神さんになびかないマネージャー
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(だまされるモブ)モブは報われない
神くん、神くん、どーすればお近づきになれますか。
一目惚れに近かった。入学式の日、式典から学科の説明会に移動したとき偶然隣の席に座った。すごく背が高くて手足が長い、色白に長い睫。少女漫画から出てきたような人だと思った。よろしく、と声をかけるとこっちを向いて、やさしいおっとりした口調でよろしく、と言ってくれた。まさに王子様だ。
神くんは部活をしている。学科の飲み会にはほとんど来ないし試合のために学校を休むこともある。この前は全日本のメンバーに選ばれたとかで2週間ばかり休んでいた。あの物腰柔らかな神くんが、素早くて激しいバスケのトッププレーヤーなんてにわかに信じがたい。なかなか個人的に関わる機会がもてない。授業のときにたまに話すときはふんわり優しい雰囲気だけど、なかなかもう一歩踏み込めないなあ。
そんな折、最近神くんと仲良くしている裕子たちがうちの体育館である試合を見に行くと話している。男の子たちも何人も行くようだった。またとないチャンス、試合のあとにジュースを渡すようなチャンスがあれば最高だけど、とにかくバスケをする神くんを見てみたかった。
「神すげーなあ」
「あの色黒の人もえぐくない?」
「あのひと牧っていって、高校の頃から皇帝とか帝王とか言われてる」
「名前負けしてねえな」
「神くんあんなに素早く動けるんだねえ」
「いつもぼんやりにこにこしてるのにね」
「つーか筋肉やべえ」
「ほんとそれ」
小声で好き好き喋るバスケシロートの自然科学科軍団のはしっこで、わたしは必死に神くんを目でおった。決しておっとりなんて、した人じゃないんじゃないかな。こんなチームでレギュラーになるような人が。
試合が終わるとみんなは近くのファミレスに向かって歩き始めた。何を思ったのか、用事を思い出したことにしてわたしは列を離れて、体育館に踵を返した。途中、対戦相手のチームの列とすれ違う。海南の方も解散してしまっているかも。早歩きで向かっていると、Kのマークのついたジャージの集団が歩いてきた。帝王と呼ばれたあの人はいたけど神くんはいない。角を曲がって体育館の入り口が見えた。あの細長い後ろ姿はたぶん神くんだ。中に向かってなにか声をかけている。
「手伝おうか~」
「おわりだからいいでーす!」
遠くまで聞こえるはきはきした、女の子の声がした。私はベンチに座って、偶然そこにいる人に溶け込んだ、ふりをした。みんなと別れてから自販機で買った炭酸ジュースが、手の中で汗をかいている。
「おまたせでーす」
「ん、」
元気いっぱい走ってきた女の子を、神くんは長い両腕でつかまえて、背中を丸めて体をくっつけた。すごい、わたし少女漫画でも見てるんだろうか。わかりやすく彷徨った女の子の腕は、そのうちに神くんの背中に回ってやさしくぽんぽんと撫でるのまで見えた。間違いない、少女漫画だ。エースとマネージャーが付き合ってるやつ、昔なかよしで読んだ。
体育館の脇に置いてあった自転車にまたがった神くんの後ろに、あの子はぴったりくっついて腕を回している。からから元気よく笑い声をあげながら、なかなかのスピードで2人は走り去っていった。絵になりすぎてぐうの音もでない。神くんってあんなに、でっかい声で笑うんだ。
「神くんの彼女さあ、マネージャー?」
「ん?うん、そうだけど」
「はーやっぱり!昔なかよしで読んだやつだわ。どうやって付き合ったの?」
「なにそれ、面白いこときくね。全然手応えないからさ、たっぷり2年かけて俺がいないと寂しくなっちゃうように刷り込んだんだ。なかなかやるでしょ」
「へ、」
あっさり彼女の存在を認めた神くんは、あっさり恐ろしいことを言ってのけた。
「苦労したんだよね、話すと長いよ」
「え、んりょしておきます」
「うん、それがいい」
はは、と軽く笑って、神くんは鞄からノートや教科書を取り出し始めた。半袖Tシャツにジーパンをはいているとあんなにたっぷりの筋肉がついているようには思えない。あんなの見せられてあんなの聞かされたら悔しくもならない。(むしろちょっと彼女が心配にもなる)はー、現実的にほどよい相手を探さなくては。神くんはもうとっくに観賞用だ。
