高砂くんの表情筋
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「高砂くんてさあ」
「は、」
「どうして普段表情筋つかわないの?」
「…へ?」
我ながらまぬけな声がでたと思う。事務的なこと以外ほとんど話す機会のない、そして共通の話題とかもないけども、かわいらしい子だなと思っていた笹原の後ろの席になったとき、俺はひそかに心の中でガッツポーズをした。とはいえ会話はほとんどないまま、でも授業中なんとなく、その華奢な肩まわりやきちんとふわふわに整えられていい香りのする後ろ頭とかをながめながら、もうじき席が変わってしまうと思っていた矢先だった。振り返って、白くて細い足を組んで、俺の机に肘をついて、距離がグッと近づいて、いい匂いがふんわり香ってきて、俺は唇をかんだ。
「俺の顔がこわいって意味か」
「ちがうよ、こないだバスケ部の人たちと歩いてるのみかけて、高砂くんすごく楽しそうに笑ってたからびっくりしちゃったの」
「そんなこと、あったっけな」
「にこにこして、でっかい口開けて笑ってたから三度見しちゃった」
「見すぎだ」
「ふふ、あの子かわいいね、2年生?」
「あのこって?」
「女の子、マネージャー?」
「ああ、あいつはマネージャーの原田、1年生」
「1年かあ」
「…かわいいと言ってもあれだな、近所の犬とか、親戚の子供とか」
「そういう?甘酸っぱい感じのないの?」
「はは、ないなあ」
「あ、笑った」
ピンク色の薄い唇をかたちよく持ち上げて、笹原は笑った。細くて白くて小さくて、すごく脆いものに見える、さしずめクッキーとか、砂糖菓子とか。うちのかわいいマネージャーは例えるならばだんごかせんべいってとこか。一応あいつのことも女の子として扱っているはずなんだけどなあ。
次の授業の先生がきてしまって笹原は前に向き直る。俺はほっと胸を撫で下ろして、だけどくるんとカールした毛先とか、ブラウスの肩にうっすら浮かぶ下着のラインとか、見ないように見ないようにと念仏のように心の中で唱えても、なかなか目が話せなくて困った。