“海賊女帝”ボア・ハンコック
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ジンの笑みにこの会話はこれで終局とされた。ハンコックは怪訝な顔をするが、まぁ…よいと息をついた。
『お話はそれだけですか? ボア・ハンコックさん』
「……いや」
ハンコックは首を横に振る。そしてソファから腰をあげる。
「“渡り鳥”ここからはわらわの質問に答えてほしい」
『?? 僕に答えられることでしたら、お答えしますが……』
突然、先程とは打って変った緩い雰囲気にジンは少し戸惑う。なぜかハンコックの頬がほのかに赤い。そんなハンコックは意を決した様にジンに尋ねた。
「ルフィの船に、その……女のクルーがいると聞いたのだが…」
『はい…?』
ジンは眉をひそめた。ハンコックは真剣な声で言う。
「おるのじゃろ?」
『え…ええ。ナミさんとロビンのことですね』
「!! どんな女達じゃ??」
ハンコックはジンの肩を掴み尋ねた。鬼気迫るハンコック表情にジンは多少たじろきながら答える。
『どんな、ですか? そうですね…。ナミさんはオレンジ色の髪をした、とても明るく活発な航海士さんです。
ロビンは黒髪の聡明な考古学者で、どちらも美しい方ですよ』
「なっ……!?」
『ボア・ハンコックさん?』
ハンコックがショックを受けた顔をする。ジンは言葉に誤りがあったのか少し焦りながらハンコックの名を呼んだ。
「そ、その二人の女と……ルフィとはどんな仲なんじゃ?」
『!!?』
ジンはある可能性に気づき、驚いた。質問に答える。
『……。夢を追う仲間だと聞いています。ですので、ボア・ハンコックさん。貴女の考えていらっしゃる様な仲ではないと思われます』
「そ、そうか!! さすがにルフィには聞けなくてな…」
ハンコックは嬉しそうな声をあげたのを見て、可能性が確信に変わる。ジンは恐る恐る尋ねた。
『……。失礼ですが、ボア・ハンコックさん。貴女はルフィさんに……“恋”をしてらっしゃるのですか?』
「!! な、なぜわかる!! やはりわかるものなのか!!?」
顔を赤らめジンに尋ねるハンコック。予感が的中したジンは苦笑しつつ、なんだか胸があったかくなる気がした。
ジンはその気持ちを隠しつつ答える。
『ええ。まぁ……わからないことはありません』
「そうか、やはりこれは恋なのか。ならばわらわはルフィと両思いに…」
『両思い…ですか!?』
流石のジンも驚いた。
(あのルフィさんが愛を告白するなんて…それともボア・ハンコックから告白を…??)
その場面をイメージ出来ないジンは首をひねった。ニコニコと笑うハンコックに再度尋ねる。
『ルフィさんは貴女に、何か…その様なことをおっしゃったのですか……?』
「ああ、言ってくれた。インペルダウンで別れる時にわらわに“愛してる”と…!!!」
『……』
「ああ!! ルフィ……!!」
ハンコックはルフィをの姿を想像しているのか、目をキラキラ輝かせ、自分の手で自分の体を抱き締める。ジンはハンコックを見ながら唖然としていた。
(意外ですね……)
ジンはシルクハットをかぶりなおしながら思った。ハンコックが妄想から冷めるのを待つ。しばらくして、ハンコックは思い出した様に言った。
「そうじゃ、“渡り鳥”! わらわと組まぬか?」
『…? 組む、ですか??』
ジンは首を傾げる。
「わらわはルフィのためにこれからルフィの兄の手錠のカギを取りに行くつもりじゃ」
『!? “火拳”のエースの手錠のカギを…??』
「ああ。ルフィの兄の手錠のカギは海軍本部の地下の牢屋にあると海兵が言っていた」
『待って下さい…ボア・ハンコックさん。貴女、それをどうやって…??』
ジンの問いにハンコックは口角を上げる。
「わらわが迫って落ちぬ男はおらぬ、“彼”を除いてな」
『……。貴女は七武海ですよ』
