誰にもなびかないマネージャー
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
帰る前に色々と、感想とかアドバイスをくれた大学生を見送って、田岡先生の周りにみんなで集まる。マネージャーも、と言われてダッシュでノブと神さんの隙間に滑り込む。
「明日1日、休みにする」
「え!?」
「高頭とも堂本くんとも相談してな。体育館は開けるから、自主練する分には構わないがやりすぎないように。明後日からの残り2日を密度高くしたい。7時の朝の集いに出て朝飯食ったあとミーティングだけしよう」
「ほぉ…」
「はぁ…」
じゃー解散。みんながわらわら立ち上がるなか洗濯の算段をしていたら、容赦なく左右のほっぺたをつかまれた。
「ひはひ」
「なーにぼけっとしてんだおめーは」
「あんたと違って休みでも洗濯があんのよ洗濯が!もー!いたいじゃんか!」
「赤くなってるぞ」
「お前力加減考えろよ」
久しぶりに先輩たちにがやがや言われながら歩く。部室に帰ってきたみたいだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
風呂上がりに最後の洗濯を干して戻ってくると、食堂の奥に小さく電気がついている。そーっとのぞくと、物音に巨体が揺れた。
「ミキオくん」
「ひっ、ごめんなさい!」
「…お腹空いてるの?」
「はいっす…すみません…」
「まかせてよ、おばさんたちがお米と卵は使っていいって、あとはしきれ野菜のストックもあるって、お、しめじがこんなに!よし雑炊にしよう」
「ほんとっすかあ?」
大きなからだを縮めたって隠れられやしないのに。だしのもとを溶かしたお鍋からは食欲をそそるかおりが広がる。しめじとお米をざざっと入れてしまって、食べ頃になったら溶き卵をそーっと流し入れる。
「あれ、今誰かいた?」
「えっ、そうですか?」
「だれですかー?あれ、返事ない」
「気のせいじゃないです?」
「ええ?ちょっとキンチョールぶっかけてくる!」
「ちょちょちょ、危ないですって原田さん!」
流しの横に備え付けのキンチョールを構えて歩くと、くりんとした坊主頭がのぞく。
「沢北さん」
「…オッス」
「さわきたさん!原田さんすごいんですよお、いい匂いするでしょ」
「やめなされミキオくんよ、わたしって言うよりだしのもとの実力だからね。沢北さんも食べます?」
「………いいの?」
うんまい!すごい!お前天才だな!と目を輝かせた沢北さんに、どうぞ存分に褒めてくださいとふんぞり返って返事をして1口目を口に運ぶ。おー、我ながらおいしい、と隣のミキオくんの表情を伺うと、なんと驚き涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていて、そこにあったティッシュを何枚か掴んで乱暴に拭った。
「泣くほどうまい?」
「ばか!んなわけねーだろ!」
「ジョークですよジョーク!」
「おい!」
「ミキオくんずっと練習してるもんねえ。河田さんも必死なんだろうけど」
「んぅ…ぐぅ、」
「わあ、ごめんごめん!」
ティッシュでは追い付かなくなって、首にかけていたタオルを取って顔を拭った。向かいに座っていた沢北さんも、隣に移動してきて背中をさすっている。大きなからだを震わせて、タオルに顔を埋めている。目が合うとまたこみ上げてしまうみたいで、失礼、と声をかけて、正面に滑り込んで腕を回した。背中を叩いてしばらくすると、力も抜けて私の左肩は涙でびしゃびしゃになってきた。
「兄ちゃんのことがだいすきなんだけど」
「うん」
「全然言われたとおりにも思いどおりにもできない」
「うん、きついね」
