オンジウム
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今日はジンが夜の見張りの日。
ジンは見張り台の屋根の上から、コーヒーをたしなみながら辺りに目を配っていた。
コツコツコツコツ……
『?』
そんなジンの耳にヒールが床を叩く音が入って来た。
音が指す人物は、女性。場所はどうやら食堂の上、みかんの木や花壇があるあのスペースのようだ。
ジンはコーヒーの保温容器を手に持つと、もう片方の手でシルクハットを抑える。
そしてフッと細かな紙になったかと思えば、見張り台の屋根から消えてしまった。
「……」
一方、食堂の梯子から上のスペースに現れたロビンはランプに火をつけ、花壇に近づく。
島の気候に入って3日、寒さから冬島らしい。白く息をはくロビンの頬をスーっと冷気が撫でた。途端にブルッと身体が震える。
「ちょっと、薄着過ぎたかしら」
ロビンは空いている左手で右の腕をさする。しかし、フワッと暖かい何かに包まれた。
「!」
ロビンは驚き、その何かに触れる。それは優しい肌触りの白い布のような……
「紙……」
ロビンはそう呟くと。自分の後方を見た。そこには予想通りジンの姿が……。
『お声をかける前に失礼しました。寒そうでしたので、つい…』
ジンはシルクハットをあげ、ロビンに会釈する。
ロビンはそんなジンをクスッと笑うと、掛けられた紙の布を引き寄せた。
「驚いたわ。でも、ありがとう。とてもあたたかい」
『それは良かった。紙は風を通さないので。こういう寒い日には役立ちます』
ジンはシルクハットをなおしながら言う。ロビンはランプを適当な場所に置くと尋ねた。
「よくわかったわね。ランプをつけたのは今よ」
『夜目が利くもので。それに今日は星が多い夜。比較的明るいですよ』
「星……?」
ロビンは空を見た。今日は月も影を潜める日で、辺りは暗い。
しかしその代わりに空高くには沢山の星が散りばめられていた。
「本当ね…」
『ところでロビン。こんな遅くにどうされたんですか?』
「花を見に来たの」
『花…ですか?』
花壇に目を移したロビンが花をチェックしながら言う。
「寒いところが苦手な花があるの。フランキーに言って対策を考えているのだけど、心配で……」
『なるほど……。次は冬島。雪が降る可能性もありますからね』
「そうなの。ちょっとごめんさいね…」
『お気づかいなく』
ロビンが花の手入れに熱を入れ始める。ジンはそんなロビンを静かに見守っていた。
「ずっと見られていると恥ずかしいわ」
ロビンは手の土を払いながら振り返る。ジンはハッとした
『失礼しました……。ついロビンに見とれて』
「フフ…相変わらずお世辞が上手ね」
『お世辞ではないのですが……。ロビン、その花の名前は何ですか?』
ロビンが熱心に世話をしていた花の名を尋ねる。
「これは“オンシジウム”と言う花よ」
『“オンシジウム”……?もしかして“ダンシングレディ・オーキッド”ですか?』
「ええ。そうとも言うわね」
『花言葉は“清楚”“美しく瞳”“遊び心”……』
「あら、よく知ってるわね」
『貴女に出逢ってから花のことはたくさん勉強しましたから』
「そうなの?」
『ええ。でも現物を見たのは初めてです』
ジンはそう言うとシルクハットを取り、ロビンに深くお辞儀をする。
突然のことでロビンは目を丸くした。
「??なぁに??」
『ロビン、よろしければ僕と“一緒に踊って”頂けませんか?』
「?」
『“ダンシングレディ・オーキッド”の4つ目の花言葉です』
ジンはシルクハットをかぶると手をロビンに差し出す。
「土をいじっていたから、汚れてるわよ」
『どんなロビンもお美しいですよ』
ジンの言葉にロビンは苦笑する。そして差し出されたジンの手に自分の手を乗せた。
ジンはロビンの手を引く。
「私、ワルツしか知らないけど構わない?」
『ええ、もちろん。波の音を楽しみながら踊りましょう』
ジンはロビンの腰に手を添える。それに倣いロビンはジンの肩に手を添えた。
【オンシジウム】
「ジン、リードが上手いわね」
『お誉め頂き、光栄です』
「もう少し踊ってくれる?」
『喜んで』
波が音を奏でる船の上で二人の男女が軽やかに踊る。
