不思議なマジシャン
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「ゾロおせぇぞー」
「ああ……」
店に入った途端、腹を大きく膨らましたルフィが今もなお食事をしながらゾロを迎える。
「やっときたのか、ひやひやしたじゃねェか」
「また迷子にでもなってたんじゃないの~」
「ゾロ、また迷子になってたのか!?」
「それにしては早いわね」
「マリモにしてはいい時間に来るじゃねェか」
「酒の匂いでも嗅ぎつけたんじゃねェの?」
ウソップを皮切りに皆がそれぞれ言葉をよこす。ゾロは、うるせいっと空いているルフィの隣に座った。
「結局、ここで食うことになったのか?」
「違うぞ! ゾロ!! おれたちはマジックを見に来たんだ!!」
「「来たんだ!!」」
ルフィの言葉にウソップとチョッパーが続く。テンションの高い3人がギャアギャアとうるさく叫ぶ。
「マジック?」
「スーパーなマジックらしいぜ」
「評判もいいみたいよ」
ゾロはウエイターが持ってきた酒を煽りながら尋ねるとフランキーとロビンが答える。
「まぁ、胡散臭いけどねェ~」
「そんな疑り深いナミさんも素敵だ~」
「はいはい」
ナミは未だに不審げに周りに目を配る。逆にサンジにはナミやロビンにしか見えてないようだ。
パンパカパーン
短音のファンファーレが鳴る。その音でざわざわしていた店内が静かになった。
「皆さん、長らくおまたせ致しました!今日の突風磁力によってやってきた、カッコウさんのマジックショーです!!」
「おお、いよいよだな」
「楽しみだぁ~」
ルフィとチョッパーが目をキラキラさせている。店内すべてが期待を胸に、舞台がある店の奥を見ていた。バンっと暗転がとけ、舞台だけが明るく照らされる。
しかしそこには誰もいなかった。ざわざわと店内が騒がしくなる。
「なんだ、いねえじゃねえか」
「急病か?」
腕を組むウソップとタバコをふかすサンジはどうしたものかと呟く。ふと上からひらひらと花びらのように何かが降ってきた。
「ん?なんか白いのが落ちてきたぞ」
チョッパーの青い鼻に一枚の白く薄っぺらいものが乗っている。チョッパーはそれを取り、眺めた。
「“紙”?」
チョッパーの言葉に“紙?”っとみんなが疑問に思っていると、どんどん雪みたいに紙が降ってくる。
雪が降っているかのような幻想風景。
しかしそれはいきなり吹いた大きな風によってかき消される。紙は風に乗って舞台の方へ流れていく。
「なんで風が?」
「わぁ!?」
室内でこんな風が吹くなんて、とナミは驚く。その風のせいでチョッパーの持っていた紙も舞台へ飛んでいった。
飛んだ紙たちは舞台に集まって形を作る。その形はまるで人間のようで。皆がその光景を呆然と見守っていると、急にパンッという破裂音が鳴り、舞台の紙の塊がはじけた。するとはじけた塊の中から女性のようなシルエットが現れる。シルクハットからシルバーピンクの髪をのぞかせ、顔に細工のある少し派手な仮面をまとったカッコウが、
雪のように舞う紙の中から現れた。
『みなさん、ようこそ僕のマジックの世界へ』
!!!!!!!
