神さんになびかないマネージャー
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(フッキーと妻と先輩)
「神選手また全日本?」
「そーなんですよお、今度は2週間」
「まだまだ新婚なのにね~ご飯とかどうしてんの?」
「神さんいないときは週に2回はフッキーさんと食べてます」
「だれよ、フッキーさん」
お弁当タイムに、わたしのおひとりさまライフについて尋ねてきた先輩は、フッキーさんの名前に食いついた。
「福田吉兆さんてゆって、神さんのチームメイトで、神奈川の人なんですけど。もともと神さんとフッキーさんが水曜は近所のお好み焼きに行ってて、結婚してからはわたしもついていってたんで。神さんいないとき惰性で行ったら約束してないのに向こうも来てたんでそのまま一緒にごはん食べて、フッキーさん安くて美味しいとこ詳しいんでだいたい次の日の約束して一緒に食べてます」
「まっ………て、それは、浮気?」
「えっ?なんで?」
「だって、夫のいぬまにほかの男と2人で会ってるんでしょ?」
「うーん、でも神さん知ってるしなあ。それにフッキーさんはわたしのことはいいやつだと思うけど全然タイプじゃないし仮にそうでも友達の奥さんには絶対手を出さないってはっきり言ってたから誰もなんとも思ってないですよ。あの人めっちゃ律儀なんでアパートの下まで送ってくれて、私が家に入るまで見ててくれるんです。なんかあったら神さんに会わせる顔がないからって」
「ほんとお?そんないいやついる?信用ならないな、あんたボーッとしてるんだから気を付けなよ」
「もー、先輩ったら!あ、今日よっちゃんの日だから一緒に来ます?銭湯行くならお風呂の準備もいります」
「銭湯!?ふたりで!?」
「いつもは3人なんですってば」
ーーーーーーーーーーーーー
「え、っと」
「ごめんフッキーさん、職場の先輩」
「いや、いい。」
「濱田洋子です、はじめまして」
「はじめまして、福田です。えーと、あの、まどかさんがいつもお世話になってます」
「なんで保護者ポジションなんですか」
「…まずかったか」
「まずくないです、入りましょ」
職場の後輩の神まどかは、長身ベビーフェイスでバスケのトップ選手の神宗一郎さんと高校から5年付き合って卒業と同時に結婚。理学療法士の資格にマネージャー経験もあって田村先生がうちで鍛えると張り切ってつれてきた、しがない医療事務で独身彼氏なしのわたしには眩しすぎる存在だ。本人は呑気かつ鈍いタイプで旦那さんも物好きだなあと思ったりもする。合コンに勤しんで血眼で彼氏を探すわたしなんかより、そりゃこういうタイプがとっとと結婚しちゃうのよ、うんうんわかったわかった。
「先輩なににしますか?わたし今日はえび玉」
「俺は豚」
「えーっ!じゃあ交換しましょうね!4分の1!」
「……やっぱ付き合ってる?」
「なに言ってるんですかせんぱい、注文!」
「あ、はい」
同じ神奈川の出身で神選手を通して友達になった、と昼間にも聞いた説明を福田さんからもきいて、わたしはなるほど、と一応頷いた。
「男女の友情が成立するタイプね」
「そりゃ私は6年以上マネージャーやりましたからね、そうじゃないとやってらんないです」
「俺だって女の人ならなんでもってほど分別なくもない」
「ふっきーさんいいお店いっぱい知ってるので。気に入ったとこは神さんとも行ってます」
「こないだなにわラーメンで会ったときは驚いた」
「ありましたね~あそこのあっさりラーメン癖になるんですよお」
「明日はどーする?俺はカレーか…んー、」
「先月行った喫茶店はどうです?こないだすごい迷ったからちがうの食べたい」
「いいな、カツカレーもあるし」
「決まり~先輩もきます?」
「えっと、いつもこんな感じなの?」
「そうそう。まあフッキーさんも代表行っちゃって寂しいなって思うのは大歓迎ですけど」
「ん、次こそな」
「期待してます」
福田さんはたぶん表情というか顔の作りがむすっとして見えるけど、神さんにたいしてかなり心を許している風である。目元や口許を緩める様子にはちょっときゅんとくる。そうさせているのは私じゃなくて神さんだけど。
トイレ行ってくる、と元気にでていった神さんにふたりきりにされて、何を話せばいいのかわからなくなったわたしに、福田さんはわるいな、と切り出した。
「まどかさんが誘ったんだろ」
「いや、あの」
「違ったか、悪い」
「旦那じゃない人と旦那の留守にふたりでご飯食べてるってきいて。そんなの下心ありありじゃんって言ったら来ますかって」
「下心……それは、俺のこと……」
「いや両方よ。でも全然ほんとにただの友達って感じで驚きました。わたしは今までその気のない男性とは二人きりで会わないようにしてきたし」
「なるほど、それも間違ってないよな」
「そうかな」
「じゃあ今も本当は困ってるのか」
「いや、あの、困ってなくて、戸惑ってる」
