堂本の妻、高齢出産の巻
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監督は正直めちゃくちゃ厳しい。なんで俺だけ、みたいなことも決して少なくはないし、そもそもの練習もきつい。監督この野郎って思ったことは一度や二度ではないしたぶんみんな割とそうだ。それでもどこか嫌いになりきれないのは、早苗さんの尻に敷かれているところを全く一切隠せていないところが大きいと思う。
1年の時、県予選が終わって一段落することなく加速する練習でボロボロになり、夕方寮を抜け出したことがあった。歩いていくと体育館の裏の普段誰も出入りしないところにちょっとしたくぼみがあった。座り込むとちょうどいいサイズで、なんだか離れるのが惜しくなった頃、懐中電灯をもった早苗さんがやってきた。
「いたいた、深津くん」
「なんで、」
「なんでわかったと思う?」
「は?」
「ここねえ、私も秘密の場所だったの。もう20年くらい前よね、いいこと教えてあげるよ、五郎と初めてチューしたの、ここ」
「………ベシ…」
「やばいよね、あの頃はあいつも坊主だったし髭も生えてなかったし可愛かったんだけどな。ほんと蹴飛ばしたくなるよね」
「早苗さんのおかげで蹴飛ばしてないベシ」
「ふはは、やっぱそう?そうだよね!あんたたちがこんなに可愛くなかったらとっくに離婚してるわ」
「じゃあ俺達のおかげベシ」
「そーよそーよ!ほんとに、俺は知的ですみたいな顔しやがって!帰ってお茶しよ!」
「ベシ」
そういう人だったから、年賀状をみて泣いていたときはひどく狼狽したけど、あれから1年たって、小さな子供を抱いてにこにこしている早苗さんを見るとほっとする。高齢出産、というワードは自分にとってはリアリティーのないものではあったけれど、先生はどうやら夫としては反面教師にしておいたほうがよさそうだ。
「深津くん」
「ピョン。だっこするピョン」
「ん、ねえ、ありがとね、君のおかげだよ。心配かけちゃったね」
「いいピョン。いい反面教師みたピョン」
「そうそう、そーゆうことにして。あんたたちがいなかったらとっくに蹴飛ばしてるわ」