堂本の妻、高齢出産の巻
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アメリカに行く沢北くんを、テツさんが迎えにやってきた。見送りにでてきた部員たちと、名残惜しそうに言葉をかわしている。可愛らしく、かっこいい子だった。子供を抱いてテツさんと談笑していると早苗さん、と呼ばれて振り返る。
「あの、ほんとに、お世話になりました」
「こちらこそ、沢北くんがいて楽しかったよ。おちびのことも一番可愛がってくれたし」
目を潤ませて手を伸ばしてきた沢北くんに息子を渡すと、大きな目から涙をびちょびちょに流しはじめた。息子は不思議そうに、大好きなお兄ちゃんの顔をぺちぺちしている。どっちが赤ん坊かわかんねーべと河田くんが呟いてみんなが笑った。インターハイが終わってからみんな黙りがちで重たい空気だった。久しぶりにみんな遠慮なく笑って、深津くんも口許を緩めている。
「次会うときは一緒にバスケできるかもね」
「そーだそーだ、エージがこんくらいのときにはもうボール持たせてたぞ」
「えーテツさん、それは早くない?」
「うん、嫁にはスゲー怒られた」
太陽みたいな、明るくてあったかくて容赦ない子だった。2人を乗せた車が見えなくなると、誰からともなく体育館に向かう。静かになった食堂で、五郎は眉間にシワを寄せてコーヒーを飲んだ。
「寂しいんだ」
「うん、まあな」
「あの子たちが頑張ってるんだからしゃきっとしなさい」
「早苗」
「ん?」
「どーすりゃいいかなあ。これでよかったのかなあ」
「なーにをアンタ、全部俺の責任ですみたいな顔して!調子のんじゃないよ」
「へ?は?」
「深津くんがだーいぶ前に言ってた、あんたが私の尻に敷かれてるからなんか許せるみたいなこと」
「は?なんだそれ」
「だから私も言ってやったの。あんたたちがこんなに可愛くなければとっくに離婚してるわって」
「はあ!?ちょっとまて!」
「あんた、わたしとボーズたちに感謝しなさいよ~しけた面してたらみんなで蹴飛ばすわよ。あんたなんかせいぜい一生懸命のたうちまわってればいいのよ」
「言い方ってもんがあるだろ」
「そーだ、ちょっと気分かえてみようか」
「は?」
おちびを支えるおんぶひもを胸の前でクロスさせて、よろよろしながら五郎は体育館に向かった。ああなんて、久しぶりに肩が軽い。
(おわり)