大学生
成人式の後に同窓会をするというので
思わず澤村に連絡した
年末に関東から帰ってくるらしい澤村と
仙台で合流して一緒に帰ることになった
久しぶりすぎるからか
周りにカップルが増えてきて耐性がついたのか
メールでのやり取りだったからかはわからないけど
うん、意外と平常心。
駅の新幹線口で
肩を叩かれて
「髪型変わってるからちょっと迷ったわ」って
眉を下げた照れ臭そうな顔に
やっぱり胸が高鳴る。
「さ、さわむらだ」
「おう、久しぶり」
「わ~!うれしい!会いたかった!」
「うん、俺も」
「そういえばスガも今日帰るらしくて誘ったんだよ」
「え、菅原は?」
「せっかく道宮と一緒って言ったのに、用事あるって置いていきやがった。まあ帰省中はいつでも会えるしな」
「えー、そうなの!」
菅原、グッジョブという気持ちと
心臓に悪いから一緒にきてよ~
という気持ちがせめぎあっているけど。
私たちも夕方には電車に乗るので
地元にいるとこれが案外食べない
おいしい牛タンの店に入って
レディースセットなんて甘っちょろいこと言わず
お肉がたくさん食べれるセットを頼み
澤村は大盛りのごはんをおかわりまでした。
目の前の映像が本当なのかわたしの妄想なのか
ちょっとよくわからなくなっている。
まだ時間あるし甘いもん食べよう、と
誘われれば頷くしかできないし
パフェに乗っかった苺と葡萄を交換したのも
なんか現実味がなくて
「さわむら、彼女でもできた?」
「え、できてないけど。なに道宮彼氏いんの?もしかして誘ったらまずかった?」
「いや、彼氏いないし、まずくないけど」
「まあ羨ましくはあるけどな」
「いいじゃん、都会は可愛い女の子いっぱいいるでしょ」
「まあな、なんかみんな華やかで、気が休まんないよ」
「地味で悪かったね」
「そこまで言ってないだろ、道宮もなんか女子大生ってかんじでびっくりしたんだからな」
「え、ほんと?」
「髪型変わったよな、化粧もしてんだろ」
「あ、パーマかけたんだよ、髪伸びてきたからね。てゆーかケバい??大丈夫??」
「いや、かわいい」
「かっ!?」
動転して
盗み見るように
澤村の表情を探ったけど
特に変わった様子がない
私だけがどえらいドキドキしているみたいで
はずかしい、どうしよう!真緒助けて!
ボックス席に並んで座って
しばらく揺られる在来線でも
何を話したか覚えてない
あー菅原なんで先にかえっちゃったんだよう
「もともとくせ毛だから、逆にパーマかけたほうがいいって美容師さんが」
「女子は成人式の日も大変なんじゃないか?道宮も振袖着るの?」
「そうそう、当日朝6時から着付けなの」
「げ、朝何時に起きるの?」
「んー、5時かな~…着物着ちゃったらなるべくトイレも行きたくないし地獄だよ~」
「女子は大変だよな、でもまあ滅多にみられないし、楽しみにしてる」
「やめてよーハードルあがっちゃうじゃん!」
たのしみにしてる、と
笑った顔に心臓が。
AED!いります!