年下男子の仙道くん
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定食屋の葉子さんは、どうやったって俺のことを子供扱いする気らしい。小さくてがんばり屋で、鎌倉時代のことは俺はよくわからないけど、楽しそうにしているところはかわいいと思う、けど、まったくもって相手にしてもらえる感じがしない。これはどうしたもんかなあ、と駅からの道を歩いていると、喫茶店の窓際の席で眉間にシワを寄せた葉子さんがカップを睨み付けているのが目につく。毎日前を通っているものの、俺のような部活帰りの高校生には縁の薄い場所だ。海南の牧さんとかだったらなんか似合うんだろうか。
静かにドアを開けたつもりが、吊り下げられたベルがちりんと音をたててしまい驚く。文庫本を読んでいる葉子さんの、向かいに座るとぽっかりした顔を向けられる。
「彰くん」
「ごめんなさい、外から見えたから。邪魔?」
「ううん」
葉子さんは本を閉じてバッグに仕舞うと、なにか頼む?と聞いてきた。黙って首を振るとそう、とメニューも閉じてしまった。
「よくくるの?」
「ううん、初めて」
「コーヒー好きなの?」
「ううん、苦い」
「なんかあった?」
「んー…」
「例の先輩?」
「彼女いるんだって」
「告白したんですか」
「んなわけないじゃん。聞いちゃったの。同級生のひと。わたしの大好きなお姉さん」
「そうなんだ」
「お似合いすぎて笑っちゃう」
「ショック?」
「わかんない」
「帰っておじさんの飯食べよ」
「…つけこまないんだ」
「つけこみ方がわかんないんです」
「嘘でしょ」
「これ、要らないならもらっていい?」
「いいよ、苦かった」
「ミルクとかいれていいですか?」
「いいけど、冷めてるかも。ごめん」
「熱いの苦手なんでいいです」
テーブルの角に置いてあったミルクを一気にそそいで、粒の大きなコーヒーシュガーをさじに山盛りのせて放った。急に甘くなったコーヒーは、混ぜたつもりだったのに、底のほうは溶けなかった砂糖がたまっていて、あまりの甘さと唐突なジャリジャリに噎せてしまった。かっこつかねーな、と顔をあげると、葉子さんが眉毛を下げて笑っていたからまあ、よしということにしよう。