クラスメイトの牧くん
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(牧くんの試合を見に行く2)
地元に本社のある会社のチームに入った牧くんから、年末さいごの試合を見に来ないかと誘いを受ける。じいちゃんの知り合いの楽器やで働きながらおばさんの店を手伝いつつ、人に教えたりイベントに出たり要は不規則な暮らしをしている私にとっては、日程の調整は簡単だ。そのまま年末の休みに入るらしく、食事もしたいので夜まで、と言われて、ずっと何を着ていくか悩んでいた。おばさんが若い頃着ていたという、総レースで胸元にビーズの刺繍のあるワンピースが入るか確かめて、ハンガーにかけておいてきた。試合観戦は慣れてないけど、あったかくしてこいよと言われたので防寒対策はばっちりだ。学生の頃牧くんにもらった、真っ赤で柔らかいマフラーに首もとを埋める。
関係者の受付で私の前にいた、髪を後ろでひとつに結んだ子が、神まどかです、お世話になります、とはきはき名乗りをあげた。じん、じん…じん?聞き覚えのある響きに顔をうかがおうと少し覗き込むと、見覚えのある飾り気のない女性と目があった。
「あ!もしかして、」
「あ、マネージャーの!」
「うわあ!お元気ですか?すっごいおしゃれ!あ、受付ですよね、待ってていいですか?」
どうぞ、と言われて、神さんについてすすんでいく。
「ねえ、名前たしか、」
「あ、覚えてます?原田だったんですけど、ケッコンしたんで」
「わあ、おめでとう!それで今は?」
「大阪なんで、この試合終わったらそのまま実家に帰省します。せっかくこっちまできたんで」
「へえ、大阪ぁ」
「先輩はまだ、まきさんにはなってないんですか?」
「ふふ、まだ。どうだろうねえ、牧くんマイペースだからね」
「ああ、わかります。あの顔でうっかり発言とかけっこうあるんで」
「うっかりね、わかるかも」
高校生のとき、ゴールの近くがいいと教えてくれたのは彼女だった。力強いダンクの迫力や音もさることながら、レイアップっていうの?普通のシュートのスピード感もとてもみごたえがあった。
「神さんは、反対に座る?」
「ご迷惑じゃなければ一緒に座らせてもらっても」
「わたしはありがたいけど、旦那さんはいいの?」
「いいんですいいんです、神さんのシュートなんて百万回は見ましたから」
「やだ、いいわね」
「見とれますよ、今でも息止まります」
高校大学とマネージャーを務めたらしい原田さん改め神さんはそれなりに知り合いが多いらしく、あっ海南の、と声をかけられる度に素早く腰をあげて気を付けで挨拶をしている。わたしはバスケのことよくわかんないんですけどと言いながらこの場への馴染み方も尋常じゃない。
ウォーミングアップのためにあらわれた選手の中の牧くんはわたしをみつけて、それから隣の神さんを見つけたらしく、ばつが悪そうに頬をぽりぽり掻いている。
ーーーーーーーーーーー
「なんで一緒にいるんだよ」
「なんで牧さんちょっと嫌そうなんですか、かわいいマネージャーですよ」
「お前もほんとに厚かましくなったな」
「お褒めに与り光栄です」
「牧さあん」
「おお神」
「なるほど、それで今日は気合い入ってたわけですね」
「いつも入ってる」
「いや今日はほんと、こわかったですよ」
なるほど、神と呼ばれた色白で長身で可愛い系の男性、見覚えある。へにゃ、と笑った顔が夫婦でそっくりだ。
「今日飯行こうって行ってて、フッキーと信長と、フッキーの友達も来るみたいですよ、ほらあの魚住さんのとこで。誘おうと思ったけどもしかしてデートですか?」
「ああ、悪いな、そろそろプロポーズしたくて、…は!」
「出た牧さんのうっかり」
「しまった…俺としたことが…すまんいろは、その、」
「もおー!神さんが誘うからじゃんか!どうみてもデートじゃんこのあと!」
「だって牧さんもいつも誘ってくれるし…いやでもすみません!俺としたことが」
「まあでもさすが牧さんですよ計画的で、神さんもちょっと見習ってくださいよ、起き抜けのお布団でカスカスの声でぽやぽやプロポーズしたひと誰ですか!ほら!爪の垢もらって!」
頭を抱えてしょんぼりしていた牧くんと、夫婦漫才を繰り広げる二人が、言葉を失ったわたしに気付いて様子をうかがってくる。
「せんぱい?」
「あわ、えと、ま、まきくん、」
「悪い、がっかりしたか」
「プロポーズというのは、その、」
「俺と結婚してくれって、やつだ」
「ええ、ほんとに」
「ほんとだよ、もうちょっとこう、ちゃんとする予定だったんだけどな。」
「てっきり牧くんは現役のうちはそのつもりないんだと思ってたからびっくりした。でも嬉しい」