突然の登場に会場中が目を見張り、あまりの衝撃に言葉を失った。しかしすぐに大きく歓声が響く。
「「「スゲー!!」」」
ルフィ・ウソップ・チョッパーが大声で叫ぶ。後のメンバーも驚いてタバコを落としたり、サングラスを上げたり、あいた口がふさがらなかった。
「あっ、あいつ!?」
ゾロはカッコウがジンだったという別の意味で驚いて、ブッと酒を吐き出しそうになる。
「あれは……」
もうひとり別の意味で驚いている、ロビンは静かに呟いた。
『では、まず挨拶として簡単なマジックをお見せしましょう』
両手を広げ、そう話した後、カッコウは頭のシルクハットを左手で取り、中が見えるように観客に向けた。
『今僕が、かぶっていたこの帽子、何も変わったことはありません。と言っても僕の言葉では信用はないかもしれませんので……どなたか確認していただけませんか?』
その言葉におれが見る!っといつの間にか普通の体型に戻ったルフィが叫ぶ。カッコウは頷き、では前へと促す。
「おれも行っていいかな?」
チョッパーが目をキラキラさせながら聞く。
「ええ。楽しんでね」
ロビンが頷くと、チョッパーはわぁいっとルフィを追いかけた。 フーッと、サンジはタバコをふかす。
「ほんと好きね、ああいうの」
ナミは呆れたように呟いた。
「おい、ウソップは?」
「あいつも前に行ったぜ」
ゾロの疑問にコーラを飲みながら言葉を返すフランキー。
舞台の上にはルフィとチョッパー、舞台の前にはウソップが見ていた。
『では、確認を』
カッコウはシルクハットをルフィたちに渡す。
「ねェな、ただの帽子だ」
「うん。なんにもねぇ」
覗いたり、振ったりしたが何も出なかった。ないという確認が済んだのでルフィたちはカッコウにシルクハットを返す。
『この帽子には何もないことが今、おふたりによって証明されました。しかし、この帽子には僕がマジックを仕掛けています。たとえば僕がこの帽子を2回、回すと…』
そう言ってカッコウはシルクハットのつばを持って縦に2回、回す。
ただ回しただけのシルクハット。カッコウは中身があるかのように軽く横に振った。揺れたシルクハットから何かが入っているのか、ガサガサと音がする。
「あれ? なんか音がするぞ」
「なんか入ってるのかぁ!」
「でも2回、回しただけだぞ」
ルフィとチョッパー、外野のウソップの言葉を聞き、カッコウはシルクハットに手を入れる。そしてガサガサと何かを掴んで外に出した。
『マジックに協力していただいたお三方には、この街名物の綿あめをプレゼントします』
カッコウがシルクハットから取り出したのは3本の少し小ぶりだが色とりどりの綿あめ。
「綿あめだ!!!」
「すんげーなおまえ!!」
「おれにもくれるのか!」
およそシルクハットに入りそうな量ではなく。その驚きと共に拍手が沸く。ルフィはカッコウから綿あめをひとつもらう。ちゃっかりウソップももらっていた。
『どうぞ、チョッパーくん』
「おう、綿あめありがとうな! ……あれ、おれ名前いったか?」
その言葉にカッコウは仮面の口のところに人差し指を立て、シーっと言うようにジャスチャーをした。チョッパーからは仮面で表情は分からないが少し笑ってるように見えた。
「内緒なんだな。わかった」
嬉しそうにチョッパーは綿あめにかぶりついた。
『では、続きまして…』
綿あめを配り終わったカッコウは前を向き次のマジックへ移ろうとした。 が……
キィっと木の扉が場をわきまえず音を立てて開く。店内の視線は自然に扉へ向かう。
「じゃまするぜ」
突然大男がズカズカと店に入ってきた。大男と共に数人の手下らしい男たちもぞろぞろ入ってくる。
「カッティノ山賊!?」
「なんで今日降りてきたんだ!?」
店にいた住人たちは震え上がり口々に言う。
「「カッティノ?」」
ルフィとウソップが首を傾げる。近くにいた住人がひそひそとルフィたちに説明した。
「5年前からこの奥の山に住みついた山賊だよ。たまに降りてきて金を奪っていくんだ…」
別の席ではナミたちが同じように状況を聞いている。
「あれが頭なの?」
とナミが聞くと住人は首を横に振る。
「いや、あいつはカッティノで2番目に強いダスターだ。あいつは2000万ベリーの賞金首なんだよ…」
「頭のカッティノのは4500万ベリーの賞金首で悪魔の実の能力者って噂が……」
