神さんになびかないマネージャー
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(かわいい奥さん)
「ただいまぁ~」
「あ、じんさん?」
のんきで自由なひとりぐらしは楽しかったけど、帰ってきて大好きな人が出迎えてくれるというのはこんなに嬉しいものだろうか。ぶんぶん左右に揺れる尻尾が見えるんじゃないかと思うほど目を輝かせて近寄ってきたまどかちゃんを、荷物をドスンと放り出してぎゅっと抱き締めた。
「おかえり」
「ただいま」
「カレーです」
「やった」
まどかちゃんがこっちにきて、1ヶ月もたたないうちに、代表に呼ばれて20日ばかり家を空けた。へーきへーきと追い出されるように出ていったので心配はしてなかったけど、食卓でカレーを挟んで、合えなかった間の報告を。フッキーと信長は今回は呼ばれてなくて、まあポジションの競争率とかなんとかあるしね。牧さんと会ったよ、あとは陵南の仙道とか、湘北の流川とか、と彼女の知っていそうな名前をあげていく。牧さんと2人部屋だったと言うといいな~楽しそうって言われたけどね、練習がハードでそれどころじゃない。1度目のおかわりをよそいながら、まどかちゃんにどうしてたか訊くと、ふっきーさんとご飯してました、と言われて聞き返す。
「フッキーと!?」
「はい」
「ふたりで!?」
「そうです」
「てゆーか呼び方昇格してる」
「水曜いつもよっちゃんで3人でおこのみ食べてるでしょ?神さんいないけど惰性で行ったら向こうもきてて」
「…会話、あるの…?」
「あるある、おいしいご飯の食べれるお店の話とか、お洋服どこで買うとか、高校のときのこととか」
「想像つかないな…」
「で、いつも通り銭湯浴びて、並んでマッサージチェアして、アパートの下まで送ってもらってました。水曜3回あった?3回」
「面白いな、来週水曜楽しみなんだけど」
「顔に似合わずめっちゃ律儀で親切な人ですよね、あんなに話しやすいと思わなかった」
「話しやすい…?」
初回に呼び方を福田さんからフッキーさん、マネージャーさんからまどかさんに昇格させたらしい。ほぼ赤の他人のところから、まず呼び方を何とかしようってとこが不器用な2人らしくておもしろい。その場を目撃できなかったことは残念極まりないけれども。
首をかしげながら椅子に戻る。
「信長は?」
「桃子さんとイチャイチャしてるもん。1回神さんが留守って聞き付けた桃子さんが誘ってくれて3人でご飯行って。なんかすごいおしゃれなパスタ屋さん。今度一緒にいきましょ」
「へえ~」
「あと職場の先輩もいろんなとこ連れてってくれて楽しかったですよ。こっち土地勘ないんで、まだ地図要りますけど」
「そりゃよかったよかった」
まどかちゃんがカレーを一杯食べる間に、おれは三杯平らげた。お皿を洗おうと流しにたつと、お風呂入っておいでよと押し退けられる。
「やさしいね」
「東京から帰って来たばっかの人に皿洗いさせられないでしょ、明日からやってください」
「…待ってるから一緒にはいらない?」
「は!?それはやだ、ふつうに恥ずかしすぎです」
「あれ、やさしくない」
「やさしさの問題じゃなくない?」
「くそー、いけると思ったのに」
「はいはい、さっさと入ってきてください」
マネージャーの頃の口調に戻ったまどかちゃんに追いやられてひとりで風呂場に。そんなに長く入る方ではないけど、風呂からでると流し台は空になっていたし、荷物を勝手にあけたらしいまどかちゃんは洗濯を回しはじめている。相変わらずの働き者だ、頼りになる。自分もさっさと風呂を済ませて、その間に終わっていた洗濯物を干してしまうと、ベッドで大の字になっていた俺を押し退けて場所をつくる。
「あっちむいて」
「なんでだよ」
「背中貸してください」
「仕方ないなあ」
壁の方に顔をむけて横向きになると、後ろからぎゅっとまどかちゃんがくっついた。これは、なんか、あれだ。
「懐かしいことするね」
「あったかい。神さんの背中すきです」
「それはあの頃言ってくれればよかったのに」
「神さんだって最後の最後までそんな感じ出さなかったじゃん」
「俺的には出してたんだけど」
「そう?」
「そっちむいていい?」
「もーちょっと」
「はは、なに、寂しかったの」
「当たり前じゃん、ばかなんですか」
「!!」
背中から伝わった、すねたような声が胸の真ん中をぎゅっと掴んで、甘やかしたい気持ちと今すぐ抱き締めたい気持ちが押し合い圧し合いしている。心の中でゆっくり10数えて、ぐりんと寝返りを打った。あっけにとられたような顔がじわじわ困惑と羞恥の赤に染まって、自分がそうさせてるのかと思うと俺の顔もなんだか熱くなってきてしまう。
「じんさん」
「ん、」
やっぱりぎゅっと抱きつかれて、俺もようやく腕を回す。
「おかえり」
「んん、ただいま」
「いっぱいぎゅってして」
「ほんとにまどかちゃんはさあ、」
「あきれた感じ出さないでくださいよ」
「ばか、違う、興奮した」
「ゲッ」
