渡り鳥のユメ
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夜、今日は船番を引き受けたジンは見張り小屋に座っていた。
『……』
コンコン…
「ジン。少しいいかしら?」
ガチャっとジンは扉を開ける。扉の先にいたのはロビンで、手にはカップを2つ持っていた。
『ロビン。どうしました?』
「コーヒーをもらって来たの。一緒にどう?」
『はい、頂きます』
ジンはカップを受け取りロビンを見張り小屋へ招く。
『ロビンはこんな時間まで起きてて良いのですか?』
「ええ。さっきまで本を読んでいたから、いつものことなのよ」
『勉強家ですね、ロビンは』
「そうかしら。たまにあなたみたいに触っただけで内容が解ればいいと思うときはあるわ」
『……なるほど。しかし面白味は完全に無くなりますよ』
「フフ」
たわいの無い話をする二人。
『ロビン、貴女は変わりましたね。とても明るくなった』
「そうね。彼らに出会って…居場所を見つけることが出来たわ」
『素晴らしいことですね』
ジンは笑う。ロビンは真面目な顔でジンを見る。
「ねぇ…ジン。あなたは一体何に怯えているの?」
『………』
ロビンの言葉にジンは黙る。ロビンは続ける。
「あなたはここが気に入っているでしょう? みんなもあなたを信じてる。なのになぜ、あなたは……」
『……ロビンは僕の能力の意味を一番お分かりになったはずです』
「……確かにとても危険な能力よ。でも、彼らなら大丈夫!! 私を闇から救ってくれたのは彼らなの。あなただって助けてくれる、信じてくれるわ」
『違うんです』
ロビンの言葉にジンははっきり否定の声を上げる。やや大きな声にロビンは驚きジンを見る。ジンはすみません、と声量を戻し話し始めた。
『皆さんのことを信じていないんじゃない……僕は……僕自身が、信じられないのです』
吐き出すように、切羽詰まった声で話すジンにロビンは息を飲んだ。ジンは目を背ける。
『僕は簡単に人を殺して来ました、この“声”で。何百人も無差別に……』
「それは“白紙の日 ”のこと?」
ロビンの言葉に驚き、目をロビンに向けるジン。
『………ロビンは知っているのですか?』
「残念だけど、ほんの概要しか。クロコダイルから聞いたことがあるの」
『サー・クロコダイル…彼は“元”七武海ですね。どんな話でしょうか?』
「あなたが一瞬で数百人もの海軍兵士を殺したという話。クロコダイルは能力のことは知らなかったわ」
『そうですか…』
ジンの瞳が揺らぐ。
「事実なの…?」
『…ええ、事実です。“ブランクペーパー・デイ”は“白紙の日”、つまり政府が“無かったことにしたかった”日と言う意味です。僕がその日を作った』
「………譲り受けた人のために…?」
ロビンのその問いにジンは答えない。
『ロビン、あなたの敵は世界政府…いえ、世界の闇ですか?』
「…ええ、世界の闇よ。あなたの敵は?」
ロビンは真剣にジンと向き合う。ジンもロビンの目を見た。
『僕の敵は…“僕自身の闇”です』
「!!?」
『…………』
ジンはコーヒーを持って立ち上がる。
『……もう、やめましょう。これ以上、今の僕が話せることはありません。……見張りに戻ります』
「待って!!」
ガタンっと立ち上がるロビン。ジンは振り向かずロビンに背を向けたまま止まる。
「ジン、最後にひとつだけ教えて。あなたの夢はなに?」
『………』
「私は真実を見つけるために旅をしている。みんなだって海賊王や大剣豪になるために旅をしているわ。あなたは……どんな夢を持って旅をしているの?」
ロビンは緊張の面持ちでジンを見る。ロビンから見ても今のジンはいつもの飄々とした彼ではない。どこか消えてしまいそうな存在に見えていた。
『…………僕のユメ…』
ジンは空いている右手で眼帯に静かに触れる。そしてロビンに振り返り、ニコッと笑う。
『……僕の“ユメ”はラフテルでこの目と、能力と共に永遠に“死ぬ”ことです』
「!?」
『では、失礼しますね』
ガチャ
ジンは見張り小屋から出ていった。
「………そんなの哀しすぎるわ」
ロビンは最後のジンの笑顔が偽物だと知る。あんな哀しい笑顔をロビンは見たことがなかった。
カップを小屋の前に置き、マストの一番上に立つジン。今日は月が淡く雲にかかるおぼろ月だ。ジンはそれを無機質に眺め、目を閉じる。
まぶたの裏に浮かぶのはヤケに白い床に落ちる赤。そして腕の中にいる黒髪の少女。
―――ジン、この能力はここに置いてはいけない
――わかっています。
―――あなたには…辛いことを頼んじゃうね。本当は私が……
――そんな顔しないでください。僕が望んでいることですよ。
―――ジン…泣かないで、笑って…
――泣いて…なんていませんよ。お嬢様は相変わらず心配性ですね。さぁ、今はお休みください。
―――ジン、どうかこの能力をラフテルへ。誰にも届かない所へ。
――必ず、お連れします、最果ての地ラフテルへ。
ジンは次に浮かぶ映像を視たくないと目を開ける。
『僕は貴女に会うために、きっとこの能力を使い続ける。僕の自己満足のために、ロビンやルフィさんをいつか殺してしまうことになりかねない。だから……』