沢北さんはミキオくんの背中を叩きながら、不思議そうにわたしの顔をみた。なんて饒舌な表情筋だ。
「わたしもちっちゃい頃泣き虫でね。ノブがいつもこうしてくれてたから」
「清田?」
「ん、生まれたときから一緒なんで」
「そっかぁ、いいなあ」
「いいんですかねぇ、結局いまだにこうして一緒ですからねえ、どーやって離れていいかわかんないんですよねー」
ミキオくんの息がゆっくりになってきたのを見計らって、体をそおっと離して、ほら食べよう、と声をかけた。沢北さんはあほになったみたいにうまいうまいと言っている。はあ?と声がしたので振り向くと、今頃風呂上がりらしい牧さんだった。アンバランスなメンツを見回して、探るような視線を送ってきた。
「牧さんも食べますか」
「お、いいのか?」
にっこり笑うと牧さんも目元を弛めた。
沢北さんのとなりに腰を下ろした牧さんは、でっかい口で1口目を食べてうまいな!と声をあげた。
「あら、牧さんに褒められたら調子乗ります」
「なんでだよ、俺もほめたろ」
「そりゃーあれです、日頃の行い」
「うぐ」
「うちの人はみんな牧さんがだいすきなんです。牧さんまだ練習してたんですか?」
「いや、浜に走りに行ってた。そうだ河田、明日の朝お前もどうだ」
「おれですか?」
「浜で走ると足腰にきくぞ。お前の兄貴は色々言いたいことあるみたいだがやっぱりフィジカルだ。あの桜木はシロートだけどな、予選の時からフィジカルはピカイチだったぞ。体もでけーんだから、足腰鍛えないと故障すんぞ」
「あ、えっと、ありがとうございます、あの、」
「明日6時に玄関な」
「はい!」
「浜で走ってるからそんなに焼けてるんですか?」
「や、これはサーフィンだ」
「えっ牧さん初耳!」
「え?ああ、まあ話してなかったかもな」
「それでムキムキなんですね牧さん」
「お前なあ、何でも結びつけたがるなよ」
「だってー」
4人でぺろりと平らげると、綺麗に洗って証拠隠滅した。ごめん、とタオルを差し出したミキオくんに、どーせすぐ洗うし、むしろ汗臭くてごめんと返事して、遠慮なく背中を叩いた。
「明日1日、休みにする」
「え!?」
「高頭とも堂本くんとも相談してな。体育館は開けるから、自主練する分には構わないがやりすぎないように。明後日からの残り2日を密度高くしたい。7時の朝の集いに出て朝飯食ったあとミーティングだけしよう」
「ほぉ…」
「はぁ…」
じゃー解散。みんながわらわら立ち上がるなか洗濯の算段をしていたら、容赦なく左右のほっぺたをつかまれた。
「ひはひ」
「なーにぼけっとしてんだおめーは」
「あんたと違って休みでも洗濯があんのよ洗濯が!もー!いたいじゃんか!」
「赤くなってるぞ」
「お前力加減考えろよ」
久しぶりに先輩たちにがやがや言われながら歩く。部室に帰ってきたみたいだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
風呂上がりに最後の洗濯を干して戻ってくると、食堂の奥に小さく電気がついている。そーっとのぞくと、物音に巨体が揺れた。
「ミキオくん」
「ひっ、ごめんなさい!」
「…お腹空いてるの?」
「はいっす…すみません…」
「まかせてよ、おばさんたちがお米と卵は使っていいって、あとはしきれ野菜のストックもあるって、お、しめじがこんなに!よし雑炊にしよう」
「ほんとっすかあ?」
大きなからだを縮めたって隠れられやしないのに。だしのもとを溶かしたお鍋からは食欲をそそるかおりが広がる。しめじとお米をざざっと入れてしまって、食べ頃になったら溶き卵をそーっと流し入れる。
「あれ、今誰かいた?」
「えっ、そうですか?」
「だれですかー?あれ、返事ない」
「気のせいじゃないです?」
「ええ?ちょっとキンチョールぶっかけてくる!」