「おおぃ、おしゃべりはその辺にしてくれ」
ダスターはガシャンと近くのテーブルを人ごと薙ぎ払う。
「「「ひぃっ」」」
っと住人の顔は一瞬で恐怖で青くなった。
「こんな時間に何か用ですか??」
店の奥から店主が大きな足取りで、ダスターを睨みながら近づく。
「おう、町長さんじゃねぇか。実はうちの頭が少しばかり金と酒がほしいらしくてな。取りに来たんだ」
ひょうひょうとした態度でダスターは店主、もとい町長を見下す。
「今月の分は払った。今この街の者には蓄えはない!!」
「おい、そりゃおかしいぜ。じゃあ、なんでこんなに飲み屋で飲んでやがんだ? ああん?」
「今日は私が皆を招待したんだ!」
「ふざけんじゃねぇ!!」
ガンっとダスターは町長の襟首をつかみ舞台の方へ投げつけた。町長はぐふっと体を押さえ倒れる。
「町長!!」
「なんてことを…」
住人はガタガタと震える。カッティノの下っ端たちが笑いながら脅すように刃物を振り回す。
「このじじいみたいになりたくなかったら今すぐ酒と5000万ベリー用意しろ!!」
ダスターが大声でいう。
「5000万ベリーなんて大金今すぐは無理だ!―――ぐはっ」
叫んだ住人が後ろから下っ端に殴られ悲痛な声を上げる。
「おっさん大丈夫か!」
「今、傷を見るからな」
舞台にいたルフィとチョッパーが町長に駆け寄る。町長の様子を見たルフィは、お前ら…っと怒りを露わにして睨みつけた。ゾロ達も静かに戦闘準備を始める。
「?」
ルフィが殴りかかろうと身構えた時、すっと手で制止される。その手の先にあるカッコウの顔をルフィはなぜ止めるのかと不思議そうに見る。ゾロ達も怪訝そうな顔をした。
『少しだけ時間をください』
と、カッコウはルフィにだけ聞こえるように言うと前を向く。そしてダスターに言った。
『5000万ベリーとお酒があれば住人には手出しをしないのですね?』
その言葉に店にいるすべての人間がカッコウに目を向ける。
「あん? なんだてめぇ!!」
下っ端のひとりが刃物をカッコウに向けながら言う。
『僕は貴方とは話しをしていませんよ』
「あんだと!!」
カッコウは下っ端の方を見向きもしない。ダスターはゲラゲラと笑う。
「なんだぁ、仮面。てめぇが払ってくれるとでもいうのか? こんなちんけな舞台で金稼いでるピエロさんがよぉ」
『…はぁ、まったく言葉が通じてませんね』
「ああ?」
『僕は5000万ベリーとお酒があれば引くのですか? と聞いているのです』
ダスターはあからさまにイラッとした顔になる。
「ああ、引いてやるさ。金と酒が今すぐここに来るならなぁ!!」
ダスターの言葉にカッコウは頷き、ウソップの方を向く。
『すいません。この奥に部屋があるのですが、そこにカバンがふたつあります。赤いひもの付いたカバンを取ってきてくれませんか?』
「カバンをか?」
『ええ。お願いします』
不思議に思ったウソップだが、わかったっとカバンを取りに行った。程なくして戻ってくる。
「これでいいのか?」
『はい、ありがとうございます』
カバンを受け取ったカッコウはカバンに少し触れると、持ち手を持ってダスターの前まで持ってきた。
そしてカバンの留め具を外し中身をダスターらカッティノ山賊に見えるように開けた。
『ここに5000万ベリーあります。後、お酒があればよろしいんですね』
開いた鞄の中にはぎっしりとベリーが詰まっていた。量からして5000万ベリー以上ある。
「「「すげぇ!!」」」
カッテイノ山賊は目の前の大金に飛びつく。
「マジシャンが5000万ベリーも持ってるの!!」
ナミは人知れず目がベリーになっていた。
「ほう、これは全部本物か? てめえは何者なんだ?」
ダスターはニヤニヤといやな笑みを貼り付ける。
『本物ですよ。それはあなたの部下の様子から伺えるでしょう。これで後は店からお酒をちょうだいすれば良いのですね』
カッコウはダスターの何者か、の質問には答えず、近くの住人に酒蔵を見てきてほしいと頼む。
それをダスターが下の方に目線を向けたまま制した。
「いや、酒はいい。そのかわり仮面の兄ちゃん、その腰についてる金時計をよこしな」
ダスターが指さしたのは、カッコウが腰からぶら下げている金時計。カッコウは首を横に振る。
『残念ですが、そのお話は聞くことは出来ませ…』
ガシャーン!!!
