐる。
ゴンッ!!……ズザザザザー…ドン!!!
『……ッ』
床に叩きつけられたアルト。クロコダイルはそんなアルトを見下ろした。
『痛いな……』
ふらつきながらと立ち上がる。クロコダイルはそんなアルトを尻目に、黒皮の椅子に腰かけた。
「とっとと失せろ。目障りだ」
『……ハァ。下に来いとか、失せろとか。いいたい放題だな。まぁ、いい。仕事は終わったから希望通り、帰るよ』
アルトは身体についた埃を払うと、クロコダイルに背を向けて、扉に向かう。
「……」
クロコダイルは無防備に背中を向けるアルトに手を伸ばすと、砂がフワッと部屋に舞った。舞った砂が徐々に鋭利なナイフの様に成形される。砂のナイフがアルトの背を捉えた。
『……』
アルトがクロコダイルの部屋の扉に手をかける。瞬間、クロコダイルは伸ばした掌をガッと握った。
キィィィ……バタン。コツコツコツコツ…
「……」
アルトは何事もなかったかのように部屋を出て行った。クロコダイルは伸ばした手を口元に持ってくると葉巻を口から離し、深く息を吐き煙を吐き出す。
「……殺すには惜しいか……」
クロコダイルはそう言うと、葉巻を咥えなおし、砂のナイフを消し去った手を眺める。フッと冷笑を浮かべた。
「殺さなかったのね、あの海兵」
「ニコ・ロビンか」
「その名で呼ばないでと、言わなかったかしら」
クロコダイルの部屋に現れたのはニコ・ロビンことミス・オールサンデーだ。
「フフッ…そうだったな。どうした?盗み聞きか」
「あなたが私を海軍に売らないか見ていたのよ」
「んあ?ビジネスの相手を売る訳ねェだろ」
「……。なぜ、さっきの海兵を生かしたの?あなたなら殺していてもおかしくない相手だったわ」
「クハハ…。今は計画の下準備の段階だ。こんなところで尻尾を出す訳にはいかねェだろう」
クロコダイルはワインに口をつける。ミス・オールサンデーはふーんとクロコダイルを嘲るように冷笑を浮かべた。
「あの海兵は知っているような口ぶりだったわね。バレたということはないの?」
「フン。馬鹿をいうんじゃねェ。あれは安い脅しだ。何も企まない海賊はいねェからな。
あいつはおれがボロを出すのを待ってただけだ」
「……」
「しかし笑えるな。あの小僧、海軍がおれに打ってきた楔(クサビ)らしい」
ミス・オールサンデーは腕を組む。
「海軍本部中将、"ゼロ"のアルト。彼は要注意人物の一人よ」
「動向は探っておけ。いつか地べたに這いつくばって部下にしてくれと懇願するようになるかもしれんからな。クハハハ…!!」
クロコダイルはそう言うとパリンッとワイングラスを床に落とした。粉々になるグラスには目を向けず、地下の水槽に降りて行く。
「そう簡単な相手には思えないけど……」
ミス・オールサンデーはクロコダイルのいなくなった部屋でポツリと呟いた。
fin
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リクエスト自体は「インペルダウン」だったんですけど、捕まってるサーに会いに行くアルトがイメージ出来なくて、サーが英雄時代のアラバスタになりましたw
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