【スキット】 死の外科医と渡り鳥(出会い編)

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『………ハァ…ハァ』

ジンの呼吸が戻り、体温上昇により汗がわっと出る。ジンはゆっくりと目を開けた。

『……ハァ……』

最初に目に飛び込んで来たのは見慣れない天井。次に体がベッドに寝てるのに気付く。そして地面が安定しないこの感じ、海の上にいることをジンは理解した。
ジンはゆっくりと体を起こす。

『……ここは…』

ジンは辺りを見渡した。どうやらここはどこかの船の医務室らしい。それほど広くはないが、薬品やら機材やらが普通の船よりはしっかり揃っていた。
ガチャッとドアが開く。そこに顔を出したのは、ローだった。

「起きたのか? “クロスロード”屋」

ジンは名を呼ばれ、少し警戒する。

『……貴方は?』

「警戒しなくていい。おれはトラファルガー・ロー、海賊だ」

『……』

ジンは転写した手配書を検索する。 程なくして手配書が出てきた。

『ノースブルー出身ハートの海賊団船長、トラファルガー・ロー……。貴方が“死の外科医”さんですか』

「おれを知ってんのか?」

『手配書の限り、ですが…』

ジンはニコッと笑う。ローはふーんとジンを見る。

「で、お前はあの“渡り鳥”でいいのか?」

ローの言葉にジンはベッドから立ち上がり、頷く。

『ええ。僕はクロスロードジン。通り名は“渡り鳥”と申します。助けて頂きありがとうございました』

ジンはローに頭を下げた。

「起きてもいいのか?」

『はい。もう大丈夫です』

「……信じられんな」

『そうですか?』

話しながらジンはポンッと手からシルクハットを出す。


「!!? 何だ、それは?」

『? ああ、これはマジックとでも申しましょうか…』

「はぁ?」

『僕はマジシャンなんですよ。“死の外科医”さん』

「フッ…冗談は格好だけかと思ったぜ」

『僕のこの格好は大真面目なんですが…。貴方も一見海賊には見えませんよ』

ジンはニコニコとローの嫌味を返す。

「……てめェ。性格悪そうだな」

『そんなことありませんよ』

ジンはまた笑った。





「キャプテン!! 鳥さん起きた?」

ガチャッとベポがドアから顔を出す。ジンはびっくりした。

『おや、白熊さんですか?』

「わぁ、鳥さん起きたんだね! 良かった!!」

ベポは医務室に入って来てジンの手を取る。

「よかった。あったかい!! あっ、はじめまして、鳥さん。おれ、ベポ。白熊なんだ」

『ご丁寧にありがとうございます。僕はクロスロードジンと言います。……』

二人は仲良く会話をする。ウマが合う様だ。忘れられた感のあるローは眉間にシワを寄せる。

「ベポ! 少し、外に出てろ。おれはクロスロード屋とまだ話し中だ」

「アイアイ! じゃあ、鳥さん…あっジンのこと皆に話して来るね」

ベポはジンに手を振り出ていった。ジンも手を振る。

「………はぁ」

『かわいらしいお仲間ですね。…おや“死の外科医”さんどうかなさいましたか?』

「……通り名で呼ぶな。ここはおれの船だ」

『失礼。では、トラファルガー・ローさんでよろしいですか?』

「長い。それに敬称はいらん」

『……申し訳ありません、癖なのです。ではトラファルガー・ローと呼びましょう』

「……(大して変わってねェ)。ところでお前はこの島で何をしていた?」

『……それは、少しばかりお答えしかねます』

ジンはシルクハットをなおす。ローは鋭い目をジンに向ける。

「答えろ。あの廃墟はなんだ? 太刀筋があったが、戦闘でもしていたのか…?」

『おや、よくわかりましたね』

ジンは感心した。ローは短く言う。

「話せ」

ジンはハハッと笑った。

『わかりました。と言ってもトラファルガー・ロー、貴方のお察しの通りです。僕はこの島で丸一日程、戦闘をしていました』

「一日中だと? 相手は?」

『“鷹の目”……と言えばお分かりですよね?』

「七武海か…!?」

『ええ』

ジンは目を細める。スケールの大きさに流石のローも息を飲んだ。

「……なぜだ?と聞くのはおかしいか? 七武海と5億の賞金首なら当たってもおかしくはない」

『そんなことはありませんよ。流石に連戦続きでしたから…“全力”でなければ死ぬかと思いました』

ジンは鷹の目との戦闘を思い出したのか苦笑した。