「「「「!!!!」」」」
ダスターの裏拳を顔にモロにくらったカッコウは、近くのテーブルにぶつかる。テーブルはその衝撃で倒れ、食器が割れる音がする。同時に仮面と、シルクハットが床に転がった。
「おい、大丈夫か!!」
『……大丈夫です。ご心配おかけしました』
思わずルフィが声をあげる。カッコウはルフィに答えつつ、ゆっくりと立ち上がった。
『はぁ、交渉の「こ」の字もないのですね』
受け身がよかったのか傷はないようだ。しかし仮面が取れたことにより、ピンクシルバーの髪に整った顔、そして右目に大きな眼帯をしたジンとしての素顔が現れた。
「うほーかっこいいなその眼帯!! 海賊みてぇ!!」
「ほんとだかっこいいぞ―!!」
ルフィとチョッパーが尊敬のまなざしで見る。
「ジン!」
「やっぱり!! 彼だったのね」
ゾロとロビンがカッコウの素顔をみて声を上げる。ナミは知り合いなの!?っと二人に対して声をあげた。
「なっなんてきれい子なんだ~!! あんな子があんな素敵なマジックをしてたなんて!!」
サンジはカッコウの素顔をみてメロリーンとときめく。ダスターもそう感じたらしい。
「おい、なかなかかわいい顔してるじゃねぇか。なんなら金時計ごとおれらのとこに来るかい嬢ちゃん」
『はぁ…まったく。“カッコウ”のままこの場を収めたかったというのに……』
ジンはそう、呟いた。そんなジンにダスターは構わず手を伸ばす。
『“無数の聖書 ”』
「!?」
ジンが消える。ダスターは宙を手につかんだ。
「どこいきやがった!!」
ダスターが叫ぶ。カッティノ山賊たちがキョロキョロと探す。
「中央のテーブルよ」
ロビンが静かに言った。その言葉通り、中央のテーブルの上にジンが現れる。
『みなさましばらくお待たせしました。交渉決裂により、これから本日最後のマジックをお送りいたします。
麦わら海賊の皆様お手伝いをお願いしてよろしでしょうか?』
ルフィがウシシっと笑う。
「おう!みんな思いっきり暴れるぞ!!」
ルフィの掛け声で待ってましたっと全員が戦闘態勢に入った。
もちろん麦わら一味と謎のマジシャンによってダスターたちは“瞬殺”される。
⇒あとがき
「ああ……」
店に入った途端、腹を大きく膨らましたルフィが今もなお食事をしながらゾロを迎える。
「やっときたのか、ひやひやしたじゃねェか」
「また迷子にでもなってたんじゃないの~」
「ゾロ、また迷子になってたのか!?」
「それにしては早いわね」
「マリモにしてはいい時間に来るじゃねェか」
「酒の匂いでも嗅ぎつけたんじゃねェの?」
ウソップを皮切りに皆がそれぞれ言葉をよこす。ゾロは、うるせいっと空いているルフィの隣に座った。
「結局、ここで食うことになったのか?」
「違うぞ! ゾロ!! おれたちはマジックを見に来たんだ!!」
「「来たんだ!!」」
ルフィの言葉にウソップとチョッパーが続く。テンションの高い3人がギャアギャアとうるさく叫ぶ。
「マジック?」
「スーパーなマジックらしいぜ」
「評判もいいみたいよ」
ゾロはウエイターが持ってきた酒を煽りながら尋ねるとフランキーとロビンが答える。
「まぁ、胡散臭いけどねェ~」
「そんな疑り深いナミさんも素敵だ~」
「はいはい」
ナミは未だに不審げに周りに目を配る。逆にサンジにはナミやロビンにしか見えてないようだ。
パンパカパーン
短音のファンファーレが鳴る。その音でざわざわしていた店内が静かになった。
「皆さん、長らくおまたせ致しました!今日の突風磁力によってやってきた、カッコウさんのマジックショーです!!」
「おお、いよいよだな」
「楽しみだぁ~」
ルフィとチョッパーが目をキラキラさせている。店内すべてが期待を胸に、舞台がある店の奥を見ていた。バンっと暗転がとけ、舞台だけが明るく照らされる。
しかしそこには誰もいなかった。ざわざわと店内が騒がしくなる。
「なんだ、いねえじゃねえか」
「急病か?」
腕を組むウソップとタバコをふかすサンジはどうしたものかと呟く。ふと上からひらひらと花びらのように何かが降ってきた。
「ん?なんか白いのが落ちてきたぞ」
チョッパーの青い鼻に一枚の白く薄っぺらいものが乗っている。チョッパーはそれを取り、眺めた。
「“紙”?」
チョッパーの言葉に“紙?”っとみんなが疑問に思っていると、どんどん雪みたいに紙が降ってくる。
雪が降っているかのような幻想風景。
しかしそれはいきなり吹いた大きな風によってかき消される。紙は風に乗って舞台の方へ流れていく。
「なんで風が?」
「わぁ!?」
室内でこんな風が吹くなんて、とナミは驚く。その風のせいでチョッパーの持っていた紙も舞台へ飛んでいった。
飛んだ紙たちは舞台に集まって形を作る。その形はまるで人間のようで。皆がその光景を呆然と見守っていると、急にパンッという破裂音が鳴り、舞台の紙の塊がはじけた。するとはじけた塊の中から女性のようなシルエットが現れる。シルクハットからシルバーピンクの髪をのぞかせ、顔に細工のある少し派手な仮面をまとったカッコウが、
雪のように舞う紙の中から現れた。
『みなさん、ようこそ僕のマジックの世界へ』
!!!!!!!
