ポーネグリフ

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並んで階段を降りる二人。ジンがさっきのロビンの能力を見た感想を言う。


『素敵な能力ですね』

「!?…そんなことないわ。気味悪がられるだけよ」

『そうでしょうか。僕は好きですよ』

ジンは笑う。ロビンは顔を背け、思った。


「(この人も幸せな人間なのね。何も…闇を知らないで生きて来たからこんなに笑っていられる……)」

『………』

ロビンの顔を見たジンは、おもむろにロビンの前に手を差し出す。

ポンッ!

「……!?」

ジンの手には、小ぶりの白い花。ご丁寧にリボンまでかけられていた。


『綺麗な方がそんな悲しい顔だと勿体無いですよ』

「……」

ジンは優しい笑顔でロビンに花を渡す。ロビンは花を見つめた。


「あなた何者なの?」

『僕はただのマジシャンですよ。……あえて言うなら“紙人間”ですが』

「……はぁ。あなたといると気が抜けるわ」

ロビンはため息をつく。ジンはシルクハットをなおす。


『無駄な力を抜けたのなら良いのですが…』

ジンは苦笑した。二人は長い長い階段を降りると広い空間に出た。その空間は湖が広がり綺麗な水がゆらりゆらりと光を反射している。


『綺麗な場所ですね』

「そうね…」

ジンはシルクハットをあげ辺りを見る。ロビンもその神聖な雰囲気に魅入った。ロビンは湖の真ん中にある島が目に留まった。


「あれは“ポーネグリフ”…!!?」

『あの巨大な石が“ポーネグリフ”……』

ジンもロビンが 見ている島を見る。 ロビンは眉間にしわをよせた。


「困ったわ。湖がある限り進めない…」

辺りに船らしき物はない。歩けない深さではないが、悪魔の実の能力者である自分がこの湖を越えることは出来ない。


『……』

ジンはシルクハットを触りながら少し考えた。


『酸の水でないのなら渡れますよ』

「?」

『やっとお役に立てそうです』

ジンは笑顔をロビンに向け、両手を前に出した。ロビンは何をするのか、っと見守る。


『“原点の紙オリジンペーパー”…』

ジンの手から大きな紙が出てきた。 ジンはそれを折り紙を折るように手を動かす。 しばらくすると縦に長い2人乗りのボートが出来た。
ジンはオールも作り、ボートを水に浮かべる。


