神さんになびかないマネージャー
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(洋服を買いにいくやつの続き)(神さんの実家)
一度うちに電話をくれたことがあって、宗ちゃんに彼女?ときくと、思いの外素直に認められちゃって驚いたのはずいぶん前のことだ。会いたいなと冗談で言ってみたら宗ちゃんがあっさり連れてきたのは、ボーイッシュな服装の笑顔がかわいい細身の女の子だった。高校受験の勉強に苦戦していた次男の悠二郎がリビングで格闘しているのをちらっとみてすぱっとアドバイスをしてくれると、時間を見つけては宗ちゃんがうちにいなくても勉強を見に来てくれるようになった。宗ちゃん曰く俺よりよっぽど成績がいいってので、真ん中の麻子もしょっちゅう質問をしていて、我が家の専属家庭教師のようになっていた。おかげで長女は県立大学に推薦で合格したし、次男はぐんと成績をあげて第一志望に手が届いた。中高生の勉強時間なんてのは夕方や夜になることが多いので夫とも何度も出会っているし、宗ちゃんの彼女として最初にきりっとご挨拶してくれたおかげで我が家としてははなまる百万点、下の子達と違ってはっきり口にこそ出さないけど、わたしたちだって2人が結婚してくれたら最高だと思っていた。社会人一年目の宗ちゃんと、まだ大学生の、いつもよりきれいなかっこうでやってきたまどかちゃんを前に、夫は静かに言葉を探している。
「少し、はやいというか、若いというか、」
「それは、わかってる」
「わかってないよ。まどかちゃんに苦労かけるんじゃないかと思って心配してる」
「それは、」
「あの、」
背筋を伸ばして座ったまどかちゃんが、静かに口を開く。
「わたしが仕事をしたくって、大阪で紹介してもらえたので、中途半端に一緒に住んだりするよりは全部一度にきちっとした方が、楽というか、途中で名前が変わったりするのも大変ってきくので…」
「それはまあ、母さんも昔言ってたな」
「わたしは彼氏がほしいとか、結婚したいって思ってるわけじゃなくて、全部神さんといっしょにいるための手段だと思ってます。普通のかわいい女の子じゃないのは申し訳ないですけど、認めてもらえたらお父さんとお母さんに後悔はさせません。よろしくお願いします」
「…っ、」
「そ、そうちゃん、」
「俺もがんばるよ。応援してほしい、お願いします」
「…まあ、そこまで言われたらねえ」
「おっ、父さん折れた?」
「もともと父さんだってまどかちゃんのこと大好きなくせに」
「もー!お前たちちょっと黙っとけないの」
「だってー!!わたしまどかちゃんが正真正銘わたしのお姉ちゃんになるの楽しみにしてたんだもん~」
「おれも~!うれしー!母さんケーキ食べようよ~はやくはやく!」
緊張の糸が切れてくにゃくにゃになった宗ちゃんに、夫がしずかにおめでとう、と声をかけたのを私は聞き逃さなかった。
すっかり慣れた様子で台所に入ってくるまどかちゃんにケーキを任せてお茶を淹れる。
「ほんとによかった?宗ちゃんが無理言ったんじゃない?」
「大丈夫、神さんはいつもわたしが大丈夫になるまでちゃんと待ってくれるので」
「それならいいけど」
まどかちゃんの、ストレートな言葉がわたしたちをほっとさせる。我が息子ながらなんていい子を見つけたんだろう。下の子の手前ないしょだけど、私はまどかちゃんがとうとう正真正銘わたしの娘になることになり心のなかで小躍りした。
(おわり)
一度うちに電話をくれたことがあって、宗ちゃんに彼女?ときくと、思いの外素直に認められちゃって驚いたのはずいぶん前のことだ。会いたいなと冗談で言ってみたら宗ちゃんがあっさり連れてきたのは、ボーイッシュな服装の笑顔がかわいい細身の女の子だった。高校受験の勉強に苦戦していた次男の悠二郎がリビングで格闘しているのをちらっとみてすぱっとアドバイスをしてくれると、時間を見つけては宗ちゃんがうちにいなくても勉強を見に来てくれるようになった。宗ちゃん曰く俺よりよっぽど成績がいいってので、真ん中の麻子もしょっちゅう質問をしていて、我が家の専属家庭教師のようになっていた。おかげで長女は県立大学に推薦で合格したし、次男はぐんと成績をあげて第一志望に手が届いた。中高生の勉強時間なんてのは夕方や夜になることが多いので夫とも何度も出会っているし、宗ちゃんの彼女として最初にきりっとご挨拶してくれたおかげで我が家としてははなまる百万点、下の子達と違ってはっきり口にこそ出さないけど、わたしたちだって2人が結婚してくれたら最高だと思っていた。社会人一年目の宗ちゃんと、まだ大学生の、いつもよりきれいなかっこうでやってきたまどかちゃんを前に、夫は静かに言葉を探している。
「少し、はやいというか、若いというか、」
「それは、わかってる」
「わかってないよ。まどかちゃんに苦労かけるんじゃないかと思って心配してる」
「それは、」
「あの、」
背筋を伸ばして座ったまどかちゃんが、静かに口を開く。
「わたしが仕事をしたくって、大阪で紹介してもらえたので、中途半端に一緒に住んだりするよりは全部一度にきちっとした方が、楽というか、途中で名前が変わったりするのも大変ってきくので…」
「それはまあ、母さんも昔言ってたな」
「わたしは彼氏がほしいとか、結婚したいって思ってるわけじゃなくて、全部神さんといっしょにいるための手段だと思ってます。普通のかわいい女の子じゃないのは申し訳ないですけど、認めてもらえたらお父さんとお母さんに後悔はさせません。よろしくお願いします」
「…っ、」
「そ、そうちゃん、」
「俺もがんばるよ。応援してほしい、お願いします」
「…まあ、そこまで言われたらねえ」
「おっ、父さん折れた?」
「もともと父さんだってまどかちゃんのこと大好きなくせに」
「もー!お前たちちょっと黙っとけないの」
「だってー!!わたしまどかちゃんが正真正銘わたしのお姉ちゃんになるの楽しみにしてたんだもん~」
「おれも~!うれしー!母さんケーキ食べようよ~はやくはやく!」
緊張の糸が切れてくにゃくにゃになった宗ちゃんに、夫がしずかにおめでとう、と声をかけたのを私は聞き逃さなかった。
すっかり慣れた様子で台所に入ってくるまどかちゃんにケーキを任せてお茶を淹れる。
「ほんとによかった?宗ちゃんが無理言ったんじゃない?」
「大丈夫、神さんはいつもわたしが大丈夫になるまでちゃんと待ってくれるので」
「それならいいけど」
まどかちゃんの、ストレートな言葉がわたしたちをほっとさせる。我が息子ながらなんていい子を見つけたんだろう。下の子の手前ないしょだけど、私はまどかちゃんがとうとう正真正銘わたしの娘になることになり心のなかで小躍りした。
(おわり)