「それがなんじゃ!! わらわがここに来たのは最初からルフィのため。七武海の地位などどうでも良い!」
『!』
ジンの言葉を切り、ハンコックは強い口調で言った。そして続ける。
「わらわは“こちら側”でルフィを助けると決めたのじゃ。“渡り鳥”、そなたはルフィの仲間なんじゃろ? 手伝ってはくれぬか?」
『……』
ハンコックの提案にジンは静かに首を横に振った。
『残念ですが僕は彼の仲間ではありません。ですので、貴女に協力は出来ません』
「…なっ!?」
『このことは、黙っておきます。僕と海軍との契約は“戦争への参加”ですので』
「契約? 何を契約したのじゃ??」
『……貴女には関係のないことです』
「!?…そなた、その契約とやらのためにルフィがどうなっても良いのか?」
『………』
ハンコックがジンは左目を見ながら問う。ジンは目を伏せた。ハンコックは怒った様な呆れた様な顔をした。
「ふん。ルフィの選んだ男ならば心強いと思おったが、思い違いの様だな。先のことは忘れろ。わらわは一人で行く…!!」
ハンコックはそれだけ言うとカツカツとヒール音を立て、ジンの横を通りすぎた。そしてドアの前で石になった海兵達の能力を解く。
「あ、あれ…??」
「おれ達何を……?」
ハンコックは困惑する海兵達の言葉を無視して言った。
「わらわの部屋に案内せよ」
「はっ…! お話は…??」
「もう済んだ。早う案内せぬか!!」
「は、はい!!」
『……』
ハンコックは数人の海兵を連れ部屋を出る。ジンはそれを見送った。
「クロスロード様は…?」
『僕も部屋へ戻ります』
ニコッと海兵に笑いかけ、ジンはも部屋を後にした。
*
それから数時間後。
ハンコックはマリージョアから海軍本部内へ潜入していた。
「(…マリージョアでは怪しまれんかった。しかしここから先はそうはいくまい)」
ハンコックは見張りの海兵を石にして、部屋を出て来ていた。辺りの気配を窺 いながら廊下を歩く。足音が向かって来るのが聞こえ、急いで隠れた。
「(下手に石にしてしまえば足がついてしまう…。出来るだけ海兵に会わぬ様にしなければな)」
しかしそれは難しい。今の海軍本部にはいつも以上に海兵がいるのだ。とりあえず、ハンコックは足音の海兵をやり過ごす。息をついた。
地下牢への階段はもう少し先へ行かなければならない。ハンコックは慎重に歩き出す。 しばらくは何も起こらず進めた。しかし目の前に階段が見えた時、運悪く海兵に出会ってしまった。
それもただの海兵ではなくハンコックを連れて来たモモンガ中将だ。
「ハンコック!!? 貴様こんなところで何をしている!!」
「……っ」
ハンコックは驚いたが、押し黙る。もちろん正直に答えるつもりは毛頭ない。黙っているとモモンガが険しい顔でさらに問いただす。
「ここは海軍本部だ。マリージョアではない。何の目的があってここに来た……!!」
「……。わらわは道に迷っただけじゃ」
ふと思いついた言葉を声に出す。モモンガは怪訝な顔で尋ねた。
「道にだと…? お前は方向音痴なのか?」
「そ、そうじゃ! 間違えたのじゃ!!」
苦しい言い訳であるのは間違いない。しかし貫き通すため、ハンコックは顔を赤くしながら訴える。
「……。ならばマリージョアまで部下に送らせる。少し待っていろ」
「(……しまった)。道を教えてくれればわらわは一人で帰れる。連れなどいらぬわ」
「本部は結構入り組んでいる。方向音痴でここまで来たお前には無理だ。待っていろ」
モモンガの強い申し出にハンコックは焦った。地下牢の階段はもう目の前だ。
「(ここまで来て引き返すことになるとは…)」
いっそこの男を石にしてしまおうか。ハンコックはモモンガを見る。そしてその隙に鍵を手に入れてモモンガの部下にマリージョアへ連れて帰ってもらえばいい…と。しかし上手く行くだろうか…?
