高校生
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最近の及川さんは
なんというかいい感じだ。
いい感じにピリピリして
いい感じに抜けている。
影山や牛若のことで思い詰めていた時と違う
いい緊張感。
「及川センパイ!これ、作ってきたんで食べてください!」
「なになに~?手作り?嬉しいな~~」
「そそそそんな!あのっ!頑張ってください!」
「うん、ありがとう。」
で、岩泉さんや名前さんから蹴られるところまでがセット。
ベンチに置かれた可愛らしい包みは
実は練習後に他の先輩たちにおすそ分けされてることを
たぶん今の子は知らない。どんまい。
ちょっと前にできた彼女にも
やっぱりすぐ振られた及川さんは
口では「なにがいけなかったのかな」とか言いながら
表情はさっぱりしていてやっぱりいい感じだ。
俺だったらあんなに女の子にキャーキャー言われたら
絶対集中が乱れてしまう。
やっぱり及川さんはすごい。
「矢巾が難しい顔してる」
「アホなこと考えてるんだろ」
*****
「そういえば名前さんってなんで女子更衣室使わないんですか」
「は?」
「え、そんなのあったんですか?」
「あ、それ聞く?」
もはや誰も全然気にしてない
一・二年生はそもそもそういうもんだと思ってたらしいが
これには色々わけがある。
Tシャツの袖から腕だけ抜いて
器用にブラウスをTシャツの下から入れる
ボタンを全部通したところでTシャツを脱ぐと
ばっちり着替えは完了している。
「金田一急に焦りすぎ」
「そんなちらちら見なくてもどうせならガン見していいよ、見えたところでブラトップだから。まったくおいしくないから」
「え!?名前ブラトップなの!?余るでしょ絶対!普通のタンクトップでいいじゃん」
「マッキー喧嘩売ってる?こないだパンツに穴空いてたこと女子にばらすぞ」
「それだけは!」
「いやそうじゃなくて」
「更衣室の話?だって遠いんだもん!しかもあらゆるマネージャーとか陸上部とかが兼ねてるから居心地悪いんだよねー及川くんのアドレス教えてとか言われるのも心底うざいし」
「はあ…」
おっかなびっくりした風の金田一と
不思議そうな顔をした国見と。
名前はとっくに着替え終わって
ノート整理に入っている。
俺には正直よくわからないが
女の世界は恐ろしい。
俺たちによくわからないようにやってるのが
余計に恐ろしい。
名前も入学当初かなりやられたらしい
二個上の先輩マネがいるうちはよかったが
その先輩が引退して名前はひとり
無視して済むという話でもなく
不貞腐れてやってきた名前を追い返すわけにもいかず
今に至る。
救いかどうかわからないが
名前が貧乳といういじりで
すっかり後輩たちの気は逸らせたらしい。
「なんかマッキーが殴ってほしそうな顔してる」
「これがナイスバディのマネージャーだったらおいしい状況だったなと思って」
「よし歯を食いしばれ」
*****
「名前おはよー」
「おはよー温田っち~」
「キンチョーするな」
「は?キンチョー?」
「俺はやるぞ!今回こそ!」
「や~温田っちのそういうとこすき~」
「荷物今から?ついてく」
「ありがと!助かる~」
試合の前の日には
翌日バスにのせる荷物を準備して
翌朝ちょっと早めに来て
バスのところまで何往復もして運ぶのに
いち早く気づいたのは温田っちだった。
今では試合の日になると
私が来る時間を狙って急いできてくれる。
「名前今日もベンチ入らないの?」
「うん、ビデオのセットとかもあるしね」
「最後くらい…あ、いや、」
「最後は正月でしょ?」
「そうだった…あぶねえあぶねえ」
「はっはっは、今のは聞かなかったことにしてやるよ!!」
**
「じゃあ私、上で見てるから」