ほんとうにゲッという顔をした、かわいくて鈍感な奥さんの、わなわな震える唇に吸い付く。外はまだ薄明かるく、これからはじまる夜は長い。
(おわり)
「ただいまぁ~」
「あ、じんさん?」
のんきで自由なひとりぐらしは楽しかったけど、帰ってきて大好きな人が出迎えてくれるというのはこんなに嬉しいものだろうか。ぶんぶん左右に揺れる尻尾が見えるんじゃないかと思うほど目を輝かせて近寄ってきたまどかちゃんを、荷物をドスンと放り出してぎゅっと抱き締めた。
「おかえり」
「ただいま」
「カレーです」
「やった」
まどかちゃんがこっちにきて、1ヶ月もたたないうちに、代表に呼ばれて20日ばかり家を空けた。へーきへーきと追い出されるように出ていったので心配はしてなかったけど、食卓でカレーを挟んで、合えなかった間の報告を。フッキーと信長は今回は呼ばれてなくて、まあポジションの競争率とかなんとかあるしね。牧さんと会ったよ、あとは陵南の仙道とか、湘北の流川とか、と彼女の知っていそうな名前をあげていく。牧さんと2人部屋だったと言うといいな~楽しそうって言われたけどね、練習がハードでそれどころじゃない。1度目のおかわりをよそいながら、まどかちゃんにどうしてたか訊くと、ふっきーさんとご飯してました、と言われて聞き返す。
「フッキーと!?」
「はい」
「ふたりで!?」
「そうです」
「てゆーか呼び方昇格してる」
「水曜いつもよっちゃんで3人でおこのみ食べてるでしょ?神さんいないけど惰性で行ったら向こうもきてて」
「…会話、あるの…?」
「あるある、おいしいご飯の食べれるお店の話とか、お洋服どこで買うとか、高校のときのこととか」
「想像つかないな…」
「で、いつも通り銭湯浴びて、並んでマッサージチェアして、アパートの下まで送ってもらってました。水曜3回あった?3回」
「面白いな、来週水曜楽しみなんだけど」
「顔に似合わずめっちゃ律儀で親切な人ですよね、あんなに話しやすいと思わなかった」
「話しやすい…?」
初回に呼び方を福田さんからフッキーさん、マネージャーさんからまどかさんに昇格させたらしい。ほぼ赤の他人のところから、まず呼び方を何とかしようってとこが不器用な2人らしくておもしろい。その場を目撃できなかったことは残念極まりないけれども。
首をかしげながら椅子に戻る。
「信長は?」
「桃子さんとイチャイチャしてるもん。1回神さんが留守って聞き付けた桃子さんが誘ってくれて3人でご飯行って。なんかすごいおしゃれなパスタ屋さん。今度一緒にいきましょ」
「へえ~」
「あと職場の先輩もいろんなとこ連れてってくれて楽しかったですよ。こっち土地勘ないんで、まだ地図要りますけど」
「そりゃよかったよかった」
まどかちゃんがカレーを一杯食べる間に、おれは三杯平らげた。お皿を洗おうと流しにたつと、お風呂入っておいでよと押し退けられる。
「やさしいね」
「東京から帰って来たばっかの人に皿洗いさせられないでしょ、明日からやってください」
「…待ってるから一緒にはいらない?」
「は!?それはやだ、ふつうに恥ずかしすぎです」
「あれ、やさしくない」
「やさしさの問題じゃなくない?」
「くそー、いけると思ったのに」
「はいはい、さっさと入ってきてください」
マネージャーの頃の口調に戻ったまどかちゃんに追いやられてひとりで風呂場に。そんなに長く入る方ではないけど、風呂からでると流し台は空になっていたし、荷物を勝手にあけたらしいまどかちゃんは洗濯を回しはじめている。相変わらずの働き者だ、頼りになる。自分もさっさと風呂を済ませて、その間に終わっていた洗濯物を干してしまうと、ベッドで大の字になっていた俺を押し退けて場所をつくる。
「あっちむいて」
「なんでだよ」
「背中貸してください」
「仕方ないなあ」
壁の方に顔をむけて横向きになると、後ろからぎゅっとまどかちゃんがくっついた。これは、なんか、あれだ。
「懐かしいことするね」
「あったかい。神さんの背中すきです」
「それはあの頃言ってくれればよかったのに」
「神さんだって最後の最後までそんな感じ出さなかったじゃん」
「俺的には出してたんだけど」
「そう?」
「そっちむいていい?」
「もーちょっと」
「はは、なに、寂しかったの」
「当たり前じゃん、ばかなんですか」
「!!」
背中から伝わった、すねたような声が胸の真ん中をぎゅっと掴んで、甘やかしたい気持ちと今すぐ抱き締めたい気持ちが押し合い圧し合いしている。心の中でゆっくり10数えて、ぐりんと寝返りを打った。あっけにとられたような顔がじわじわ困惑と羞恥の赤に染まって、自分がそうさせてるのかと思うと俺の顔もなんだか熱くなってきてしまう。
「じんさん」
「ん、」
やっぱりぎゅっと抱きつかれて、俺もようやく腕を回す。
「おかえり」
「んん、ただいま」
「いっぱいぎゅってして」
「ほんとにまどかちゃんはさあ、」
「あきれた感じ出さないでくださいよ」
「ばか、違う、興奮した」
「ゲッ」
ほんとうにゲッという顔をした、かわいくて鈍感な奥さんの、わなわな震える唇に吸い付く。外はまだ薄明かるく、これからはじまる夜は長い。
(おわり)