「俺は友達作るのも得意じゃないからな、貴重な友達はちゃんと大事にしたい」
「いいなあ、わたしもそんなきれいな世界で生きてみたいなあ」
「…明日は?」
「えっ、」
「来ないのか?」
「えっと、」
「ただいま~お腹空いた~!!あれ?」
トイレから戻ってきた神さんは、わたしと福田さんの顔を交互に見比べて首を傾けた。
「まさかずっと黙ってました!?」
「いや、明日も誘ったんだけど俺がスマートじゃ無さすぎて引かれた気がする。ジンジンはこういうの得意そうだよなあ」
「いない人の話してどーすんですか!じんさんだってああ見えて2年もかけて周到にわたしのこと囲い込んだんだから全然しゅっとしてないし普通にこわいですよ~安心して!」
「ええ、あの人あんなかわいい顔なのに」
「そんで、先輩は?明日来ないんですか?わたしこないだカレードリアとオムライスとナポリタンで迷っちゃって!あしたこそナポリタン食べる!あっ、いやいやいや!2人で行きたいってんならわたしは欠席しますけど!」
「えっ」
「はっ」
がたんと立ち上がった福田さん、で、でかい。神さんの口を右手でがばっと押さえて、反対の手でTシャツのうしろ襟をつかんで店の外に連行されていくのを、わたしはただぽかんと見送るしかできない。
「あらあ?騒がしいねえあのふたり。ほんまは仲良しなんやで?覚める前に食べてしまいや」
「あ、はい」
しばらくして戻ってきたふたりは、お好み焼きをゲシゲシ切り分けて4分の1を交換し始めた。
「先輩すみません、フッキーさんはそんな、いきなり距離を詰めようとかしたごころとかないので安心してください、でも先輩のことはめっちゃ可愛いって言ってる」
「あっ!おい!」
「だって!誰ですかかわいいなと思ってた女の子に声もかけずにじっとしてたら彼氏ができちゃってめそめそ泣いてた人は」
「やめろ……!」
「えー!わたし今日全然戦闘モードじゃないのに!!そんな…」
「ねえフッキーさん、先輩ね、まつげ倍の長さになるしスカートも10cmは短くなります、気合いモード」
「だからあんた!」
「ねーだからわたしがいると余計なことばっか言うでしょ、明日ふたりで仕切り直してください!」
神さんはお好み焼きを口に詰め込むと、千円札を一枚テーブルに置いて立ち上がる。
「じゃあわたしは帰るんで!明日も中止ね、フッキーさんまた来週!おばちゃんごちそうさま!お金渡してあるから!」
どたばたしまくった神さんを、わたしと福田さんは呆気にとられて見送る。
「悪いやつじゃないんだ」
「うん、それは知ってる」
「神選手また全日本?」
「そーなんですよお、今度は2週間」
「まだまだ新婚なのにね~ご飯とかどうしてんの?」
「神さんいないときは週に2回はフッキーさんと食べてます」
「だれよ、フッキーさん」
お弁当タイムに、わたしのおひとりさまライフについて尋ねてきた先輩は、フッキーさんの名前に食いついた。
「福田吉兆さんてゆって、神さんのチームメイトで、神奈川の人なんですけど。もともと神さんとフッキーさんが水曜は近所のお好み焼きに行ってて、結婚してからはわたしもついていってたんで。神さんいないとき惰性で行ったら約束してないのに向こうも来てたんでそのまま一緒にごはん食べて、フッキーさん安くて美味しいとこ詳しいんでだいたい次の日の約束して一緒に食べてます」
「まっ………て、それは、浮気?」
「えっ?なんで?」
「だって、夫のいぬまにほかの男と2人で会ってるんでしょ?」
「うーん、でも神さん知ってるしなあ。それにフッキーさんはわたしのことはいいやつだと思うけど全然タイプじゃないし仮にそうでも友達の奥さんには絶対手を出さないってはっきり言ってたから誰もなんとも思ってないですよ。あの人めっちゃ律儀なんでアパートの下まで送ってくれて、私が家に入るまで見ててくれるんです。なんかあったら神さんに会わせる顔がないからって」
「ほんとお?そんないいやついる?信用ならないな、あんたボーッとしてるんだから気を付けなよ」
「もー、先輩ったら!あ、今日よっちゃんの日だから一緒に来ます?銭湯行くならお風呂の準備もいります」
「銭湯!?ふたりで!?」
「いつもは3人なんですってば」
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「え、っと」
「ごめんフッキーさん、職場の先輩」
「いや、いい。」
「濱田洋子です、はじめまして」
「はじめまして、福田です。えーと、あの、まどかさんがいつもお世話になってます」
「なんで保護者ポジションなんですか」
「…まずかったか」
「まずくないです、入りましょ」
職場の後輩の神まどかは、長身ベビーフェイスでバスケのトップ選手の神宗一郎さんと高校から5年付き合って卒業と同時に結婚。理学療法士の資格にマネージャー経験もあって田村先生がうちで鍛えると張り切ってつれてきた、しがない医療事務で独身彼氏なしのわたしには眩しすぎる存在だ。本人は呑気かつ鈍いタイプで旦那さんも物好きだなあと思ったりもする。合コンに勤しんで血眼で彼氏を探すわたしなんかより、そりゃこういうタイプがとっとと結婚しちゃうのよ、うんうんわかったわかった。