「おう、ビデオ頼むな」
「合点」
名前さんはベンチに入らない。
水分補給なんか勝手にやれって
乱暴なことを言っていたけど
名前さんの手に握られたトーナメント表
印のついた試合にビデオカメラを仕掛ける
次以降の試合の情報収集をしているので
試合の日はあまり出会えない。
「待って名前ちゃん!」
「あ!?」
漫画に出てくるマネージャーみたいに
試合の前日に手作りのお守りをくれるとか
そういう展開は全くなかった。
ただ今週や、特に昨日は名前さんが忙しそうに
せかせかは働いていることはみんな知ってる。
偵察に行くところを呼び止めた及川さんが
名前さんをぎゅっと抱きしめた。
「え?重いけど。緊張してんの?」
「してない!してない!なんとなく!」
「は?ボケ川かよ。あほなことしてないでサクっと勝って来いよ、全然心配してないから」
「…名前ちゃん~雰囲気なさすぎ~~」
「わはは!それでよいよい!」
「じゃあ俺も~」
突然始まったハグ大会に
次々巻き込まれていく
岩泉さん、矢巾さん、金田一、
「きょーけんちゃん!」
「やめろ!!」
「国見ちゃん!!」
「あ、はい、」
「じゃあせいぜい頑張ってね!」
及川さんは中学生の頃からすごかったけど
高校に入ってからはもっとすごいと思った
そしてチームの中ではまったくチヤホヤされていない。
なんというか、
(ここにきてよかったな)
(絶対言わないけどな)
****
「じゃあ、私白鳥沢の方見てくるから!」
「OH…」
「本当にあっさり行っちゃいますよね」
「あいついっつも全部見れるのは決勝だけだからね。いいかげん負け試合見せらんないな」
「はい」
*****
「あ!名前!!こっちこっち!!」
「おお!サンキュー!」
「つーか白鳥沢もう終わったのかよ!」
「いつものことだろ!こっちは?」
「先とられて2セット目だ」
16-13
及川のサーブトス
あ、これ、
****
「あ”~~~クソクソクソ~~」
「何回言うのよ」
「快便越えて下痢だな」
「つーか名前もラーメン食うのか」
「チャーシュー麺」
「お前のそういうとこほんとすき」
「わたしもだよマッキー」
「結局お前にはあんまり勝ち試合ちゃんと見せられなかったよな」
「確かに~まるごと見れる決勝は大体牛若にボコされてたからね~」
「ケッ」
「おではっ!まつかわさんまでつなげずっ!」
「おい金田一泣きすぎ」
「頭痛確定だな」
***
「あいつら大丈夫かな」
「及川といるうちは岩泉がまともだから大丈夫だろ」
「あー、そだね」
「名前大丈夫かよ替え玉してただろ」
「えっメンタルの心配じゃなくて?」
「これまで一度でもお前のメンタルが心配な日があったかよ」
「腕くらい組んで帰る?」
「名前真ん中な」
「やばいじゃん連れてこられた宇宙人状態じゃん」
*****
「ちわース」
「うわ!」
「うわじゃねえよ喜べよ狂犬ちゃん」
「うっす名前さん、どうしたんすか」
「あのさあ、ノート。これ先生に渡しておこうかと思ったんだけど、どーせなら矢巾にあげるよ」
「え!!そんな大事なものもらえませんよ」
「私が持ってても何の役にも立たないから。いらなくなったら返しにおいでよ」
「えー?いいんすか?あざっす!」
「ま、新しいマネージャーとか入ったら見せてもいいし」
「そっすね」
もう引退。
これで引退。
まあでも多くの3年生は
6月の県総体で引退しているから
受験勉強のことを考えると
我々バレー部はかな~り遅れをとっている。
どうせクソ川あたりは推薦で決まってしまうんだろうけど
(…来週模試か…きびし…)
******
「名前さん!ちわっす!」
「うわあ!金田一!どしたのこんなところで」
「走ってるんですけど…名前さんこそもう真っ暗ですよ」
「うん、気分転換にウォーキング」