「なに言ってるんだよ、お前が静岡に行ってるときからずっと考えてたんだぞ俺は」
「なんてこった」
「でっかい花束持っていくからな」
「それ覚えてたんだ」
「そっちこそ」
腕をひかれて抱き締められる間際に、ほら!退散!とじたばた避けていく2人が視界にはいる
「ちょっと、目立つよ」
「いい」
「よくない」
「たのむ、結婚してくれ」
「そんなのいいに決まってるじゃん」
「そうか!」
ぺかっと笑った牧くんは、わたしの首もとのマフラーを満足げに整えると、六時に迎えに行くからな、と言い残して走って引き上げていった。いたたまれなくなって見回すと、体育館の端の方で固唾を飲んでいたらしい神夫婦と、別の選手も一緒にいる。慌ててかけよると、神さんにおめでとうでいいですか?と聞かれて、うん、と頷く。やったあと万歳して飛び上がった神さんは、あ!デートですよね!準備要りますよね!ほら駅まで一緒に行きましょ!じんさん早く帰ってきてよ!となぜか赤い顔でまくしたてて、わたしを連れ出してくれた。
「よかったの、待ってなくて」
「いいんですいいんです、私の実家に集合なんで。なんかもう人様のあんなの見せていただいて心臓破裂しそう」
「付き合いはじめたとき言ってたの牧くん」
「なにをです?」
「大人になったらでっかい花束もってプロポーズするって」
「ひょー、そんなこと言ってたんですか牧さん!またそれが似合うからなあ」
「私だけ覚えてるんだと思ってた」
「よかったですね」
「でも2人もとってもお似合い」
「そう?そうですか?んー、うん、でも仲良しです。今や夫ですけど、仲良しの先輩で、お兄ちゃんで、友達って感じかな」
「あー、そんな感じする!」
「…牧さんは?」
「牧くんは~…でもけっこう、最初から好きだったからな。友達とかお兄ちゃんって感じはないかな。ねぇ、お布団でプロポーズって気になるけど」
「初めて大阪に泊まりに行った時に、こっちで仕事探しなよ~って、ぼんやりしたままそれも全裸ですよ。仕切り直しもお好み焼きやさんだったんで、素敵なレストランのタイプは牧さんにやってもらうしか」
「じゃあそっちのタイプはわたしがちょうだいします」
わははと2人で同じように笑った。駅までの道はおしゃべりであっという間、わたしが最寄りで降りるまでに電話番号の交換までしたことを、男たちはまだ知らない。
(おわり)
地元に本社のある会社のチームに入った牧くんから、年末さいごの試合を見に来ないかと誘いを受ける。じいちゃんの知り合いの楽器やで働きながらおばさんの店を手伝いつつ、人に教えたりイベントに出たり要は不規則な暮らしをしている私にとっては、日程の調整は簡単だ。そのまま年末の休みに入るらしく、食事もしたいので夜まで、と言われて、ずっと何を着ていくか悩んでいた。おばさんが若い頃着ていたという、総レースで胸元にビーズの刺繍のあるワンピースが入るか確かめて、ハンガーにかけておいてきた。試合観戦は慣れてないけど、あったかくしてこいよと言われたので防寒対策はばっちりだ。学生の頃牧くんにもらった、真っ赤で柔らかいマフラーに首もとを埋める。
関係者の受付で私の前にいた、髪を後ろでひとつに結んだ子が、神まどかです、お世話になります、とはきはき名乗りをあげた。じん、じん…じん?聞き覚えのある響きに顔をうかがおうと少し覗き込むと、見覚えのある飾り気のない女性と目があった。
「あ!もしかして、」
「あ、マネージャーの!」
「うわあ!お元気ですか?すっごいおしゃれ!あ、受付ですよね、待ってていいですか?」
どうぞ、と言われて、神さんについてすすんでいく。
「ねえ、名前たしか、」
「あ、覚えてます?原田だったんですけど、ケッコンしたんで」
「わあ、おめでとう!それで今は?」
「大阪なんで、この試合終わったらそのまま実家に帰省します。せっかくこっちまできたんで」
「へえ、大阪ぁ」
「先輩はまだ、まきさんにはなってないんですか?」
「ふふ、まだ。どうだろうねえ、牧くんマイペースだからね」
「ああ、わかります。あの顔でうっかり発言とかけっこうあるんで」
「うっかりね、わかるかも」
高校生のとき、ゴールの近くがいいと教えてくれたのは彼女だった。力強いダンクの迫力や音もさることながら、レイアップっていうの?普通のシュートのスピード感もとてもみごたえがあった。
「神さんは、反対に座る?」
「ご迷惑じゃなければ一緒に座らせてもらっても」
「わたしはありがたいけど、旦那さんはいいの?」
「いいんですいいんです、神さんのシュートなんて百万回は見ましたから」
「やだ、いいわね」