「ちょちょちょ、危ないですって原田さん!」
流しの横に備え付けのキンチョールを構えて歩くと、くりんとした坊主頭がのぞく。
「沢北さん」
「…オッス」
「さわきたさん!原田さんすごいんですよお、いい匂いするでしょ」
「やめなされミキオくんよ、わたしって言うよりだしのもとの実力だからね。沢北さんも食べます?」
「………いいの?」
うんまい!すごい!お前天才だな!と目を輝かせた沢北さんに、どうぞ存分に褒めてくださいとふんぞり返って返事をして1口目を口に運ぶ。おー、我ながらおいしい、と隣のミキオくんの表情を伺うと、なんと驚き涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていて、そこにあったティッシュを何枚か掴んで乱暴に拭った。
「泣くほどうまい?」
「ばか!んなわけねーだろ!」
「ジョークですよジョーク!」
「おい!」
「ミキオくんずっと練習してるもんねえ。河田さんも必死なんだろうけど」
「んぅ…ぐぅ、」
「わあ、ごめんごめん!」
ティッシュでは追い付かなくなって、首にかけていたタオルを取って顔を拭った。向かいに座っていた沢北さんも、隣に移動してきて背中をさすっている。大きなからだを震わせて、タオルに顔を埋めている。目が合うとまたこみ上げてしまうみたいで、失礼、と声をかけて、正面に滑り込んで腕を回した。背中を叩いてしばらくすると、力も抜けて私の左肩は涙でびしゃびしゃになってきた。
「兄ちゃんのことがだいすきなんだけど」
「うん」
「全然言われたとおりにも思いどおりにもできない」
「うん、きついね」
沢北さんはミキオくんの背中を叩きながら、不思議そうにわたしの顔をみた。なんて饒舌な表情筋だ。
「わたしもちっちゃい頃泣き虫でね。ノブがいつもこうしてくれてたから」
「清田?」
「ん、生まれたときから一緒なんで」
「そっかぁ、いいなあ」
「いいんですかねぇ、結局いまだにこうして一緒ですからねえ、どーやって離れていいかわかんないんですよねー」
ミキオくんの息がゆっくりになってきたのを見計らって、体をそおっと離して、ほら食べよう、と声をかけた。沢北さんはあほになったみたいにうまいうまいと言っている。はあ?と声がしたので振り向くと、今頃風呂上がりらしい牧さんだった。アンバランスなメンツを見回して、探るような視線を送ってきた。
「牧さんも食べますか」
「お、いいのか?」
にっこり笑うと牧さんも目元を弛めた。
沢北さんのとなりに腰を下ろした牧さんは、でっかい口で1口目を食べてうまいな!と声をあげた。
「あら、牧さんに褒められたら調子乗ります」
「なんでだよ、俺もほめたろ」
「そりゃーあれです、日頃の行い」
「うぐ」
「うちの人はみんな牧さんがだいすきなんです。牧さんまだ練習してたんですか?」
「いや、浜に走りに行ってた。そうだ河田、明日の朝お前もどうだ」
「おれですか?」
「浜で走ると足腰にきくぞ。お前の兄貴は色々言いたいことあるみたいだがやっぱりフィジカルだ。あの桜木はシロートだけどな、予選の時からフィジカルはピカイチだったぞ。体もでけーんだから、足腰鍛えないと故障すんぞ」
「あ、えっと、ありがとうございます、あの、」
「明日6時に玄関な」
「はい!」
「浜で走ってるからそんなに焼けてるんですか?」
「や、これはサーフィンだ」
「えっ牧さん初耳!」
「え?ああ、まあ話してなかったかもな」
「それでムキムキなんですね牧さん」
「お前なあ、何でも結びつけたがるなよ」
「だってー」
4人でぺろりと平らげると、綺麗に洗って証拠隠滅した。ごめん、とタオルを差し出したミキオくんに、どーせすぐ洗うし、むしろ汗臭くてごめんと返事して、遠慮なく背中を叩いた。