「ウォーキング、っすか」
「おい今ババ臭いって思っただろ」
「い!?いや思ってないっすよ」
「金田一よくここ走ってるの?」
「うっす」
「いいこと聞いた!じゃあ歩くときはここにしよう~」
「うっす」
「ごめんね、止まってくれた?気にしなくていいよ~」
「あ、ハイ、えっと」
名前さん
毎日会っていたのに
ぱったり会わなくなった
渡り廊下の向こうとか
教室から見下ろした中庭とか
声の届かないところに見つける
高校生にもなって
背だってこんなに高いのに
かわいいかわいいって言われるのは
照れ臭かったけど嬉しかった
「あの」
「ん?」
「もう帰るとこなんで、送ります」
「え~走って帰るんでしょ?いいよいいよ」
「先輩たちならそうするかなって」
「そーかもね」
「もうちょっと話したいんで」
「え!!金田一可愛すぎかよ!なんでこんなにいい子なの!残ったメンツを考えると金田一が心配だな~岩泉がいたからこれまでは安心だったけどね~」
「あー、確かに岩泉さんがいると安心でしたね」
「ちやほやされんのも、周りからやべーって思われるのも及川だったけどさ、岩泉ありきの及川だからね。身内シメてんのもあいつだったし」
「そっすね」
宮城の秋は冷える。
白い息が弾む。
夜道に名前さんの笑い声が響いた。
「どこの大学受けるんですか」
「ん~、東京かな」
「そっすか」
「金田一は?」
「まだ全然、考えてないっす。でも大学でも部活でバレーやりたいっす」
「そっかそっか。関東でみんなで会えたら嬉しいね、あいつらもみんなそうみたいだから」
「そうなんすか。連絡するっす」
「まあうちらがみんな受かればね」
「…がんばってください?」
「なんで疑問形なの」
「いやなんか、俺が言うのも変な気がして」
「そんなことない。嬉しいよ」
でかくてよしよしできないな、と
名前さんはやっぱりでかい声で笑った。
先輩たちは関東に行くのか
今だけだ、こうして、道でばったり。
(また、会えるかな)
なんというかいい感じだ。
いい感じにピリピリして
いい感じに抜けている。
影山や牛若のことで思い詰めていた時と違う
いい緊張感。
「及川センパイ!これ、作ってきたんで食べてください!」
「なになに~?手作り?嬉しいな~~」
「そそそそんな!あのっ!頑張ってください!」
「うん、ありがとう。」
で、岩泉さんや名前さんから蹴られるところまでがセット。
ベンチに置かれた可愛らしい包みは
実は練習後に他の先輩たちにおすそ分けされてることを
たぶん今の子は知らない。どんまい。
ちょっと前にできた彼女にも
やっぱりすぐ振られた及川さんは
口では「なにがいけなかったのかな」とか言いながら
表情はさっぱりしていてやっぱりいい感じだ。
俺だったらあんなに女の子にキャーキャー言われたら
絶対集中が乱れてしまう。
やっぱり及川さんはすごい。
「矢巾が難しい顔してる」
「アホなこと考えてるんだろ」
*****
「そういえば名前さんってなんで女子更衣室使わないんですか」
「は?」
「え、そんなのあったんですか?」
「あ、それ聞く?」
もはや誰も全然気にしてない
一・二年生はそもそもそういうもんだと思ってたらしいが
これには色々わけがある。
Tシャツの袖から腕だけ抜いて
器用にブラウスをTシャツの下から入れる
ボタンを全部通したところでTシャツを脱ぐと
ばっちり着替えは完了している。
「金田一急に焦りすぎ」
「そんなちらちら見なくてもどうせならガン見していいよ、見えたところでブラトップだから。まったくおいしくないから」
「え!?名前ブラトップなの!?余るでしょ絶対!普通のタンクトップでいいじゃん」
「マッキー喧嘩売ってる?こないだパンツに穴空いてたこと女子にばらすぞ」
「それだけは!」
「いやそうじゃなくて」