おぼろ月は厚い雲に隠れ辺りから星の光がなくなる。ジンはポツリと誰にも聞こえない声で呟いた。
『僕は…独りでいい』
⇒あとがき
『……』
コンコン…
「ジン。少しいいかしら?」
ガチャっとジンは扉を開ける。扉の先にいたのはロビンで、手にはカップを2つ持っていた。
『ロビン。どうしました?』
「コーヒーをもらって来たの。一緒にどう?」
『はい、頂きます』
ジンはカップを受け取りロビンを見張り小屋へ招く。
『ロビンはこんな時間まで起きてて良いのですか?』
「ええ。さっきまで本を読んでいたから、いつものことなのよ」
『勉強家ですね、ロビンは』
「そうかしら。たまにあなたみたいに触っただけで内容が解ればいいと思うときはあるわ」
『……なるほど。しかし面白味は完全に無くなりますよ』
「フフ」
たわいの無い話をする二人。
『ロビン、貴女は変わりましたね。とても明るくなった』
「そうね。彼らに出会って…居場所を見つけることが出来たわ」
『素晴らしいことですね』
ジンは笑う。ロビンは真面目な顔でジンを見る。
「ねぇ…ジン。あなたは一体何に怯えているの?」
『………』
ロビンの言葉にジンは黙る。ロビンは続ける。
「あなたはここが気に入っているでしょう? みんなもあなたを信じてる。なのになぜ、あなたは……」
『……ロビンは僕の能力の意味を一番お分かりになったはずです』
「……確かにとても危険な能力よ。でも、彼らなら大丈夫!! 私を闇から救ってくれたのは彼らなの。あなただって助けてくれる、信じてくれるわ」
『違うんです』
ロビンの言葉にジンははっきり否定の声を上げる。やや大きな声にロビンは驚きジンを見る。ジンはすみません、と声量を戻し話し始めた。
『皆さんのことを信じていないんじゃない……僕は……僕自身が、信じられないのです』
吐き出すように、切羽詰まった声で話すジンにロビンは息を飲んだ。ジンは目を背ける。
『僕は簡単に人を殺して来ました、この“声”で。何百人も無差別に……』
「それは“
ロビンの言葉に驚き、目をロビンに向けるジン。
『………ロビンは知っているのですか?』
「残念だけど、ほんの概要しか。クロコダイルから聞いたことがあるの」
『サー・クロコダイル…彼は“元”七武海ですね。どんな話でしょうか?』
「あなたが一瞬で数百人もの海軍兵士を殺したという話。クロコダイルは能力のことは知らなかったわ」
『そうですか…』
ジンの瞳が揺らぐ。
「事実なの…?」
『…ええ、事実です。“ブランクペーパー・デイ”は“白紙の日”、つまり政府が“無かったことにしたかった”日と言う意味です。僕がその日を作った』
「………譲り受けた人のために…?」
ロビンのその問いにジンは答えない。
『ロビン、あなたの敵は世界政府…いえ、世界の闇ですか?』
「…ええ、世界の闇よ。あなたの敵は?」
ロビンは真剣にジンと向き合う。ジンもロビンの目を見た。
『僕の敵は…“僕自身の闇”です』
「!!?」
『…………』
ジンはコーヒーを持って立ち上がる。
『……もう、やめましょう。これ以上、今の僕が話せることはありません。……見張りに戻ります』
「待って!!」
ガタンっと立ち上がるロビン。ジンは振り向かずロビンに背を向けたまま止まる。
「ジン、最後にひとつだけ教えて。あなたの夢はなに?」
『………』
「私は真実を見つけるために旅をしている。みんなだって海賊王や大剣豪になるために旅をしているわ。あなたは……どんな夢を持って旅をしているの?」
ロビンは緊張の面持ちでジンを見る。ロビンから見ても今のジンはいつもの飄々とした彼ではない。どこか消えてしまいそうな存在に見えていた。
『…………僕のユメ…』
ジンは空いている右手で眼帯に静かに触れる。そしてロビンに振り返り、ニコッと笑う。
『……僕の“ユメ”はラフテルでこの目と、能力と共に永遠に“死ぬ”ことです』
「!?」
『では、失礼しますね』
ガチャ
ジンは見張り小屋から出ていった。
「………そんなの哀しすぎるわ」
ロビンは最後のジンの笑顔が偽物だと知る。あんな哀しい笑顔をロビンは見たことがなかった。
カップを小屋の前に置き、マストの一番上に立つジン。今日は月が淡く雲にかかるおぼろ月だ。ジンはそれを無機質に眺め、目を閉じる。
まぶたの裏に浮かぶのはヤケに白い床に落ちる赤。そして腕の中にいる黒髪の少女。
―――ジン、この能力はここに置いてはいけない
――わかっています。
―――あなたには…辛いことを頼んじゃうね。本当は私が……
――そんな顔しないでください。僕が望んでいることですよ。
―――ジン…泣かないで、笑って…
――泣いて…なんていませんよ。お嬢様は相変わらず心配性ですね。さぁ、今はお休みください。
―――ジン、どうかこの能力をラフテルへ。誰にも届かない所へ。
――必ず、お連れします、最果ての地ラフテルへ。
ジンは次に浮かぶ映像を視たくないと目を開ける。
『僕は貴女に会うために、きっとこの能力を使い続ける。僕の自己満足のために、ロビンやルフィさんをいつか殺してしまうことになりかねない。だから……』
おぼろ月は厚い雲に隠れ辺りから星の光がなくなる。ジンはポツリと誰にも聞こえない声で呟いた。
『僕は…独りでいい』
⇒あとがき