ゼロ
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黒電伝虫が通話を拾った。通話と言っても一方的に、しかもたった一言だけ呟いて切られた通話だった。
だが、その一言はおれが船を出す理由として十分な言葉で、次の瞬間にはクルーに出航の指示を出していた。
「……」
予定の島に辿り着いたおれは、クルーに待機を命じ、自身は島に降りる。
ここはある孤島だ。人の手が加えられていない自然だけの世界。それほど大きくないこの島のどこかにあいつがいる。
ザクザクと海岸を歩いた。ふと、波際に人が倒れているのが目に入る。
―――ドクンッと胸が鳴った
おれは焦る気持ちを抑え、ゆっくりと人影に近づく。
仰向けで押し寄せる小さな波に左半分が覆われいるあいつは静かに目を瞑っている。まるで眠っているようだ。
ふと眺めた頭から足先まで影みたいに黒い姿は以前と何も変わってなかった。
『何をしに来たの……?』
緑の瞳がゆっくりと開き、まっすぐおれを見る。不機嫌そうな顔も以前と変わらない。
「―――アルト」
『海賊に名を呼ばれたくない』
「……なぜ、そんなところにいる?」
最近アルトが能力者になった、とおれは聞いていた。なんでも部下を助けるためになったらしい、と。
『海に入ると力が抜けるようになった』
「?それはそうだ。悪魔の実の能力者は海に嫌われるからな」
『今までなら能力者を助けられていたのに、もう助けることは出来ない』
「……青キジは海に落ちることはないだろう?」
『クザンクンは落ちないよ。彼はそんなヘマはしない』
「?……誰のことを言ってるんだ?」
アルトは目を細める。そして反らした。
『昔、僕の友達だった奴の話だ。能力者のくせに部下のために海に落ちた』
「……それをたまたま任務中だったお前が助けてくれたな」
思い出した。海に落ちかけた部下を寸でのところで助けたのはよかったが、自身の勢いを殺せず誤って海に落ちてしまった。
海に沈んだ途端、身体の力が抜け、ぼーっと意識が遠くのを感じたその時、大きな水しぶきと共にアルトがおれの手を掴んだのだ。
『でももうそれも出来ない。僕も同じになってしまったから』
アルトは目を空に向ける。どこか遠くを見ていた。
「……お前が能力者であってもおれがお前に抱く思いは変わらないよ」
『置いて行ったのに……?』
「……必ず迎えに行くと言っただろ」
『僕は海賊になると言ってはいない』
「海賊にはならなくていい」
『!?……何を訳のわからないことを……』
「おれの側に居てくれ」
『!』
―――ただ、おれの側にいてくれるだけでいい
おれはアルトにそう告げた。アルトはおれに視線を向け、その綺麗な緑の瞳を大きく見開く。
「これがおれの本心だ。アルト」
おれはアルトに手を差し出す。本心に対する答えを求めた。
『僕は……この海でこのまま死んでもいいと思っていた』
ポツリ、ポツリとアルトは呟く。
「……」
『キミが側にいないなら、せめて……キミがいるだろうこの海で死のうと』
アルトは差し出したおれの手にゆっくりと手を伸ばす。その緑の瞳からは一筋の涙が流れた。
「……アルト……!!」
アルトの手がおれの手に届いた瞬間、おれはアルトの手を引く。反動でアルトの身体が起きあがる。おれはそんなアルトを強く抱きしめた。
「すまない」
『……いつもそうだ』
おれの肩にアゴをのせるアルトの声がおれの耳に聞こえる。背中に回ったアルトの手がギュッとおれの服を握った。
『遅いんだよ……キミは』
「悪かった」
『ずっと……言ってたんだよ』
―――……キミに逢いたい
おれは黒電伝虫で聞いたその言葉を思い出す。
「聞こえた。だから迎えに来たんだ。もう離れない」
『……本当に?』
「ああ、次はない」
おれはアルトを強く抱きしめる。もう絶対離さないと心に刻んで。
