高砂くんの表情筋
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実は妊娠六ヶ月です、今月いっぱいでやめます、と笑顔で発表したのは、新卒ホヤホヤの同じ課の子だ。若い頃のわたしを見てるみたいな、かわいいの鎧をまとった女子の中の女子。だからこそわかる、わたしはもう若くない、女の子なんて歳じゃない。職場のなかでももう中堅の立ち位置だ。1日きちんと働いたのをほめてほしいくらいだ。元彼に捨てられたときよりきついかもしれない。もより駅前のコンビニでビールを買い込んで、まだ明るいのにたくさんのんだ。メイクを落として、お風呂に入って、またのんだ。わたし、もうおばさんに片足突っ込んでるの。このまま誰の奥さんにも、お母さんにもならないで、最期はひとりぼっちか、嬉しいことも悲しいことも誰ともわけあえずに、強くなって生きていくしかないのか。やばい。最近涙腺が。仕方のないやつ、とやさしい低音が頭のなかに響く。あいたいなあ、会いたい、あいたいよ。
ピンポンの音に、宅急便かと顔を出すと、そこに高砂くんがいて、わたしは開いた口が塞がらない。
「っ、大丈夫なのか、泣きながら電話かけてきたからびっくりしたんだぞ。なんかあったのか」
「たかさごくん、」
「悪い、はいるぞ」
「まっ!まって!今!ひどいかっこうで!」
「はあ?ひどい度合いで言ったらこないだもなかなかだったぞ、それにマネージャーはもっとひどかったから安心しろ、慣れてる」
「安心できるわけないじゃん!なにそのポイント」
「仕方ないだろ仲のいい女子が他にいないんだから」
「そこはひどくないって言うとこじゃないの」
「泣きながら電話かけてきたやつがなに言ってるんだ」
玄関先で痛いところをぐさぐさついてきた高砂くんは、そこまで言うと大きなため息をついてしゃがみこんだ。 汗の匂いがする、走ってきてくれたんだろうか。
「来てくれてありがとう」
「話聞いた方がいいか」
「できれば抱き締めてほしい」
「ハードルがたかい」
「諦めがはやい」
「減らず口だな」
「お願い、あの、あのね、このまま1人で死ぬのかなって思ったら、高砂くんに会いたくなった」
「どうして死ぬんだ、急な話だな、健康診断か」
「わたしはもうおばさんだからさ、このまま誰の奥さんにもお母さんにもならずにさ、誰の1番にもならずに、生きていかなきゃ行けないのかと思ったらもうやってらんなくて」
「何を言ってるんだ、お前がおばさんなら俺はおじさんだぞ、とんだとばっちりだ」
「高砂くんってさあ」
「は?」
「こんなに表情筋ちゃんと使える人だったんだねえ」
「っ!」
「あの頃は気付かなかったんだけど。こんなにやさしい人だった」
「お前はけっこうどうしようもないやつだな」
「えーっ!?あんまりじゃない!?」
「でもな、そういうとこが俺は好きだけどな」
「……はあ!?」
「そんなにびっくりするなよ」
「もう!ばか!すき、すき!」
「おお、落ち着け、まて、」
ぎゅっととびつくと、一瞬よろけた高砂くんは、だけどしっかりわたしを受け止めた。はあ、とため息をつくのが聞こえて、大きな掌で背中をぽんぽん叩いてくれる。
「いいの、わたしもう若くないよ」
「だから同じだって言ってる」
「だっこして、お布団つれてって」
「自分で歩け」
「なんで!情熱的にベッドインする流れでしょうが」
「お前なあ、走ってきたんだぞ、汗だくだから」
「シャワー使いなよ」
「使わない」
「しないの?」
「しない」
「まっ、えっ?なんで?」
「なんでって…」
「魅力ない?むらっとこない?」
「おい、そんな言い方するな」
「だって」
