渡り鳥の仰ぐ空
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今思えば、あの頂上決戦は幻のようだった。
場違いな思いで生死を分かつ戦場に立っていた僕は、きっと異質な存在だっただろう。
だけど、僕は頂上戦争のことを忘れない。
“禍々しいマグマ”が“弟を守ろうとする炎”を飲み込んだあの時。
10万以上いるはずの広場はまるで時が止まったかのように静寂に包まれた。
僕はその静寂の中、“火拳”の二つ名を持つ彼の身体から溢れる“赤”に視線を注いでいた。
『……ッ』
息がうまくできなかった。
ルフィさんに抱えられる“火拳”のエースの姿が“彼女”に重なる。あの日の光景を見せつけられている気分になった。
そんなことが頭に過ると、“火拳”のエースがルフィさんの腕から離れるのが見えた。
そのまま地面に倒れる。その姿は“火拳”のエースの“絶命”を全ての人間に知らせた。
『……!』
瞬間、ルフィさんの悲鳴が広場に響いた。
あの時のルフィさんの表情には自分を仲間にしたいと笑顔で語った時の面影はなかった。
その後は精神を壊してしまったルフィさんを“海峡”のジンベエが抱え、戦場から離脱を図る。
そこへ“七武海”であったはずの“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチが姿を現したことで戦場の混乱は加速した。
“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ。
彼は今や話題になるのも恐れられている。
それはあの“白ひげ”を死に至らしめた事実だけではなく、“白ひげ”の能力を“奪い”、その力を世界に見せつけたからだ。
次々と起こる想定外の事象は、戦況はますます悪化させる。
戦場に漂う気は人を狂気に駆り立て、殺し合わせる。正義の本拠地が、死を作り出す場所に変わることは容易だった。
僕はあの時、余裕がなかった。今みたいに客観的に周りを見ることは叶わなかった。
あの時、僕はただただ“考えろ”と頭に命じていたのだ―――――
――――頂上決戦時、マリンフォード広場
『ルフィさん…!』
走り出さずにはいられなかった。進む道をふさぐ何人も海兵・海賊を薙ぎ払い、僕はひたすら走り抜けた。
視線の先にルフィさんを捉え続けて。
「え!!?“渡り鳥”!!?」
『…―――っ!!』
ズバンッ!!
「うわっ!!」
「なっ!!“渡り鳥”!!貴様、海兵に手を挙げるなど…!!」
僕が斬った海兵が倒れるのを見て、別の海兵がサーベルを振り上げた。
僕はそのサーベルが届く前に、白い鎌を海兵に振るう。
ズバンッ!!
「ぐはっ!!?」
「なんだ!!?」
「“渡り鳥”が反…」
僕は進みたいだけだ。
『―――“道を開けなさい!!”』
「「「!!!!」」」
周辺にいた海兵・海賊達は足並みを揃え、湾の先へ行く道をつくった。
僕はぐっと重くなる胸の痛みを押し殺し、その人垣でできた道を走り抜ける。
あの時、ルフィさんは“海峡”のジンベエに連れられ、湾へ逃げていた。
白ひげ海賊団の船員が赤犬や将校達からルフィさんを守っている。
心強いと思うと共に、うらやましいと思った。
『―――まったく、失礼な考えですね』
マリンフォードから“聖地”マリージョアへ移動するために歩く道中、ジンはあの時の自分の考えのなさに後悔の声をもらした。
『(あの時は誰もがルフィさんを守ろうと必死だった。“あの日”彼女を守りたいと思った僕と同じように……)』
「…? 何か、おっしゃいましたか?」
『!……フフ。独り言ですので、お気になさらずに』
「はぁ…」
ジンは自分に顔を向けた海兵にそう返す。海兵はジンに背を向け再び歩き出した。
その後、艦に着くとジンは海兵の招きに続き、大きな船室に入る。
「それでは、早速出発いたします」
ジンは海兵が敬礼をして外に出て行くのを目の端で見届けると、また頂上戦争に思いをふけた。
