神さんになびかないマネージャー
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(仕事のできる妻)
ちんまりと縮こまったのは、つい先日神さんに神選手の妹かと思ったと言ってのけた中学生男子。腕を組んで黙り込んだリハビリ担当の神まどかさんは、眉間にシワを寄せて黙っている。どうやら痛みが引いてきたんで自己判断で部活に参加して悪化させてきたらしい。中高生あるあるだなあ。
「君がさあ」
「ウッス」
「今日明日の部活とか、目先の大会にでれればもう選手生命終わっていいって思ってるならわたしは担当できない」
「ウッス、すんませんした…」
「もし君の部活の先生が、君を急かすようなこと言うならわたしが直接話す」
「違うっす、おれの判断っす」
「これは海南のマネージャーとして言わせてもらうけど、うちは高校の先生がちゃんと休ませる人だったし吐くほどトレーニングして体と体力作ってたから、大きな故障なく大学の終わりまでいく人が多かったの。君は今ちゃんと休んで、そして治ったら丈夫なからだ作り!わかったらリハビリするよ!」
「ウッス」
細っこいとはいえ、自分より随分背の高い相手に対してまるで見下ろすように話した神さんは、ほれ!と器械の方に彼を促した。海南のマネージャーだけあって、若い男の子の扱いはピカイチだ。
ーーーーーーーーーーーー
部活でれないんだから顔かしなさい!とリハビリ担当の神さん、おれの憧れの神選手の奥さんに言い渡されて、土曜日府立体育館にやってきた。2階席に上がろうとしたら、ばかこっちよ、と慣れた様子で関係者の受付に向かっていく。
フロアに置かれたパイプ椅子に、関係者として認められた人だけがちらほら座っている。小さい子を連れた奥さんらしき人は後ろや通路側の方に。俺は神さんに連れられて、最前列に座った。アップが終わった選手のうち子供がきていたりすると、こっちに寄ってきてパパがんばって!みたいなのをやってたりするけどおれのとなりの人はそんな様子はない。足を揃えてまっすぐ座って、まっすぐコートをみている。どちらのチームも、週バスを何度か買えば見かけるような有名選手ばかりだ。こっちにズンズンやってきたのは神選手じゃなくて清田選手、去年はいったばかりの、でも大学でも活躍していた人だ。ヘアバンドにきつくまとめた後ろ髪がかっこいい。
「おめー弟いたっけ?」
「キョーダイなんてあんたで手一杯よ!リハビリ中のバスケ部員つれてきた」
「なるほど!よっしゃよっしゃ、この清田信長様のスーパープレーをしかと目に焼き付けたまえ」
「やめてよ大人はバカだと思われるでしょ」
ギャンギャンやりあってほら戻れ!ハウス!と清田選手を追い返すと、そーっと近づいてきた福田選手と静かに手を振りあっている。やはりただものではない。
そしておれは、憧れの神選手のスリーポイントを間近に目撃する。滑らかで、一定で、美しいフォームと軌道。何度見てもどの位置からでも、時が止まるような美しいシュートだ。相手の強いセンターに対して隙をつき一閃、ほんとうにかっこいい。
「すげー、勝ちましたね」
「いやあほんとに、高校の頃から見てるけどいまだに息とまる」
「神さんどーやってあんないい男おとしてん」
「はっはっは、逆よ逆。外堀埋められて、」
「お!海南の!久しぶりだな、お前弟いたのか?おい深津」
「ごぶさたしてます!声掛けにいこうと思ってました、この子は今リハビリ担当してるバスケ部の子です」
会わせたかったの、と言われたのは、対戦相手だった河田選手だ。おーいと呼ばれて深津選手もやってきた。日本代表でスタメンを張るふたりだ、やべえ!なんで普通にしゃべってんだ!