『すいません、少しよろしいですか?』
「「!?」」
モモンガとハンコックは突然の声に驚き、声のする方へ振り向く。 するとさっきまで気配を感じなかった場所に、ジンが立っていた。
「(いつの間に…)」
ハンコックは視線をジンに投げかける。しかしジンはシルクハットを前に少し下げているため、二人から口元しか見えない。
「“渡り鳥”…!? 貴様までなぜここにいる…?」
モモンガが尋ねる。少し見える口は弧を描いていた。
『“迷子の”ボア・ハンコックさんを探しておりましたらここにいらっしゃったので……。失礼ですが、貴方は?』
モモンガはさっきのハンコックの言葉もあり、少し納得した。しかし警戒は解かず、ジン睨みつける様に見る。
「おれは海軍本部中将、モモンガだ。」
『海軍本部中将…モモンガさんですか。いいお名前ですね』
「……。“渡り鳥”、なぜ顔を見せない?」
モモンガはジンにそう尋ねながら、腰の刀に手をかける。ジンはまるでそれを阻止するかの様に“声”を出した。
『……モモンガ中将“動くことを禁止”します』
「なっ!?」
モモンガの動きが止まる。指一本ぴくりとも動かない。モモンガは自分に何が起こったか判断出来なかった。
「なんじゃ? これは……」
ハンコックは目を見張る。なぜモモンガがジンの言った通り動かなくなったのかわからない。
「貴様!何をした!!? 何の能力者だ!!ここで事を起こせばただじゃ済まんぞ!!!!」
『モモンガ中将お静かに…。そうですね、“話すことも禁止”しましょうか』
「……っ!!?」
静かにジンがそう言うとモモンガは話せなくなった。ジンはシルクハットを下げたまま、ハンコックの横を通りすぎ、モモンガの目の前に来る。
モモンガはジンを睨み付ける以外何も出来ない。
『そう睨まないで下さい。僕はボア・ハンコックさんを迎えに来ただけですので、何も起こす気はありません』
ジンは静かにシルクハットを上げる。青と“赤”の瞳がモモンガを見た。
『しかし、貴方にはボア・ハンコックさんと僕に出会ったこの数分のことは“忘れて”頂きます』
「……っ」
モモンガは何か言いたそうに口を開けるが声にならない。 ジンはいつもの優しい笑顔でモモンガに話す。
『ご安心下さい。この数分の出来事が“なかった事”になるだけですから、貴方の名誉が傷つくことはありません』
そう言うと動けないモモンガの目の前に手を出した。
「!?」
『モモンガ中将…貴方は今から2分間眠ります。目覚めた後は、体も声も元通りになり、この場で我々会った事は“全て忘れます”。
ですから貴方はいつも通りお仕事をして下さい。それでは、良い夢を…』
パチンッ
ジンは指を鳴らす。するとモモンガはゆっくり瞼を閉じ、固まったまま眠りについた。
『お話はそれだけですか? ボア・ハンコックさん』
「……いや」
ハンコックは首を横に振る。そしてソファから腰をあげる。
「“渡り鳥”ここからはわらわの質問に答えてほしい」
『?? 僕に答えられることでしたら、お答えしますが……』
突然、先程とは打って変った緩い雰囲気にジンは少し戸惑う。なぜかハンコックの頬がほのかに赤い。そんなハンコックは意を決した様にジンに尋ねた。
「ルフィの船に、その……女のクルーがいると聞いたのだが…」
『はい…?』
ジンは眉をひそめた。ハンコックは真剣な声で言う。
「おるのじゃろ?」
『え…ええ。ナミさんとロビンのことですね』
「!! どんな女達じゃ??」
ハンコックはジンの肩を掴み尋ねた。鬼気迫るハンコック表情にジンは多少たじろきながら答える。
『どんな、ですか? そうですね…。ナミさんはオレンジ色の髪をした、とても明るく活発な航海士さんです。
ロビンは黒髪の聡明な考古学者で、どちらも美しい方ですよ』
「なっ……!?」
『ボア・ハンコックさん?』
ハンコックがショックを受けた顔をする。ジンは言葉に誤りがあったのか少し焦りながらハンコックの名を呼んだ。
「そ、その二人の女と……ルフィとはどんな仲なんじゃ?」
『!!?』
ジンはある可能性に気づき、驚いた。質問に答える。
『……。夢を追う仲間だと聞いています。ですので、ボア・ハンコックさん。貴女の考えていらっしゃる様な仲ではないと思われます』
「そ、そうか!! さすがにルフィには聞けなくてな…」
ハンコックは嬉しそうな声をあげたのを見て、可能性が確信に変わる。ジンは恐る恐る尋ねた。
『……。失礼ですが、ボア・ハンコックさん。貴女はルフィさんに……“恋”をしてらっしゃるのですか?』
「!! な、なぜわかる!! やはりわかるものなのか!!?」
顔を赤らめジンに尋ねるハンコック。予感が的中したジンは苦笑しつつ、なんだか胸があったかくなる気がした。
ジンはその気持ちを隠しつつ答える。
『ええ。まぁ……わからないことはありません』
「そうか、やはりこれは恋なのか。ならばわらわはルフィと両思いに…」
『両思い…ですか!?』
流石のジンも驚いた。
(あのルフィさんが愛を告白するなんて…それともボア・ハンコックから告白を…??)
