渡り鳥と海へ

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「おっ、さっきの所に帰って来た」

山からゾロとジンが出てきた。


『(さて、ここまで連れてきたら大丈夫でしょう。)---ロロノア・ゾロさん。ここからはわかりますね?』

「あ?」

『……』

ジンの言葉にゾロはキョロキョロと回りを見る。


「港はどっちだ?」

『(ダメですか…)』

ジンは逃げるタイミングをさっきから何度か逃している。


『(荷物はまだお店なので大丈夫でしょう)』

「おい」

『! どうしましたか?』

「やっぱり仲間にならねぇのか?」

『はは。ロロノア・ゾロさんまでご冗談を』

「冗談じゃねぇよ」

ゾロが強く否定する。ジンはゾロの真剣な眼差しに目をそらす。


『…すみません』

そのまま沈黙が続き、しばらく歩くと日が登り始めた。程なくすると港が見えてくる。港の真ん中にはすでにサニー号が着けており、朝陽でビークヘッドが輝きを放っていた。ついジンも言葉を発する。


『予想以上にかわいらしいビークヘッドですね』

「まぁな。いい船だろ」

『ええ』

ジンはシルクハットをあげて、ビークヘッドから船全体を流し見る。


「おーーい、ゾロ! カッコウ!!」

甲板から大きく手を振るのはルフィ。

「早く乗れ! 魚人島に行くぞー!!」

遠くから見ただけでもわかるくらいワイワイと盛り上がっている。ジンは賑やかだと笑い、歩みを止める。


『それではロロノア・ゾロさん。改めて、よい船旅を』

ジン…」

ゾロはジンを見る。そのときサニー号からナミが叫ぶ。


「ゾロ! 早く乗って! 海軍が来ちゃう!! カッコウも早く!」

『えっ!? …僕は』

「ゾロ! カッコウも連れてこい!!」

ナミに続きルフィが叫ぶ。ゾロはそれを聞いて、ああっと頷く。


「観念するんだな」

『観念だなんて…僕は荷物を取りに』

ガシッ

ゾロは一瞬でジンを脇に抱えた。

「おっ、軽いな」

『なっ! 離してください!』

「さて、行くか。おれが案内してやるよ。サニー号に」

道案内のお礼と言わんばかりのゾロ。ジンは抵抗を試みるががっちり捕まれている。


『僕は荷物を取りに行かないと行けないのです!!…こうなったら能力で』

カッコウが本当に帰って来た!!」

『チョッパーくん…?』

抱えられているジンから見れるのは小さな体で精一杯手を振っているチョッパー。


「なんだ大歓迎じゃねぇか。ジン、逃げんじゃねぇぞ」

『………』

チョッパーの姿を見て力が抜けたジン。ゾロは笑いながら梯子に掴まり器用に片手で登っていく。


「よっと」

ゾロと抱えられたジンが梯子から甲板に乗ると謀ったようにナミが声をあげる。


「ルフィ!」

「おう! 野郎ども、出発だぁ――!!」
「おー!!」

サニー号が待ってましたと急速に動く向きを変え、海へ走り出した。
勢いよく進むサニー号。すぐに港を越える。

『…ロロノア・ゾロさん。そろそろ降ろしてください』

「あっ、わりぃ」

パッと力が抜かれ手を離される。軽く甲板に立ったジンは裾をパンパンと払う。海岸に目を向けてみたが、このスピード、もう岸には戻れないだろうっとジンは思った。
はぁ…とため息をつく。