高砂くんはわたしを抱き締め直す。分厚い背中に一生懸命腕を回す。太腿のあたりにかたくなったものを押し付けられて、わたしは彼の顔をもう一度見た。
「泊まりや、その、コンドームの準備もない」
「それは、」
「お前は自分をすり減らすな。そんな繋ぎ止め方しなくても俺は逃げない。」
「たかさごくん、」
早足の心臓の音を聞きながら、わたしはまた、泣けてきてしまった。男の人らしい、汗の匂いがする。あったかくて、とてつもなくやさしい。
「ありがとう、高砂くん」
「わかったならいい」
「もう少しこのままでいい?」
「ん、いい」
ピンポンの音に、宅急便かと顔を出すと、そこに高砂くんがいて、わたしは開いた口が塞がらない。
「っ、大丈夫なのか、泣きながら電話かけてきたからびっくりしたんだぞ。なんかあったのか」
「たかさごくん、」
「悪い、はいるぞ」
「まっ!まって!今!ひどいかっこうで!」
「はあ?ひどい度合いで言ったらこないだもなかなかだったぞ、それにマネージャーはもっとひどかったから安心しろ、慣れてる」
「安心できるわけないじゃん!なにそのポイント」
「仕方ないだろ仲のいい女子が他にいないんだから」
「そこはひどくないって言うとこじゃないの」
「泣きながら電話かけてきたやつがなに言ってるんだ」
玄関先で痛いところをぐさぐさついてきた高砂くんは、そこまで言うと大きなため息をついてしゃがみこんだ。 汗の匂いがする、走ってきてくれたんだろうか。
「来てくれてありがとう」
「話聞いた方がいいか」
「できれば抱き締めてほしい」
「ハードルがたかい」
「諦めがはやい」
「減らず口だな」
「お願い、あの、あのね、このまま1人で死ぬのかなって思ったら、高砂くんに会いたくなった」
「どうして死ぬんだ、急な話だな、健康診断か」
「わたしはもうおばさんだからさ、このまま誰の奥さんにもお母さんにもならずにさ、誰の1番にもならずに、生きていかなきゃ行けないのかと思ったらもうやってらんなくて」
「何を言ってるんだ、お前がおばさんなら俺はおじさんだぞ、とんだとばっちりだ」
「高砂くんってさあ」
「は?」
「こんなに表情筋ちゃんと使える人だったんだねえ」
「っ!」
「あの頃は気付かなかったんだけど。こんなにやさしい人だった」
「お前はけっこうどうしようもないやつだな」
「えーっ!?あんまりじゃない!?」
「でもな、そういうとこが俺は好きだけどな」
「……はあ!?」
「そんなにびっくりするなよ」
「もう!ばか!すき、すき!」
「おお、落ち着け、まて、」
ぎゅっととびつくと、一瞬よろけた高砂くんは、だけどしっかりわたしを受け止めた。はあ、とため息をつくのが聞こえて、大きな掌で背中をぽんぽん叩いてくれる。
「いいの、わたしもう若くないよ」
「だから同じだって言ってる」
「だっこして、お布団つれてって」
「自分で歩け」
「なんで!情熱的にベッドインする流れでしょうが」
「お前なあ、走ってきたんだぞ、汗だくだから」
「シャワー使いなよ」
「使わない」
「しないの?」
「しない」
「まっ、えっ?なんで?」
「なんでって…」
「魅力ない?むらっとこない?」
「おい、そんな言い方するな」
「だって」
高砂くんはわたしを抱き締め直す。分厚い背中に一生懸命腕を回す。太腿のあたりにかたくなったものを押し付けられて、わたしは彼の顔をもう一度見た。
「泊まりや、その、コンドームの準備もない」
「それは、」
「お前は自分をすり減らすな。そんな繋ぎ止め方しなくても俺は逃げない。」
「たかさごくん、」
早足の心臓の音を聞きながら、わたしはまた、泣けてきてしまった。男の人らしい、汗の匂いがする。あったかくて、とてつもなくやさしい。
「ありがとう、高砂くん」
「わかったならいい」
「もう少しこのままでいい?」
「ん、いい」