「あっ道宮じゃん」

「おう？」

「クッキー焼いたんだよ、まだあったかいから食っていきな」

「東峰とうとうそういう趣味にも目覚めた？」

「やめろよ、調理実習だべ」

「あ、うちらも明後日だった」







大きな両手いっぱいのクッキー
大事そうにキッチンペーパーで包んで
透明のビニール袋に入れて


「え！おいしっ！てゆーかかわいっ！何このキラキラしたの」

「あ、なんか同じ班の女の子が飴玉持ってきてな、焼く前にここにのっけたんだよ。かわいいだろ？」

「おいおいおい～！なんで東峰そんなにカワイイものが似合うんだよ～！！このこの～～ずるい～～」

「え？え！？いやだから女の子がさ、てゆーか道宮だってやればいいじゃん」






まだちょっと熱が残った
ほくほくのクッキー、ぜいたくだ。
たくさん食べなよ～と
にっこりわらったひげ面と
いくつもいくつも頬張る




「道宮、ほんとに美味しそうにたべるよな～」

「アッ！？私またたべすぎた！？」

「いやいやそんなことないよ。実習いつなの？」

「明後日かな。お返しするね」

「あー…俺はいいから大地にやるべ」

「なんで澤村！？」

「な、いいだろ？明後日だったな、俺が大地に言っとくから」

「え！！！だめ！言わないで！！」

「なんでだめなの？俺にくれる分大地にやって、あいつもさ、美味しそうに食べるよ」

「だからそういうことじゃなくて！！！」

「おーい、盛り上がってんな」







東峰が最後の一個を頬張ったところで
後ろから肩をたたかれる。
振り返らなくてもわかるよ。




「なんだよお前ら、口の周りボロボロだらけだぞ」

「えっ！？あっ！？」

「あ、大地いいとこにきたな、調理実習でクッキー焼いたんだよ」

「俺の分残ってないじゃん」

「道宮が明後日やるんだって。大地は道宮がくれるって」

「マジ？やった、何時間目？」

「っさ、さんよじかめ」

「じゃあさ、昼一緒に食おうぜ！期待してる！じゃあ俺移動だから」









笑顔残して、後ろ姿。
角を曲がるまで見送って
思わず顔を見合わせた。





「……」

「……」

「…みちみや、怒った？」

「…おこっ…てない！ありがとう東峰！！」

「だべ」