あこがれの武藤先輩
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ビービー泣いている清田くんとまどかを囲んで、お前らなあ、とにこにこ談笑しているバスケ部の集団を、陽子と一緒に少しはなれて眺める。
「ほらあんた、早く行きなよ」
「う、でも…」
「解散するまで待つ気?」
牧先輩はもう第2ボタンどころか、ブレザーもシャツもはだけてネクタイもなくなってしまって、時々勇気を出してやってくる女の子に、毎回丁寧にすまない、もうない、と断りを入れているようだった。でもネクタイをもらったのは清田くんだし、卒業生の胸に飾るピンクのお花は牧先輩や、他の先輩もみんなそれぞれまどかのブレザーにつけてあげていたので、まどかの胸元は今お花畑みたいになってる。それくらいわたしはずっと見てる。
「武藤先輩のボタン残ってるよほら」
「うん、」
もだもだしながら見守っていると、少し落ち着いたらしいまどかが、あんまりきれいとは言えない顔のままで私たちを見つけて、武藤先輩をひっぱって走ってきてしまった。
ほら!とわたしの背中を叩いたまどかと陽子は、走っていって大きな先輩の影にかくれてしまった。
「えっと、」
「おお」
「おめでとう、ございます」
「おう、サンキュー」
「あの、あの、だ、第2ボタン、ほしいです」
「物好きだなあ、牧のじゃなくていいのかよ」
「本気で言ってます?あんまりです」
「…や、悪い。なあ、俺なあ、」
武藤先輩は乱暴にボタンをちぎって、わたしに握らせた。いつも通りふわふわのリーゼントに反して、今日のためなのかきれいに刈り上げられたうしろ頭をボリボリかいて次の言葉を探しているようだった。好きな人に第2ボタンをもらうなんて、絵に描いたようなイベントが自分の人生に発生して、わたしはもうじっと待つのでいっぱいいっぱいだ。
「最初はマネージャーの友達ってだけだったけど、お前のことすごい、かわいいって思ってる。その、付き合って、くれねーかな、」
顔をあげると、うしろ頭をかいたままの武藤先輩と目があった。うまく言葉がでてこなくて、こくこくと頷くことしかできないわたしに、武藤先輩はうしろ頭を触っていたてのひらをこっちにのばして、やさしく髪をなでてくれた。嬉しいとか、恥ずかしいとか、眉間の緩んだ表情がかっこいいとか、みんなに見られてるとか、色んなことが渦巻いて、両てのひらで口許を覆った。先輩、好きですってちゃんと、いつか言うから今は許して。