「先輩なににしますか?わたし今日はえび玉」
「俺は豚」
「えーっ!じゃあ交換しましょうね!4分の1!」
「……やっぱ付き合ってる?」
「なに言ってるんですかせんぱい、注文!」
「あ、はい」
同じ神奈川の出身で神選手を通して友達になった、と昼間にも聞いた説明を福田さんからもきいて、わたしはなるほど、と一応頷いた。
「男女の友情が成立するタイプね」
「そりゃ私は6年以上マネージャーやりましたからね、そうじゃないとやってらんないです」
「俺だって女の人ならなんでもってほど分別なくもない」
「ふっきーさんいいお店いっぱい知ってるので。気に入ったとこは神さんとも行ってます」
「こないだなにわラーメンで会ったときは驚いた」
「ありましたね~あそこのあっさりラーメン癖になるんですよお」
「明日はどーする?俺はカレーか…んー、」
「先月行った喫茶店はどうです?こないだすごい迷ったからちがうの食べたい」
「いいな、カツカレーもあるし」
「決まり~先輩もきます?」
「えっと、いつもこんな感じなの?」
「そうそう。まあフッキーさんも代表行っちゃって寂しいなって思うのは大歓迎ですけど」
「ん、次こそな」
「期待してます」
福田さんはたぶん表情というか顔の作りがむすっとして見えるけど、神さんにたいしてかなり心を許している風である。目元や口許を緩める様子にはちょっときゅんとくる。そうさせているのは私じゃなくて神さんだけど。
トイレ行ってくる、と元気にでていった神さんにふたりきりにされて、何を話せばいいのかわからなくなったわたしに、福田さんはわるいな、と切り出した。
「まどかさんが誘ったんだろ」
「いや、あの」
「違ったか、悪い」
「旦那じゃない人と旦那の留守にふたりでご飯食べてるってきいて。そんなの下心ありありじゃんって言ったら来ますかって」
「下心……それは、俺のこと……」
「いや両方よ。でも全然ほんとにただの友達って感じで驚きました。わたしは今までその気のない男性とは二人きりで会わないようにしてきたし」
「なるほど、それも間違ってないよな」
「そうかな」
「じゃあ今も本当は困ってるのか」
「いや、あの、困ってなくて、戸惑ってる」
「俺は友達作るのも得意じゃないからな、貴重な友達はちゃんと大事にしたい」
「いいなあ、わたしもそんなきれいな世界で生きてみたいなあ」
「…明日は?」
「えっ、」
「来ないのか?」
「えっと、」
「ただいま~お腹空いた~!!あれ?」
トイレから戻ってきた神さんは、わたしと福田さんの顔を交互に見比べて首を傾けた。
「まさかずっと黙ってました!?」
「いや、明日も誘ったんだけど俺がスマートじゃ無さすぎて引かれた気がする。ジンジンはこういうの得意そうだよなあ」
「いない人の話してどーすんですか!じんさんだってああ見えて2年もかけて周到にわたしのこと囲い込んだんだから全然しゅっとしてないし普通にこわいですよ~安心して!」
「ええ、あの人あんなかわいい顔なのに」
「そんで、先輩は?明日来ないんですか?わたしこないだカレードリアとオムライスとナポリタンで迷っちゃって!あしたこそナポリタン食べる!あっ、いやいやいや!2人で行きたいってんならわたしは欠席しますけど!」
「えっ」
「はっ」
がたんと立ち上がった福田さん、で、でかい。神さんの口を右手でがばっと押さえて、反対の手でTシャツのうしろ襟をつかんで店の外に連行されていくのを、わたしはただぽかんと見送るしかできない。
「あらあ?騒がしいねえあのふたり。ほんまは仲良しなんやで?覚める前に食べてしまいや」
「あ、はい」
しばらくして戻ってきたふたりは、お好み焼きをゲシゲシ切り分けて4分の1を交換し始めた。
「先輩すみません、フッキーさんはそんな、いきなり距離を詰めようとかしたごころとかないので安心してください、でも先輩のことはめっちゃ可愛いって言ってる」
「あっ!おい!」
「だって!誰ですかかわいいなと思ってた女の子に声もかけずにじっとしてたら彼氏ができちゃってめそめそ泣いてた人は」
「やめろ……!」
「えー!わたし今日全然戦闘モードじゃないのに!!そんな…」
「ねえフッキーさん、先輩ね、まつげ倍の長さになるしスカートも10cmは短くなります、気合いモード」
「だからあんた!」
「ねーだからわたしがいると余計なことばっか言うでしょ、明日ふたりで仕切り直してください!」
神さんはお好み焼きを口に詰め込むと、千円札を一枚テーブルに置いて立ち上がる。
「じゃあわたしは帰るんで!明日も中止ね、フッキーさんまた来週!おばちゃんごちそうさま!お金渡してあるから!」
どたばたしまくった神さんを、わたしと福田さんは呆気にとられて見送る。
「悪いやつじゃないんだ」
「うん、それは知ってる」