「………！」
「「「！！！」」」
『…！！』

戦場が凍りついた。皆一様に目を見開く。一瞬の静寂の後、声が上がった。


「「「オヤジィ～～～！！！」」」

『……っ』

ハルタはジンとの闘いの手を止め、モビーディック号を凝視する。
同じく手を止めたジンは一際大きく目を見開くと、処刑台に立つセンゴクを睨みつけた。


『……』

センゴクはジンの視線を感じたのか、一瞬ジンに視線を寄越す。


『……不愉快ですね。――“リセット”』

「！？」

ジンは“紳士の鎌(ｼﾞｪﾝﾄﾙｼｸﾙ)”を消すと、シルクハットを押さえた。


『失礼します』

「！？“渡り鳥”」

ジンは自身を紙の破片にし、その場から姿を消す。
ハルタは突然消えたジンに目を丸くした。








「“白ひげ”が…！！！」

「「「刺されたァ～～～～！！！！」」」

シャボンティ諸島では様々な色の感情の悲鳴が響く。


「キャー―――！！！」

「―――ええ――――それが刺したのは“白ひげ”の傘下の海賊団船長、新世界の海賊“大渦蜘蛛”！！！」





「スクアードォ～～～～～！！！！」

「！！！」


ﾄﾞｶﾝ！！！


「………………く…！！！」

飛んで来たマルコはそのままスクアードを押さえ込む。


「…なぜお前がこんな事！！！」

「うるせェ！！！こうさせたのはお前らじゃねェかァ！！！」

「！！！」

ﾌﾞﾝｯと刀を振るうスクアード、マルコは身体を逸らし避けた。


「オヤッさ………」


ズム！！


「「「うわああァアああ！！！」」」

困惑する傘下の海賊達に後ろからパシフィスタに攻撃される。


「こんな“茶番劇”やめちまえよ！！！“白ひげ”！！！
もう海軍と話はついてんだろ！？お前ら“白ひげ海賊団”と“エース”の命は必ず助かると確約されてんだろ！！？」

「！」

「「！！？」」

「何言ってんだ！？」

「どういう事だ！！？」

ざわめく傘下の海賊達。スクアードは皆に伝わるよう大きな声で言った。


「おれ達ァ罠にかけられたんだよォ！！！」

「「「！！」」」

「おれァ…知らなかったぞ。エースの奴が…あのゴールド・ロジャーの息子だったなんて……！！！」

「……………」

「おれがアンタに拾って貰った時…！！！おれは一人だった……！！なぜだか知ってるよな！？長く共に戦ってきた大切な仲間達をロジャーの手で全滅させられたからだ…！！！」

スクアードは白ひげを睨んだ。


「おれがどれだけロジャーを恨んでるか知ってるハズだ！！！
………だったら一言、言ってくれりゃあよかった…！！！
エースはロジャーの息子であんたはエースを次期“海賊王”にしたいと思ってると！！！」

「……………」

「―――その時すでにおれァお前に裏切られてたんだ…エースとも仲良くしてた……バカにしてやがる！！
そしてお前にとって“それ程特別”なエースが捕まった…！！」

「…………」

「だからお前はおれ達傘下の海賊団43人の船長の首を売り！！！引き替えにエースの命を買ったんだ！！！」

「「「！？」」」

「白ひげ海賊団とエースは助かる！！！すでにセンゴクと話はついてる！！！そうだろ！！？
そんな事も知らずどうだ！！？おれ達は……！！！
エースの為、白ひげの為と命を投げ出しここまでついて来て………よく見ろよ！！！」