「ゾロ! カッコウ! ケガはないか?」

「あぁ、ねぇよ」

『同じく大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。チョッパーくん』

「お、お礼言われても嬉しくねぇぞ! だっておれは医者だからな」

『チョッパーくんはお医者さんだったんですか』

ジンは感心する。


「そうよ。うちの優秀な医者なの」

照れてクネクネしているチョッパーに目をやりつつ出た言葉にナミが答える。そして続けた。


「とりあえず、カッコウ。あなたはこの船に乗ったんだからタダじゃ降ろさないわよ。ゆっくり話を聞くから覚悟しなさい!」

『…かなり無理矢理でしたが』

「なんか言った?」

『いえ…』

二度目のため息をつきかけたとき甲板の上にある食堂の扉が開く、そこにはエプロン姿のサンジ。


「おーい、朝食の準備が出来たぞ―」

「「メシだ―!」」

その言葉にルフィとチョッパーが食堂へ駆け出す。


「しまった!! はやく行かねぇとルフィに全部食われちまう!!」

ウソップも2人を追いかけ食堂に入って行った。


「私たちも行きましょう」

「ええ」

連れ立って食堂に行くナミとロビン。


「ほら、行くぞ」

ゾロがシルクハットの上からジンの頭に手を置きポンと軽く叩く。それにジンは驚く。


『僕もですか?』

ジンとゾロの様子を見て感づいたサンジが声を上げる。


「おい! カッコウ! てめえも食ってけよ。ちゃんと用意してある」

「だとよ。めし食わねぇとラブコックにどやされるぜ」

『黒足のサンジさんはコックさんですか…』

ジンは用意されている食事を無下にする訳には行かないっと、ズレたシルクハットかぶりなおし、ゾロについて食堂に入って行った。


「「「いただきます!!」」」

みんなが声をあげ一斉に食べ始める。朝食はカツや卵のサンドイッチとスープだった。


『頂きます』

ジンはスープを一口飲む。そしてあらかじめ取り分けられたサンドイッチを食べた。味わう中でジンの目の色が変わる。


『すごく…おいしいです』

「そりゃ、どーも」

ニコニコと美味しそうに食べるジン。サンジはそれを見て満足したように笑う。ロビンもそれを見てフフっと笑う。ジンは食べながら失礼のない程度に周りを見る。ワイワイとかなり賑やか食事。
こうやって食事を囲むことがあまりないジンにはとても新鮮な光景だった。




数分後




「ふぅー食った食った」
『ご馳走様でした』

大量にあったサンドイッチやスープはきれいさっぱりなくなった。サンジが素早く皿を下げる。そして程なくして、サンジは食後のお茶を入れたカップを配り、席についた。
いつもは食後すぐにバラバラになるメンバーだが、今日は全員が揃ってお茶を啜る。一息ついたところでナミが話す。


「じゃあ、ご飯も済んだし本題に入りましょう」

みんな頷く。ナミはそれを見届けてからジンに目を向けた。ジンはカップを遊ばせながら全体を見渡す。


「あんたにいろいろ聞きたいからちゃんと答えて」

『答えられることなら構いません』

静かに言うジン。ナミはまぁ、いいわと言い、質問をぶつける。


「あなたは何者?」

『海賊です』

「それは聞いた。一人海賊って何なの?」

『文字通り、一人で海賊をしているのでその名がつきました』
「海賊なのに一人っておかしくないか?」

ウソップが言う。


『そうですね。しかし海賊狩りとして動くより海賊と名乗った方が都合上いいのです』

「都合上ってどういうことだ?」

フランキーが首を捻る。


『…手配書が出ているので』

「あんた賞金首なの!?」

『はい、賞金首です。ロビンからお聞きではないのですか?』

「ええ。ルフィがあなたの口から聞きたいと言ったから言わなかったわ」

『なぜ、聞かなかったのですか? モンキー・D・ルフィさん』

「わかんねェ。でもちゃんとおまえから聞かなきゃダメだと思ったからだ」

ルフィはエッヘンっと威張る。


『……』

「ねぇ、あんた賞金額いくらなの? カッコウなんて名前聞いたことないわ」

『それはそうです。カッコウは偽名ですから』

「やっぱりね…本当の名前はジンよね?ファミリーネームはなんなの?」

『質問攻めですね』

「隠すからよ!!」

『はは。申し訳ありません。職業柄、隠すのが仕事なので』

悪びれる様子なくクスクスと笑うジンにナミはため息をつく。


「で、結局おまえは誰なんだ?」

タバコをふかしながら聞くサンジ。


『手配書を見せながらの方が早そうですね』

ジンは手のひらを合わせると、ポンッと一枚の紙を出現させる。


「「「スゲー!マジックだ!」」」

ルフィ、チョッパー、ウソップが目を輝かせる。ジンはクスッと笑い、その紙を机の真ん中に置き自己紹介を始めた。
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