【スキット】 死の外科医と渡り鳥(出会い編)

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その日の夜は宴だった。いや、宴になったと言うのが正しい。
あの能力者同士のいざこざの後、ジンがローやクルーをお客にマジックを始めたものだから、ローは気分が冷めてしまった。
今は、大きな食堂で胸踊ったマジックの余韻を肴に皆がわいわいと騒いでいた。


『頂いています』

コトッとグラスを置き、ジンの向かいに座ったローにジンは笑顔で言う。ローはああっと短く返事をした。ローはさっきまでジンの側にいたベポがキャスケットに誘われ違う席に移ったのを見てこちらに来たのだ。

「………お前は変わってるな」

『よく言われます。貴方もでは?』

「口の減らねェ野郎だ。いけるクチか?」

『ええ。弱くはありません』

ローはジンに酒瓶を差し出すと、ジンはグラスを出した。酒を注ぐ。

クロスロード屋、お前はここへ何で来た?」

船はなかったとクルーから報告を受けていたローは尋ねる。

『来たのは自分の船です』

「船はなかったと聞いてる」

『ええ。能力で作った船ですので。もうありません』

ジンはそう言うと空いている右手をローに見せ、握る。そしてポンッと手のひらサイズの船を出した。

「なるほどな。うらやましいくらい便利な能力だ」

『ありがとうございます。僕は貴方の能力もとてもいいと思いますよ』

「世辞はいらん」

『お世辞ではないのですが』

ムスッとするローにクスクスとジンは笑顔で答える。ローは気を取り直し、ジンに言う。

クロスロード屋、おれ達はこんな廃墟に用はない。お前のログポースが溜まってるだったよな? おれ達にくれないか?」

丁寧に言えど寄越せと言っているのと同じで、ジンは苦笑する。

『海賊みたいですね』

「海賊だ。お前も海賊だろ?」

『失礼しました。ちなみに僕は海賊と名乗った覚えはありません。“あれ”は海軍が勝手につけたものです』

「じゃあ、なんなんだ?」

『僕はマジシャンです』

ニコニコと笑うジンにローは息をつく。


「……。で、どうなんだ? 寄越すのか寄越さないのか」

『……そうですね。ログポースを渡すのは正直とても無理です。……ただ、次の島まで乗せて頂けるならログを提供しますよ』

どうですか?と条件を提示するジン。ローはじっとジンの左目を見た。

「いいだろう。元々そのつもりだった」

『? そのつもりと言いますと』

クロスロード屋、次の島までではなく仲間になれ」

ローの言葉にジンは、はぁっと息をつく。先程の軽い言い回しではなく、少し重く口を開いた。

『残念ですが…お仲間の件はご了承出来ません。それが条件に入るのなら交渉は決裂です』

「なぜだ」

ローはジンを睨む。ジンはグラスを置く。

『僕は仲間を作らない主義だからです』

「………主義だと? そんな主義あるのか」

『トラファルガー・ロー、思想は自由なものですよ。――そして僕のこれは絶対譲れないものなんです』

「………」

『“次の島まで”と言う案なら乗ります』

「2つだ」

『?』

ローはグラスの酒を仰ぐ。

「ここからから2つ島を行く間、乗船しろ。それ以降はしらん。だが、おれはほしいもんは手に入れる人間だからな」

『………』

ローは口角をあげ、自分のグラスに酒を注ぐ。そして酒瓶をジンに差し出す。ジンは少し考えた後、グラスを出した。酒が注がれる。

「OKと解釈するぞ」

『ええ、2つなら良いでしょう。ただ……お仲間にはなりません』

「………チッ」

『舌打ちはよくありませんよ、トラファルガー・ロー』

ジンとローはグラスをカンッと当て、酒を酌み交わした。
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