青根くん
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「おめでとうございます、元気な男の子ですよ」
「ありがと、ございます、」
意識が飛びそうだ
よくわかんないけど
めちゃくちゃ痛かった
鼻の穴からスイカとは
よく言ったもの、その通り。
抱きあげた子どもはすっかり赤ちゃんで
この人が今まで私のお腹の中にいたんですね、なんて
不思議な気分になったりして、
「お父さん、よかったですね」
「あ、のぶくん、」
「…っ!」
高伸くんはあんまり人相よろしくなくって
いいんだ、わたしは優しいこと知ってるから。
その、目から、大粒の涙がこぼれて
ゆらゆら近づいてきたのぶくんは
大きな強い腕を伸ばして
ちびちゃんと私をやさしくぎゅうと抱きしめた。
言葉はなくってよくて
これでもう私たちはすっかり家族である。
***
「入っていいですか~」
「あ、その声はにろちゃん、どうぞ~」
「おじゃま…ちょっと名前しまってそれ!しまって!」
「ちょっと大声出さないでよ、ちびちゃんおっぱい中だから恥ずかしいならにろちゃん出てって」
「…見ててもいーい?」
「いいよ。のぶくん一緒じゃないの?」
「青根、部屋の前で引き返してったんだけど、あ、きた、トイレか?」
「あ、いちごオレ!じゃあわたしもいただきますしよ、ありがとのぶくん」
(ブン)
「あはは、相変わらずだな青根も名前も」
「うん、変わってないよ」
「あ、お見舞いね、職場の近くにケーキ屋さんできてさあ、名前好きそうなのいっぱいあったから」
「もーにろちゃん私に甘いなあ、お見舞いったって体調悪いわけじゃないのよ」
「いいんですー名前はもっと甘やかされていいと思いまーす」
「ありがとー」
「…にろちゃん、だっこしてみる?」
「え!!」
そういう仕様の服らしく
名前は簡単におっぱいをしまうと
チビ助にげっぷをさせて
こっちをちらりと見上げる。
「そんな、俺触ったら壊しちゃいそうでこわいからいいよ」
「あはは、ダイジョーブ赤ちゃんはモノじゃないから、ほらのぶくんお手本」
「ん、」
青根は名前の横に腰かけると
すっと赤ん坊を抱きあげて
自分の胸に引き寄せる。
「こう、首の、後ろに、うでを」
「…なあ、こいつほんとに名前から生まれたの?」
「そう、正真正銘わたしが腹を痛めて生んだ青根家の長男です」
「…すげえなあ…」
目だって見えてんのか何なのか。
柔らかくて暖かくて
これが将来伊達の鉄壁になったりするのか
笑ったり泣いたりするのか、
「すごいなあ名前」
「にろちゃんさあ、絶対いいパパになると思うよ、すてきなお嫁さん見つかるといいね」
「ほんっと、幸せな人達見てると俺も幸せになりたくなってくる~」
「ほんとね、のぶくんなんか栗きんとん食べてる時より幸せそうな顔するから、私びっくりしちゃって」
「ほんとか?俺は前から知ってたけどね」
「え、にろちゃんずるい」
(お前のこと見てる時だよ、なんて)
***
近所に住んでるにろちゃんは
週末になると我が家に遊びに来る。
かつて「カッケーバイクにしてくれ」なんて
実家に来ていた不良まがいの顔見知り達も
チビを連れて買い物をしていたりすると
姉さん息子さんッスか!なんて
目をキラキラさせて駆け寄ってきてくれる。
そして息子ちゃんことテツ(鉄壁の鉄ね)は
強面のお兄さんたちに気後れすることなく
きゃっきゃと嬉しそうにしていて
そんな息子を見てにろちゃんは
わたし似だとため息をつくのです。
今晩もにろちゃんが遊びに来る予定なので
晩御飯は唐揚げ、スパイス利かせてからっとね、
「っ!!」
「のぶくん?どーした?」
「った!立った!」
「…っえ!?チビ助!?」
(ブン!!)
ポケットから携帯を取り出し
抜き足差し足忍び足で居間へ
ソファの隅につかまって立ち上がったチビは
こっちに気付くとにっこり笑って
こっちに手を伸ばす、足をもぞりと動かして
バランスを崩して倒れるけど
平気できゃあきゃあ笑っている。
「ばっちり取れたからね父ちゃん」
(ブン)
「はあ、もう…うれしい、なんか早いなあ」
のぶくんは私を優しくぎゅうっとすると
チビのところに戻っていった。
あ、これはすっごい嬉しい顔。
****
「はっぴばーすでーてっちゃ~ん」
「うわあにろちゃん!ありがとね、ごめんねなんか気いつかわせちゃって」
「はっはっは、いーのいーのこれは俺の夢なんだから」
「…バレーボールて…」
「だってほら、小さい頃から触らせとくといいって言うだろ?」
「だからって公式球ってどうなのよ」
「あ、ちゃんと膨らますのもあるから」
「んー、そこなのか…」
初めて触れるバレーボールに
興味津々の様子のテツの掌は小さく柔らかく
ボールが転がってるのか
テツが転がってるのかよくわからないくらいで
きっとのぶくんやにろちゃんにも
こんなに小さい頃があったわけで、
「てっちゃんがさ、あの頃のにろちゃんたちみたいにバレーボールする日がくるのかもね」
「すっごいな、信じらんないや」
「にろちゃんもう完全に親バカだよね」