信長くんとおねえさん
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夕方から夜の学生控え室はだらだらごろごろできて楽しい。部活やゼミが終わると立ち寄り、ジャンプを回し読みしたり、売店で買ってきたご飯を食べたり、だらだら喋ったり。そういう雰囲気を気に入ったらしく、清田はちょこちょこ夕方の控室にやってくるようになった。元気はつらつ、礼儀正しく可愛らしい清田は、卒業研究にいそしむ4年生たちにとってはそれはそれは可愛く映るらしく、しょっちゅうご飯に連れ出されている。その日久しぶりに二人きりになって、私はソファにごろんと寝転んで、清田はその脇のパイプ椅子に座って、漫画や雑誌をぱらぱらめくっていた。
「清田ぁ」
「はい?」
「手、」
「て?」
よいしょと体を起こした。ふと気になって、赤みのある大きな掌と自分のそれを重ねる。
「わ、やっぱり。大きいね」
「そっりゃあ、一応男なんで」
「私よりちっちゃい男いっぱいいるけどね。戦ったら勝てそうなやつ」
「そっすか?俺はバスケ部だと大きいほうじゃあないんで」
「そーなの?」
「んー…じんさん、あいつの彼氏の神さんたぶん195くらいあります」
「わ、2mじゃん」
「そうそう」
「なるほど盲点だったわ、マミさんにバスケ部のひと紹介してもらえばよかった」
「……桃子さんって、ほんとに彼氏いないんですか」
「私もバカだったからさあ、」
「え?」
「何て言われたと思う?」
「へ?な、んすかね、身長気にしてますよね、そのことですか」
「ん、ちょっとあたり」
「ちょっと」
お前はさあ、なんか真面目で窮屈なんだよ。それにでかいしね。カラダはイイんだけど。
かーっと顔を真っ赤にして、泣きそうな顔になった清田は、眉間にシワを寄せて、下を向いてしまった。私は私が嫌いだ。こんなに真っ直ぐ生きてるひとにあんなこと言って、軽蔑されないはずがない。名前を呼ばれて顔をあげると、真っ赤な顔と目があった。
「黙ってようと思ってたんすけど」
「え?」
「こないだ体育館の前とおったら女バレが練習してたからちょっと中のぞいたんす」
「うそ、気付かなかった」
「桃子さん、すげーかっこよかったっす」
「そんな、なに急に」
「俺は、あの、いや、その、」
「いいよ、気の利いたこと言おうとしなくても」
「いっぱい話してみたいんで、どっか行きませんか」
「いいね、飲み行く?」
「や、そーじゃなくて。なんか、ほら、えーっと……あ!水族館!水族館いきましょ!」
「水族館?いいよ、いつにする?」
予定を決めると清田は白い歯を見せていししと笑った。どれだけ自分が嫌いでも、子の顔を見るとなんだか心の真ん中のところが、ふにゃあとしてくる。話したいことがあると何度も念押しする清田に、ちょっと期待とときめきで胸が膨らむ自分もいる。幸せを感じると同じくらい不安になってしまう。わたしはなんでそうなんだろう。