ふかつの恋
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わたしは背も高くて女子のなかでは男子っぽい体格だし、女子高でバスケに打ち込んだその頃なんかはショートカットもいいとこで女の子からキャーキャー言われるのには慣れている。推薦をもらって元気に大学に入ったはいいけど共学だ。入学早々まわりはカップルだらけになり私はアワアワした。男女交際どころか男子がいることに慣れなかった。
同じ状況の深津はわたしにとっては安全基地だ。同じ山王からやってきている松本くんも似たようなもんだけど、ポイントガードとして話が合うのは深津の方。1年のとき先輩に家が近いんだろ!と言われて以来飲み会の度に黙って背中を差し出してくれる。表情わかりにくいけど悪いやつじゃない、少なくとも大学にいる間は、いやたぶん現役でいる限りはこんな関係が続くんじゃないかな。
そこまで話してアイスカフェオレをずずずと啜る。高校のときほどではないものの、 大学三年になってもショートカットをキープするわたしを見て三奈はため息ついた。
同じ高校の出身で都内の別の大学に入ってすぐに髪の毛を伸ばし始めて、いまではウエーブまでかけている三奈はバスケ部の同級生と付き合っている。適応力高すぎんか。赤く彩られた唇を尖らせて三奈はむーっと唸った。
「好きなんでしょ、深津くんのこと。つかまえとかないと誰かに横からとられちゃうよ」
「え?だってピョン太郎だよ?」
「バスケやってる人間ならみんな知ってるような人だよ?顔も割と整ってるし体は言わずもがな」
「んー、でもなあ」
「いいの?深津くんに彼女できちゃって」
「んうー!どーして話がそーなるー!!!」
私のことを完全に面白がっている三奈とまた会おうと約束して駅に向かう。日が傾いてじりじり焼き付けられる。
「深津先輩!」
「こまちちゃん」
聞きなれた名前と聞きなれた声がして思わずポストの影に身を隠す。
「すみません無理言っちゃって」
「こんなとこまで歩いていいピョン、荷物かせピョン、座って休むピョン」
「大丈夫ですよ、重たいけど元気です。今日久しぶりに肉じゃが作りました」
「こまちちゃんの肉じゃがおいしいピョン」
「ふふ、帰りましょ」
見たことないほどわかりやすく、目元と口元を緩めた深津の目線の先には小柄な体に不釣り合いな大きなおなかを抱えた色白の女の子がいた。妊婦らしいけど見た目的に年齢は同じくらいに見える。
深津はその子から買い物袋とショルダーバッグを受け取ると、歩幅をあわせてゆっくりと横断歩道を渡っていってしまった。
ぽかんとした私だけが取り残される。彼女ってゆーか…隠し妻?隠し子?