「え？」

「うおおおお！！」

ズウ…ン！！という地響きと共にオーズが起き上がった。近くにいた海兵達は驚きの声を上げる。


「まだ生きてやがった！！！さっきの衝撃で目を覚ましたんだ！！！」

「リトルオーズJr.！！！」

「………！！」

「オーズだ！！！」

「まだ息があったのか、オーズ！！！」

「フー…フー…。エ…エ゛ースぐん」

「オーズ………！！」

エースは立ち上がったオーズに目を見張る。


「撃て！！！立ち上がろうとも虫の息だ！！」

「オ～…いいよォ。わっしがやろう」

「「黄猿さん！！」」

オーズに銃を向ける海兵に黄猿が呼び掛ける。


「こういう時は…頭をぶち抜くといいよね～～…」

「ゼェ…ゼェ…」

ｶ～～～ッと黄猿の指が光る。打ち込む直前にﾊﾞｼｭ！！と水の音がした。黄猿や海兵達は上を見上げる。


「！？」

「何だアレは！！水柱！！？」

『！まさか……』

広場にいるジンは自分が貼り付けた“栞”の主が空を飛んでいるのを知り、目を見張った。


ザバァァン！！


「「「！！？」」」

水柱が弧を描き、広場に降り注ぐ。


「あ」

「あれは！！」

「「“麦わらのルフィ”！！！！」」

三大将の前に落ちた水柱。その中から現れたのは壊れたマストを抱えたルフィだ。
ジンは驚いた。


『ルフィさん……！！』

「あららとうとうここまで………。お前にゃまだこのステージは早すぎるよ」

「堂々としちょるのう…ドラゴンの息子ォ…」

「恐いね～…この若さ……」

「ハァ、ハァ……」

「(ムチャだ…)ルフィ………！！」

エースはルフィを見下ろし名を呼んだ。








「エースは返して貰うぞ～～っ！！！」

ﾌﾞﾝｯ！！！とルフィはマストを振り降ろす。


「！」

青キジは振り下ろされたマストに凍らした手を差し出した。瞬間、マストが凍る。ルフィは予期していたのか凍る前に手を離していた。


「“ゴムゴムの”……！！“スタンド乱打(ｶﾞﾄﾘﾝｸﾞ)”！！！」

「「「！！！」」」

そしてｺﾞｵｯ！！！とルフィは凍ったマストに蹴りを入れる。砕けたマストが次々に三大将を襲った。


「今、壁の向こうに飛び込んだの、エースの弟だ！！」

湾内ではワーッ！！と歓声が上がった。


「あの無鉄砲さ…兄貴にそっくりじゃねェか……！！」

息を乱しながらルフィの行動を見ていた白ひげはその姿をエースと重ねる。同時に今がチャンスだと確信した。


「オーズ！！そこにいろ！！お前の力が必要だ！！！」

「オヤッざん…」

「ジョズ！“切り札”だ！！」

「おう！！！」

「全員準備を！！！広場へ突入するぞ！！！」

「「「ウオオオオ！！！」」」





ﾊﾞｷｨﾝﾊﾟﾘｨﾝ!!ｼﾞｭﾜｧｱ!!ﾋｭﾝﾋｭﾝ!!

