大学生
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国見ちゃんはあっという間に
私の生活に馴染んでしまった。
同じ大学でアパートも徒歩圏というのが
たぶん大きかったと思う。
よく行き来しては
夜中までゲームをしたり映画を見たり
たこ焼きをしたりしているうちに
あの日から半年も経ってしまった。
お互いの家には部屋着や下着も置いてあるし
合鍵も交換してしまった。
学食でご飯を食べているときに友達に会うと
名前さんがお世話になってますなどと
さらっと挨拶してくるのも驚いた。
そうだ、さらっとしてる
さらっとしてるから気づかないうちに
私の生活に、国見ちゃんは
馴染んでしまった。
「お邪魔します」
「金ローもののけ姫だよ、レモンチューハイ買ってるからゆっくり見よう」
「いいですね」
国見ちゃんは昔から優しかったけど
今はもう痛いくらいに
国見ちゃんの優しさを感じている。
隣に並んでテレビを見てると
視線は画面からそらさずに
うっかり掌が触れるとそっと離れていく。
セックスはおろか私がいいというまで
指一本触れないつもりなのか。
こんな穏やかな日々は
あの時はなかった。
私本当に騙されたんだな。
これからこうやってこの人のことを
好きになっていくんだろうな。
さっき離れていった掌を
捕まえて指を絡めた
国見ちゃんはわかりやすく視線を泳がせている。
「やめてください、我慢できなくなっちゃうんで」
「え」
「名前さんが嫌がることしたくないです」
「…国見ちゃんもそういうことしたいの?」
「……手つなぎたいし、キスもセックスも本当は全部したいです」
「正直だな」
「だめですか」
「…きっすくらいなら」
「…じゃあ、遠慮なく」
絡んだ指先はそのままに
ぬっと圧し掛かってきた国見ちゃんは
やっぱりいつもの眠そうな目だけど
耳が赤くて可愛らしい
前髪を長い指が掬って
熱いおでこがくっついた。
(いいの?)
(ち、近い)
(目、つぶってください)
あったかくて柔らかい
角度を変えて何度も何度も
そのうち頭がぼうっとしてきて
体の力が抜けないように
必死で背中にしがみついた
唇をなめたり吸ったりしていた舌が
遠慮がちに入ってくる
後ろ頭を支える手が大きくて
安心感と酸欠でどうにかなりそう
「名前さん、」
「ん…」
「だめですか」
耳元で、ささやく声と
部屋着の裾からわき腹を撫でる掌と
そっと押し付けられたそれと
「…だめって言ったらどうするの」
「…そしたら、やめます」
「……優しくしてくれる?」
「約束します、けど、痛かったら、俺にも痛くしていいですから」
****
ほっそい体。
ブラトップをめくりあげると
なんともささやかな胸元。
眉間にちょっと皺が寄っている
よっぽど嫌な思いをしたのかな
(…むかつく)
「っ!?」
指の腹でそっと
先端に触れて摘まんで
口に含んで
名前さんは声とも言えないような
高くてか細い声を上げながら
俺の腕に縋り付いてくる
じわじわ動き出した腰には気づかないふりをして
ゆっくりゆっくり
「気持ちいいですか」
「わかんない、頭ぼっとして、ふわふわする」
「それ、きもちいんですよ、」
どれくらいそうしていたのか
もうわからないけど
名前さんの下着に手を入れると
もうびしゃびしゃになっていた。
色気が無いって言ったやつ誰だ
でもこの姿は誰にも見せない
みんなの大事なマネージャーだったから
気づかないふりをしてきたけど。
「入れます」
「は、い、」
「止められないんで、痛かったら爪立てて」
「ん、」
***
名前さんを怖がらせたくなくて
余裕ぶってみたけど
俺は初めてなんだ
上手くいったのかはわからない。
余裕なんか一ミリもなかったし
「名前さん、大丈夫ですか」
「国見ちゃん」
「はい」
「たぶん、気持ちよかった」
「!!」
「国見ちゃん、どうしてそんなに優しくしてくれるの」
「……好きだからですよ、何言わせるんですか」
「……私も国見ちゃんに優しくしたい。もっと一緒にいたい」
「名前さんは昔から優しいですよ」
「ごめんよ、私が色々拗らせてたから、色々考えてくれてるんだね」
「いや、」
「眉間に皺が」
「あ、はい」
思えば名前さんは
いつも堂々としている
体は小さいけど声は大きい
そういう人が恥じらう姿というのは
想像していた以上にくる。
裸になった細い肩や腰とか
別に貧乳フェチとかではなく
普通に興奮した。
名前さんは堂々としている
可哀そうとか思われるのもよしとしない