その場面をイメージ出来ないジンは首をひねった。ニコニコと笑うハンコックに再度尋ねる。
『ルフィさんは貴女に、何か…その様なことをおっしゃったのですか……?』
「ああ、言ってくれた。インペルダウンで別れる時にわらわに“愛してる”と…!!!」
『……』
「ああ!! ルフィ……!!」
ハンコックはルフィをの姿を想像しているのか、目をキラキラ輝かせ、自分の手で自分の体を抱き締める。ジンはハンコックを見ながら唖然としていた。
(意外ですね……)
ジンはシルクハットをかぶりなおしながら思った。ハンコックが妄想から冷めるのを待つ。しばらくして、ハンコックは思い出した様に言った。
「そうじゃ、“渡り鳥”! わらわと組まぬか?」
『…? 組む、ですか??』
ジンは首を傾げる。
「わらわはルフィのためにこれからルフィの兄の手錠のカギを取りに行くつもりじゃ」
『!? “火拳”のエースの手錠のカギを…??』
「ああ。ルフィの兄の手錠のカギは海軍本部の地下の牢屋にあると海兵が言っていた」
『待って下さい…ボア・ハンコックさん。貴女、それをどうやって…??』
ジンの問いにハンコックは口角を上げる。
「わらわが迫って落ちぬ男はおらぬ、“彼”を除いてな」
『……。貴女は七武海ですよ』
「それがなんじゃ!! わらわがここに来たのは最初からルフィのため。七武海の地位などどうでも良い!」
『!』
ジンの言葉を切り、ハンコックは強い口調で言った。そして続ける。
「わらわは“こちら側”でルフィを助けると決めたのじゃ。“渡り鳥”、そなたはルフィの仲間なんじゃろ? 手伝ってはくれぬか?」
『……』
ハンコックの提案にジンは静かに首を横に振った。
『残念ですが僕は彼の仲間ではありません。ですので、貴女に協力は出来ません』
「…なっ!?」
『このことは、黙っておきます。僕と海軍との契約は“戦争への参加”ですので』
「契約? 何を契約したのじゃ??」
『……貴女には関係のないことです』
「!?…そなた、その契約とやらのためにルフィがどうなっても良いのか?」
『………』
ハンコックがジンは左目を見ながら問う。ジンは目を伏せた。ハンコックは怒った様な呆れた様な顔をした。
「ふん。ルフィの選んだ男ならば心強いと思おったが、思い違いの様だな。先のことは忘れろ。わらわは一人で行く…!!」
ハンコックはそれだけ言うとカツカツとヒール音を立て、ジンの横を通りすぎた。そしてドアの前で石になった海兵達の能力を解く。
「あ、あれ…??」
「おれ達何を……?」
ハンコックは困惑する海兵達の言葉を無視して言った。
「わらわの部屋に案内せよ」
「はっ…! お話は…??」
「もう済んだ。早う案内せぬか!!」
「は、はい!!」
『……』
ハンコックは数人の海兵を連れ部屋を出る。ジンはそれを見送った。
「クロスロード様は…?」
『僕も部屋へ戻ります』
ニコッと海兵に笑いかけ、ジンはも部屋を後にした。
*
それから数時間後。
ハンコックはマリージョアから海軍本部内へ潜入していた。
「(…マリージョアでは怪しまれんかった。しかしここから先はそうはいくまい)」
ハンコックは見張りの海兵を石にして、部屋を出て来ていた。辺りの気配を
「(下手に石にしてしまえば足がついてしまう…。出来るだけ海兵に会わぬ様にしなければな)」
しかしそれは難しい。今の海軍本部にはいつも以上に海兵がいるのだ。とりあえず、ハンコックは足音の海兵をやり過ごす。息をついた。
地下牢への階段はもう少し先へ行かなければならない。ハンコックは慎重に歩き出す。 しばらくは何も起こらず進めた。しかし目の前に階段が見えた時、運悪く海兵に出会ってしまった。
それもただの海兵ではなくハンコックを連れて来たモモンガ中将だ。
「ハンコック!!? 貴様こんなところで何をしている!!」
「……っ」