―――ドゴゴゴゴォン！！！


「「「！！」」」

砕けたマストが三大将を襲う。しかし自然系である三大将にはまるで効果はない。それは承知の上、ルフィの目的は大将に傷を負わすことではなかった。


「“ギア”“2(ｾｶﾝﾄﾞ)”！！」

ルフィはマストでの攻撃を“囮に”三大将の間を駆け抜ける。


「んん～～」

「！！」

「遅いねェ～～～…」

抜けたと思ったのも束の間、光が横切った。目の前には笑う黄猿の姿。そしてルフィの顔の横には黄猿の足。


ｶﾞﾝｯ！！！


「ぶっ！！！」


ガガガァァァン…！！


ルフィは黄猿の蹴りで広場の端まで飛ばされた。


「やれ！」

「「はっ」」

センゴクが処刑人に指示する。処刑人達は刀を振り上げた。ルフィは叫ぶ。


「！！エース～～！！！」


ドシュッ！！！


「！！？」

処刑人達は突然斬られた。そのまま処刑人は処刑台から転げ落ちる。


「誰だ！！」

センゴクは広場を見下ろし、処刑人達を斬った張本人を見た。


「貴様……！！“白ひげ”に旧怨あるお前は我らに都合よしと思っていたが！！クロコダイル――！！！」

「え！！？あいつ！！！」

「何だ…おれの出番じゃなかったよい…」

ルフィは驚いた。包囲壁から広場に今まさに入って来たマルコは、不死鳥の羽根を広げながら呟いた。
クロコダイルはセンゴクを睨みつける。


「あんな瀕死のジジイ、後で消すさ。―――その前にお前らの喜ぶ顔が見たくねェんだよ！！！」


ザクッ！！！


「！！！」

「「「え！！？」」」

語っていたクロコダイルの首が突然飛ぶ。周りの海兵は目を見開いた。


「………」

「オイオイワニ野郎……！！」

「ドフラミンゴ！！」

「てめェおれをﾌｯて“白ひげ”と組むのかァ！？嫉妬しちまうじゃねェかよ…ﾌｯﾌｯﾌｯ！！」

「………」

ｻﾗｻﾗとクロコダイルの顔が身体の上に現れる。その瞳はドフラミンゴに向けられていた。


「おれは誰とも組みはしねェよ…」

クロコダイルはそう言うと鉤爪でドフラミンゴに殴りかかった。








「痛ェ！！！畜生！！」

ルフィは地面をのたまわる。その先には血が滴る氷の刃。それを握る青キジはルフィを見下ろしながら言った。


「お前のじいさんは恩人だが…仕方ねェよな。男一匹選んだ死の道」

「おのれ！！！ルフィに手出しは……！！」

ハンコックは怒りに震え、飛び出そうとする。ジンはそのハンコックの腕をｶﾞｼｯ掴んだ。


「なっ！？離せ“渡り鳥”！！」

『……』

ジンは何も言わず首を横に振る。


ドンッ！！


「！！！」

ルフィにトドメを刺そうとする氷の刃にマルコは蹴りを入れた。青キジは蹴りの衝撃で吹っ飛ばされる。


「ああ…！！大将！！」

「あれは…！！」

「一番隊長！！マルコ！！！」

「3人の侵入を許した！！！能力者は包囲壁を超えてくるぞ！！！」

「元帥殿！！湾内の海賊達が妙な動きを！！！」

「！？」







湾内

「オーズに向かって海を渡れェ～～～！！！」

「何が何でも広場へ上がるんだ！！！」

湾内に取り残された海賊達は泳いで包囲壁に向かう。


「海賊達がヤケになった！！包囲壁の穴を守れ！！！」

「船も足場も失い、逆上したか！！バカな海賊共め！！！格好の標的だ、撃てェ！！！」

ストロベリー中将が砲撃を指示する。砲撃を用意していた海兵は湾内に影を見つけた。


「ん？」


ザバァァン！！


「！！？」

クジラのビークヘッドを持つコーティング船が突如湾内に現れた。


「え！！！？」

「しがみつけェ～～～！！！全員船に乗り込めェ！！！！」

「まさか！！船が！！！」

「コーティング船がもう一隻現れました！！！」

「しまった！！！」

「ずっと海底に潜んでいたんだ！！」

「……！！何…！！？」

センゴクが眉をひそめる。白ひげは静かに言った。


「ウチの船が出揃ったと言った覚えはねェぞ…！！！」

「“外輪船(ﾊﾟﾄﾞﾙｼｯﾌﾟ）”です！！突っ込んで来ます！！！」

「撃ち沈めろ！！！モビーディック号の様に！！！」

「違う！！！船じゃない！！！オーズを撃てェ！！！」

「「え！？」」

センゴクはすぐに指示を出す。しかし……


「もう遅い！！！」

オーズは走ってくる外輪船を掴む。


「行ぐど、みんな！！！」

そして力の限り引っ張った。


「ウオオオオオオオ～～～！！！！」

「！！？」


ドゴゴゴゴォン…！！！


「うわああああ～～～～！！！」

「船を引き上げやがったァ～～～っ！！！！」

外輪船が包囲壁の穴を見事につき、広場に乗り上げてきた。



「包囲壁内へ侵入を許しましたァ！！！」

「………！！！やられたな。わずかなネズミの穴一つ！！抜け目なく狙ってきおった！！
包囲壁はわしらの障害になりかねんぞ！！」

ガープは鋭く戦況を読み、眉を潜めた。


「広場に入ったぞォ～～～！！！」

「エースを救えェ～～～っ！！！」

「海軍本部を攻め落とせェ～～～！！！」

歓声が上がる白ひげ海賊団とその傘下。処刑台のエースは白ひげを凝視する。


「オヤジ！！！」

「まだ首はあるか！？エース！！」


ドォン！！ドゴォォン！！


「オーズ！！！」

「…エースぐん…を必ズ…」

ドスー…ン！！と力尽きたオーズは倒れる。白ひげはオーズの想いをその背で受け止めた。


「“白ひげ”が広場に降りたァ～～～！！！」

「下がってろよ、息子達……！！」

ブウー…ンと白ひげは自身の槍に“振動”を付加させる。そしてそれを振りかぶった。


「ウェアアアアアア！！！」

薙ぎ払われた振動が広場に広がる。多くの海兵がたった一振りで空を飛んだ。吹き飛ばされるのを逃れた海兵達もﾋﾞﾘﾋﾞﾘと振動の衝撃を受ける。


「野郎共ォ！！！エースを救い出し！！！海軍を滅ぼせェエェェ！！！」

『……』

ジンはエースを助けようとする白ひげ海賊団の虚砲を耳にする。同時に記憶が頭を過った。


―――お前は、あいつを守れ！！


『……！』

剣を片手に笑う少年。記憶に蘇ったのはかつての仲間、あの日…あの島で失った親友とも言える仲間の姿と声だ。


『……トール……』

「“渡り鳥”……？」

ジンはハンコックの手を離す。その瞳は空に向けられていた。



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