「連戦続き?」

『追われる身なので』

「………」

ロー息をついた。そしてこれ以上進展しそうにないと感じ、少し話題を変える。


クロスロード屋は、ここのログがいつ溜まるか知っているか?」

ジンはシルクハットからログポースを取り出す。

「どこに入れてんだ…」

『どこから出てくるか、わからない方が面白くないですか?』

「………面白くない」

『そうですか、残念です。……さて。正確にはわかりませんが、3日くらいでしょう。僕のログポースのログがすでに溜まっている様なので』

「お前は3日前に来たのか?」

『……ええ。多少誤差があるかもしれませんが…。僕は鷹の目さんと戦闘後、丸一日寝ていたと思われます。そう考えると今日で3日目となります』

「丸一日戦って、丸一日寝てたのか…」

『はい』

普通のことだという様に答えるジン。ローは腕を組む。

「燃費がいいとは言えないな。能力者か?」

『マジシャンは自身のことはすぐには明かさないのですよ』

ジンはニコッと笑う。ローはその笑顔にカチンと眉間にしわを寄せた。

「いいだろう、お前の体に直接聞いてやる。表へ出ろ!!」

ローは身の丈程ある太刀を左手に持ち、殺気が漂よわせた。

『短気は損ですよ、トラファルガー・ロー』

そうジンは息をつくが、ローに促され甲板に出る。
甲板にはハートの海賊団のクルー達が興味津々にジンを見つめていた。ジンは会釈する。ベポが聞いた。

「キャプテン、ジンとお話終わった?」

「まだだ」

短く答えるロー。そのピリッとした空気に何が始まるのだとクルー達は緊張しながら見守る。


『………ここでよろしいですか?』

ジンは甲板の真ん中に立ち止まり、ローと向き合った。ローは口角をあげる。

「……おれを舐めてたら痛い目見るぜ」

「!?」

クルー達はただならぬ気配にローとジンを少し離れて囲む。

「お前ら巻き込まれたくなかったら離れていろ」

『??』

クルーに放つローのその言葉にクルー達の緊張は一気に増した。ベポも一歩下がる。

『お仲間が下がると言う事は遠距離系の能力なんですね』

ジンはふむっと周りを見ながら言う。ローは何も答えず右手を出した。

「“ROOM”…!!」

ローの右手から空気の気流で輪になったかの様なものが現れる。
そしてジンとローを包む様にドーム状の空間が現れた。

『……』

ジンはローの作った空間を興味津々に見上げる。

「余所見してる暇はねェぞ」

ローはニヤニヤと笑みを浮かべ、身の丈程ある太刀を抜いた。


スパッ!!


『!!?』

ローの一振りでジンの体がバラバラに斬られる。斬られた体はふわふわと浮いていた。ジンは瞬きをする。

『びっくりしました。面白い能力ですね』

「本当に驚いてるのか?」

ローは不服そうに言う。もっとジンが怯えるなり、叫ぶなりすると思っていたのに、意外に冷静に話すからだ。

『変わった能力です。一瞬斬られたのが判りませんでした。痛くもありませんし…指等の感覚も普通にありますね』

ジンは浮いている自分の身体に神経が通っているのを確かめる。そしてローを見た。

『……貴方自身に変化がないことから超人系なのですね』

「まったくつまらん反応だ。もっと刻んでやろうか?」

ローは首だけになったジンを引き寄せ、脅す。

「お前の能力はなんだ?」

『……そうですね。能力を見せて頂いたのでお返しはしないと。…それにこの状態は流石に少し落ち着きませんし』

そういうとローの目の前で首だけのジンは目を閉じる。そして呟いた。

『“無数の聖書ミリアド・バイブル”……』

「!!?」

ローの手にあったジンの首が消える。同時にジンの体も細かい紙になり消えた。

「「「!!!」」」

クルー達は目を見張る。ローは気配を探す。


「ロー後ろだ!」

「!?」

ペンギンの言葉にバッと後ろを向く。細かい何か、紙が塊になる。

「??」

ローが怪訝な顔した。そんな中、紙は集合しジンが姿を現した。

『ふう……面白い体験をさせて頂きました』

「……チッ。自然系の能力者か…。紙人間ってとこか?」

ジンはニコッと笑う。

『正解です。トラファルガー・ロー。そしてハートの海賊団の皆さま初めまして、どうぞよろしくお願い致します』

ジンはシルクハットを取り、お辞儀をした。
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