傷ついてると思われることもよしとしない
だからああやって笑って見せたけど
(やばい、かわいい)
俺だけがこの姿を知ってる。
名前さん、まだ、今から。
******
そして、生活ははじまる。
***
「まっつん久しぶり」
「おっす!国見一緒じゃないの?」
「バイトだって。試合は?」
「及川のほうが勝ってるよ」
秋の大会だかなんだかで
及川と岩泉(&金田一)が対戦するらしく
そんなら見に行こうぜと
声をかけてきたのはまっつんだった。
矢巾と花巻も後で合流するらしい。
国見ちゃんはバイトがあって
飲みに行くなら顔出します、と
昼に学食で聞いたばかり。
「で?国見と上手くいってる?」
「うん、まあね」
「トラウマ払拭できた?」
「……うん、まあね」
「バッカ名前お前、顔赤い」
「そんなこと、」
「色々聞きだしてやろうと思ったけど…俺まで恥ずかしいわ。よかったよ、お前が幸せなら」
「なんだよまっつん男前かよ」
「俺にしとけばよかった?」
「さんざん貧乳いじりしといてよく言うわ」
腹の探り合いでは
及川のほうが岩泉を上回っている
つくづく及川は友達になりたくない。
お互い燃えまくっているのが
はたから見ていてよくわかる。
ギラギラした横顔と
ひりひりした緊張感と
自分もそこにいたことが
まるで嘘みたいに思える。
汗とか涙とかそういう熱気を
体と心と全部で受け止めて
けらけら笑っていられたな。
「やればいいじゃん、マネージャー」
「は?」
「懐かしいって顔に書いてある」
「げ…やーでもな。もうハタチになっちゃったし、あんたたちもいないし、ちょっと無理かな」
「今日、あいつらも来れたらいいのにね。さすがに試合終わったその日は無理か」
「ミーティングとかあるでしょ。しかも勝ち負けつけてすぐは会いたくないんじゃない?」
「ま、その分俺らが飲むか。日本酒はやめとけよ」
「その節はご迷惑おかけしました」
「国見にな」
「う」
****
「お疲れ様で…」
「おう国見、元気そうじゃん」
「ちょうどよかった、場所変わる?」
「いや、そのままお願いします」
及川さんたちの試合
正直見たかったけど
バイトが先に入っていたから仕方がない。
名前さんと松川さん、それに
花巻さんと矢巾さんが
いつかの居酒屋で飲んでいるところに合流
すっかり出来上がったらしい名前さんは
松川さんの膝枕でぐうぐう寝ている。
「レモンサワーで」
「お、酒慣れたか」
「名前さんが酒豪ですからね。こうならなければもっといいんですけど」
「やばい国見がしれっと惚気てる」
「学校でもしょっちゅう一緒に歩いてるだろ、しかもどっちかっつーと名前の方が後輩っぽい感じで」
「大体俺のリュックの紐持ってますからね、園児っぽいかも。ところで試合はどうだったんですか?」
「及川のほうが勝ったよ、2-1。相手も粘ったけどな。金田一もちょっと出てたぞ」
「まじですか。次あったら見たいです」
「おうおう、そんでこーやって飲もうぜ!」
「飲もうぜ!」
「うわ起きた…まだ飲むんですか」
「わー!くにみちゃんきた!わたしね、獺祭!」
「日本酒は禁止~カルピスで一回休憩しなさい」
「まっつんのけち!けちけちまっつん!」
「語彙が死んでる」
松川さんと壁に交互にもたれかかりながら
カルピスをあっという間に飲み干した名前さんは
カルーアミルクを注文すると
ゆらりと立ち上がってトイレに向かう。
その足取りのなんともおぼつかないこと。
驚いたのは大学のゼミの飲み会に
迎えに行ったら元気ぴんぴんだったこと。
この人たちにどれだけ気を許してるのか、
だけど先輩たちが名前さんを裏切ったり
傷つけたりすることは絶対しないのはわかってるし
逆もまた然り。
運ばれてきた名前さんの酒を
一口含むと甘ったるさにびっくりする。
居酒屋の飯は味が濃い。
だんだん飲めるようになってきた酒も
甘いのや辛いのやいろんなのがある。
「何当然のように口付けてんの」」
「先輩たちだってやるでしょ」
「名前見てたらよくわかっちゃうって、上手くいってよかった」
「なんですかその親戚のおじさんみたいな感じ」
「若いからってがっつきすぎんなよ」
「どうなの実際!相性良かった?」
「……そうですね、噂のクズ男よりはよっぽどよかったんじゃないですか」
「フゥー!!ごちそうさまー!!」
「来なきゃよかった…」
「なんのはなししてんの~~???」
「うわっ名前さん重たい!国見んとこいって!」
「やはばのけち~~まっつんもけちだ~~みんなけちだ~~~」
「名前おいで、お酒来てる」
「ウエーイ!!!」
(だめだこりゃ)