『簡単ですが、これで渡れますね』

「すごいわね…予想以上の能力だわ」

『お褒めにあずかり光栄です』

ジンはシルクハットをあげ、お辞儀をする。


『さぁ、参りましょう。お手を』

ジンはロビンの手を取り、船の前に乗せる。ジンは後ろに立ちオールでゆっくりと漕ぎ出した。


「不思議。紙なのに浸水しないのね」

『ええ。水に強い紙を生成しましたから。と言っても所詮は紙。
ずっと航行出来るモノではないので、その場しのぎですが…』

「そう」

『まぁ、この湖を渡ることに関しては問題はありませんよ』

「……あなたの能力の方が素敵じゃない。花を出したりボートを作ったり……」

ロビンは船から湖を覗く。


『そうですか…? 自分ではわからないものですね』

ジンは笑う。ロビンはジンの顔を見ないものの、声の優しさに安心感を覚えだしていた。





船はが島に着く。二人は島に立つと、自分達よりも大きなポーネグリフがそびえていた。


『思ったよりも大きいですね』

「ええ。それにこの石は風化や破損はしない不思議な石なのよ」

『へぇ…』

ジンは感心する。ロビンはポーネグリフに触れながら文字を解読する。


『読んで頂けますか?』

「ええ」

ロビンはポーネグリフに書かれた文字を読み始めた。




我らは歴史を紡ぐ者

ここに記すはこの国に希望をもたらした“神の使い”の話

のものは悲劇に満ちたこの地に降り立った

のものは真紅の瞳でこの国の王を見据え、国を救えと力を与えた

そしてのものは命尽き果て、力を与えられた王がこの地を守った

国が安泰した後、その力は王の子や孫に渡った…

………………

………………



『………』

ジンはシルクハットを前に引き、ロビンの言葉を聞く。
ふっと、ロビンが言葉を切った。書かれていたことは全て読み上げられたようだ。


「どうやら、この国の歴史の話だけの様ね……」

これもリオ・ポーネグリフではない…。ロビンは肩を落とした。


「……あなたの欲しかった情報はあったかしら?」

ジンはシルクハットをなおす。


『ええ。たぶん欲しかったのはこの情報だと思います』

顔を上げたジンの表情がロビンにはひどく哀しそうに見えた。揺らぐ左の蒼い瞳をジンは閉じる。そして開けた時には先程の笑顔に戻っていた。


『ありがとうございました』

「いえ、こちらこそお礼を言うわ。あなたがいなければここには来れなかったから……」

ドタドタと足音がする。二人は来た階段の方に目を向けた。


「誰かいるのか!!?」

「賊か!! 我が国の財産を狙う輩か!!」

「『………』」

階段から明かりが見える。降りてくるようだ。


『これはまずいですね…』

「ええ…」

二人はとりあえず階段から見えないポーネグリフの影に入る。階段から人が降りて来るのは、10人くらいだろうか。


「誰もいないのか…?」

「司教様! あそこに白いボートらしきものが……!!?」

『……しまった。消すのを忘れていましたね』

ジンは気配を探りながら言った。


「賊よ! そこにおるのはわかっている出てこい!!」

「『……』」

「おい、この湖を渡るぞ。歩ける!!」

「賊を捕まえなさい!!」

「「「はっ!!」」」

司教の声で水音をたてながら進んでくる。


『……さて、弱りましたね』

ジンは距離を詰めてくる兵士達の状況を探る。ふと、ロビンが指をさした。


「ねぇ、あそこに扉が見えない?」

ロビンが指したのは階段がある反対側の岸。確かに扉らしきものがある。


『……ありますね』

「あそこから出れないかしら? でも船じゃ追いつかれるわね…」

『………』

ジンは兵士達の気配を探る。間もなくこの島に来そうだった。


『選択の余地はないようですね』

この状態で平和的解決もないだろうっとジンは思った。何より自分は賞金首…捕まる訳にはいかない。
ジンは行動方針を決定した後、ロビンに笑顔を向けた。


『少し無茶をします。お付き合いください』

「?」

ジンの言葉にロビンはきょとんとする。 ジンは行動を始めた。


『まずは気を反らしましょう。――リセット!』

ジンが言うと船をみるみると崩れる。兵士達は驚きそちらを見る。


『“文字化けガーブル”!!』

ジンが続けると船が形を変え、鎧を着た兵士になった。


「なっ、何だ!!?」

「妖術か!?」

兵士達が驚き、鎧兵士に震えながら武器を向ける。





『さて、陽動はこれでよし。では逃げましょう』

「船も無しでどうやって??」

『こうします』

ジンはロビンをお姫様抱っこする。


「!!?」

『行きますよ』

ジンはロビンを抱え水の上を“走り出した”。


「どうなってるの!!?」

ロビンの疑問を他所にジンは前を見据え、水の上を飛ぶように大股で走る。ジンがロビンに尋ねた。


『能力であの扉開けることは出来ますか?』

「……ええ」

ジンはロビンが落ちないようにしっかり抱える。ロビンは手を交差し扉近くに生やした。そして少し重い扉を開ける。
そして岸に着いた瞬間、ジンはそのスピードのまま、開けた扉に滑り込む。


『閉めてください』

「わかったわ」

ロビンは再び手を生やした扉を閉める。


『リセット』

扉が閉まりきる瞬間ジンは呟いた。
扉が閉まる。 湖では兵士達が騒ぐ目の前で鎧兵士は紙吹雪となって消えた。





『……ハァ、ハァ。なかなか疲れました』

「………ハァ…ハァ」

ジンはロビンを静かに下ろし呼吸を整える。 ロビンも気持ちを落ち着けた。


「………フフフ」

『……?』

ジンは顔を上げる。するとロビンは口に手をあてクスクスと笑っていた。


「あなたはとても無茶な人ね。能力者のくせに水の上を走るなんて」

『ははは。よく言われます。さすがに水の上を走ったのはこれが初めてでしたが』

ジンも笑う。


「どうやったの?」

『簡単な話です。先程船に使った水に強い紙質を足に集中させて浮力を得ました。後は重さや能力で沈まない様にひたすら走る…と言った感じでしょうか』

「それって私の重さのせいかしら?」

ロビンは少し意地の悪い言い方をした。ジンはすぐ否定する。


『いえ、そんなことは!!? 貴女は軽かったですよ』

ジンの必死の弁解にロビンはまた笑う。 それを見たジンはシルクハットをなおし、苦笑した。


『それでは行きましょうか。道はあるようなので』

ジンは指差す先には階段があった。


「そうね。行きましょう」

ジンは座っているロビンに手を差しのべる。ロビンも手を取り立ち上がった。









二人は並んで少し急な階段を登る。ジンは歩きながらロビンに尋ねた。


『お答え頂けるなら…で良いのですが、貴女が探す“ポーネグリフ”とはどのようなものですか?』

「………」

『無理強いは致しません。あくまでも興味があるだけなので』

黙ってしまったロビンを見て、ジンは申し訳なさそう言った。ロビンはジンになら話していいかもしれない、っとなぜかそう感じた。


「……私が探しているのはポーネグリフの中でも“リオ・ポーネグリフ”と呼ばれるものなの」

『“リオ・ポーネグリフ”……?』

「“空白の歴史”を記すポーネグリフ。それが“リオ・ポーネグリフ”」

『“空白の歴史”……!!? それを追うのは禁じられているのではありませんか…?』

ロビンは頷く。


「ええ。だから私以外のすべてが敵。政府だって、海賊だってね……私は歴史を知りたいだけなのに…」

『………』

ロビンの瞳が揺らぐ。ジンは穏やかな声で話す。


『貴女は心が強い方なのですね。そしてとても澄んでいる』

「……!?」

ロビンは目を見開いた。自分の心が強く澄んだものだとは思ったことがなかったから。


「そんなことないわ。私は人を欺くことで生きてきた。今だってあなたを騙しているかもしれないのよ」

『ははは。そうなのかもしれませんね。しかし…』

「わかった様な口をきかないで!!!」

ロビンは心が見透かされそうな気がして、ジンの言葉をきった。ジンの穏やかな声は変わらない。


『そうですね…失礼しました。でも、“貴女は貴女自身が思っているよりも強い心を持っている”。これだけは心に留めて頂けると嬉しいです』

「………」

ジンは笑う。ふと前に目をやると光が一筋見えた。扉がある。ジンは一足先に行き、扉を開ける。


突然の光が目に入ったためロビンは目を閉じた。
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