赤木と恋が始まらない
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中学をでた時点で、赤木はたぶん190センチを越えていたと思う。背が高いだけじゃなくて、顔はゴリラで坊主で真面目で筋肉もすごかった。北村中のバスケ部は男子も女子も弱小だったし、体力作りのために入ったんだ、とにこにこして話していたあの木暮が、今でも赤木とつるんでインターハイにまで行ったというのは本当にすごい。思う念力岩をも通すとはまさにこのことか。
木暮も眼鏡こそ変わってないけど、少し背が伸びたことより、肩幅とか、半袖シャツの下に確かに存在感のある筋肉があることとか、2人があれから3年間、まっすぐ進んできたことを思わされる。
元々文系の科目が得意だったんだけど、獣医になりたいと思い始めてから、数学や理科も頑張りはじめた。そんなわけで今でも一番の得意は現代文だ。
「だからね、4択の場合、答えはひとつなんだけどそれ以外もまるっきり間違いってわけでもないの。だから消去法で、間違いの度合いの高いものから消して、できれば2つにまで絞って考えると時間の節約になるよ。例えばこの問題だと…」
赤木と木暮との勉強は、毎週土日に続いた。理系が得意だという赤木は、そして自分が理解するだけではなく、人にわかるように教えるのがうまい。模試の点数があがって、赤木のおかげだよ~と言うと横から木暮が、俺は現代文がぐんとよくなったよ、お前のおかげだと言ってくれて、あれ、赤木にはメリットないじゃん、と木暮とげらげら笑った。その間赤木は口をへの字にして、にこりともしない。そんな赤木がなんだかおかしくて、やっぱり木暮と笑った。
それから3週間ほどたって、やっぱり私と木暮のおしゃべりがはずむ昼休憩、いつもより怖いした赤木は、いつも通り大きな弁当をたいらげて、腕を組んで黙り込んだ。
「赤木?お腹でもいたい?」
「そうだぞ、いつもよりゴリラに近づいてる」
「木暮」
「ん?」
「草野」
「はい?」
「深沢体育大学に、行くことになった」
「「………はあ!?」」
木暮と赤木を交互に見やる。毎日一緒にいるはずの木暮も、あんぐり口を開けている。赤木はむしろ落ちたんじゃないかというくらい険しい顔をしている。何と言えばいいのかわからずに、間抜けな顔を木暮に向ける。向こうも同じだ。しばらくの沈黙を、木暮が破る。
「すごいじゃないか赤木、深体大といえば、大学日本一だぞ!おめでとう!」
「そうなの?すごいじゃん赤木、なんだようんこでも行きたいのかと思ったわ」
「すまん、何と言えば良いかわからなくて」
「まあ俺たちはしがない一般の受験生だし気を遣ったんだな」
「む、」
「赤木?よかったね、素直に喜んでよ!私もめちゃめちゃ嬉しいよ」
木暮と一緒に赤木のでかい体をベシベシ叩いた。ようやく赤木の表情が少し、柔らかくなった気がする。
「赤木、じゃあもう勉強しなくていいじゃない」
「そういうことにはならんだろ」
「部活にでたら良いんじゃないか?」
「タンコブが増えたら宮城に悪いだろ」
「タンコブって三井の……おい、そういえばあいつ卒業大丈夫なのか?」
「ミヤギにミツイ?」
「宮城はひとつしたのキャプテンだよ。三井はほら、知らないか?中学のとき県でMVPだった、」
「み、三井寿?湘北、そんな人までいたの?」
「ああ、でも訳あってがけっぷちなんだよ…」
「あいつの卒業の方がお前らの受験の100倍厳しい」
「えっ!?なにそれ!!どゆことよ!!三井くんってさわやかキラキラ系だったじゃん!そんなにバカなの?」
「さわやか…」
「キラキラ…」