こまちちゃんと沢北くん
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
美紀男が寮で兄ちゃんと夏が結婚すると話してしまったらしく、監督づたいに聞いた同級生や、夏のことをこまちさん、と慕っている現役部員や先生まで集まってしまった。
着付けを終えて出てきた夏をみて、うちの親族とバスケ部員がどよめく。
「河田はともかくこまちちゃんはきれいだピョン」
いつのまにか背後にやってきた深津は、俺に余計なことを言いながら目尻を下げた。
「沢北とうまくいかなくて安心したピョン?」
「うるせえ」
「あんなに兄貴ぶっといてやることやってるとはやばい奴だピョン」
「おめえなにしに来たんだべ」
「こまちちゃんにおめでとうって言いに来たピョン。3年間で1番喋った女子はこまちちゃんだピョン。下心の有無はおいといてみんなそうだピョン」
うるせ、と技をかけようとして、自分も着物を着せられていることを思い出す。角隠しに綿帽子の夏、白塗りに赤い口紅がよく似合う。いつもなら馬子にも衣装とからかうところだが、俺の花嫁だ。ふっくらした頬を持ち上げて笑った顔がきれいでかわいくて目が離せないのを、顔に出さないように努力してみるがたぶん深津にはばれてる。
毎年の米作りで顔を合わせているとはいえ、一応形だけうちの和室で親族の顔合わせをして、新郎新婦が未成年ということには目を瞑って夫婦杯、親族杯を交わす。そのあとはもう、田舎の親戚2軒分と男子高校生があつまって驚くほどの飯と酒の量だ。シーズン中だしぜってえ飲まねえべ、と最初はおっさんたちを突き返していたが、自分が飲めさえすればいいらしくその辺でみんな楽しくやっている。
東京にでて、人の多さに驚いた。だけど俺はひとりきりで、大屋さんとか、隣のおっちゃんとか、ちょっとずつ手の届くひとに手を伸ばして、だけどやっぱりひとりきりだった。俺はとうとう夏を連れ出す。兄貴ぶる余裕ももう残ってない。わいわいがやがやしたこの空間を、俺はきっと忘れない。