突然の登場に会場中が目を見張り、あまりの衝撃に言葉を失った。しかしすぐに大きく歓声が響く。
「「「スゲー!!」」」
ルフィ・ウソップ・チョッパーが大声で叫ぶ。後のメンバーも驚いてタバコを落としたり、サングラスを上げたり、あいた口がふさがらなかった。
「あっ、あいつ!?」
ゾロはカッコウがジンだったという別の意味で驚いて、ブッと酒を吐き出しそうになる。
「あれは……」
もうひとり別の意味で驚いている、ロビンは静かに呟いた。
『では、まず挨拶として簡単なマジックをお見せしましょう』
両手を広げ、そう話した後、カッコウは頭のシルクハットを左手で取り、中が見えるように観客に向けた。
『今僕が、かぶっていたこの帽子、何も変わったことはありません。と言っても僕の言葉では信用はないかもしれませんので……どなたか確認していただけませんか?』
その言葉におれが見る!っといつの間にか普通の体型に戻ったルフィが叫ぶ。カッコウは頷き、では前へと促す。
「おれも行っていいかな?」
チョッパーが目をキラキラさせながら聞く。
「ええ。楽しんでね」
ロビンが頷くと、チョッパーはわぁいっとルフィを追いかけた。 フーッと、サンジはタバコをふかす。
「ほんと好きね、ああいうの」
ナミは呆れたように呟いた。
「おい、ウソップは?」
「あいつも前に行ったぜ」
ゾロの疑問にコーラを飲みながら言葉を返すフランキー。
舞台の上にはルフィとチョッパー、舞台の前にはウソップが見ていた。
『では、確認を』
カッコウはシルクハットをルフィたちに渡す。
「ねェな、ただの帽子だ」
「うん。なんにもねぇ」
覗いたり、振ったりしたが何も出なかった。ないという確認が済んだのでルフィたちはカッコウにシルクハットを返す。
『この帽子には何もないことが今、おふたりによって証明されました。しかし、この帽子には僕がマジックを仕掛けています。たとえば僕がこの帽子を2回、回すと…』
そう言ってカッコウはシルクハットのつばを持って縦に2回、回す。
ただ回しただけのシルクハット。カッコウは中身があるかのように軽く横に振った。揺れたシルクハットから何かが入っているのか、ガサガサと音がする。
「あれ? なんか音がするぞ」
「なんか入ってるのかぁ!」
「でも2回、回しただけだぞ」
ルフィとチョッパー、外野のウソップの言葉を聞き、カッコウはシルクハットに手を入れる。そしてガサガサと何かを掴んで外に出した。
『マジックに協力していただいたお三方には、この街名物の綿あめをプレゼントします』
カッコウがシルクハットから取り出したのは3本の少し小ぶりだが色とりどりの綿あめ。
「綿あめだ!!!」
「すんげーなおまえ!!」
「おれにもくれるのか!」
およそシルクハットに入りそうな量ではなく。その驚きと共に拍手が沸く。ルフィはカッコウから綿あめをひとつもらう。ちゃっかりウソップももらっていた。
『どうぞ、チョッパーくん』
「おう、綿あめありがとうな! ……あれ、おれ名前いったか?」
その言葉にカッコウは仮面の口のところに人差し指を立て、シーっと言うようにジャスチャーをした。チョッパーからは仮面で表情は分からないが少し笑ってるように見えた。
「内緒なんだな。わかった」
嬉しそうにチョッパーは綿あめにかぶりついた。
『では、続きまして…』
綿あめを配り終わったカッコウは前を向き次のマジックへ移ろうとした。 が……
キィっと木の扉が場をわきまえず音を立てて開く。店内の視線は自然に扉へ向かう。
「じゃまするぜ」
突然大男がズカズカと店に入ってきた。大男と共に数人の手下らしい男たちもぞろぞろ入ってくる。