「ふじもとです」
「中学生か?」
「はい」
「リハビリ中なのに部活にでちゃって私にきつーくお灸を据えられてかわいそうだったので連れてきました」
「どこやったんだお前」
「足首、捻挫です」
「焦るのはわかるけどな。こりゃ自分との戦いだべ。押さえる勇気も持たねえとな」
「運だピョン。しっかり治しても復活するやつもいればだめになるやつもいるピョン。そいつはそこまでピョン。お前はどっち側の人間か、まだわからないピョン」
「聞いた?帰ってメモしなさいよ!ありがとうございます、河田さんたちならちゃんとなんか言ってくれると思って今日にしたんです、ほら神さんとかふんわりしてるでしょ」
「そのふんわりに今日はしてやられたけどな」
「今日はいつもより多めに走っておりました」
ほら!と色紙を出してくれた神さんにお礼を言って、ふたりのサインをもらう。家宝にしよう。
「こいつぁ真面目で嘘は言わねえ、ちゃんと言うこと聞けよ」
「うっす」
「神さんめちゃくちゃ顔広いやんけ」
「大学までマネージャーやっちゃったからね。みんな関東だから面識はあるわよ」
「河田選手も深津選手もかっこよかったなあ」
「ごめん、わたし神さんしか見てないの」
別れ際にさーて今度はちゃんと休みなさいよと念を押されて大きく頷く。俺のチャンスはまだ死んでない。
ちんまりと縮こまったのは、つい先日神さんに神選手の妹かと思ったと言ってのけた中学生男子。腕を組んで黙り込んだリハビリ担当の神まどかさんは、眉間にシワを寄せて黙っている。どうやら痛みが引いてきたんで自己判断で部活に参加して悪化させてきたらしい。中高生あるあるだなあ。
「君がさあ」
「ウッス」
「今日明日の部活とか、目先の大会にでれればもう選手生命終わっていいって思ってるならわたしは担当できない」
「ウッス、すんませんした…」
「もし君の部活の先生が、君を急かすようなこと言うならわたしが直接話す」
「違うっす、おれの判断っす」
「これは海南のマネージャーとして言わせてもらうけど、うちは高校の先生がちゃんと休ませる人だったし吐くほどトレーニングして体と体力作ってたから、大きな故障なく大学の終わりまでいく人が多かったの。君は今ちゃんと休んで、そして治ったら丈夫なからだ作り!わかったらリハビリするよ!」
「ウッス」
細っこいとはいえ、自分より随分背の高い相手に対してまるで見下ろすように話した神さんは、ほれ!と器械の方に彼を促した。海南のマネージャーだけあって、若い男の子の扱いはピカイチだ。
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部活でれないんだから顔かしなさい!とリハビリ担当の神さん、おれの憧れの神選手の奥さんに言い渡されて、土曜日府立体育館にやってきた。2階席に上がろうとしたら、ばかこっちよ、と慣れた様子で関係者の受付に向かっていく。
フロアに置かれたパイプ椅子に、関係者として認められた人だけがちらほら座っている。小さい子を連れた奥さんらしき人は後ろや通路側の方に。俺は神さんに連れられて、最前列に座った。アップが終わった選手のうち子供がきていたりすると、こっちに寄ってきてパパがんばって!みたいなのをやってたりするけどおれのとなりの人はそんな様子はない。足を揃えてまっすぐ座って、まっすぐコートをみている。どちらのチームも、週バスを何度か買えば見かけるような有名選手ばかりだ。こっちにズンズンやってきたのは神選手じゃなくて清田選手、去年はいったばかりの、でも大学でも活躍していた人だ。ヘアバンドにきつくまとめた後ろ髪がかっこいい。
「おめー弟いたっけ?」
「キョーダイなんてあんたで手一杯よ!リハビリ中のバスケ部員つれてきた」
「なるほど!よっしゃよっしゃ、この清田信長様のスーパープレーをしかと目に焼き付けたまえ」
「やめてよ大人はバカだと思われるでしょ」
ギャンギャンやりあってほら戻れ!ハウス!と清田選手を追い返すと、そーっと近づいてきた福田選手と静かに手を振りあっている。やはりただものではない。
そしておれは、憧れの神選手のスリーポイントを間近に目撃する。滑らかで、一定で、美しいフォームと軌道。何度見てもどの位置からでも、時が止まるような美しいシュートだ。相手の強いセンターに対して隙をつき一閃、ほんとうにかっこいい。
「すげー、勝ちましたね」
「いやあほんとに、高校の頃から見てるけどいまだに息とまる」
「神さんどーやってあんないい男おとしてん」
「はっはっは、逆よ逆。外堀埋められて、」
「お!海南の!久しぶりだな、お前弟いたのか?おい深津」
「ごぶさたしてます!声掛けにいこうと思ってました、この子は今リハビリ担当してるバスケ部の子です」
会わせたかったの、と言われたのは、対戦相手だった河田選手だ。おーいと呼ばれて深津選手もやってきた。日本代表でスタメンを張るふたりだ、やべえ!なんで普通にしゃべってんだ!
「ふじもとです」
「中学生か?」
「はい」
「リハビリ中なのに部活にでちゃって私にきつーくお灸を据えられてかわいそうだったので連れてきました」
「どこやったんだお前」
「足首、捻挫です」
「焦るのはわかるけどな。こりゃ自分との戦いだべ。押さえる勇気も持たねえとな」
「運だピョン。しっかり治しても復活するやつもいればだめになるやつもいるピョン。そいつはそこまでピョン。お前はどっち側の人間か、まだわからないピョン」
「聞いた?帰ってメモしなさいよ!ありがとうございます、河田さんたちならちゃんとなんか言ってくれると思って今日にしたんです、ほら神さんとかふんわりしてるでしょ」
「そのふんわりに今日はしてやられたけどな」
「今日はいつもより多めに走っておりました」
ほら!と色紙を出してくれた神さんにお礼を言って、ふたりのサインをもらう。家宝にしよう。
「こいつぁ真面目で嘘は言わねえ、ちゃんと言うこと聞けよ」
「うっす」
「神さんめちゃくちゃ顔広いやんけ」
「大学までマネージャーやっちゃったからね。みんな関東だから面識はあるわよ」
「河田選手も深津選手もかっこよかったなあ」
「ごめん、わたし神さんしか見てないの」
別れ際にさーて今度はちゃんと休みなさいよと念を押されて大きく頷く。俺のチャンスはまだ死んでない。