クラスメイトの牧くん
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進路相談のために朝から学校に行った帰り、少し回り道して、誰もいないのを確かめながらそっと体育館に近づくと、テレビで見た、バスケをしてるときの牧くんの声がきこえてきた。他の人に見られても面倒だし、練習の邪魔もできない。中をのぞかずに帰ろうとしたところで後ろから声をかけられる。タンクトップとハーフパンツからほっそりして長い手足がのびている、前に牧くんを呼びにきたマネージャーの子だ。
「牧さん、呼びましょうか」
「や、いいよ」
「じゃあ何か伝えましょうか」
「んー、練習何時まで?」
「12時までです」
わたしは慌てて鞄から手帳をだして、ペンを走らせる。
「できれば他の人に見られないように渡してもらえないかな」
「牧さんでいいんですよね」
「うん、ありがとう」
ーーーーーーーーーーーーーー
「まきさーん!」
練習後に原田が駆け寄ってきて、今度の練習試合の~とわざとらしく大きめの声で話しながら、そっと小さな紙切れを握らせてきた。
「公園の向かいの喫茶ぱんぷきんで待ってます」
見覚えのある字だ。秋田に違いない。
「秋田」
「牧くん、よかった伝わって。なんか頼む?」
「うん、腹減った」
「ごめん、疲れてるのに」
「いや、学校が始まる前に話しておきたかった」
「うん、ちょっと、落ち着きたくて」
学校では今まで通りにすごしたい、と言い出したのは秋田だった。俺は素直に頷く。
それから自宅の電話番号を交換した。家族にばれるのは致し方ない。俺にはバスケ、秋田には音楽があり、それぞれの世界を大事にしたい。
「大人の人に囲まれてるからわかるの。どんなに背伸びしてもわたしはまだ子どもだってわかるの。このあいだ帰ったあとずっと、牧くんのこと、その、思い出してしまって、自分がだめになってしまうのが怖くて」
ゆっくり、確かに、秋田は言葉を紡いだ。下を向いて、噛み締めるように、そしてゆっくり顔をあげた。
「牧くん?」
「よかった、つまらない男だと思われたわけじゃなかったな」
「もう!そんなわけないでしょ」
「俺は今年も、来年も、たぶん体が動く限りバスケのことを1番に考えてしまうと思う」
「見てればわかるよ」
「でもできればずっとお前といたい」
「それは、その」
「ん?」
「そんな、プロポーズみたいなこと言われるとどうすればいいのか、」
「え?あ、ああ、でもそうだよな。大人になったらちゃんとやるからな、でっかい花束もって」
「やだ、ドラマのみすぎ」
「そうか?」
ふ、と笑うと、秋田もつられてふ、と笑った。人生は長くて短い、たぶん。その最後の方でまた今と同じように笑えたらいい。
(おわり)