「カッティノ山賊!?」
「なんで今日降りてきたんだ!?」
店にいた住人たちは震え上がり口々に言う。
「「カッティノ?」」
ルフィとウソップが首を傾げる。近くにいた住人がひそひそとルフィたちに説明した。
「5年前からこの奥の山に住みついた山賊だよ。たまに降りてきて金を奪っていくんだ…」
別の席ではナミたちが同じように状況を聞いている。
「あれが頭なの?」
とナミが聞くと住人は首を横に振る。
「いや、あいつはカッティノで2番目に強いダスターだ。あいつは2000万ベリーの賞金首なんだよ…」
「頭のカッティノのは4500万ベリーの賞金首で悪魔の実の能力者って噂が……」
「おおぃ、おしゃべりはその辺にしてくれ」
ダスターはガシャンと近くのテーブルを人ごと薙ぎ払う。
「「「ひぃっ」」」
っと住人の顔は一瞬で恐怖で青くなった。
「こんな時間に何か用ですか??」
店の奥から店主が大きな足取りで、ダスターを睨みながら近づく。
「おう、町長さんじゃねぇか。実はうちの頭が少しばかり金と酒がほしいらしくてな。取りに来たんだ」
ひょうひょうとした態度でダスターは店主、もとい町長を見下す。
「今月の分は払った。今この街の者には蓄えはない!!」
「おい、そりゃおかしいぜ。じゃあ、なんでこんなに飲み屋で飲んでやがんだ? ああん?」
「今日は私が皆を招待したんだ!」
「ふざけんじゃねぇ!!」
ガンっとダスターは町長の襟首をつかみ舞台の方へ投げつけた。町長はぐふっと体を押さえ倒れる。
「町長!!」
「なんてことを…」
住人はガタガタと震える。カッティノの下っ端たちが笑いながら脅すように刃物を振り回す。
「このじじいみたいになりたくなかったら今すぐ酒と5000万ベリー用意しろ!!」
ダスターが大声でいう。
「5000万ベリーなんて大金今すぐは無理だ!―――ぐはっ」
叫んだ住人が後ろから下っ端に殴られ悲痛な声を上げる。
「おっさん大丈夫か!」
「今、傷を見るからな」
舞台にいたルフィとチョッパーが町長に駆け寄る。町長の様子を見たルフィは、お前ら…っと怒りを露わにして睨みつけた。ゾロ達も静かに戦闘準備を始める。
「?」
ルフィが殴りかかろうと身構えた時、すっと手で制止される。その手の先にあるカッコウの顔をルフィはなぜ止めるのかと不思議そうに見る。ゾロ達も怪訝そうな顔をした。
『少しだけ時間をください』
と、カッコウはルフィにだけ聞こえるように言うと前を向く。そしてダスターに言った。
『5000万ベリーとお酒があれば住人には手出しをしないのですね?』
その言葉に店にいるすべての人間がカッコウに目を向ける。
「あん? なんだてめぇ!!」
下っ端のひとりが刃物をカッコウに向けながら言う。
『僕は貴方とは話しをしていませんよ』
「あんだと!!」
カッコウは下っ端の方を見向きもしない。ダスターはゲラゲラと笑う。
「なんだぁ、仮面。てめぇが払ってくれるとでもいうのか? こんなちんけな舞台で金稼いでるピエロさんがよぉ」
『…はぁ、まったく言葉が通じてませんね』
「ああ?」
『僕は5000万ベリーとお酒があれば引くのですか? と聞いているのです』
ダスターはあからさまにイラッとした顔になる。
「ああ、引いてやるさ。金と酒が今すぐここに来るならなぁ!!」
ダスターの言葉にカッコウは頷き、ウソップの方を向く。
『すいません。この奥に部屋があるのですが、そこにカバンがふたつあります。赤いひもの付いたカバンを取ってきてくれませんか?』
「カバンをか?」
『ええ。お願いします』