神くん、神くん、どーすればお近づきになれますか。
一目惚れに近かった。入学式の日、式典から学科の説明会に移動したとき偶然隣の席に座った。すごく背が高くて手足が長い、色白に長い睫。少女漫画から出てきたような人だと思った。よろしく、と声をかけるとこっちを向いて、やさしいおっとりした口調でよろしく、と言ってくれた。まさに王子様だ。
神くんは部活をしている。学科の飲み会にはほとんど来ないし試合のために学校を休むこともある。この前は全日本のメンバーに選ばれたとかで2週間ばかり休んでいた。あの物腰柔らかな神くんが、素早くて激しいバスケのトッププレーヤーなんてにわかに信じがたい。なかなか個人的に関わる機会がもてない。授業のときにたまに話すときはふんわり優しい雰囲気だけど、なかなかもう一歩踏み込めないなあ。
そんな折、最近神くんと仲良くしている裕子たちがうちの体育館である試合を見に行くと話している。男の子たちも何人も行くようだった。またとないチャンス、試合のあとにジュースを渡すようなチャンスがあれば最高だけど、とにかくバスケをする神くんを見てみたかった。
「神すげーなあ」
「あの色黒の人もえぐくない?」
「あのひと牧っていって、高校の頃から皇帝とか帝王とか言われてる」
「名前負けしてねえな」
「神くんあんなに素早く動けるんだねえ」
「いつもぼんやりにこにこしてるのにね」
「つーか筋肉やべえ」
「ほんとそれ」
小声で好き好き喋るバスケシロートの自然科学科軍団のはしっこで、わたしは必死に神くんを目でおった。決しておっとりなんて、した人じゃないんじゃないかな。こんなチームでレギュラーになるような人が。
試合が終わるとみんなは近くのファミレスに向かって歩き始めた。何を思ったのか、用事を思い出したことにしてわたしは列を離れて、体育館に踵を返した。途中、対戦相手のチームの列とすれ違う。海南の方も解散してしまっているかも。早歩きで向かっていると、Kのマークのついたジャージの集団が歩いてきた。帝王と呼ばれたあの人はいたけど神くんはいない。角を曲がって体育館の入り口が見えた。あの細長い後ろ姿はたぶん神くんだ。中に向かってなにか声をかけている。
「手伝おうか~」
「おわりだからいいでーす!」
遠くまで聞こえるはきはきした、女の子の声がした。私はベンチに座って、偶然そこにいる人に溶け込んだ、ふりをした。みんなと別れてから自販機で買った炭酸ジュースが、手の中で汗をかいている。
「おまたせでーす」
「ん、」
元気いっぱい走ってきた女の子を、神くんは長い両腕でつかまえて、背中を丸めて体をくっつけた。すごい、わたし少女漫画でも見てるんだろうか。わかりやすく彷徨った女の子の腕は、そのうちに神くんの背中に回ってやさしくぽんぽんと撫でるのまで見えた。間違いない、少女漫画だ。エースとマネージャーが付き合ってるやつ、昔なかよしで読んだ。
体育館の脇に置いてあった自転車にまたがった神くんの後ろに、あの子はぴったりくっついて腕を回している。からから元気よく笑い声をあげながら、なかなかのスピードで2人は走り去っていった。絵になりすぎてぐうの音もでない。神くんってあんなに、でっかい声で笑うんだ。
「神くんの彼女さあ、マネージャー?」
「ん?うん、そうだけど」
「はーやっぱり!昔なかよしで読んだやつだわ。どうやって付き合ったの?」
「なにそれ、面白いこときくね。全然手応えないからさ、たっぷり2年かけて俺がいないと寂しくなっちゃうように刷り込んだんだ。なかなかやるでしょ」
「へ、」
あっさり彼女の存在を認めた神くんは、あっさり恐ろしいことを言ってのけた。
「苦労したんだよね、話すと長いよ」
「え、んりょしておきます」
「うん、それがいい」
はは、と軽く笑って、神くんは鞄からノートや教科書を取り出し始めた。半袖Tシャツにジーパンをはいているとあんなにたっぷりの筋肉がついているようには思えない。あんなの見せられてあんなの聞かされたら悔しくもならない。(むしろちょっと彼女が心配にもなる)はー、現実的にほどよい相手を探さなくては。神くんはもうとっくに観賞用だ。