「更衣室の話?だって遠いんだもん!しかもあらゆるマネージャーとか陸上部とかが兼ねてるから居心地悪いんだよねー及川くんのアドレス教えてとか言われるのも心底うざいし」
「はあ…」
おっかなびっくりした風の金田一と
不思議そうな顔をした国見と。
名前はとっくに着替え終わって
ノート整理に入っている。
俺には正直よくわからないが
女の世界は恐ろしい。
俺たちによくわからないようにやってるのが
余計に恐ろしい。
名前も入学当初かなりやられたらしい
二個上の先輩マネがいるうちはよかったが
その先輩が引退して名前はひとり
無視して済むという話でもなく
不貞腐れてやってきた名前を追い返すわけにもいかず
今に至る。
救いかどうかわからないが
名前が貧乳といういじりで
すっかり後輩たちの気は逸らせたらしい。
「なんかマッキーが殴ってほしそうな顔してる」
「これがナイスバディのマネージャーだったらおいしい状況だったなと思って」
「よし歯を食いしばれ」
*****
「名前おはよー」
「おはよー温田っち~」
「キンチョーするな」
「は?キンチョー?」
「俺はやるぞ!今回こそ!」
「や~温田っちのそういうとこすき~」
「荷物今から?ついてく」
「ありがと!助かる~」
試合の前の日には
翌日バスにのせる荷物を準備して
翌朝ちょっと早めに来て
バスのところまで何往復もして運ぶのに
いち早く気づいたのは温田っちだった。
今では試合の日になると
私が来る時間を狙って急いできてくれる。
「名前今日もベンチ入らないの?」
「うん、ビデオのセットとかもあるしね」
「最後くらい…あ、いや、」
「最後は正月でしょ?」
「そうだった…あぶねえあぶねえ」
「はっはっは、今のは聞かなかったことにしてやるよ!!」
**
「じゃあ私、上で見てるから」
「おう、ビデオ頼むな」
「合点」
名前さんはベンチに入らない。
水分補給なんか勝手にやれって
乱暴なことを言っていたけど
名前さんの手に握られたトーナメント表
印のついた試合にビデオカメラを仕掛ける
次以降の試合の情報収集をしているので
試合の日はあまり出会えない。
「待って名前ちゃん!」
「あ!?」
漫画に出てくるマネージャーみたいに
試合の前日に手作りのお守りをくれるとか
そういう展開は全くなかった。
ただ今週や、特に昨日は名前さんが忙しそうに
せかせかは働いていることはみんな知ってる。
偵察に行くところを呼び止めた及川さんが
名前さんをぎゅっと抱きしめた。
「え?重いけど。緊張してんの?」
「してない!してない!なんとなく!」
「は?ボケ川かよ。あほなことしてないでサクっと勝って来いよ、全然心配してないから」
「…名前ちゃん~雰囲気なさすぎ~~」
「わはは!それでよいよい!」
「じゃあ俺も~」
突然始まったハグ大会に
次々巻き込まれていく
岩泉さん、矢巾さん、金田一、
「きょーけんちゃん!」
「やめろ!!」
「国見ちゃん!!」
「あ、はい、」
「じゃあせいぜい頑張ってね!」
及川さんは中学生の頃からすごかったけど
高校に入ってからはもっとすごいと思った
そしてチームの中ではまったくチヤホヤされていない。
なんというか、
(ここにきてよかったな)
(絶対言わないけどな)
****
「じゃあ、私白鳥沢の方見てくるから!」
「OH…」
「本当にあっさり行っちゃいますよね」
「あいついっつも全部見れるのは決勝だけだからね。いいかげん負け試合見せらんないな」
「はい」
*****
「あ!名前!!こっちこっち!!」
「おお!サンキュー!」
「つーか白鳥沢もう終わったのかよ!」
「いつものことだろ!こっちは?」
「先とられて2セット目だ」
16-13
及川のサーブトス
あ、これ、
****
「あ”~~~クソクソクソ~~」
「何回言うのよ」