「アルト、愛してる」
【届いた声】
fin
*********
アルトがかなり乙女になりました(笑)
だが、その一言はおれが船を出す理由として十分な言葉で、次の瞬間にはクルーに出航の指示を出していた。
「……」
予定の島に辿り着いたおれは、クルーに待機を命じ、自身は島に降りる。
ここはある孤島だ。人の手が加えられていない自然だけの世界。それほど大きくないこの島のどこかにあいつがいる。
ザクザクと海岸を歩いた。ふと、波際に人が倒れているのが目に入る。
―――ドクンッと胸が鳴った
おれは焦る気持ちを抑え、ゆっくりと人影に近づく。
仰向けで押し寄せる小さな波に左半分が覆われいるあいつは静かに目を瞑っている。まるで眠っているようだ。
ふと眺めた頭から足先まで影みたいに黒い姿は以前と何も変わってなかった。
『何をしに来たの……?』
緑の瞳がゆっくりと開き、まっすぐおれを見る。不機嫌そうな顔も以前と変わらない。
「―――アルト」
『海賊に名を呼ばれたくない』
「……なぜ、そんなところにいる?」
最近アルトが能力者になった、とおれは聞いていた。なんでも部下を助けるためになったらしい、と。
『海に入ると力が抜けるようになった』
「?それはそうだ。悪魔の実の能力者は海に嫌われるからな」
『今までなら能力者を助けられていたのに、もう助けることは出来ない』
「……青キジは海に落ちることはないだろう?」
『クザンクンは落ちないよ。彼はそんなヘマはしない』
「?……誰のことを言ってるんだ?」
アルトは目を細める。そして反らした。
『昔、僕の友達だった奴の話だ。能力者のくせに部下のために海に落ちた』
「……それをたまたま任務中だったお前が助けてくれたな」
思い出した。海に落ちかけた部下を寸でのところで助けたのはよかったが、自身の勢いを殺せず誤って海に落ちてしまった。
海に沈んだ途端、身体の力が抜け、ぼーっと意識が遠くのを感じたその時、大きな水しぶきと共にアルトがおれの手を掴んだのだ。
『でももうそれも出来ない。僕も同じになってしまったから』
アルトは目を空に向ける。どこか遠くを見ていた。
「……お前が能力者であってもおれがお前に抱く思いは変わらないよ」
『置いて行ったのに……?』
「……必ず迎えに行くと言っただろ」
『僕は海賊になると言ってはいない』
「海賊にはならなくていい」
『!?……何を訳のわからないことを……』
「おれの側に居てくれ」
『!』
―――ただ、おれの側にいてくれるだけでいい
おれはアルトにそう告げた。アルトはおれに視線を向け、その綺麗な緑の瞳を大きく見開く。
「これがおれの本心だ。アルト」
おれはアルトに手を差し出す。本心に対する答えを求めた。
『僕は……この海でこのまま死んでもいいと思っていた』
ポツリ、ポツリとアルトは呟く。
「……」
『キミが側にいないなら、せめて……キミがいるだろうこの海で死のうと』
アルトは差し出したおれの手にゆっくりと手を伸ばす。その緑の瞳からは一筋の涙が流れた。
「……アルト……!!」
アルトの手がおれの手に届いた瞬間、おれはアルトの手を引く。反動でアルトの身体が起きあがる。おれはそんなアルトを強く抱きしめた。
「すまない」
『……いつもそうだ』
おれの肩にアゴをのせるアルトの声がおれの耳に聞こえる。背中に回ったアルトの手がギュッとおれの服を握った。
『遅いんだよ……キミは』
「悪かった」
『ずっと……言ってたんだよ』
―――……キミに逢いたい
おれは黒電伝虫で聞いたその言葉を思い出す。
「聞こえた。だから迎えに来たんだ。もう離れない」
『……本当に?』
「ああ、次はない」
おれはアルトを強く抱きしめる。もう絶対離さないと心に刻んで。
「アルト、愛してる」
【届いた声】
fin
*********
アルトがかなり乙女になりました(笑)