堂本の妻、高齢出産の巻
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あれから20年がたち、もうじき還暦を迎える。物心つく前からバスケ部のにーちゃんたちを相手にボールを追いかけ回していた息子がエースとして活躍して卒業した頃から、もうそろそろ、と思い始めていた。河田は田植えや稲刈りのために帰ってくると、必ず部活に顔をだして部員たちを指導し、俺と酒をのんで泊まっていった。もう38、とっくに引退して会社に勤めながら 東京で4人の子供を育てている。末っ子が大学に入ったらこっちに戻ると言い始めたのはこの5年程だ。若いうちに結婚したとはいえ、俺達が初めての赤ん坊にわたわたしていた年齢でもうじき子育てから卒業しようというのはすごい。こまちちゃんは相変わらずにこやかな働き者だ。
「退こうと思ってる」
「まあ先生も年取ったべな」
「はは、止めねえのかよ」
「惜しまれて辞めるくらいがいいんだべ」
「お前も言うよな」
「次のあてはあんのか」
「おー、そうなんだよ。河田は田んぼがあるもはんな」
「んまあ、毎日みっちりっつーのは無理だべ」
「深津は今何してんだ」
「大学でサブコーチしてんべ。こないだ代表にも顔だしてた」
「大物過ぎるかなあ」
「んや、あいつも待ってるべ」
にやりと笑う顔は、皺が増えたぶんあの頃より柔らかく見える。兄貴肌で観察眼鋭く、機転が利いてユーモアもある河田はもちろん適任だと思うが、この話を切り出したのはやはり深津の名前を出すためだった。
「今度、東京で飲もう」
「おお、いいべ、」
「深津、なんて言うかな」
「いやとは言わんだろうけどなあ、部員らは気の毒だべ、ぜってえ鬼だ」
「うん、間違いないな」
「早苗さんはなんて?」
「や、まだ言ってない」
「はあ!?俺にこそこそ話してる場合じゃねえべよ先生!深津もあきれるべ」
「うん、そうだよなあ」
ちょっと怒った河田は、先に寝ている妻に聞こえないように声を潜めた。
ーーーーーーーー
「先生、白髪増えたピョン」
「他に言うことないのか」
「河田からなんとなく聞いたピョン」
「ぴょん……」
新幹線でいくと行ったら上野駅の新幹線口までやってきてくれた深津、俺のことを田舎じじいだと思いすぎていないか。少し歩いた路地裏の居酒屋に入ると、深津は河田を待たずに生二つ、と静かに声をかけた。
「俺は初戦で負けた年のキャプテンだピョン。部員にやさしくはできないピョン。でも奥さんは面白がってついてくっていってるピョン。九州出身だからスタッドレスは買ったことないってわあわあ言ってたピョン」
「えっ…えっ?お前忙しくないのか?」
「いや、もう引退したピョン」
「それは知ってるけど……」
「俺は負けた年のキャプテンだピョン。それでも先生が俺がいいって思ってくれるなら断る理由は何もないピョン。先生と同じだけのことをしてやれる保証はないけど」
「近いうちに一度見に来てくれ。よければ奥さんも連れてな」
「あいつ俺よりスパルタですよ」
「退こうと思ってる」
「まあ先生も年取ったべな」
「はは、止めねえのかよ」
「惜しまれて辞めるくらいがいいんだべ」
「お前も言うよな」
「次のあてはあんのか」
「おー、そうなんだよ。河田は田んぼがあるもはんな」
「んまあ、毎日みっちりっつーのは無理だべ」
「深津は今何してんだ」
「大学でサブコーチしてんべ。こないだ代表にも顔だしてた」
「大物過ぎるかなあ」
「んや、あいつも待ってるべ」
にやりと笑う顔は、皺が増えたぶんあの頃より柔らかく見える。兄貴肌で観察眼鋭く、機転が利いてユーモアもある河田はもちろん適任だと思うが、この話を切り出したのはやはり深津の名前を出すためだった。
「今度、東京で飲もう」
「おお、いいべ、」
「深津、なんて言うかな」
「いやとは言わんだろうけどなあ、部員らは気の毒だべ、ぜってえ鬼だ」
「うん、間違いないな」
「早苗さんはなんて?」
「や、まだ言ってない」
「はあ!?俺にこそこそ話してる場合じゃねえべよ先生!深津もあきれるべ」
「うん、そうだよなあ」
ちょっと怒った河田は、先に寝ている妻に聞こえないように声を潜めた。
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「先生、白髪増えたピョン」
「他に言うことないのか」
「河田からなんとなく聞いたピョン」
「ぴょん……」
新幹線でいくと行ったら上野駅の新幹線口までやってきてくれた深津、俺のことを田舎じじいだと思いすぎていないか。少し歩いた路地裏の居酒屋に入ると、深津は河田を待たずに生二つ、と静かに声をかけた。
「俺は初戦で負けた年のキャプテンだピョン。部員にやさしくはできないピョン。でも奥さんは面白がってついてくっていってるピョン。九州出身だからスタッドレスは買ったことないってわあわあ言ってたピョン」
「えっ…えっ?お前忙しくないのか?」
「いや、もう引退したピョン」
「それは知ってるけど……」
「俺は負けた年のキャプテンだピョン。それでも先生が俺がいいって思ってくれるなら断る理由は何もないピョン。先生と同じだけのことをしてやれる保証はないけど」
「近いうちに一度見に来てくれ。よければ奥さんも連れてな」
「あいつ俺よりスパルタですよ」