スクアードは後方を刀で指す。後方では今もなお、パシフィスタが傘下の海賊達を襲う。


「海軍の標的になってんのは現に！！“おれ達”じゃねェか！！！波の氷に阻まれてすでに逃げ場もねェ！！！」

「うわァ！！」

「オヤッさァん！！？本当かよォ～～～！！！」

湾外でパシフィスタの攻撃に悪戦苦闘を強いられている傘下の海賊達が悲鳴に似た声を上げた。

「……」

「ﾊｧ…ﾊｧ………！！一撃刺せただけで奇跡だ…。もう覚悟は出来てる…殺せよ！！」

「ぐは！！」

「ウソだろそんなわけ……！！」

「ぎゃあ！！！」

「言われてみりゃコイツらおれ達しか狙わねェぞ」





「「「…………！！？」」」

「“白ひげ”が“海軍”に……！！」

「仲間を売った……！！？」

シャボンティ諸島でも動揺が広がる。




「信じたくなかった…おれァ目を疑ったよ………！！！」

「バカ野郎！！！担がれやがったな、スクアード！！！
なぜオヤジを信じない！！！」

「てめェまでしらばっくれやがってマルコォ！！！」

「………。エースがロジャーの息子だってのは事実…“それ”に最も動揺する男を振り回した……。
奴らの作戦がおれ達の一枚上をいったんだ」

胸から血を流しながら白ひげはスクアードに目を向ける。




「“青キジィ”！！」

「ん？」

映像電伝虫を握るバギー達に冷気が走る。バギーは振り返った。


パキィン！！





「戦争は仕組まれてたのか！？」

「今までの戦いは！？何だったんだ……！？勝負はつかねェって事なのか！？」

ﾌﾞﾂｯ！！と最後の映像を映していた画面が消える。
戦場ではバギー達が青キジの氷でカチーン！！！と固まった。センゴクは海兵に指示する。


「“包囲壁”作動！！」

「はっ！！！」

「……あの野郎…」

戦場に立つクロコダイルは白ひげを見上げ、怒鳴った。


「みっともねェじゃねェか！！！“白ひげ”ェ！！！おれはそんな“弱ェ男”に敗けたつもりはねェぞ！！！」

「…………」

「クロコボーイ…！！」

「クロコダイル」

「(……そうだ、何より……！！！避けられたハズなんだよい…！！今までのオヤジなら……！！！
どれだけ不意をつかれても、心を許した仲間の攻撃だろうとも“こんなもん”くらうアンタじゃなかった……！！
それが問題なんだよい…！！！)」

マルコは白ひげが医療器具を外し、戦場に臨むとした姿を思い出す。そして奥歯を噛んだ。


「(体調は悪化するばかりだ！！！)」

「スクアード…おめェ仮にも親に刃物つき立てるとは……とんでもねェ。バカ息子だ！！」

「ウアァ……！！！」

白ひげはスクアードに手を伸ばす。スクアードは恐怖に震えた。


がばっ……！！


「！！？」

白ひげは怯えるスクアードを優しく抱きしめる。


「バカな息子を―――それでも愛そう…」



「…ウグ……！！？ふざけんな！！！お前はおれ達の命を……！！」

「忠義心の強ェお前の真っ直ぐな心さえ……闇に引きずり落としたのは…一体誰だ」

「…海軍の！！反乱因子だ…お前を刺せば部下は助かると！！！」

スクアードは戦いのさなか、この事実を知ったと訴える。それは海軍の“ある”人物――


「……―――“赤犬”がそう言ったか…」

「……」

「お前がロジャーをどれ程恨んでいるか……それは痛い程知ってらァ…。
―――だがスクアード、親の罪を子に晴らすなんて滑稽だ…。エースがおめェに何をした…！？」

「……」

「仲良くやんな…エースだけが特別じゃねェ…。みんなおれの家族だぜ…」

「！！！」

スクアードは白ひげの言葉に涙を浮かべた。白ひげは立ち上がり処刑台にいるセンゴクを睨む。


「―――衰えてねェなァ、センゴク……！！見事にひっかき回してくれやがって…」

「オヤジィ、ウソだと言ってくれー！！」

「ぐわっ！！」

「おれ達ァ、売られたんだ畜生ォ！！」

「おれが息子らの首を売っただと……！？」

白ひげは拳に力を入れた。そして…―――


ボゴォォーン！！！


「「「！！？？」」」

ｶﾞﾗｶﾞﾗﾗ……


「……海賊共に………退路を与えたか……！！食えん男だ」

氷の壁が白ひげの起こした振動で崩れる。白ひげは全ての家族に叫んだ。


「海賊なら！！！信じるものはてめェで決めろォ！！！！」

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