ハンコックは驚いたが、押し黙る。もちろん正直に答えるつもりは毛頭ない。黙っているとモモンガが険しい顔でさらに問いただす。
「ここは海軍本部だ。マリージョアではない。何の目的があってここに来た……!!」
「……。わらわは道に迷っただけじゃ」
ふと思いついた言葉を声に出す。モモンガは怪訝な顔で尋ねた。
「道にだと…? お前は方向音痴なのか?」
「そ、そうじゃ! 間違えたのじゃ!!」
苦しい言い訳であるのは間違いない。しかし貫き通すため、ハンコックは顔を赤くしながら訴える。
「……。ならばマリージョアまで部下に送らせる。少し待っていろ」
「(……しまった)。道を教えてくれればわらわは一人で帰れる。連れなどいらぬわ」
「本部は結構入り組んでいる。方向音痴でここまで来たお前には無理だ。待っていろ」
モモンガの強い申し出にハンコックは焦った。地下牢の階段はもう目の前だ。
「(ここまで来て引き返すことになるとは…)」
いっそこの男を石にしてしまおうか。ハンコックはモモンガを見る。そしてその隙に鍵を手に入れてモモンガの部下にマリージョアへ連れて帰ってもらえばいい…と。しかし上手く行くだろうか…?
『すいません、少しよろしいですか?』
「「!?」」
モモンガとハンコックは突然の声に驚き、声のする方へ振り向く。 するとさっきまで気配を感じなかった場所に、ジンが立っていた。
「(いつの間に…)」
ハンコックは視線をジンに投げかける。しかしジンはシルクハットを前に少し下げているため、二人から口元しか見えない。
「“渡り鳥”…!? 貴様までなぜここにいる…?」
モモンガが尋ねる。少し見える口は弧を描いていた。
『“迷子の”ボア・ハンコックさんを探しておりましたらここにいらっしゃったので……。失礼ですが、貴方は?』
モモンガはさっきのハンコックの言葉もあり、少し納得した。しかし警戒は解かず、ジン睨みつける様に見る。
「おれは海軍本部中将、モモンガだ。」
『海軍本部中将…モモンガさんですか。いいお名前ですね』
「……。“渡り鳥”、なぜ顔を見せない?」
モモンガはジンにそう尋ねながら、腰の刀に手をかける。ジンはまるでそれを阻止するかの様に“声”を出した。
『……モモンガ中将“動くことを禁止”します』
「なっ!?」
モモンガの動きが止まる。指一本ぴくりとも動かない。モモンガは自分に何が起こったか判断出来なかった。
「なんじゃ? これは……」
ハンコックは目を見張る。なぜモモンガがジンの言った通り動かなくなったのかわからない。
「貴様!何をした!!? 何の能力者だ!!ここで事を起こせばただじゃ済まんぞ!!!!」
『モモンガ中将お静かに…。そうですね、“話すことも禁止”しましょうか』
「……っ!!?」
静かにジンがそう言うとモモンガは話せなくなった。ジンはシルクハットを下げたまま、ハンコックの横を通りすぎ、モモンガの目の前に来る。
モモンガはジンを睨み付ける以外何も出来ない。
『そう睨まないで下さい。僕はボア・ハンコックさんを迎えに来ただけですので、何も起こす気はありません』
ジンは静かにシルクハットを上げる。青と“赤”の瞳がモモンガを見た。
『しかし、貴方にはボア・ハンコックさんと僕に出会ったこの数分のことは“忘れて”頂きます』
「……っ」
モモンガは何か言いたそうに口を開けるが声にならない。 ジンはいつもの優しい笑顔でモモンガに話す。
『ご安心下さい。この数分の出来事が“なかった事”になるだけですから、貴方の名誉が傷つくことはありません』
そう言うと動けないモモンガの目の前に手を出した。
「!?」
『モモンガ中将…貴方は今から2分間眠ります。目覚めた後は、体も声も元通りになり、この場で我々会った事は“全て忘れます”。
ですから貴方はいつも通りお仕事をして下さい。それでは、良い夢を…』
パチンッ
ジンは指を鳴らす。するとモモンガはゆっくり瞼を閉じ、固まったまま眠りについた。