高砂くんの表情筋
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シャワーを浴びて部室に戻ると、原田がホワイトボードに練習試合の予定を書き込んでいた。神のとこだろと油断してパンツ一丁で出てきたことを反省したのもつかの間、原田は俺を一瞥するとおつかれさまでーすと明るく声をかけてまた視線をホワイトボードに戻した。反省したことまで恥ずかしくなってくる。慣れなのかなんなのかわからないがキャーとか言われても困るしありがたいと思っておこう。
先に着替えていた牧が、ビブスのほつれが直っていたことの礼を言うと原田は嬉しそうににっこり笑った。原田の傍にいた武藤がえらいえらいと両手で顔や頭をわしわしなでると、あうあう言いながら素直にやられて頭をぐちゃぐちゃにしたまま、やはりにっこり笑った。みんながわあわあ騒いでいると、500本を終わらせたらしい神が部室に戻ってきた。武藤や清田ともみくちゃになってる原田に苦笑いとため息を送りながら着替えはじめた神に、これでいいのか、とふと聞いてしまった。
神はまんまるいめんたまをぱちくりさせて俺を見る。上がった口角と下がった眉毛のバランスまでいいなんてずるいやつだ。
「まずは、困ったときに思い出してもらえるようになりたいんですけどね。」
植物を育てるように、こつこつと、惜しみ無く愛情を注がれて、原田はまさにすくすくと、神のかわいい恋人に育った。困ったときに思い出す、というよりは、神がいないと生きていけないように囲いこんだと言った方が正しいようにも思えるが、本人たちはいたって幸せそうなので水はささない。
アパート暮らしの学生たちがどうやって恋人を連れ込むか頭を悩ませる間、実家暮らしの二人はお互いの家を堂々と行き来し、虫取とか川遊びとか健全なデートを楽しみ、そういうところに足を突っ込まずに過ごした、たぶん。神はともかく原田のほうは、なにかあれば顔や態度に出そうなものだ。でも確かに日に日に、たぶん原田が困ったときに助けを求める相手は神になっていた。大学生になっても元気いっぱい清田とつかみ合う原田をながめる神はごきげんだ。