神さんになびかないマネージャー
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(マネージャー卒業が近付く)
卒業後も競技を続ける先輩たちがそうしていたように、ノブも4年になってからも週に何回かは練習に出ている。そうじゃない日は筋トレしたり、浜辺でランニングしたり、まあまあこの期に及んでバージョンアップしようとしているのが見てとれる。つくづくバスケのこととなるとどこまでも頑張りのきくやつだ。もう学科が違うんだから、卒論がどうなったってわたしは知らないぞ。
大阪にきて、という神さんの言葉を受け、わたしは仕事を探そうとしたけれども遠距離では無理があり、そっち行ってから探すよと話したら、どうやら勝手にチームがお世話になってる整形外科の先生に理学療法士の働き口がないか尋ねたらしく、夏休みに応援がてら行った二度めの大阪で面接とも思わず軽く紹介されたらその場で採用が決まってしまった。さすが外面のいい神さんの伝だ、いい彼氏をもった。他の人に言う前にノブには話しておきたいなと思ってたところ、飲みに行こうぜと誘われてのこのこ出ていく。大学生になって、部活こそ一緒だったけど学科は違うし、バイトもするし、ノブはひとつ上のカノジョの桃子さんの部屋にいることが多くなって、高校のときほど一心同体感は薄らいできたものの、顔を見ればほっとする、家族にかわりない相手だ。
「あのよお」
「んー」
今ではすっかり飲み慣れたビールのジョッキを軽く合わせてぐびっとやったところで、早々にノブが本題を切り出すときの言い方をした。
「俺、大阪いくわ」
「…………はあ!?」
「去年から思ってたんだけど、決まったからお前には言っとこうと思って」
「えっと、神さんとこ?」
「そうだ」
「………うそだあ」
「嘘じゃねえ、お前もそのうちケッコンとかすんなら、」
「ねえ、あのさあ」
「え、待てよ」
「わたし、神さんのツテで大阪で仕事見つけて…」
「……うそだろ」
「うそじゃない」
「神さん絶対両方知ってるじゃん、なんで教えてくれないんだよ」
「あの人わたしたちのこと多少面白がってる節あるよね」
「多少じゃねーだろ………」
目を合わせたら、笑いがこぼれた。本物の腐れ縁だ。ビールをぐびっと飲み干した。
「桃子さん、大阪だったもんね」
「おーよ」
「いやー、もうここまできたら、いつまで一緒か試してやりたいわ」
「先に死んだ方の葬式に出た方が勝ちな」
「いいね、アイス賭けようか」
肘と膝を軽くぶつけあって、愉しくてたのしくて上半身を倒してぶつかった。ノブもこっちに頭を倒してきて、ごわっとした髪が顔や首にあたってくすぐったい。
「お前、そんなに神さんのこと好きだったっけ」
「え、ひどくない?もう4年は付き合ってるよ」
「それは知ってるけど」
「神さんはわたしのことすごい好きでいてくれるから」
「それは知ってる」
「あんなに根気よく心地よく丁度よくされてさ、好きになるしかないじゃん」
「それ、高2らへんの神さんに聞かせてやりてーわ」
「本人も言ってた。で、あんたは?桃子さんばりばりの選手でしょ」
「おー、びっくりすんぜ、こんど全日本に呼ばれたって」
「それはすごい!テレビで応援する!大阪行ったら桃子さんと女子会しよ~」
割り勘で会計を済ませて、そとの空気を吸い込む。でかい声で笑いながらくっついたり離れたりして歩いていく、愉快な会の最終回はまだまだ遠そうだ。
(おわり)
卒業後も競技を続ける先輩たちがそうしていたように、ノブも4年になってからも週に何回かは練習に出ている。そうじゃない日は筋トレしたり、浜辺でランニングしたり、まあまあこの期に及んでバージョンアップしようとしているのが見てとれる。つくづくバスケのこととなるとどこまでも頑張りのきくやつだ。もう学科が違うんだから、卒論がどうなったってわたしは知らないぞ。
大阪にきて、という神さんの言葉を受け、わたしは仕事を探そうとしたけれども遠距離では無理があり、そっち行ってから探すよと話したら、どうやら勝手にチームがお世話になってる整形外科の先生に理学療法士の働き口がないか尋ねたらしく、夏休みに応援がてら行った二度めの大阪で面接とも思わず軽く紹介されたらその場で採用が決まってしまった。さすが外面のいい神さんの伝だ、いい彼氏をもった。他の人に言う前にノブには話しておきたいなと思ってたところ、飲みに行こうぜと誘われてのこのこ出ていく。大学生になって、部活こそ一緒だったけど学科は違うし、バイトもするし、ノブはひとつ上のカノジョの桃子さんの部屋にいることが多くなって、高校のときほど一心同体感は薄らいできたものの、顔を見ればほっとする、家族にかわりない相手だ。
「あのよお」
「んー」
今ではすっかり飲み慣れたビールのジョッキを軽く合わせてぐびっとやったところで、早々にノブが本題を切り出すときの言い方をした。
「俺、大阪いくわ」
「…………はあ!?」
「去年から思ってたんだけど、決まったからお前には言っとこうと思って」
「えっと、神さんとこ?」
「そうだ」
「………うそだあ」
「嘘じゃねえ、お前もそのうちケッコンとかすんなら、」
「ねえ、あのさあ」
「え、待てよ」
「わたし、神さんのツテで大阪で仕事見つけて…」
「……うそだろ」
「うそじゃない」
「神さん絶対両方知ってるじゃん、なんで教えてくれないんだよ」
「あの人わたしたちのこと多少面白がってる節あるよね」
「多少じゃねーだろ………」
目を合わせたら、笑いがこぼれた。本物の腐れ縁だ。ビールをぐびっと飲み干した。
「桃子さん、大阪だったもんね」
「おーよ」
「いやー、もうここまできたら、いつまで一緒か試してやりたいわ」
「先に死んだ方の葬式に出た方が勝ちな」
「いいね、アイス賭けようか」
肘と膝を軽くぶつけあって、愉しくてたのしくて上半身を倒してぶつかった。ノブもこっちに頭を倒してきて、ごわっとした髪が顔や首にあたってくすぐったい。
「お前、そんなに神さんのこと好きだったっけ」
「え、ひどくない?もう4年は付き合ってるよ」
「それは知ってるけど」
「神さんはわたしのことすごい好きでいてくれるから」
「それは知ってる」
「あんなに根気よく心地よく丁度よくされてさ、好きになるしかないじゃん」
「それ、高2らへんの神さんに聞かせてやりてーわ」
「本人も言ってた。で、あんたは?桃子さんばりばりの選手でしょ」
「おー、びっくりすんぜ、こんど全日本に呼ばれたって」
「それはすごい!テレビで応援する!大阪行ったら桃子さんと女子会しよ~」
割り勘で会計を済ませて、そとの空気を吸い込む。でかい声で笑いながらくっついたり離れたりして歩いていく、愉快な会の最終回はまだまだ遠そうだ。
(おわり)