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場違いな思いで生死を分かつ戦場に立っていた僕は、きっと異質な存在だっただろう。
だけど、僕は頂上戦争のことを忘れない。
“禍々しいマグマ”が“弟を守ろうとする炎”を飲み込んだあの時。
10万以上いるはずの広場はまるで時が止まったかのように静寂に包まれた。
僕はその静寂の中、“火拳”の二つ名を持つ彼の身体から溢れる“赤”に視線を注いでいた。
『……ッ』
息がうまくできなかった。
ルフィさんに抱えられる“火拳”のエースの姿が“彼女”に重なる。あの日の光景を見せつけられている気分になった。
そんなことが頭に過ると、“火拳”のエースがルフィさんの腕から離れるのが見えた。
そのまま地面に倒れる。その姿は“火拳”のエースの“絶命”を全ての人間に知らせた。
『……!』
瞬間、ルフィさんの悲鳴が広場に響いた。
あの時のルフィさんの表情には自分を仲間にしたいと笑顔で語った時の面影はなかった。
その後は精神を壊してしまったルフィさんを“海峡”のジンベエが抱え、戦場から離脱を図る。
そこへ“七武海”であったはずの“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチが姿を現したことで戦場の混乱は加速した。
“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ。
彼は今や話題になるのも恐れられている。
それはあの“白ひげ”を死に至らしめた事実だけではなく、“白ひげ”の能力を“奪い”、その力を世界に見せつけたからだ。
次々と起こる想定外の事象は、戦況はますます悪化させる。
戦場に漂う気は人を狂気に駆り立て、殺し合わせる。正義の本拠地が、死を作り出す場所に変わることは容易だった。
僕はあの時、余裕がなかった。今みたいに客観的に周りを見ることは叶わなかった。
あの時、僕はただただ“考えろ”と頭に命じていたのだ―――――
――――頂上決戦時、マリンフォード広場
『ルフィさん…!』
走り出さずにはいられなかった。進む道をふさぐ何人も海兵・海賊を薙ぎ払い、僕はひたすら走り抜けた。
視線の先にルフィさんを捉え続けて。
「え!!?“渡り鳥”!!?」
『…―――っ!!』
ズバンッ!!
「うわっ!!」
「なっ!!“渡り鳥”!!貴様、海兵に手を挙げるなど…!!」
僕が斬った海兵が倒れるのを見て、別の海兵がサーベルを振り上げた。
僕はそのサーベルが届く前に、白い鎌を海兵に振るう。
ズバンッ!!
「ぐはっ!!?」
「なんだ!!?」
「“渡り鳥”が反…」
僕は進みたいだけだ。
『―――“道を開けなさい!!”』
「「「!!!!」」」
周辺にいた海兵・海賊達は足並みを揃え、湾の先へ行く道をつくった。
僕はぐっと重くなる胸の痛みを押し殺し、その人垣でできた道を走り抜ける。
あの時、ルフィさんは“海峡”のジンベエに連れられ、湾へ逃げていた。
白ひげ海賊団の船員が赤犬や将校達からルフィさんを守っている。
心強いと思うと共に、うらやましいと思った。
『―――まったく、失礼な考えですね』
マリンフォードから“聖地”マリージョアへ移動するために歩く道中、ジンはあの時の自分の考えのなさに後悔の声をもらした。
『(あの時は誰もがルフィさんを守ろうと必死だった。“あの日”彼女を守りたいと思った僕と同じように……)』
「…? 何か、おっしゃいましたか?」
『!……フフ。独り言ですので、お気になさらずに』
「はぁ…」
ジンは自分に顔を向けた海兵にそう返す。海兵はジンに背を向け再び歩き出した。
その後、艦に着くとジンは海兵の招きに続き、大きな船室に入る。
「それでは、早速出発いたします」
ジンは海兵が敬礼をして外に出て行くのを目の端で見届けると、また頂上戦争に思いをふけた。
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