こまちちゃんと沢北くん
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(俺の大好きなこまちちゃん)
アメリカにやってきて2ヶ月ほどがすぎた。 アメリカのやつはでかくて速くて強い。毎日が挑戦だ。飯が違う、言葉が違う、もちろんストレスはある。ルームメイトの韓国人のイルギュが、荷物きてるぞ、とテーブルの上の大きな箱を指差す。ブロック体の丁寧に書かれた送り表をには JAPAN そしてakitaの文字。学校からか、いや、
(夏、)
「こまちちゃんだ!!」
丁寧に梱包された段ボールをあけると、ジッパー付きのビニールに小分けにされた白米と、最後にくれたのと同じのらしい味噌が入っている。2合ずつに分けてくれていて、鍋で炊くときの分量や火加減が書いた紙も同封されている。全部の漢字に読み仮名書いてあるけど、俺よほどバカだと思われてる?
それとは別に手紙が入っている。こまちちゃんの字は丸っこいけど丁寧に書いたのがわかる、まさにこまちちゃんのような字だった。
ーーーー
沢北くん
お元気ですか。新米がとれたので送ります。無事に届くといいですが。
去年は一緒に稲刈りしたね。親戚のみんなは沢北くんがアメリカにいったと聞いてびっくりしていました。
バスケがんばってね!いつも応援してます。またいつか一緒に稲刈りしましょう。田植えもしようね、トラクターに乗せてあげます。どうか無事で。 澄田夏
ーーーーー
だばだば泣き出した俺を見て、イルギュがガールフレンド?と尋ねてきた。んー、まあ、と返す。どでかい河田さんちやこまちちゃんち、大勢の親戚やめちゃダサい農家ルックなど、色んなことを丁寧に思い出す。
「それよりそれ日本の米?」
「そうだ、お前この前のやつ作ってくれよ」
「いいね」
肉や野菜を山盛りにしたビビンバを、前に作ってもらった。こっちのスーパーで買った米を炊いて食べたけど、なんか納得できなかった、具はうまかったのに。
「俺の好きな人が作った米」
「最高じゃん」
それから毎年こまちちゃんは必ず新米を送ってくれた。次の年の手紙には、卒業したらまさしくんと結婚しますと書かれていた。その次の年は、まさしくんにもまだ言ってませんが赤ちゃんができたかもしれません、と書かれていた。その度俺は笑ったり泣いたり忙しい。イルギュは「お前すぐ泣く」と深津さんのようなことを言ってくる。
そうして俺は日本に戻る。成田空港には河田さんと深津さんが迎えにきてくれた。河田さんは実業団選手でパパだけど他の先輩たちは大学生だ。ワゴン車に押し込まれて最近たてたという河田家にむかう。
「深津さんと河田さんはよく会ってるんすか」
「ピョン」
「深津は2週間にいっぺんはきてっからよ、チビが覚えた」
「最近はフカチュって呼ばれてるピョン」
「美紀男も休みになると来るしなあ、週にいっぺんは誰かくるなあ」
「美紀男は?寮すか?」
「んだべ、そんでも俺が長く留守するときはうちから通ってくれるときもあってなあ、」
「美紀男が一番可愛がってるピョン」
「ふっふっふ、俺が一位をかっさらいますよ!」
「無理だべ」
「無理ピョン」
