堂本の妻、高齢出産の巻
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淳子、秀美、春奈、洋子…
温かいお茶を飲みながら友達から送られてくる家族写真入りの年賀状を眺める。長男が中学生になりまーす、の文字にぶわっと涙腺かゆるんだのと、わたしのすぐ右のドアが開いて実家から戻ってきた深津くんが顔を出したのと、台所から五郎が顔を出したのは同時くらいだったと思う。戻りましたと言いかけて、小さな声で、は、と言った深津くんの顔を見て、慌てて目元を拭って笑顔を作ったつもりが、次々涙がこぼれてくる。
「ごめんね、気が抜けてて、おかしいな、」
「ベシ…」
深津くんはわたしの手元から年賀状を抜き取る。そしてまだ状況を飲み込めずにいる夫、五郎の方をみた。
「先生たちは子供いないベシ」
「い、いいから深津、部屋戻ってろ」
「五郎さあ」
「は?」
「わたしが何歳か知ってる?」
「さんじゅう、えーと、なな…」
「明日………明日産んだとしても高齢出産よ」
「え?あ、ああ…」
「五郎」
「はい、」
「時間がたって、わたしの体が古くなって既成事実として諦めるのはいや。子供をもたないつもりならあなたがはっきりそう言って」
「は、おま、お前、」
「深津くん、ごめんね」
「いいベシ。そこまで子供じゃないベシ」
「だからってお前に聞かせる話じゃなかったな。すまん」
「俺より早苗さんに謝るベシ。これはお土産ベシ」
地元のお菓子やさんの紙袋を置いて、深津くんは食堂から出ていった。私は年賀状をエプロンのポケットに入れて、湯呑みを洗いに行く。結婚後いちばんくらいの唖然とした五郎をほったらかして。