不思議に思ったウソップだが、わかったっとカバンを取りに行った。程なくして戻ってくる。
「これでいいのか?」
『はい、ありがとうございます』
カバンを受け取ったカッコウはカバンに少し触れると、持ち手を持ってダスターの前まで持ってきた。
そしてカバンの留め具を外し中身をダスターらカッティノ山賊に見えるように開けた。
『ここに5000万ベリーあります。後、お酒があればよろしいんですね』
開いた鞄の中にはぎっしりとベリーが詰まっていた。量からして5000万ベリー以上ある。
「「「すげぇ!!」」」
カッテイノ山賊は目の前の大金に飛びつく。
「マジシャンが5000万ベリーも持ってるの!!」
ナミは人知れず目がベリーになっていた。
「ほう、これは全部本物か? てめえは何者なんだ?」
ダスターはニヤニヤといやな笑みを貼り付ける。
『本物ですよ。それはあなたの部下の様子から伺えるでしょう。これで後は店からお酒をちょうだいすれば良いのですね』
カッコウはダスターの何者か、の質問には答えず、近くの住人に酒蔵を見てきてほしいと頼む。
それをダスターが下の方に目線を向けたまま制した。
「いや、酒はいい。そのかわり仮面の兄ちゃん、その腰についてる金時計をよこしな」
ダスターが指さしたのは、カッコウが腰からぶら下げている金時計。カッコウは首を横に振る。
『残念ですが、そのお話は聞くことは出来ませ…』
ガシャーン!!!
「「「「!!!!」」」」
ダスターの裏拳を顔にモロにくらったカッコウは、近くのテーブルにぶつかる。テーブルはその衝撃で倒れ、食器が割れる音がする。同時に仮面と、シルクハットが床に転がった。
「おい、大丈夫か!!」
『……大丈夫です。ご心配おかけしました』
思わずルフィが声をあげる。カッコウはルフィに答えつつ、ゆっくりと立ち上がった。
『はぁ、交渉の「こ」の字もないのですね』
受け身がよかったのか傷はないようだ。しかし仮面が取れたことにより、ピンクシルバーの髪に整った顔、そして右目に大きな眼帯をしたジンとしての素顔が現れた。
「うほーかっこいいなその眼帯!! 海賊みてぇ!!」
「ほんとだかっこいいぞ―!!」
ルフィとチョッパーが尊敬のまなざしで見る。
「ジン!」
「やっぱり!! 彼だったのね」
ゾロとロビンがカッコウの素顔をみて声を上げる。ナミは知り合いなの!?っと二人に対して声をあげた。
「なっなんてきれい子なんだ~!! あんな子があんな素敵なマジックをしてたなんて!!」
サンジはカッコウの素顔をみてメロリーンとときめく。ダスターもそう感じたらしい。
「おい、なかなかかわいい顔してるじゃねぇか。なんなら金時計ごとおれらのとこに来るかい嬢ちゃん」
『はぁ…まったく。“カッコウ”のままこの場を収めたかったというのに……』
ジンはそう、呟いた。そんなジンにダスターは構わず手を伸ばす。
『“
「!?」
ジンが消える。ダスターは宙を手につかんだ。
「どこいきやがった!!」
ダスターが叫ぶ。カッティノ山賊たちがキョロキョロと探す。
「中央のテーブルよ」
ロビンが静かに言った。その言葉通り、中央のテーブルの上にジンが現れる。
『みなさましばらくお待たせしました。交渉決裂により、これから本日最後のマジックをお送りいたします。
麦わら海賊の皆様お手伝いをお願いしてよろしでしょうか?』
ルフィがウシシっと笑う。
「おう!みんな思いっきり暴れるぞ!!」
ルフィの掛け声で待ってましたっと全員が戦闘態勢に入った。
もちろん麦わら一味と謎のマジシャンによってダスターたちは“瞬殺”される。
⇒あとがき