「ひどぉ!やってみないとわかんないでしょお!!」
「お前が赤ちゃんみてーなもんピョン」
「案外気が合うかもな」
先輩たちと一緒に玄関にでてきてくれたこまちちゃんは、俺がみたってわかるくらい大きなお腹をしている。勢いをつけて抱きつこうと思ったのに急ブレーキをかけると、こまちちゃんが腕を伸ばしてくれた。
「もう、ひっどい顔だべ。おかえり沢北くん」
どれくらいの強さを出していいんだかわからない。こまちちゃんの背中にそっとてのひらを当ててからだを屈めた。こまちちゃんはもう、少しもゆらゆらしていない。どっしりしてかっこいい笑顔だ。東京にでてきたこまちちゃんも、とうとう腹をくくって正直になった河田さんもかっこいい。やっぱり好きだ、大好きだ。
「よかった、こまちちゃんが笑ってて」
「ありがとう沢北くん」
「こまちちゃんのお米ちゃんと毎年届いてたからね。韓国人のルームメイトもスゲー喜んでた」
「ほんと?よかった、嬉しいよ。うちも河田も稲刈りや田植えで集まる度に親戚みんな沢北くんの話してるよ。どんなに先でもいいからまた一緒にやろうね」
「うん、ありがと」
「こまちちゃん、おなか触りたい」
「えー、ヨシくんに聞いてみて」
「えっ!?かーたさんじゃなくて!?ヨシくん、母ちゃんのおなかさわっていいですか?」
「ヨシくんの赤ちゃんがはいってるんだよ!やさしくよしよしするんだよ!」
「ウッス!」
そーっと、とてのひらを当てると、そんなんじゃ動いてもわかんないよーと上からぎゅっとされた。右の方になんだかずっしり存在感がある。
「それねえ、たぶん頭。今こっち時々蹴るからそのまま待っててね」
「すごい、すごい…人間入ってる」
「いやー、また美紀男が出てきたらどうしようかねえ。ヨシくん生まれた瞬間から美紀男に似てたからさあ、もう最近美紀男もわたしが産んだ気がしてきたもん」
「みんな見事第一声美紀男つったからな」
「まさしくんもね」
「んだべ、俺が一番だった」
「まあでも河田さんに似るより美紀男に似た方がかわいくていいじゃん」
「お前あとでしめるからな」
ここ、と言われたおなかの左側を、小さくたしかに蹴り始めた。どんな足のサイズなんだろ。どんなにがんばって蹴ってるんだろ。色々考えてこまちちゃんの顔を見るとまた泣けてきてしまった。ヨシくんがなきむし!と指差して、みんなが笑った。たぶん深津さんも笑った。大好きな人たちに囲まれて、幸せな夜がふけていく。
アメリカにやってきて2ヶ月ほどがすぎた。 アメリカのやつはでかくて速くて強い。毎日が挑戦だ。飯が違う、言葉が違う、もちろんストレスはある。ルームメイトの韓国人のイルギュが、荷物きてるぞ、とテーブルの上の大きな箱を指差す。ブロック体の丁寧に書かれた送り表をには JAPAN そしてakitaの文字。学校からか、いや、
(夏、)
「こまちちゃんだ!!」
丁寧に梱包された段ボールをあけると、ジッパー付きのビニールに小分けにされた白米と、最後にくれたのと同じのらしい味噌が入っている。2合ずつに分けてくれていて、鍋で炊くときの分量や火加減が書いた紙も同封されている。全部の漢字に読み仮名書いてあるけど、俺よほどバカだと思われてる?