「快便越えて下痢だな」
「つーか名前もラーメン食うのか」
「チャーシュー麺」
「お前のそういうとこほんとすき」
「わたしもだよマッキー」
「結局お前にはあんまり勝ち試合ちゃんと見せられなかったよな」
「確かに~まるごと見れる決勝は大体牛若にボコされてたからね~」
「ケッ」
「おではっ!まつかわさんまでつなげずっ!」
「おい金田一泣きすぎ」
「頭痛確定だな」
***
「あいつら大丈夫かな」
「及川といるうちは岩泉がまともだから大丈夫だろ」
「あー、そだね」
「名前大丈夫かよ替え玉してただろ」
「えっメンタルの心配じゃなくて?」
「これまで一度でもお前のメンタルが心配な日があったかよ」
「腕くらい組んで帰る?」
「名前真ん中な」
「やばいじゃん連れてこられた宇宙人状態じゃん」
*****
「ちわース」
「うわ!」
「うわじゃねえよ喜べよ狂犬ちゃん」
「うっす名前さん、どうしたんすか」
「あのさあ、ノート。これ先生に渡しておこうかと思ったんだけど、どーせなら矢巾にあげるよ」
「え!!そんな大事なものもらえませんよ」
「私が持ってても何の役にも立たないから。いらなくなったら返しにおいでよ」
「えー?いいんすか?あざっす!」
「ま、新しいマネージャーとか入ったら見せてもいいし」
「そっすね」
もう引退。
これで引退。
まあでも多くの3年生は
6月の県総体で引退しているから
受験勉強のことを考えると
我々バレー部はかな~り遅れをとっている。
どうせクソ川あたりは推薦で決まってしまうんだろうけど
(…来週模試か…きびし…)
******
「名前さん!ちわっす!」
「うわあ!金田一!どしたのこんなところで」
「走ってるんですけど…名前さんこそもう真っ暗ですよ」
「うん、気分転換にウォーキング」
「ウォーキング、っすか」
「おい今ババ臭いって思っただろ」
「い!?いや思ってないっすよ」
「金田一よくここ走ってるの?」
「うっす」
「いいこと聞いた!じゃあ歩くときはここにしよう~」
「うっす」
「ごめんね、止まってくれた?気にしなくていいよ~」
「あ、ハイ、えっと」
名前さん
毎日会っていたのに
ぱったり会わなくなった
渡り廊下の向こうとか
教室から見下ろした中庭とか
声の届かないところに見つける
高校生にもなって
背だってこんなに高いのに
かわいいかわいいって言われるのは
照れ臭かったけど嬉しかった
「あの」
「ん?」
「もう帰るとこなんで、送ります」
「え~走って帰るんでしょ?いいよいいよ」
「先輩たちならそうするかなって」
「そーかもね」
「もうちょっと話したいんで」
「え!!金田一可愛すぎかよ!なんでこんなにいい子なの!残ったメンツを考えると金田一が心配だな~岩泉がいたからこれまでは安心だったけどね~」
「あー、確かに岩泉さんがいると安心でしたね」
「ちやほやされんのも、周りからやべーって思われるのも及川だったけどさ、岩泉ありきの及川だからね。身内シメてんのもあいつだったし」
「そっすね」
宮城の秋は冷える。
白い息が弾む。
夜道に名前さんの笑い声が響いた。
「どこの大学受けるんですか」
「ん~、東京かな」
「そっすか」
「金田一は?」
「まだ全然、考えてないっす。でも大学でも部活でバレーやりたいっす」
「そっかそっか。関東でみんなで会えたら嬉しいね、あいつらもみんなそうみたいだから」
「そうなんすか。連絡するっす」
「まあうちらがみんな受かればね」
「…がんばってください?」
「なんで疑問形なの」
「いやなんか、俺が言うのも変な気がして」
「そんなことない。嬉しいよ」
でかくてよしよしできないな、と
名前さんはやっぱりでかい声で笑った。
先輩たちは関東に行くのか
今だけだ、こうして、道でばったり。
(また、会えるかな)