「見とれますよ、今でも息止まります」
高校大学とマネージャーを務めたらしい原田さん改め神さんはそれなりに知り合いが多いらしく、あっ海南の、と声をかけられる度に素早く腰をあげて気を付けで挨拶をしている。わたしはバスケのことよくわかんないんですけどと言いながらこの場への馴染み方も尋常じゃない。
ウォーミングアップのためにあらわれた選手の中の牧くんはわたしをみつけて、それから隣の神さんを見つけたらしく、ばつが悪そうに頬をぽりぽり掻いている。
ーーーーーーーーーーー
「なんで一緒にいるんだよ」
「なんで牧さんちょっと嫌そうなんですか、かわいいマネージャーですよ」
「お前もほんとに厚かましくなったな」
「お褒めに与り光栄です」
「牧さあん」
「おお神」
「なるほど、それで今日は気合い入ってたわけですね」
「いつも入ってる」
「いや今日はほんと、こわかったですよ」
なるほど、神と呼ばれた色白で長身で可愛い系の男性、見覚えある。へにゃ、と笑った顔が夫婦でそっくりだ。
「今日飯行こうって行ってて、フッキーと信長と、フッキーの友達も来るみたいですよ、ほらあの魚住さんのとこで。誘おうと思ったけどもしかしてデートですか?」
「ああ、悪いな、そろそろプロポーズしたくて、…は!」
「出た牧さんのうっかり」
「しまった…俺としたことが…すまんいろは、その、」
「もおー!神さんが誘うからじゃんか!どうみてもデートじゃんこのあと!」
「だって牧さんもいつも誘ってくれるし…いやでもすみません!俺としたことが」
「まあでもさすが牧さんですよ計画的で、神さんもちょっと見習ってくださいよ、起き抜けのお布団でカスカスの声でぽやぽやプロポーズしたひと誰ですか!ほら!爪の垢もらって!」
頭を抱えてしょんぼりしていた牧くんと、夫婦漫才を繰り広げる二人が、言葉を失ったわたしに気付いて様子をうかがってくる。
「せんぱい?」
「あわ、えと、ま、まきくん、」
「悪い、がっかりしたか」
「プロポーズというのは、その、」
「俺と結婚してくれって、やつだ」
「ええ、ほんとに」
「ほんとだよ、もうちょっとこう、ちゃんとする予定だったんだけどな。」
「てっきり牧くんは現役のうちはそのつもりないんだと思ってたからびっくりした。でも嬉しい」
「なに言ってるんだよ、お前が静岡に行ってるときからずっと考えてたんだぞ俺は」
「なんてこった」
「でっかい花束持っていくからな」
「それ覚えてたんだ」
「そっちこそ」
腕をひかれて抱き締められる間際に、ほら!退散!とじたばた避けていく2人が視界にはいる
「ちょっと、目立つよ」
「いい」
「よくない」
「たのむ、結婚してくれ」
「そんなのいいに決まってるじゃん」
「そうか!」
ぺかっと笑った牧くんは、わたしの首もとのマフラーを満足げに整えると、六時に迎えに行くからな、と言い残して走って引き上げていった。いたたまれなくなって見回すと、体育館の端の方で固唾を飲んでいたらしい神夫婦と、別の選手も一緒にいる。慌ててかけよると、神さんにおめでとうでいいですか?と聞かれて、うん、と頷く。やったあと万歳して飛び上がった神さんは、あ!デートですよね!準備要りますよね!ほら駅まで一緒に行きましょ!じんさん早く帰ってきてよ!となぜか赤い顔でまくしたてて、わたしを連れ出してくれた。
「よかったの、待ってなくて」
「いいんですいいんです、私の実家に集合なんで。なんかもう人様のあんなの見せていただいて心臓破裂しそう」
「付き合いはじめたとき言ってたの牧くん」
「なにをです?」
「大人になったらでっかい花束もってプロポーズするって」
「ひょー、そんなこと言ってたんですか牧さん!またそれが似合うからなあ」
「私だけ覚えてるんだと思ってた」
「よかったですね」
「でも2人もとってもお似合い」
「そう?そうですか?んー、うん、でも仲良しです。今や夫ですけど、仲良しの先輩で、お兄ちゃんで、友達って感じかな」
「あー、そんな感じする!」
「…牧さんは?」
「牧くんは~…でもけっこう、最初から好きだったからな。友達とかお兄ちゃんって感じはないかな。ねぇ、お布団でプロポーズって気になるけど」
「初めて大阪に泊まりに行った時に、こっちで仕事探しなよ~って、ぼんやりしたままそれも全裸ですよ。仕切り直しもお好み焼きやさんだったんで、素敵なレストランのタイプは牧さんにやってもらうしか」
「じゃあそっちのタイプはわたしがちょうだいします」
わははと2人で同じように笑った。駅までの道はおしゃべりであっという間、わたしが最寄りで降りるまでに電話番号の交換までしたことを、男たちはまだ知らない。
(おわり)