それとは別に手紙が入っている。こまちちゃんの字は丸っこいけど丁寧に書いたのがわかる、まさにこまちちゃんのような字だった。
ーーーー
沢北くん
お元気ですか。新米がとれたので送ります。無事に届くといいですが。
去年は一緒に稲刈りしたね。親戚のみんなは沢北くんがアメリカにいったと聞いてびっくりしていました。
バスケがんばってね!いつも応援してます。またいつか一緒に稲刈りしましょう。田植えもしようね、トラクターに乗せてあげます。どうか無事で。 澄田夏
ーーーーー
だばだば泣き出した俺を見て、イルギュがガールフレンド?と尋ねてきた。んー、まあ、と返す。どでかい河田さんちやこまちちゃんち、大勢の親戚やめちゃダサい農家ルックなど、色んなことを丁寧に思い出す。
「それよりそれ日本の米?」
「そうだ、お前この前のやつ作ってくれよ」
「いいね」
肉や野菜を山盛りにしたビビンバを、前に作ってもらった。こっちのスーパーで買った米を炊いて食べたけど、なんか納得できなかった、具はうまかったのに。
「俺の好きな人が作った米」
「最高じゃん」
それから毎年こまちちゃんは必ず新米を送ってくれた。次の年の手紙には、卒業したらまさしくんと結婚しますと書かれていた。その次の年は、まさしくんにもまだ言ってませんが赤ちゃんができたかもしれません、と書かれていた。その度俺は笑ったり泣いたり忙しい。イルギュは「お前すぐ泣く」と深津さんのようなことを言ってくる。
そうして俺は日本に戻る。成田空港には河田さんと深津さんが迎えにきてくれた。河田さんは実業団選手でパパだけど他の先輩たちは大学生だ。ワゴン車に押し込まれて最近たてたという河田家にむかう。
「深津さんと河田さんはよく会ってるんすか」
「ピョン」
「深津は2週間にいっぺんはきてっからよ、チビが覚えた」
「最近はフカチュって呼ばれてるピョン」
「美紀男も休みになると来るしなあ、週にいっぺんは誰かくるなあ」
「美紀男は?寮すか?」
「んだべ、そんでも俺が長く留守するときはうちから通ってくれるときもあってなあ、」
「美紀男が一番可愛がってるピョン」
「ふっふっふ、俺が一位をかっさらいますよ!」
「無理だべ」
「無理ピョン」
「ひどぉ!やってみないとわかんないでしょお!!」
「お前が赤ちゃんみてーなもんピョン」
「案外気が合うかもな」
先輩たちと一緒に玄関にでてきてくれたこまちちゃんは、俺がみたってわかるくらい大きなお腹をしている。勢いをつけて抱きつこうと思ったのに急ブレーキをかけると、こまちちゃんが腕を伸ばしてくれた。
「もう、ひっどい顔だべ。おかえり沢北くん」
どれくらいの強さを出していいんだかわからない。こまちちゃんの背中にそっとてのひらを当ててからだを屈めた。こまちちゃんはもう、少しもゆらゆらしていない。どっしりしてかっこいい笑顔だ。東京にでてきたこまちちゃんも、とうとう腹をくくって正直になった河田さんもかっこいい。やっぱり好きだ、大好きだ。
「よかった、こまちちゃんが笑ってて」
「ありがとう沢北くん」
「こまちちゃんのお米ちゃんと毎年届いてたからね。韓国人のルームメイトもスゲー喜んでた」
「ほんと?よかった、嬉しいよ。うちも河田も稲刈りや田植えで集まる度に親戚みんな沢北くんの話してるよ。どんなに先でもいいからまた一緒にやろうね」
「うん、ありがと」
「こまちちゃん、おなか触りたい」
「えー、ヨシくんに聞いてみて」
「えっ!?かーたさんじゃなくて!?ヨシくん、母ちゃんのおなかさわっていいですか?」
「ヨシくんの赤ちゃんがはいってるんだよ!やさしくよしよしするんだよ!」
「ウッス!」
そーっと、とてのひらを当てると、そんなんじゃ動いてもわかんないよーと上からぎゅっとされた。右の方になんだかずっしり存在感がある。
「それねえ、たぶん頭。今こっち時々蹴るからそのまま待っててね」
「すごい、すごい…人間入ってる」
「いやー、また美紀男が出てきたらどうしようかねえ。ヨシくん生まれた瞬間から美紀男に似てたからさあ、もう最近美紀男もわたしが産んだ気がしてきたもん」
「みんな見事第一声美紀男つったからな」
「まさしくんもね」
「んだべ、俺が一番だった」
「まあでも河田さんに似るより美紀男に似た方がかわいくていいじゃん」
「お前あとでしめるからな」
ここ、と言われたおなかの左側を、小さくたしかに蹴り始めた。どんな足のサイズなんだろ。どんなにがんばって蹴ってるんだろ。色々考えてこまちちゃんの顔を見るとまた泣けてきてしまった。ヨシくんがなきむし!と指差して、みんなが笑った。たぶん深津さんも笑った。大好きな人たちに囲まれて、幸せな夜がふけていく。