星が輝く空の下で、穏やかな明日を夢見ながら―――
fin
→あとがき
ジンは見張り台の屋根の上から、コーヒーをたしなみながら辺りに目を配っていた。
コツコツコツコツ……
『?』
そんなジンの耳にヒールが床を叩く音が入って来た。
音が指す人物は、女性。場所はどうやら食堂の上、みかんの木や花壇があるあのスペースのようだ。
ジンはコーヒーの保温容器を手に持つと、もう片方の手でシルクハットを抑える。
そしてフッと細かな紙になったかと思えば、見張り台の屋根から消えてしまった。
「……」
一方、食堂の梯子から上のスペースに現れたロビンはランプに火をつけ、花壇に近づく。
島の気候に入って3日、寒さから冬島らしい。白く息をはくロビンの頬をスーっと冷気が撫でた。途端にブルッと身体が震える。
「ちょっと、薄着過ぎたかしら」
ロビンは空いている左手で右の腕をさする。しかし、フワッと暖かい何かに包まれた。
「!」
ロビンは驚き、その何かに触れる。それは優しい肌触りの白い布のような……
「紙……」
ロビンはそう呟くと。自分の後方を見た。そこには予想通りジンの姿が……。
『お声をかける前に失礼しました。寒そうでしたので、つい…』
ジンはシルクハットをあげ、ロビンに会釈する。
ロビンはそんなジンをクスッと笑うと、掛けられた紙の布を引き寄せた。
「驚いたわ。でも、ありがとう。とてもあたたかい」
『それは良かった。紙は風を通さないので。こういう寒い日には役立ちます』
ジンはシルクハットをなおしながら言う。ロビンはランプを適当な場所に置くと尋ねた。
「よくわかったわね。ランプをつけたのは今よ」
『夜目が利くもので。それに今日は星が多い夜。比較的明るいですよ』
「星……?」
ロビンは空を見た。今日は月も影を潜める日で、辺りは暗い。
しかしその代わりに空高くには沢山の星が散りばめられていた。
「本当ね…」
『ところでロビン。こんな遅くにどうされたんですか?』
「花を見に来たの」
『花…ですか?』
花壇に目を移したロビンが花をチェックしながら言う。
「寒いところが苦手な花があるの。フランキーに言って対策を考えているのだけど、心配で……」
『なるほど……。次は冬島。雪が降る可能性もありますからね』
「そうなの。ちょっとごめんさいね…」
『お気づかいなく』
ロビンが花の手入れに熱を入れ始める。ジンはそんなロビンを静かに見守っていた。
「ずっと見られていると恥ずかしいわ」
ロビンは手の土を払いながら振り返る。ジンはハッとした
『失礼しました……。ついロビンに見とれて』
「フフ…相変わらずお世辞が上手ね」
『お世辞ではないのですが……。ロビン、その花の名前は何ですか?』
ロビンが熱心に世話をしていた花の名を尋ねる。
「これは“オンシジウム”と言う花よ」
『“オンシジウム”……?もしかして“ダンシングレディ・オーキッド”ですか?』
「ええ。そうとも言うわね」
『花言葉は“清楚”“美しく瞳”“遊び心”……』
「あら、よく知ってるわね」
『貴女に出逢ってから花のことはたくさん勉強しましたから』
「そうなの?」
『ええ。でも現物を見たのは初めてです』
ジンはそう言うとシルクハットを取り、ロビンに深くお辞儀をする。
突然のことでロビンは目を丸くした。
「??なぁに??」
『ロビン、よろしければ僕と“一緒に踊って”頂けませんか?』
「?」
『“ダンシングレディ・オーキッド”の4つ目の花言葉です』
ジンはシルクハットをかぶると手をロビンに差し出す。
「土をいじっていたから、汚れてるわよ」
『どんなロビンもお美しいですよ』
ジンの言葉にロビンは苦笑する。そして差し出されたジンの手に自分の手を乗せた。
ジンはロビンの手を引く。
「私、ワルツしか知らないけど構わない?」
『ええ、もちろん。波の音を楽しみながら踊りましょう』
ジンはロビンの腰に手を添える。それに倣いロビンはジンの肩に手を添えた。
【オンシジウム】
「ジン、リードが上手いわね」
『お誉め頂き、光栄です』
「もう少し踊ってくれる?」
『喜んで』
波が音を奏でる船の上で二人の男女が軽やかに踊る。
星が輝く空の下で、穏やかな明日を夢見ながら―――
fin
→あとがき