大平くんの同僚
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《昨日はすみませんでした。お酒入ってないときにまた話したいです》
電話番号しか知らなかったから
ショートメッセージで謝罪の言葉
昨日は嬉しいことがあった
でもお酒も飲んでいたし
どこまで本当かちょっとよくわからない。
ひんやりとした空気や
いつもよりうんと近い大平さん
高校生や大学生のころ
もちろん見た目だけではないけど
ぱっと見てもかっこいいなと思う
そういう人が好きだった。
大平さんは確か自分のことを面倒な男と言ったけど
面倒かどうかは置いておいて
これまで付き合った人や
好きになった人と違う。
だけどぼやぼやして
誰か違う人に持っていかれちゃうのは嫌だ。
遊び人というほどではないが
何度か彼氏がいたし
「そういうこと」もそれなりにあった
その間に大平さんは
あの殺人サーブを何千回打ったろうか。
画面に表示された
「大平さん」の横の
受話器のマークをタップする
「もしもし」
「苗字さん?」
「今飲んでるの?」
「朝から飲むわけないでしょ」
「今日、あいてないの?」
「一日ひましてるよ」
「…会社で気まずいのはいやだし、今から家こない?場所覚えてる?」
「…じゃあ適当に昼飯買っていくよ」
「サイコーじゃん」
大平さん。
同僚の大平さん。
そしてちょっと、飲み友達。
大事な人だな、
失いたくない気持ちを
もっと近くにいたい気持ちが
越えていったよ。
一時間するころ
ばつの悪そうな顔でやってきた大平さんは
駅ビルで売ってるおいしいおにぎりと
レアチーズプリンを提げてきた。
「こっちは、冷蔵庫に」
「ありがとう、ございます。狭いけど上がって」
「どこも一緒だろ」
大平さんは
部屋に入ったところで
棒立ちになったまま
存在感のある眉を下げて
やっぱりきまり悪そうにしている。
「昨日は、悪かった」
「…何のことを言ってるの?」
「…酔って、大事なこと口走ってしまった」
「うん」
「女の人と、付き合ったことなんかないから、好きだと思ってもどうしたらいいかわからなかったんだ。だから黙ってたけど、もう逃げないよ。苗字さんが好きだ」
「…私はさ、大平さんみたいに何かに打ち込んできた人じゃないから。ふらふらしてて彼氏もいたことあるよ。でも今一人なのはみんな別れちゃったからだから。大平さんと一緒にいれなくなるのは嫌だなと思ったけど、もっと一緒にいたいとか、よく知りたいなって気持ちのほうが強いよ」
「…座らない?」
「頼りないと思うけど、よろしく」
「うーん、そうだとしたら新鮮でいいかも」
座布団の上に座った大平さんの
隣に座って右手を掬った。
「って、みっともないね、頑張ってどうこうすることじゃないもんね、」
「いや、助かる」
繋がった手のひらに体重がかかり
一気に近づいた大平さんは
鼻と鼻が30センチくらいのところまで
じりじり近づいて、また離れた
重なったままの掌は
痛いほど握られている
「だめだ…これが緊張か…」
「大平さん、緊張しないって言ってたのに」
「かっこ悪いところ見られたくないと思うとだめだな」
「息してください、深呼吸」
はじめの日、
あの日、あのオフィスからの景色が
わたしのお気に入りになったように
わたしの傍が大平さんのお気に入りになるといい。
長くゆっくり息を吐いたその唇に
黙ってわたしのそれで触れる
驚いた顔、そして
欲を孕んで揺れる瞳に
わたしの方がどうかしてしまいそう
二度、三度、触れるだけで
胸やお腹の奥の方が熱くなっていく
堪えきれずに舌を進ませると
すぐに応えてくる
背中や腰に回った強い掌が熱い。
どうしよう、このままわたしたち、進んでしまう
「は、だ、だめだ、ここまでだ」
「え?」
「我慢できなくなる」
「…とっくにできないよ」
「だめだって、こども、できてしまう」
「わたし薬のんでるから、大丈夫」
みつめあって、彼のシャツのボタンを
ひとつひとつ外すあいだにも焦れる
「えっ、おい」という制止を無視して
熱い胸板にくっついた先端に
舌や唇を這わすと
股間がさらに盛り上がる
「大平さん、」
「んっ、ん?」
「……かわいい」
「……悪かったな」
くるりと形勢逆転されて
洋服を剥ぎ取られる
ブラのホックに手間取る姿に
またかわいい、とつぶやいてしまい
口を塞がれる
さっきはじめてしたなんて嘘だと思うほど
脳みそがどろどろに溶けてるみたいだ
大きく硬い掌がからだのどこを掠めても熱い
ひどく興奮していることと
指一本触れられていないのに
ぐとゃぐちゃに濡れていることに気付いて
もう冷静ではいられない
目が合うだけで
どんどん判断力を失っていく感じがする
喘ぎ声がだだもれで恥ずかしいとか
そんなこともとっくに頭の中から消えて
「も、だめ、入れて」
「え、」
「…お願いだから、」
「いいのか」
くちゅ、ぬぷ、
「う、」
「っおおきい、」
「動いていいか」
「え、」
***
そこから先の記憶はなく。
「んー…」
「起きたか」
「…大平さん?ああ、」
「余裕がなくてな、悪かった。大丈夫か」
「ん、あ、はい、」
腰の痛みと
まだ少し熱い体と
パンツ一丁で縮こまる大平さんと。
あー、そうだった
私大平さんと、
「ごめんな」
「なんで謝るの?」
「え?」
「私が誘ったのに」
「いや、でも」
「私は大平さんのこともっと知りたい」
「ああ、それは、俺もだ」
「時々お酒を飲みましょう」
「買い物とか、映画とか、行ってみようか」
「そうですね」
「ま、とりあえず、その、」
服を着てくれないか、と言われて
ようやく自分が裸のままだったことに気づく
わざとらしくそっぽ向いた大平さん
虚勢をはってみたけれど
こんな真面目な人ががっかりしなかっただろうか
「苗字さん」
「ん?」
「…こんなスピード感にはびっくりしてるけど俺は、君の最後の男になれるように努力する」
「……な!」
緩やかにこの人を
愛していくんだと思っていた。
うっすらした記憶の中で
めちゃくちゃ気持ちよかったのは置いておいて
これは。
私は大平さんのことを
ちょっと見くびっていた。
予想外の想定外の言葉に
これから自分がどうなっちゃうのか
恐怖さえ覚える日曜の夕暮れだった。
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